[管理番号:4644]
性別:女性
年齢:71歳
母の代理です。
まとまりのない文章で失礼します。
浸潤性乳管癌(乳頭線管癌由来の硬癌)
(pT1b,f,ly0,v0,NG3,HGⅢ,pN0)
ER-,PgR-, HER2-(スコア0)
乳房扇状部分切除、大きさ0.8×0.6cm、センチネルリンパ節(0/3)、Ki-67 82%
家族歴はないと思います。
昨年12月に検診で見つかり、1月中旬に再検査を行い、1月末がんが確定。
2月中に転移などの検査を行い、3月初旬に手術を行ないました。
発見できたタイミングが早かったため、手術では取りきれたようなのですが、
顔つきの悪いタイプのため、主治医には抗がん剤+放射線治療を行なうよう進められています。
本人も一度は納得し、抗がん剤治療に望む予定でしたが、父が副作用で弱っていくことを恐れて反対し、母も無治療を希望しだしました。
(部分切除は放射線治療ありきだと主治医と私からも術前に説明したにも関わらず、あまりのショックで理解しきれていなかったようで、現在は放射線治療も拒否しています)
71歳という年齢と、バイアスピリン?を服用していたりと持病との兼ね合いも不安視しているようです。
私も可能であれば抗がん剤治療はさせたくないのが本音ですが、せっかく根治の可能性がある今、その機会を無駄にしてしまうのもどうなのかと思っています。
(せめて、放射線治療だけはうけてもらいたいです)
母には後悔のない選択をして欲しく、どうすればよいか分からず、
先生のご助言をいただきたくこの場をお借りました。
1.母のようなタイプで今後無治療を選択した場合、再発・転移の可能性はどのくらいでしょうか?(何年後)
2.できる限り負担の少ない(副作用の少ない)抗がん剤はどの種類になりますか?
3.放射線治療も必ず必要でしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
まず重要な認識が必要です。
「顔つきが悪いタイプ」などという担当医のクダラナイ話はおいておいて・
pT1b, pN0, pStage1
完璧な早期癌です。
一昔前(ほんの15年前)なら、「抗癌剤の話が出る事さえ無かった」まずその認識が必要です。
今回の要点は
1.pT1bではトリプルネガティブでも(化学療法は必須ではなく)「考慮する」にとどまる(NCCNのガイドライン)
2.70歳以上の術後補助療法としての化学療法の効果は証明されていない
以上より、(ご本人な嫌がるのに)化学療法を勧めるのは「誤り」と言えます。
♯このようなケースで「化学療法を無理やり」行って、重篤な有害事象が発生した場合には責任の問題となります。
「1.母のようなタイプで今後無治療を選択した場合、再発・転移の可能性はどのくらいでしょうか?(何年後)」
⇒10年で19%です。
「2.できる限り負担の少ない(副作用の少ない)抗がん剤はどの種類になりますか?」
⇒weeklyPTXです。
「3.放射線治療も必ず必要でしょうか?」
⇒局所療法と全身療法を明確に分けてください。
放射線治療は(全身の遠隔転移再発の予防ではなく)あくまでも「温存乳房内再発の抑性」目的です。
ザックリ言えば…
放射線照射なしでは10年で15%の温存乳房内再発のリスクがあり(放射線照射により、それが1/3となり)5%となります。
○乳房温存術は「術後放射線照射が前提」とした術式なので、「放射線照射は必要」とはなりますが、(私個人の感想を言えば)8mmの癌なので「きちんとした手術が行われていることを前提とすれば」省略してもいいと思います。
実際に、同様のケースであれば、(私であれば)「それでは放射線は省略して、
その替りに暫くは3カ月に1回乳腺超音波をしていきましょう」とします。