[管理番号:2239]
性別:女性
年齢:39歳
田澤先生初めまして。
お忙しいところ恐縮ですが、宜しくお願い致します。
昨年の12月15日に自己チェックのため、乳頭を絞ってみるとの左の乳頭の1ヶ所から薄茶色の分泌物が出ました。
12月25日に乳腺科を受診しました。
担当医は日本乳癌学会認定医・乳腺専門医の方のようです。
エコーとマンモグラフィーをして
分泌物は試験紙のようなものにつけて、少しだけ血液反応があると言われました。
マンモグラフィーには何も写らず、エコーに小さなしこりのようなものが二ヶ所写りました。
MRIをしてその結果でマンモトーム生検するかどうか決める事になりました。
そして先日MRIの結果が出て、
経過観察して6ヶ月後にまたエコーとマンモをしましょうと診断されました。
その時に頂いた紙には下記のような事が書かれていました。
【乳房MRI・MR造影
初回乳房MRI 左乳腺所見の精査
脂肪性乳房 背景乳腺の増強効果:minimal
小結節状増強域:陰性
最終月経開始後9日目
1.左乳腺AB、D領域にfocus5mmがあり、T2WI高信号、造影後はfast-persistentの増強パターンを呈している。
線維腺腫等良性変化を疑う。
2.右乳腺には明らかな異常を認めない。
Impression
# 左AB、D域focus
良性を疑いますが、念のためfollow upが望ましいと考えます。
(BI-RADA 3)】
そこで質問させて下さい。
①乳頭1ヶ所からの分泌物の場合、乳癌か乳管内乳頭腫の二択だと思っていたのですが
乳管内乳頭腫という説明はなく 線維腺腫等良性変化を疑うと書いてありました。
MRIで線維腺腫と乳管内乳頭腫の区別はつきますか?
単孔性血性乳頭分泌の原因は別にあり、今回のMRIで写らなかったという可能性はありますか?
②左乳腺AB、D 域とありますが、複数の病変があるという事でしょうか?
乳管内乳頭腫が複数存在する患者では、乳がんのリスクが高くなる可能性があるとの事なので不安です。
③田澤先生のコラムなどを読んで、乳管腺葉区域切除して病理検査するのが一番だと思いました。
乳管造影する事も大切だと知りました。
メディカルプラザ市川まで遠い事と小さい子供がいる為、通うのは大変だと覚悟はしていますが田澤先生に乳管造影をお願いしたいです。
乳管造影する際に、マンモやMRIなどの検査が必要ですか?
通っている病院にセカンドオピニオンしたいと言い出しづらいです。
現在は強くしぼると薄黄色の分泌液が出る状況です。
初診の時に乳管造影をお願いする事は可能でしょうか?
以上3点です。
お忙しいところ恐縮ですが、宜しくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
単孔性血性乳頭分泌ですね。
年齢を併せて考えると「乳癌よりは乳頭腫の可能性が高い」とは思いますが、「乳管内病変を疑う」所見です。
このような分泌を(乳管造影せずに)MRIで診断するというのは、困ったものです。
「左の乳頭の1ヶ所から薄茶色の分泌物」
⇒「乳管内病変を疑う所見」です。
「担当医は日本乳癌学会認定医・乳腺専門医」「分泌物は試験紙のようなものにつけて、少しだけ血液反応」
⇒この「分泌液、潜血反応」は意味がある検査なのでしょうか?
「血液が混じってますね」で、やはり終わりのようです。(何のための検査???)
「エコーに小さなしこりのようなものが二ヶ所写りました。」
⇒乳管内病変の可能性が高いと思います。
「MRIをしてその結果でマンモトーム生検するかどうか決める」
⇒MRIに頼り過ぎです。
きっと、MRIは自らの手間をかけることなく(オーダーすればレントゲン技師が撮影してくれます)とっても「都合のいい検査」としての位置付けとしているようです。
ただ、「少なからず、それで痛い目にあっている筈」ですが、「MRIで癌が疑われなかったから…」という『誤診の際の免罪符』としての役割も果たしているのでしょう。
「そして先日MRIの結果が出て、経過観察して6ヶ月後にまたエコーとマンモをしましょうと診断」
⇒「単孔性の血性分泌」があるのに、「表面上の画像診断だけ」で経過観察とするなど、なんとも困ったものです。(自分の家族でも、そのような診療をするのでしょうか?)
「①乳頭1ヶ所からの分泌物の場合、乳癌か乳管内乳頭腫の二択だと思っていたのですが乳管内乳頭腫という説明はなく 繊維腺腫等良性変化を疑う」
⇒そもそも「MRIで乳管内病変(乳頭腫や、小さな非浸潤癌など)のような微妙な病変の診断などできません」
「MRIの画像所見には限界がある」のは当然として、
★一番の問題は担当医が『単孔性の血性乳頭分泌を説明できているのか?』となります。(専門医の存在理由は、そこにあると思います。MRIをオーダーして、その診断名を告げることは誰にだってできるのです)
厳しい事を言うようですが… 「MRIで線維腺腫の診断だから…」では残念ながら、あまりにも稚拙であり「乳腺専門医の資格があるのか?」甚だ疑問に思います。
「MRIで線維腺腫と乳管内乳頭腫の区別はつきますか?」
⇒できません。
「単孔性血性乳頭分泌の原因は別にあり、今回のMRIで写らなかったという可能性はありますか?」
⇒その可能性は考えなくてはなりません。
そのためにも「乳管造影」を行って、「分泌乳管の走行」と「超音波で見える腫瘍」の位置関係をみるべきなのです。
「②左乳腺AB、D 域とありますが、複数の病変があるという事でしょうか?」
⇒全く別の「乳管系」で「たまたま乳管内病変が別々に存在」するというのは確率的に低いと思います。
少なくともそれらのうちの1つは「乳管内病変ではない」と思います。
「乳管内乳頭腫が複数存在する患者では、乳がんのリスクが高くなる可能性があるとの事なので不安です。」
⇒それは勘違いです。
「乳管内乳頭腫が複数」とは、あくまでも「同一乳管内に複数の乳管内病変が発生するなかで乳癌のできる可能性もある」ということです。
質問者のように、全く「別々の乳管系に発生した腫瘍」には当て嵌まりません。
「③田澤先生のコラムなどを読んで、乳管腺葉区域切除して病理検査するのが一番だと思いました。乳管造影する事も大切だと知りました。」
⇒それが「唯一の確定診断」となります。
「乳管造影する際に、マンモやMRIなどの検査が必要ですか?」
⇒MRIは不要です。
「初診の時に乳管造影をお願いする事は可能でしょうか?」
⇒当然です。
どこかの「大病院」みたいに、「それでは検査の日程を決めましょう」だけで終わるのでは、「遠路はるばる受診されて、待たされた」患者さんに失礼だと思います。
○ただ、注意点は
①MP市川駅の予約は土曜日にしてください(金曜日はMP市川駅ではマンモグラフィーの技師が不在となります)
②予約電話の際には「QandAで 乳管造影を依頼していた者です」とお話しください。
③予約は混んでいますが、(前医では半年後と言われた位なわけで、慌てる必要はありません)ご了承ください。