[管理番号:4124]
性別:女性
年齢:39歳
田澤先生
義姉が7月に乳がん、トリプルネガティブと診断されて以来、
田澤先生の患者さんに向き合う真摯な姿勢と、
この乳がんQ&Aに家族一同、幾度となく救われています。
ご多忙を極める中、このような素晴らしいサイトを運営してくださり、
感謝しても仕切れない思いです。
今回、田澤先生がいつも否定的に捉えられている、
術前化学療法(温存目的外)を受けているにもかかわらず、
このようにご相談させていただくことをお許しください。
義姉が乳がん、トリプルネガティブです。
術前抗がん剤治療中ですが、
Fec投与4クール無事に完遂後、
原発腫瘍 1.3cm →6mm
液化リンパ 1.2cm →改善ほとんど正常の形態
胸骨傍リンパ 0.7cmの影 →消滅
という結果がでました。
胸骨傍リンパの影については、私は常に懐疑的でしたが
(田澤先生のQAを拝見しても、原発腫瘍1cm強で胸骨傍リンパ節に転移は珍しいとのことで)
ですが、抗がん剤治療より消滅したということは、
そこはやはり癌の転移だったのだろうと思います。
そして、10月上旬より、ウイークリーパクリタキセルの投与をしており、
現在10クール目なのですが、今になり、
主治医より、
腫瘍がわずかであるが大きくなっている可能性があり、
血流も復活している可能性がある、
また、胸骨傍リンパ節の影もまた復活した(1mm)とのことでした。
タキセル投与完了後に手術を予定されていましたが、
手術が早まることになり、来週全摘手術を受ける予定です。
手術が早まるのは結構なのですが、
この状態をどう考えるべきなのか。
Fecは奏功したが、パクリタキセルは効かなかった。
あるいはFecが奏功しなかったから、癌細胞がたたききれずに、今、また活性化している。
微細な癌細胞が全身を回っており、再発のリスクが高まったのではと心配しておいります。
手術さえ成功すれば放射線治療により、胸骨傍のリンパ節の「影」もコントロール可能でしょうか。
Fecが奏功していると思えた時は、完全奏功も夢ではないかと思っていたのですが・・・・。
これから進むべき道、考え方をご教授いただければと思います。
最後に。
ご多忙を極める中、診察・手術・検査・サイト運営、
お体がいくつあっても足りないのではと心配しています。
どうかお体ご自愛ください。
そして迷える乳がん患者・その家族の心をお救いください。
本当に本当にありがとうございます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
質問者も認識されているように、「全く何のための術前化学療法なのか?」理論的な欠陥があります。
今更「①有効な抗ガン剤が解るから」とか「②まずは全身に知らばっているかも知れない癌細胞を叩く」みたいなクダラナイ理由を(担当医は)つけているのでしょうが、そのようなことに(ワザワザ)コメントする事にも、少々辟易気味です。
①⇒術前術後に使用できる薬剤は「アンスラサイクリンもしくはタキサン」に厳密に制限されている(効かないから替えるという選択肢そのものが無い)
②⇒腫瘍細胞を(手術せずに)身体に置いておくことで(効かないかもしれない抗がん剤中に)新たに、全身へ拡がってしまうリスクや、(局所が進行して)「手術そのものが不完全となる、場合によっては手術不能となる」リスクがある
「胸骨傍リンパの影については、私は常に懐疑的でしたが抗がん剤治療より消滅したということは、そこはやはり癌の転移だったのだろうと思います。」
⇒その評価そのものが怪しいものです。
胸骨傍リンパ節の評価は難しいのです。(滅多に所見がないから)
きちんと担当医自らが超音波しているといいのですが…
「これから進むべき道、考え方をご教授いただければと思います。」
⇒物事はシンプルに考えましょう。
術前抗がん剤の効き方で「予後を占う」など、全く根拠がありません。
♯「pCR(完全寛解)となれば、予後が良い」など全く当たり前の事で、そんな事を引き合いに出す意味がありません
普通に手術をして(胸骨傍リンパ節については画像を見ていないので、本当かどうか解りませんが)必要な治療をするだけです。
○「アンスラサイクリンが効いた」とか「パクリタキセルが効かなかった」など何の意味もありません。
本来は「術後療法としてアンスラサイクリンとタキサンをきちんと行う」ことこそ、エビデンスがある治療なのです。