[管理番号:4048]
性別:女性
年齢:45歳
初めて質問させて頂きます。
とても不安です。
よろしくお願い致します。
11月左乳房部分切除+センチネルリンパ生検
病理結果
大きさ 1.0 (術前エコーでは、1.3×1.4×1.0)
グレード2
リンパ管侵襲 軽度あり
血管侵襲 なし
リンパ節転移 なし
センチネルリンパ生検 0/4
トリプルネガティブ
手術後 放射線治療がはじまりました。
子供がまだ小さいこともあり、私は術後抗がん剤を希望しました。
主治医は「再発の可能性2~3%。
10年生存率96%。
抗がん剤は必要ない。
グレード3だったらする。
これで抗がん剤をしたらびっくりされる。」とのことでした。
私としては、抗がん剤を強く希望しています。
ネットで見る限りでは、トリプルネガティブの早期がんでも、抗がん剤をしていない例は見つけられません。
左乳がんが見つかった時、右にも触診で1cmくらいのしこりがみつかりました。
右は石灰化なし、エコーにも造影CTにもうつらなかったようです。
右は生検もしていません。
もしかして、今後 右のしこりが大きくなって、生検して、悪性だった場合手術をしたあと、抗がん剤を使用する為に今はしないという方法はありますか?
私の場合の標準治療は、術後抗がん剤なしになりますか?
先生でしたらどのような抗がん剤をすすめますか?できれば詳しくお教えください。
私としては、抗がん剤を受けるために転院したほうがいいのか迷っています。
転院先が標準治療の場合、私は抗がん剤がうけられますか?
私の場合の抗がん剤をする場合としない場合の 10年生存率 再発率はどの程度になりますか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1b(10mm), pN0
十分な早期癌であり、(トリプルネガティブだから心配している気持も解りますが)
実際には「再発低リスク」です。
担当医は「再発低リスク」だから抗癌剤は不要という考えのようですが、(その気持ちも解りますが)術後療法の原則は『リスクではなくサブタイプに応じた治療』なのです。
NCCNのガイドライン(トリプルネガティブ)では
腫瘍径≦5mm 無治療
5mm<腫瘍径≦10mm 化学療法を考慮する
10mm<腫瘍径 化学療法が必須
以上となります。
○その意味で質問者は「化学療法を考慮する」とはなりますが(つまりNCCNのガイドラインでは化学療法は必須とは言えない)、日本の標準療法としては「5mm以上なら化学療法は必須」となります。
「抗がん剤は必要ない。グレード3だったらする。これで抗がん剤をしたらびっくりされる。」とのことでした。」
⇒この認識は誤りです。
「抗ガン剤を提示しない」方が、明らかに「びっくりされる」ことです。
「私としては、抗がん剤を強く希望しています。」
⇒「適応があり」「患者さん側からも希望がある」のに対し、反対するのは「誤り」と言えます。
「右は石灰化なし、エコーにも造影CTにもうつらなかったようです。右は生検もしていません。」
⇒エコーで見えない限りは「経過観察で十分」です。
「もしかして、今後 右のしこりが大きくなって、生検して、悪性だった場合手術をしたあと、抗がん剤を使用する為に今はしないという方法はありますか?」
⇒考え過ぎです。
「私の場合の標準治療は、術後抗がん剤なしになりますか?」
⇒抗ガン剤の適応です。
「先生でしたらどのような抗がん剤をすすめますか?できれば詳しくお教えください。」
⇒トリプルネガティブの抗ガン剤はgold standardとして「アンスラサイクリン+タキサン」とはなります。
ただし、pT1b, pN0であると「TCでもいい」とは思います。
♯「アンスラサイクリン+タキサン」具体的にはEC(1/3週)x4回⇒PTX(毎週)x12回 は「半年間」かかります。
それを厭わないのであれば標準療法と言えます。
それに対しTCは3カ月なので、「トリプルネガティブでも、超早期」となると候補に挙がります。(最終的にはご本人次第です)
「転院先が標準治療の場合、私は抗がん剤がうけられますか?」
⇒そうなるでしょう。
「私の場合の抗がん剤をする場合としない場合の 10年生存率 再発率はどの程度になりますか?」
⇒
10年生存率 | 再発率 | |
無治療 | 93% | 17% |
化学療法 | 95% | 9% |
質問者様から 【質問2】
再質問です。
前回は、早々に明確なご回答を頂きありがとうございました。
主治医に再度繰り返し強く抗がん剤を希望しました。
主治医は基本的には、癌がとんでないのに抗がん剤は必要ないとの考えがあり、「じゃ内服でもいこうか」と言われましたが、これまでの田澤先生のQ&Aで、内服はトリネガの術後化学療法の標準治療ではないのではないか?と私は思いました。
そこで、「するならがっつりしてほしいです。」と伝え、1月に静脈ポートを入れ、抗がん剤を開始することになりました。
主治医は「じゃ3か月のやつにしよう。
何にしようかな?」とのことでした。
私としては、3か月なら前回田澤先生にご回答頂いたTCが良いのではないかと思っております。
これから主治医が提案してくる内容が標準治療であるのかを知る為にTC療法について理解を深めたいと思います。
TC療法にはいくつか種類があるものなのでしょうか?
TC療法について、具体的に薬剤の名前、クールなどお教えいただけますか?
他に3か月で行うトリネガ初期の術後抗がん剤はありますか?
たとえば、ACだけ、WEEKLY PTXだけ、なども考えられますか?
田澤先生でしたら、やはりTCを勧めますか?
いろいろ調べておりましたらうそか本当かタキサンが一部の腫瘍を逆に大きくするという情報がありました。
田澤先生はこれについては、どうお考えですか?
極軽度の不整脈があり、最低量のタンボコール50mg 1/2錠を頓服で内服しています。
ほとんど飲んでいません。
気をつけるべき副作用がありますでしょうか?
よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「TC療法にはいくつか種類があるものなのでしょうか?」
⇒1つです。
「TC療法について、具体的に薬剤の名前、クールなどお教えいただけますか?」
⇒T:ドセタキセル 75mg/m2
C:エンドキサン 600mg/m2
これを3週間に1回で計4回です。
「他に3か月で行うトリネガ初期の術後抗がん剤はありますか?たとえば、ACだけ、WEEKLY PTXだけ、なども考えられますか?」
⇒アンスラサイクリン単独として「ECもしくはAC」です。
♯weeklyPTXのみは標準治療ではありません。
「田澤先生でしたら、やはりTCを勧めますか?」
⇒その通りです。
「いろいろ調べておりましたらうそか本当かタキサンが一部の腫瘍を逆に大きくするという情報がありました。」「田澤先生はこれについては、どうお考えですか?」
⇒「ごく少数例の報告」など気にしないことです。
「気をつけるべき副作用がありますでしょうか?」
⇒不整脈とは無関係ですが…
TCの副作用としては
投与翌々日夕からの「全身倦怠感+筋肉痛」(場合によっては薬疹)
投与10日~14日目からの「脱毛」
2クール目もしくは3クール目からの「痺れと浮腫み」(これが終了後、改善しながらも半年程度継続します)
質問者様から 【質問3】
田澤先生、先日はご回答ありがとうございました。
術後、化学療法はTCかなと思っていましたが、主治医から2週間に1回で計6回のAC療法を提案され、はじまりました。
今のところACのみの予定になっております。
先月ACを1回投与し、2週間後に2回目の予定でしたが、白血球が2300とのことで中止。
また2週間後に血液検査をしてから決めましょうとのことでした。
初回アドリアシン40mgエンドキサン400mgを投与しました。
私の身長157cm体重52㎏です。
この投与量は適量と言えますでしょうか?
最初、主治医はアドリアシン30mgエンドキサン300mgにしようかな?とおっしゃっていました。
次回、主治医から1回量を減らす提案があった場合、どれくらい迄の減量なら、再発予防の効果を維持できますか?
また術前からある 触った感じ1×1cm程のしこりについては、私の希望で再度エコーを(検査技師さんにより)行い、3.6㎜ののう胞と言われました。
主治医はエコーをしません。
その後医師はそんなに心配ならと注射器をつけた針を、私を座らせたまま触診で刺して、極少量の(たぶん0.1~0.2cc程)の薄黄色の液をとり、細胞診に出しました。
結果、細胞はとれてなく、液のみとのことでした。
この場合もし悪性なら液の中に細胞が混じっていて発見されるものなのでしょうか?
治療を続けながら不安も続いています。
どうぞご教示くださいますよう宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「主治医から2週間に1回で計6回のAC療法」「回アドリアシン40mgエンドキサン400mgを投与」
⇒通常のAC療法であれば、60mg/m2 600mg/m2なので(質問者では)90mg,900mgとなります。ただし3週間に1回です。
上記を(3週間に1回ではなく)「2週間に1回で行うことをdose dense」といいます。
「次回、主治医から1回量を減らす提案があった場合、どれくらい迄の減量なら、再発予防の効果を維持できますか?」
⇒通常の量とは異なります。全くコメントできません。
「3.6㎜ののう胞」「主治医はエコーをしません。」「私を座らせたまま触診で刺して」
⇒これも「私の想像の範囲」を遥かに超えています。
「エコーガイド」でない細胞診など、「ありえない」
とても信頼できません。
ただ、(技師さんのエコーとはいえ)「3.6mmの嚢胞」と言う所見なら心配しなくてもいいと思います。
「この場合もし悪性なら液の中に細胞が混じっていて発見されるものなのでしょうか?」
⇒「触診で行う細胞診」など、そもそも「信頼に値しない」ということです。
質問者様から 【質問4】
前回も明確なご回答を頂き大変感謝しております。
心苦しかったのですが、同じ病院の別の医師にみて頂くようになりました。
新しい主治医から病理を日本語にした結果を頂きました。
1.2cm 硬癌 組織学的悪性度Ⅱ
リンパ管にがん細胞が入っていたが、リンパ節転移なし(2個中0)
トリプルネガティブ
乳管内に広がる(ほとんどは乳管内の乳がんで浸潤部分は3mm)
ki67は調べていないので不明
今までの経過をふまえ、ecなら心毒性がないので沢山いけるとのことで、エピルビシン75mg/m2 シクロホスファミド600mg/m2を行うことになりました。
今回、浸潤部分は3mmとのことで、術後抗がん剤の適応は変わりますでしょうか?
医師はacを1回しているので、ecは3週ごと3回と計画しています。
医師は、抗生物質やジーラスタも使いながら80%を目指しましょうとおっしゃってくださいました。
前回のacから初回のecまで5週間あくことになります。
私のような場合田澤先生でしたら、ecは3回にされますか?4回にされますか?
そして、やはりトリプルネガティブのゴールデンスタンダードのアンスラ+タキサンをおすすめになりますか?
もし、追加でタキサンをするとしたら3週おきに4回になるようです。
これは、標準治療といえますか?
田澤先生のご回答から学び、悔いのない治療を選択したいと思っております。
どうぞ、ご教示くださいまうよう宜しくお願いいたします。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
前回まで「大きさ1.0cm」という記載からのお話であり、まさか『ほとんどは乳管内の乳がんで浸潤部分は3mm』などとは想像していませんでした。
「抗がん剤をしてはいけない」とはいいませんが、
過去に掲載したように3mmであれば無治療となります。
(参考までに)
NCCNのガイドライン(トリプルネガティブ)では
腫瘍径≦5mm 無治療
5mm<腫瘍径≦10mm 化学療法を考慮する
10mm<腫瘍径 化学療法が必須
「今回、浸潤部分は3mmとのことで、術後抗がん剤の適応は変わりますでしょうか?」
⇒上記コメント通りです。
浸潤径3mmであれば、一番最初のメールの『これで抗がん剤をしたらびっくりされる』という担当医の真意も了解できます。
質問者様から 【質問5】
田澤先生、先日もご回答ありがとうございました。
このようなQ&Aの場をご継続してくださって大変感謝しております。
こころの支えになっております。
現在ECを3週間ごとに4回、ドセタキセルを3週ごとに3回まで終えました。
術後半年経ちましたので、検査を希望し、まだドセタキセルの投与中ですが、胸部x-P、エコー、血液検査を行いました。
レントゲンとエコーでは問題なし。
エコーは検査技師さん施行。
腋窩リンパ 鎖骨周辺のエコーはされませんでした。
医師が診察の都度触診をしてくださっています。
腫瘍マーカーについて質問させてください。
術前 術後2か月 術後半年
CEA 1.3 1.6 2.5
CA15-3 4.3 3.1 9.1
NCC-ST439 0.6 0.3 0.6
上記術後2か月は放射線治療後の抗がん剤投与前。
術後半年はドセタキセル1回投与後でした。
受診している病院のCA15-3の基準値は30以下です。
CEAとCA15-3の上昇が気になっています。
主治医は全く気にならないとおっしゃっていましたが、私の希望で次回4回目のドセタキセルの投与のとき(前回のマーカーから6週間後)に、マーカーの再検査をしていただくことになりました。
どの程度CEA CA15-3の上昇がみられたら、再度マーカーを検査、もしくはCTなどをすべきでしょうか?
また術後 化学療法中に上昇するということは効果がないということでしょうか?
このQ&Aで腫瘍マーカーで検索して、いくつか読みましたが私の基準値が低いようなので数値の上昇をどのようにとらえてよいか戸惑っています。
田澤先生はどのようにお考えになられますか?
どうぞご教授くださいますようお願い申し上げます。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
腫瘍マーカーのこの値の動きは全く(私には)気になりません。
「どの程度CEA CA15-3の上昇がみられたら、再度マーカーを検査、もしくはCTなどをすべきでしょうか?」
⇒基準値を超えた(30以上)場合に、翌月再検でいいです。
「私の基準値が低いようなので数値の上昇をどのようにとらえてよいか」
⇒「(自身の)基準値が低い場合」でも(その数値の)「正常範囲内は全く気にしない」ようにしましょう。