[管理番号:4192]
性別:女性
年齢:40歳
左乳房全摘出
浸潤癌 15㎜
乳管内 10~15㎜
トリプルネガティブ
Ki-67 50-60%
センチネル転移なし
リンパ節転移なし
既往 クローン病 (レミケード使用(現在中止))
大腸全摘 小腸も20cm弱切除しストーマーです。
家族歴 なし
術後2週間 初診察時の内容です。
術前検査にて、腫瘍画像が40㎜だった為、部分切除から全摘に変更。
病理検査の結果 浮腫の為40㎜という大きさになっていたそうです。
(全摘の必要性はなかったんだと思いましたが検査するまで分からないことなら、大事を取っての全摘なので致し方ないと納得しております)
トリプルネガティブということで化学療法を行いたいところですが
クローン病を患っており、副作用とのリスクを考慮した方が良いとのこと年明けに腫瘍外来の予約が入っております。
クローン病でトリプルネガティブの罹患者がかなり少ないため
いろいろ調べても自分に該当する情報はなく考える材料も無い為、こちらへ相談させて頂きました。
クローン病治療中にペンタサ・サラゾピリン使用にて膵臓の数値が急上昇し両方とも使用禁止になりました。
現在も採決結果は膵臓数値は正常値の↑100上を推移。
レミケード使用時に1度副作用で発疹・浮腫み発現。
治療中はカロナール・セレスタミンを2錠ずつ服用してから投与するようになりました。
(薬剤に大して弱いような気がするので、この情報を記載させて頂きました)
クローン病は、この2年CRP上昇なし、但し血沈の異常は見られるため慢性的な炎症は完全には治まっていないとのこと。
血液検査では、貧血等はなし、異常値は血沈・Amyのみ。
この2年での入院は急性胃腸炎での脱水症のみ。
1.先生の見解として、クローン病患者への化学療法の効果&リスクはどのようにお考えになられますか?
2.BRCA検査は行うべきでしょうか?
3.予後・再発率は化学療法を行う場合と行わない場合は大きく変わるものでしょうか?
4.腫瘍外来では何を重点的に聞けば良いのでしょう?
5.抗がん剤・放射線治療以外での治療は何かないでしょうか?保険適用外でも可。
6.避けた方が良い食材・積極的に取った方が良い食材等ありましたらご教授下さい。
質問がザックリしており申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1c(15mm), pN0, TN
十分な早期乳癌です。
今でこそ、「トリプルネガティブ」などという概念がありますが、ほんの15年前までであれば、「早期だから無治療ね」という時代が長く続き、そしてそれで「何ら問題なかった(再発率も高くない)」ことを明記しておきます。
○単純に「トリプルネガティブ」であることを騒ぎ立てる(若い)医師がいますが、「ステージこそ重要」であることは決して忘れてはいけないことです。
「1.先生の見解として、クローン病患者への化学療法の効果&リスクはどのようにお考えになられますか?」
⇒「効果」は「クローン病だから」ということは当然なく、(早期だから「上乗せは大きくはない」ながら)唯一の治療法として当然、検討されるべきです。
「リスク」は、一概には言えません。
質問者も認識されているように…
クローン病にも「程度がある」わけです。
これこそ、(腫瘍内科ではなく)「クローン病の担当医」と話し合うべき事です。
♯もしも「クローン病の担当医の許可があれば」
私であれば、「少量投与」から試していくでしょう。(ただ、その間のクローン病の管理も必須となるので、実際にはその病院でしかできないとは思います)
「2.BRCA検査は行うべきでしょうか?」
⇒無意味です。
BRCA変異が解ったからと言って(それを知りたい女性の近親者がいるなら話は別ですが)ご本人にとって何の意味もありません。(治療に影響しないから)
「3.予後・再発率は化学療法を行う場合と行わない場合は大きく変わるものでしょうか?」
⇒ソフトで調べると…
再発率は9%の違いがあり、10年生存率では4%の違いがあります。
「4.腫瘍外来では何を重点的に聞けば良いのでしょう?」
⇒あまり大した意味はないと思います。
「このようなbenefitがありますが、一方でこのようなriskがあります。最後に決めるのはあなたです」と言われるだけだと思います。
「5.抗がん剤・放射線治療以外での治療は何かないでしょうか?保険適用外でも可。」「6.避けた方が良い食材・積極的に取った方が良い食材等ありましたらご教授下さい。」
⇒ありません。
★重要なのは「クローン病の状況」です。
「クローン病の主治医の協力(抗がん剤中のクローン病の状況把握のための)」こそが重要です。