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今後の治療方針について

[管理番号:2231]
性別:女性
年齢:30歳
始めまして。
一ヶ月前に乳がんの手術を受けたものです。
お忙しい中恐縮ですが、お知恵を拝借したくよろしくお願い致します。
手術による病理検査を含めての結果、
浸潤性小葉癌
腫瘍径 50mm 
luminal A
ER 8
PR 5
HER2 陰性
Ki67=5%
リンパ節転移陽性(10/15)⇒腋窩郭清レベル1
遠隔転移無し
出産経験済(2人)
また、針生検ではリンパ転移無しとなっていたため手術前に主治医との相談の結果、薄く広がった小葉癌とのことで、温存手術をしております。
病理検査の結果を踏まえ、術後に抗がん剤・放射線・ホルモン治療を予定しています。
下記四点を質問させていただきます。
①リンパ節転移15個中10個という状況の中、腋窩郭清レベル1でよいのでしょうか。
レベル2までの郭清をする判断根拠にはなり得ないのでしょうか。
②温存としましたが、リンパ節転移陽性という結果を見ると全摘が望ましかったのかと不安に思うことがあります。
全摘という対応がよかったのでしょうか。
③子供は二人いますが主治医と相談して抗がん剤により閉経しにくくするため、リュープリンを先行して皮下注射しています。
その後、リンパ節転移陽性なので化学療法としてTC療法4サイクルとしていますが、国立がん研究センター監修の本によるとタキサン系をアンスラサイクリン系に上乗せすることで再発予防効果が増す成績があるとされていると記載されておりました。
TAC療法を行うことで、TC療法より良い結果が得られるのであれば、再度主治医と相談したいのですが、田澤先生はどのようにお考えでしょうか。
④生活習慣を改善するため自戒の意味を込めてお聞きしたいのですが、抗がん剤・放射線・ホルモン治療を進めた私の状態での再発率を教えていただきたいです。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT2, pN3, luminalA
「針生検ではリンパ転移無しとなっていた」
⇒これは「誤り」ですよね?
 「リンパ節に針生検した」わけでは無いと思います。
 実際は「画像診断(超音波やCT)ではリンパ節転移無しとなっていた」の誤りだと思います。
 
「①リンパ節転移15個中10個という状況の中、腋窩郭清レベル1でよいのでしょうか。レベル2までの郭清をする判断根拠にはなり得ないのでしょうか。」
⇒リンパ節郭清の範囲は、あくまでも「術前画像診断と術中所見」で決まります。
 おそらく「術前画像所見では転移無」⇒(術中)「センチネルリンパ節生検で陽性」⇒(術中所見でもリンパ節転移所見が著明ではなく)「レベル1郭清」となったのでしょう。
 ♯「レベル1にいくつリンパ節転移があるのか?」は(レベルⅠリンパ節は術中迅速している訳ではないので)解らないのです。
 
「②温存としましたが、リンパ節転移陽性という結果を見ると全摘が望ましかったのかと不安に思うことがあります。全摘という対応がよかったのでしょうか。」
⇒そんな事はありません。
 「リンパ節転移」と「乳腺をどう切除するか?」は全く無関係です。
 
 リンパ節転移が無くても「乳房切除」することもあるし、その逆もあるのです。
 
「TAC療法を行うことで、TC療法より良い結果が得られるのであれば、再度主治医と相談したいのですが、田澤先生はどのようにお考えでしょうか。」
⇒「ルミナールA」ですが「リンパ節転移10個」からすれば「TCではなく、アンスラサイクリン+タキサン」を私なら勧めます。
 ただし、「同時併用(TAC)」ではなく、「順次併用(EC⇒T)」とします。
 ♯同時併用では「有害事象が強く」敢えて「同時併用に拘る必要はない」と思います。(どちらが優れているのかには結論はでていませんが…)
 
「④生活習慣を改善するため自戒の意味を込めてお聞きしたいのですが、抗がん剤・放射線・ホルモン治療を進めた私の状態での再発率を教えていただきたいです。」
⇒40%となります。
 これはあくまでも「タモキシフェン5年、アンスラサイクリン+タキサン」での数字です。
 ○実際には「タモキシフェン10年、化学療法後のLH-RHagonist併用」など行えば、もっと改善すると思います。
 頑張りましょう。