[管理番号:375]
性別:女性
年齢:46歳
3月末にシコリを見つけすぐに町のマンモのある医院を受診しそこの先生に「15,3㍉で乳癌に間違いないと思う紹介状を書くから」といくつかの大きい病院を紹介され県内で2番目に症例数の多い○○○の病院で検査、手術を受けることに決めました。初めから今に至るまで詳しい説明はなくこれでいいのか、私の乳癌の程度はどの程度なのか不安であらぬ想像ばかりして更に不安が増していきます。
検査内容は針生検、CT、MRI、骨シンチを順にしました。針生検は別の先生で受け、細胞がきちんと取れたか顕微鏡ですぐに確認されました。
診断は一週間後の為主治 医の先生からは詳しい説明はなく「大丈夫ですよ。」と言われ帰宅。
一週間後の診断は「おとなしい細胞だと感じます。
針生検をした先生は「悪性の腫瘍と所見にはありますが画像を見るにとてもおとなしい細胞ではないかと思います。他の先生なら再検査と判断するかもしれませんがリスクが高いのでCT,MRI,骨シンチをしてから判断しましょう。」
と言われ検査を進め4月27日にすべての検査を終えました。27日に診察もあり主治医の先生から内臓、骨への転移はありません。と言われましたが初期なのかどの程度のガンなのか説明はなく不安です。
私がシコリに痛みが時々あることワキのリンパ辺りが痛む事を訴えても「気のせい」と軽くあしらわれました。
検査結果を一人で聞きに行ったからでしょうか?診察の時画像など丁寧に見せてもらっていません。
大きさもその先生から聞いていません。
「5月19日に手術、乳房温存手術で取った後はそこを徹底的に叩きましょう。その後の管理はしっかりするから。」との説明のみ。
ベテランの温和な先生といった印象のいい先生でしたが、何か隠されているのかと不安で仕方ありません。
(2015年5月の質問)
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「県内で2番目に症例数の多い」大病院なのだと思います。
医師が沢山いて「主治医とは別の医師」が針生検をしているようです。
説明不足だけでなく「針生検」も大きな問題があるようです。
回答
「初めから今に至るまで詳しい説明はなくこれでいいのか、私の乳癌の程度はどの程度なのか不安であらぬ想像ばかりして更に不安」
⇒明らかな説明不足です。
本来説明されるべきものは
- 病期(ステージ):「腫瘍の大きさ」(質問者の場合には、最初の医院のコメントより20mm以下だと思いますが…)と「(画像上の)リンパ節転移の有無」を合わせて説明されなくてはなりません。
例) 腫瘍は16mm (画像上)リンパ節転移は認めず、ステージ1となります。
- 画像所見(質問者の場合には全身CT, 乳房MRI, 骨シンチ を行っています。)
ここで質問者の場合には「内臓、骨への転移はありません」しか言われていません。
本来なら CTでは 肝臓や肺など内臓転移の有無の他に「腋窩リンパ節の腫脹の有無」の説明も必要です。
また、乳房MRIは「腫瘍の拡がり診断」目的なので『MRIで見ると、腫瘍は限局しているので、温存手術が可能です』という大事な説明が抜けています。
- 腫瘍の性格(サブタイプ)
針生検をした場合には「癌の性格(サブタイプ)」も判明し、これにより「術後療法」が決まります。この説明が無いようです。
ルミナールタイプ(AとBがある)…ホルモン療法が効くタイプ
ハーツータイプ…(HER2遺伝子の増幅を認め)ハーセプチンという分子標的薬が効くタイプ
トリプルネガティブ…ホルモン療法もハーセプチンも効かないタイプ
トリプルポジティブ(この表現は俗称であり、正式には『ルミナールB(HER2陽性)』となります)…ホルモン療法もハーセプチンも「両方効く」タイプ
「他の先生なら再検査と判断するかもしれませんがリスクが高いのでCT,MRI,骨シンチをしてから判断しましょう。」
⇒これは大問題です。 針生検できちんとした「確定診断が得られていない」可能性があります。
これはおそらく「針生検でサンプリングエラー(組織がうまく採取できず)で癌の確定診断となっていない」と思います。
そういう場合には(針生検でサンプリングエラーは普通ありませんが)針生検を再検するべきなのですが、「リスクが高いので?」という理由をつけて「再検をしなかった」ようです。
※CTやMRIで(画像診断による)診断が「確実ならいいか…」という態度のようです。
「シコリに痛みが時々あることワキのリンパ辺りが痛む事を訴えても「気のせい」と軽くあしらわれました」
⇒きちんとした説明が無いようです。
「リンパ辺りの痛み」を「気のせい」としていることからは、(画像上)「リンパ節に腫脹がない(転移所見がない)」という事だとは思います。
「乳房温存手術で取った後はそこを徹底的に叩きましょう。その後の管理はしっかりするから」
⇒(まるで一昔前の)『説明は要りません。先生に全てお任せします』という時代の説明であり、全く説明になっていません。
「そこを徹底的に叩きましょう」
⇒これは「術後の放射線治療」を表しているようです。
術後の放射線治療が必要であることくらいは説明されているのでしょうか?
私が替りに説明します。
乳房温存術の後には「必ず放射線治療」を行います。 通常、(化学療法が無い限りは)術後1か月程度より開始し、25~30回です。(月~金、連日です) 1回あたりの照射時間は「数分」で終了し、副作用は「日焼け程度」であり、「吐き気や脱毛はありません」 |
「その後の管理はしっかりするから」
⇒これは「術後(全身)補助療法」を表しているようですが、方針を決定することができません。
なぜなら、(前述したように)今回は「術前の針生検で組織が取れていない」ので腫瘍の性格(サブタイプ)が不明だからです。
この「しっかりするから」とは、『(術前には方針は決まらないが)術後には、間違いなくサブタイプがきまり、そのサブタイプに応じた治療をします』という意味のようです。
「何か隠されているのかと不安で仕方ありません。」
⇒(隠しているのは)『針生検の病理結果』です。(おそらく、『判定不能、要再検』となっているのでしょう)
本来なら「針生検の病理結果」を渡して、それに対する説明(以下)をするべきなのですが、今回それが全く欠けているのです。それで「尚更」説明不足の感じがあるのです。
- 癌の組織型
- 核異型度(癌の顔つき)
- サブタイプ(前述したようにルミナールとかハーツータイプとか…)
◎ただ、「質問者が心配されているような」『もしかして(患者に隠さなくてはならないような)進行癌?』という疑念はありません。
私がメール内容を見る限り「腫瘍サイズは2cm以下で、(画像上)リンパ節転移なし、遠隔転移の所見なし」つまり早期乳癌(ステージ1)であることは間違いありません。
★手術は「乳房温存+センチネルリンパ節生検」となります。
まさか、「センチネルリンパ節生検」をすることも説明されていないのでしょうか?
センチネルリンパ節生検は「術中に、色素で(腫瘍から一番近いリンパ節である)センチネルリンパ節を同定し、術中に迅速病理診断を行い、リンパ節転移の有無を調べる」ものです。
ガイドラインではセンチネルリンパ節に「2mm以下の転移(微小転移といいます)であれば」追加のリンパ節隔清は省略されます。