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ki67調査の必要性について

[管理番号:1255]
性別:女性
年齢:37歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1011「術前検査後手術までの間のリンパ節転移の可能性

 
 
先日は質問に答えていただきありがとうございました。
おかげさまで安心して手術にのぞむことができ、
やはり手術時のセンチネルリンパ節生検の結果も陰性でした。
昨日最終病理結果が出まして、以下の通りでした。
腫瘍径 8ミリ
組織型 充実腺菅癌
拡がり 脂肪まで
リンパ管侵襲 ly1
脈管侵襲 0
リンパ節転移 0
断端 陰性
ER,PGR 陽性
HER2 2+ FISH1.3倍で陰性
核異形度 グレード1
抗がん剤は必要ありません、
とのことで本日よりノルバデックスの服用を開始し、来月リュープリンの注射をします。
ki67の値について聞いてみたところ、
どうせ明らかに低いから調べるまでもないので出してません、
どうしても調べたければやりますが、との説明でした。
治療法が変わらないならば必要ないかと思い、調べなくて良いですと回答していまい
ましたが、それでよかったのでしょうか。
充実腺菅癌ですし、リンパ管侵襲も軽度ながらあるところが少し引っかかるものの、
それがどの程度予後に影響するのか自分では判断できず…。
先生から見てもこのまま放射線治療とホルモン治療のみを行うという見解でしょうか?
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(8mm), pN0, luminal A(NG1より推定)

回答

「どうせ明らかに低いから調べるまでもないので出してません」
⇒私も、そのように推測します。(それで、冒頭に敢えて「luminal A, NG1より推
測」と記載しているのです)
 ただ、厳密にいうと、NG1の中身がどうなのか気になる所です。(通常、病理レ
ポートの記載には「核異型が何点、核分裂が何点、合計で何点だから核グレードが
1」というように、それぞれの点数が記載されています)
 「核グレード」は「核異型度」+「核分裂度」でなりなっています。
 Ki67は「細胞分裂期にある細胞の割合(%)」ですから「核グレード」の内訳の中
でも「核分裂度」とほぼイコールと考えます。
 
 つまり同じ核グレード1でも「もしも★の場合には」Ki67が「やや高い可能性」が
あります。
 ♯「核分裂」が5~10個(2点)でも「核異型」が弱い(1点)だと「核グレー
ド」は(合計3点で)1となります。
 
 「核グレード」は「核異型の点数」+「核分裂の点数」です。
・核異型 
★弱い:1点
 中間:2点
 強い:3点
・核分裂 
 5個未満(10視野で):1点
★5~10個  〃   :2点
 11個以上  〃  :3点
・核グレード(NG) 核異型の点数+核分裂の点数
2点、★3点 :核グレード1 
4点    ;核グレード2
5点、6点 :核グレード3 
 
「それでよかったのでしょうか」
⇒実質上、化学療法の必要はないと思いますので、「測定しなくてもいい」と思います。
 
 ★厳密に言えば、上記のように、「核グレードの中身」で核分裂が2点であれば
「Ki67を測定してもいい」とは思いますが、『pT1b, NG1』という時点で「化学療法
を勧める乳腺外科医はいない」と思います。(私もその一人です)
 
「先生から見てもこのまま放射線治療とホルモン治療のみを行うという見解でしょうか?」
⇒その通りです。化学療法はお勧めしません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

こんにちは。
自分の質問をしていないときも、ここのQ&Aは毎日チェックして、知識を深めたり安心させてもらったりしています。
私の他にも沢山の方がここを心の支えにされているかと思います。
先生もご多忙かと思いますが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
今日は腫瘍マーカーについて質問です。
pT1b(8mm), pN0, luminal A(NG1より推定)
9/7 右温存手術
10/1 タモキシフェン服用開始
10/14 放射線治療開始
10/28 リュープリン注射と同日に採血
という流れで治療しており、先日、10/28の採血の結果を聞いたところ、ⅠCTPが5.5と、基準値を超えておりました。
ちなみに術前は4.0でした。
主治医は、こんなの気にしなくてよい、と言っていましたが、基準値を超えているとなるとやはり不安になります。
8/7にPETも実施しており、その時点では骨転移は見られませんでした。
骨転移するにしても私のステージやサブタイプで術後2ヶ月弱というのはさすがに早すぎると、個人的には思うのですが、先生はこのマーカー値を見た場合、どのようにお考えになりますか?
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
腫瘍マーカーは「時に役立ち」ますが、時に「無用な心配」を引き起こす「諸刃の剣」と言えます。
質問者のような「low risk」の方には
CEAとCA15-3だけで十分であり、「再発の見張り」として用います。
それとは異なり、(残念にも)再発してしまった方たちの「治療効果のマーカー」という役割があります。
「再発治療の効果判定」として「腫瘍マーカー」のどれが「動く」か検討します。
再発した際には、「腫瘍マーカーを多数、測定(その中にICTPとかNCC-ST439などがあります)」して、「最も治療効果判定に役立つもの」を選択し、利用するのです。
○私の経験上、「再発の見張り」としては「CEAとCA15-3」で十分であり、下手に「ICTPとかNCC-ST439」などを測定すると(患者さんに)無用な心配の種となります。
 ICTPとかNCC-ST439は「正常値にバリエーションが大きい」のです。

回答

「pT1b(8mm), pN0, luminal A(NG1より推定)」
⇒十分すぎるほどの「low risk」であり、再発(しかも早期再発)など心配する必要は全くありません。
 
「ⅠCTPが5.5と、基準値を超えておりました。ちなみに術前は4.0でした」
⇒全く無意味な数値です。
 担当医の「こんなの気にしなくてよい」に完全に同意します。
 
「先生はこのマーカー値を見た場合、どのようにお考えになりますか?」
⇒冒頭でコメントした通りです。
○私が提案できるとしたら、腫瘍マーカーは「CEAとCA15-3」だけにしましょう。
 『ICTPだのNCC-ST439などの測定は無駄だから(しかも無用の心配の素になるのであれば、尚の事)辞めましょう』