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20代の患者の予後

[管理番号:2379]
性別:女性
年齢:28歳
こんにちは。
毎日、こちらのQ&Aを拝見しております。
私は昨年、右胸の全摘手術をうけました。
腫瘍は20mm、ステージ2A、
リンパ節転移2個、ルミナールAです。
現在、タモキシフェン+ゾラデックスを始めて4ヶ月目です。
若年性、特に35歳以下だと予後が悪い、とはよく聞きますが、これは若年性乳癌に遺伝性のトリプルネガティブが多いために無再発率を押し下げているからだ、と聞きました。
一方で、若年者(のトリプルネガティブ)は抗がん剤が奏功し易いとの情報も散見されます。
では、ホルモン依存であるルミナールAタイプでも、やはり若年(20代)であると予後が悪いのでしょうか。
タモキシフェンにゾラデックスの追加が有効なのも35歳以下と聞きますが、やはり若いとそれだけホルモンの影響が強く、リスクが高まるからなのでしょうか。
あるいは、若年者はホルモン陽性タイプでもプロゲステロンレセプター陰性が多い(プロゲステロンレセプター陰性は予後が悪い)と聞きますが、その影響もあるのでしょうか。
これまでに全摘手術、CMF、放射線とやってきましたが、他に何かできることはないのかと不安です。
遠隔転移が怖くて、エストロゲン値を高めると言われているアルコール、カフェイン、肉、乳製品、卵は一切、くちにしません。
再発リスクのある患者は、どのような心持ちで日々を生活していけば良いのか分かりません。
私が癌と診断されたのは27歳でしたが、しこり自体は23歳からあり、当時の生検の結果は良性でした。
しかし、良性が悪性に変化することは
無いということですので、結局、4年も前から癌があったということですよね。
それを4年間放置して、結局、20mmまで育て、リンパ節に2つも転移するまでになってしまいました。
現在の主治医にも、「初めからうちの病院に来ていれば…」と言われました。
再発率30%という数字にも、(癌の中では予後が良いとはいえ)落ち込みますし、10年後以降もこの数字が更に下がることを考えると、20代で診断された超(?)若年性乳癌で、リンパ節転移までいってしまっていたら、寿命を全うすることは稀なのでしょうか。
こんな状態になってしまっても、妊娠・出産への希望をも断つことが出来ず、遠隔転移に怯えて暮らすのも疲れましたが、明るく過ごしてまたどん底に落とされるかと思うと、怖くて積極的にもなれません。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1c(20mm), pN1, luminalA
タモキシフェン+LH-RHagonist中ですね。
「若年性、特に35歳以下だと予後が悪い、とはよく聞きますが、これは若年性乳癌に遺伝性のトリプルネガティブが多いために無再発率を押し下げているからだ、と聞きました。」
⇒これは正しい理解です。
 ただし、あくまでも一昔前のデータであることに注意が必要です。
 現在は「乳癌発症自体が増加(ホルモン環境の変化が原因)」しているため「発症年齢自体が、非常に若年齢化」しています。
 それに伴い現在では「35歳以下の乳癌に占めるトリプルネガティブの割合は低下している」と思われ、結果、全体として「若年性が予後は悪い」という考え方自体古くなってきています。(私の感覚でも同様で、10年前なら若年性乳癌というだけで警戒しましたが、今では20歳代後半~30歳代前半でも普通の乳癌にしか感じません)
 
「一方で、若年者(のトリプルネガティブ)は抗がん剤が奏功し易いとの情報も散見されます。」
⇒この手の情報は「眉唾もの」なので、あまり信用し過ぎない様にするべきです。
 大規模臨床試験などと違い、「小規模での経験」はあてにならないのです。
 
「ホルモン依存であるルミナールAタイプでも、やはり若年(20代)であると予後が悪いのでしょうか。」
⇒全く無関係です。
 「ホルモン環境による若年齢化」にすきません。
 
「タモキシフェンにゾラデックスの追加が有効なのも35歳以下と聞きますが、やはり若いとそれだけホルモンの影響が強く、リスクが高まるからなのでしょうか。」
⇒「リスクが高いから効果がある」ではなく、「卵巣の働きが強い」から(その抑制効果が)「顕著に出やすい」と考えられます。
 
「あるいは、若年者はホルモン陽性タイプでもプロゲステロンレセプター陰性が多い(プロゲステロンレセプター陰性は予後が悪い)と聞きますが、その影響もあるのでしょうか。」
⇒考え過ぎです。
 
「これまでに全摘手術、CMF、放射線とやってきましたが、他に何かできることはないのかと不安です。」
⇒他にはありません。
 むしろ「余計な情報に過度に触れずに」健康的な生活を送る事です。
 昨年手術ということですが、「数年すれば」過去の話になっていきます。
 
「遠隔転移が怖くて、エストロゲン値を高めると言われているアルコール、カフェイン、肉、乳製品、卵は一切、くちにしません。」
⇒偏った食生活は(ストレスの面でも)あまり良くはないと思います。
 乳癌学会の見解では「食生活に殆どエビデンスは無い」のです。
 特に「乳製品や大豆イソフラボン」は却って「乳癌に良い可能性がある」としている位です。
 
「再発リスクのある患者は、どのような心持ちで日々を生活していけば良いのか分かりません。」
⇒ストレスフリーでいることです。
 
「4年間放置して、結局、20mmまで育て、リンパ節に2つも転移」
⇒これは「生物学的に言えば」むしろ「4年間もこの程度」だから、「かなり大人しい(ルミナールAですし)」と言えます。
 一般的な乳癌なら「自覚するしこりを4年間放置」では、もっと進行していると思います。
 その意味では『予後良好因子」と考えても差し支えないでしょう。
 
「再発率30%という数字にも、(癌の中では予後が良いとはいえ)落ち込みます」
⇒何処から出た数字なのか解りませんが…
 「CMF」も「タモキシフェン」もやっているのであれば「10%程度」だと思います。
 
「若年性乳癌で、リンパ節転移までいってしまっていたら、寿命を全うすることは稀なのでしょうか。」
⇒90%は根治してしまいます。
 心配し過ぎです。
 
「こんな状態になってしまっても、妊娠・出産への希望をも断つことが出来ず」
⇒年齢からは、現時点で「LH-RHagonistを中止」すれば、妊娠可能となる確率が高いと思います。
 勿論、LH-RHagonistとタモキシフェンを5年位行ってから「妊娠、出産」⇒その後タモキシフェン5年投与でもいいです。
 
「遠隔転移に怯えて暮らすのも疲れましたが、明るく過ごしてまたどん底に落とされるかと思うと、怖くて積極的にもなれません。」
⇒気持ちは解りますが…
 時が解決するので、心配ありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

 
 
*「再質問管理番号」「再質問タイトル」が未入力でしたが、内容から、このページに追加しています。
このページの
「再質問管理番号」は 2379
「再質問タイトル」は 20代の患者の予後
です。
ホームページ管理者
 
 
********
こんにちは。
毎日、田澤先生のQ&Aを拝見しております。
先般は、質問に御回答頂きまして、ありがとうございました。
私は、27歳で乳癌になりましたが、いわゆる遺伝性が多いと言われるトリプルネガティブではなく、親族に癌は一人もおらず、なぜこんなに若年で癌になったのか、自分でも不思議です。
思い当たる節があるとすれば、4年前から良性腫瘍(と当時の生検で診断されました)があったことと、そのしこりが今回そのまま、癌だったと診断されたことです。
4年前の生検が誤診だったのか、良性腫瘍の中から新たに癌が生まれたのかは分かりません。
とある本を読むと、乳房に良性の腫瘍がある場合は乳癌になるリスクが高いと書いてありました。
一方で、良性腫瘍から悪性腫瘍に変化することは有り得ないと聞きました。
ではなぜ、乳房に良性腫瘍があると乳癌のリスクが高いと言われるのでしょうか。
良性腫瘍も、エストロゲン過多で生じるものだからでしょうか。
また、私には子宮筋腫もあり、こちらもやはりエストロゲン過多が原因だとのことです。
エストロゲン過多というのは、体質でしょうか。
自分で、生活を変えることで、エストロゲンのバランスを整えることは可能なのでしょうか。
運動不足だと過多になる、とは聞いたことがあり、確かに運動は全くと言って良いほどしていないので、それも関係あるのではと思ったりしています。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「乳房に良性の腫瘍がある場合は乳癌になるリスクが高いと書いてありました。」
「一方で、良性腫瘍から悪性腫瘍に変化することは有り得ないと聞きました。」
「ではなぜ、乳房に良性腫瘍があると乳癌のリスクが高いと言われるのでしょうか。」
⇒これは「乳腺症があると、乳癌になり易い」という「言い伝え」と同様だと思っています。
 要は「本当は癌」なのに「乳腺症と診断しているだけ」のものが、「将来、乳癌と診断されるだけ」だと思います。
 つまり「きっちりとした診断」であれば、「本来無関係」でしょう。
 
 ★ただし、一つだけ「例外」があります。
 「乳管内乳頭腫」です。
 これは「乳管内の良性病変」ですが、「同一乳管に、乳管内病変が出現し易い」事実があり、その「乳管内病変の中に乳癌も入っている」のです。
 
「エストロゲン過多というのは、体質でしょうか。」
⇒体質もあります。
 ただし、「エストロゲンレベル」はホルモン環境によって「大きく変化する」ものなので、「自分で、生活を変える」という方法は合理的です。