[管理番号:4106]
性別:女性
年齢:38歳
温存手術後に断端陽性で追加切除をしました。
自分の癌の事を理解したく、お力をお借りしたいのでよろしくお願いします。
【病理診断】
浸潤性乳管がん、充実腺管がん、最大浸潤巣10x10mm、ly-,v-
,n:2,m:1,dictaphone emxtention+,margin positive #14.15.18
【所見】
1-10本体、1-3,5,7-10でcarcinomaが見られる。
duct内進展が目立つ浸潤性乳管がんで多発して認められる。
2.3.5.7ではduct内増生とともに間質に索状となって浸潤。
2が6x3mm,3が10x10mm,5が6x4mm,7が9x9mm。
圧排性。
神経内分泌への分化疑い。
1,8-10ではduct内進展。
篩型に増生、壊死を伴う。
11-14 尾側追加切除 14でduct成分とinvasive成分。
陽性。
15-16 乳頭側断端 15に2箇所のdcis成分。
陽性。
17-18 頭側断端 disc成分疑い。
19-20 尾側断端 cacinoma見られず。
乳がん告知時に、全摘出同時再建を希望し東京の病院に行くと伝えると、軽度の乳がんなので全摘出の必要はなく、温存手術とホルモン療法のみで放射線治療も不要との事でした。
放射線治療が標準治療である事を確認すると、大変大人しいタイプだし広く切るから放射線治療も全摘も不要との説明でした。
広く切ったはずが追加切除となり、再度、放射線治療と全摘の必要性を確認しましたが「本当に不要」との回答で、
また「広めに」追加切除をして現在病理診断待ちです。
1. 所見に「多発」とありますが、同一乳管内か否か判断出来ますか?
2.duct成分とdisc成分が混在しているのですか?
disc成分は切除前に範囲が確定出来るのでしょうか?
広めに切っても、どこまで広がっているのか分かるのでしょうか。
3.11-14の追加切除部分が陽性でも、19-20の尾側断端が陰性なら、その方向は切り取れたという事でしょうか。
4.主治医から「乳癌は乳頭の方に伸びるから」と説明されましたが、尾側も頭側も乳頭側も陽性という事は、どの方向にでも伸びるという事ですか。
5.「乳がんは繋がって伸びて行くからアチコチに飛んでいかない。
なので外科手術で広めに切りとれれば大丈夫」と言われましたが、私の病理診断は それを示していますか?
以上、大変お忙しい中 恐縮ですが、ご回答よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「どういう画像所見なのか?」不明な状況で回答するわけですから、あくまでも「病理所見だけからのコメント」にすぎないことをご理解ください。
pT1b(10mm)であり、NG1(nuclear atypia:2, mitotic couuts:1)ということで「早期で大人しい」ようですが、「乳管内進展が目立ち、複数の浸潤巣を伴う」タイプであることに注意が必要です。
「大変大人しいタイプだし」
⇒これには同意します。
「広く切るから放射線治療も全摘も不要」
⇒これには「反対」です。
なぜなら、「大人しい」ことと「拡がり」は全く別の次元であり、「大人しいから温存可能」とか「大人しいから放射線不要」という考え方はリスキーだからです。
今回の病理所見を診る限り、「乳管内進展の目立つ多発浸潤巣」であり、結果「殆ど全ての断端が陽性」となっています。
○画像所見を見ていないので(何故、担当医が温存に拘るのか不明ですが)「全摘は選択肢に入れるべき」だし、(もしも温存ならば)「術後照射の省略は考えられない」というのが常識でしょう。
「1. 所見に「多発」とありますが、同一乳管内か否か判断出来ますか?」
⇒病理所見をみる限り、「あくまでも同一乳管(といっても枝分かれするわけですが)内の乳管内進展からの多発=(広い意味の)同一乳管」だと思います。
「2.duct成分とdisc成分が混在しているのですか?disc成分は切除前に範囲が確定出来るのでしょうか?広めに切っても、どこまで広がっているのか分かるのでしょうか。」
⇒質問者の認識は正しいです。
DCIS(非浸潤癌)成分は、画像診断で判断することは困難(だから、温存手術では2cmマージンをとるわけです)です。
「3.11-14の追加切除部分が陽性でも、19-20の尾側断端が陰性なら、その方向は切り取れたという事でしょうか。」
⇒その通りです。
「4.主治医から「乳癌は乳頭の方に伸びるから」と説明されましたが、尾側も頭側も乳頭側も陽性という事は、どの方向にでも伸びるという事ですか。」
⇒「乳頭方向に伸びる」という主治医の判断は正しいのですが…
この場合には「枝分かれ」して、かなりの広範囲に及んでいる様に「病理所見上」思います。
「5.「乳がんは繋がって伸びて行くからアチコチに飛んでいかない。なので外科手術で広めに切りとれれば大丈夫」と言われましたが、私の病理診断は それを示していますか?」
⇒考え方は正しいのですが…
○拡がりが広い場合
究極的には「外科手術で広めに切り取る=全摘」となります。
質問者の場合には(重ねて言いますが、画像診断をしていないので、病理だけの印象ですが…)再温存には勇気がいることです。(我々、執刀医側からすれば)
○再温存で「断端陽性」となったとしても、「放射線照射の省略」は勧められません。