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非浸潤性乳菅癌の追加切除

[管理番号:7781]
性別:女性
年齢:30歳
病名:線維腺腫内に非浸潤性乳菅癌
症状:

数年前から多発性乳腺線維腺腫の経過観察中でした。

その内、乳頭の下らへんのしこりが4×4×2cmと大きく成長したため、針生検後、全麻で摘出手術となりました。
マージンは数ミリとのこと。
(針生検病理結果は、線維腺腫または良性葉状腫瘍の可能性あり)

以下が術後病理の結果です。

#Fibroadenoma.
#DCIS in #1.
問質の増生とともに、軽度過形成変化を呈する乳菅・小葉構造が比較的
密に分布する所見を認めます。
増生する問質の細胞密度はやや上昇していますが核分裂像は目立たず、fibroadenomaの範疇と判断します。
また、#1に約5mmの範囲でDCIS(cribriform type, comedo necrosis+)が見られ、断端にかかっています。
追加切除等ご検討ください。

主治医からは、0期で大人しいタイプの非浸潤性だが癌細胞が少しでも残っている可能性もあるため、造影剤MRIで乳菅内の広がりの評価をしてから追加部分切除を掲示されました。

以下ご意見をお聞きしたいです。

①この場合、追加切除と合わせて放射線治療は必須でしょうか?また、追加したほうがいい検査や治療法はありますか?
②MRIで広がりがなかった場合、追加切除範囲は1cm程度あればいいでしょうか?何cm程度が好ましいですか?
⑤MRIは乳菅内の広がりを正確に判別できるわけではない、それを前提とした手術をすると拝見したのですが、どのような手術になるのですか?非浸潤性か浸潤性も判別は難しいですか?
⑥病理結果からわかる範囲で構いませんので、田澤先生ならどのような方針を薦められますか?

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「全麻で摘出手術 マージンは数ミリ」
⇒せっかくの全麻なのだから…

 マージン「数ミリ」では勿体ないですね。(正直な感想)

「①この場合、追加切除と合わせて放射線治療は必須でしょうか?」
⇒十分なマージンで「放射線照射は省略」でいいでしょう。

「また、追加したほうがいい検査や治療法はありますか?」
⇒ありません。

 「たまたま」癌が端っこに見つかった。
 ただそれだけです。シンプルに考えましょう。

「②MRIで広がりがなかった場合、追加切除範囲は1cm程度あればいいでしょうか?何cm程度が好ましいですか?」
⇒どうせ手術するのであれば…

 大きめに切除(2cm)して放射線は不要がいいでしょう。

「⑤MRIは乳菅内の広がりを正確に判別できるわけではない、それを前提とした手術をすると拝見したのですが、どのような手術になるのですか?」
⇒安全性を考えれば…
 乳頭の裏側まで切除するのです。

「非浸潤性か浸潤性も判別は難しいですか?」
⇒DCISは非浸潤癌(非浸潤性)ですよ。

「⑥病理結果からわかる範囲で構いませんので、田澤先生ならどのような方針を薦められますか?」
⇒大きめの追加切除(2cmマージン)して術後療法(放射線を含め)一切無し。 
シンプルなものです。

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

非浸潤性乳菅癌の追加切除
性別:女性
年齢:30歳
病名:線維腺腫内に非浸潤性乳菅癌
症状:出産経験なし

丁寧にご回答いただきありがとうございました。

追加切除手術が終わり、また改めてご相談です。

大きめのマージンが必要ということでしたが、胸が小さく、空洞の周り1cm(一部、DCISが見つかった乳頭側部分のみ1.7cm)のマージンとなりました。

以下、病理結果です。

No remnant of carcinoma
一部に術後の変化と思われるfibrosisや異物反応が見られます。
背景乳腺にはFA like lesionやblunt duct adenosisといった乳腺症の所見がやや目立ちますが、標本上明らかな悪性所見はありません。

一部に上皮の増生を認めましたが過形成性変化の範疇と判断します。

今後、放射線治療をするかしないか選ぶことになりました。

田澤先生の過去回答にて、以下を拝見しましたが、
「 私の感覚では(生検で取りきれてしまったくらいの)①「2-3mm以下」の②「low grade」であり、③全麻下で「かなりのマージン」を付けた場合には(ガイドラインにはありませんが)放射線の省略は可能と考えています。」
私の場合、
①5mm(断端にかかっていたので、微少は電子メスで焼けてしまった可能性あり)
②コメド型(cribriform type, comedo necrosis+)
③マージン2cmとはいかず、微妙なところですかね。

以下、質問です。

? この場合、放射線治療を勧めますか?それとも省略を勧めますか?
?やはり、low gladeではないということも治療判断に関係ありますか?
?blunt Duct adenosisや過形成性変化の症状は将来的にリスクが多少上がるのでしょうか?

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「? この場合、放射線治療を勧めますか?それとも省略を勧めますか?」
⇒5mmのたまたま見つかった非浸潤癌(しかも追加切除分には、残存無)なら、(私なら)迷うことなく照射省略です。

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

非浸潤性乳菅癌の追加切除
性別:女性
年齢:30歳
病名:線維腺腫内に非浸潤性乳菅癌
症状:

お忙しい中ご回答ありがとうございます。

このようにたまたま見つかった症例や情報がなかなか見つけられなかったのですが、省略可の根拠は何だと考えますか?
普通のDCISの標準治療とは別物だと考えたほうが良いのでしょうか?
また、コメドは関係ないでしょうか?

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

「省略可の根拠は何だと考えますか?」
⇒経験です。

 このようなケース(良性腫瘍の中にたまたま非浸潤癌が「ごく少量」見つかり、
「腫瘍の大きさに対してマージンが十分」)では全て「照射省略」していますが、乳房内再発など一切ありません。