[管理番号:8283]
性別:女性
年齢:38歳
病名:DCIS(術前病理)
症状:なし
投稿日:2020年2月10日
いつも勉強させていただいております。
妻は38歳で20台前半から繊維線種にて定期的にマンモグラフィ、エコーを受けておりましたが、この度マンモグラフィで石灰化の増加を指摘され、細胞診にて悪性疑い→針生検にてDCISと診断されました。
手術担当の病院を紹介されMRIにて広がりを見ましたがわかりにくいとの判断(良性の部分も造影されはっきりわからない)でしたが、執刀医師はマージンを大きくとるので部分切除で大丈夫と言ってくださいましたが、全摘は根治と考え右乳房全摘を選択し、無事手術は終了した段階です。
現在、術後の病理診断待ちの状態ですが2点ほど先生のお考えをお聞かせください。
田澤先生は、非浸潤がんの乳房全摘後のタモキシフェンの投与に関してはリスクとベネフィットがバランスしないとのことで推奨しないお考えであることはQ&Aを拝見させていただき存じ上げております。
日本乳癌学会のBQ15「タモキシフェンは子宮内膜癌(子宮体癌)発症のリスクを増加させるか?」
これに対する学会のステートメントがご存知の通り、以下となっております。
「乳癌術後のタモキシフェン内服により、閉経後女性で子宮内膜癌(子宮体癌)の発症リスクを増加させるが、閉経前女性では子宮内膜癌(子宮体癌)の発症リスクは増加させない。」
この学会のステートメントを拝見しまして、閉経前であれば対側乳房の予防の目的でタモキシフェンの投与は副作用が容認できるのであれば考慮できるのではないかと素人ながらに思いました。
質問としましては、
1.この学会のBQ15のステートメントを先生はどのようにお考えになられておりますでしょうか?
2.チョコレートのう胞の既往がある場合は、タモキシフェンの対側乳房への予防投与はリスクとベネフィットがバランスしないでしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
そもそも「対側の予防のためにタモキシフェン」という考え方に反対です。
それを許容してしまうと、(乳癌でない、一般のヒトが)「予防目的でホルモン療法を行う」という「とんでもない」事態となってしまいます。
☆乳腺外科医のなかに、「全摘後のホルモン療法を(対側予防などで)勧める」人がいることが信じられません。
「1.この学会のBQ15のステートメントを先生はどのようにお考えになられておりますでしょうか?」
→閉経したら(閉経前に投与された分が)影響することは否定できません。
それよりも「有害事象」とは(子宮体癌だけではなく)いろいろ(更年期症状など)あります。(通院や医療経済も含め)
「2.チョコレートのう胞の既往がある場合は、タモキシフェンの対側乳房への予防投与はリスクとベネフィットがバランスしないでしょうか?」
→そもそも「対側予防」というベネフィットを「私は」認めていません。