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小葉癌 断端陽性について

[管理番号:3900]
性別:女性
年齢:59歳
STAGE1 1.2cmということで9月(上旬)日温存手術をしました。
病理結果は、
検体:左乳腺 乳癌病巣数:1病巣
切除術:Bp+SNB 6.0×4.0×1.8cm占拠部位:左upper-inner(A)領域
腫瘍径:2.20×3.50×1.20cm, 腫瘍径 in situ ca含む
2.20×3.50×1.20
組織分類:invasive lobular carcinoma
核異型スコア:2, 核分裂スコア:1(1/10HPF), 核グレード:1
ER:Allred PS5 IS2 TS7,  P&R:Allred PS0 IS0 TS0
HER2:score1, 強陽性:0%, 中等度陽性:0%, 強陽性:10%
波及度:g f, リンパ管侵襲:ly0  静脈侵襲:v0
断端:皮膚側:-, 深部側:-,側方:+ #8,10, 乳頭側:-
in situ ca++, EIC-, 娘結節-, comedo-, 石灰化-, リンパ球浸
潤+
前治療:なし, 区分:初発
リンパ節転移:なし  区分:初発
リンパ節転移:合計(0/3,i-)
SNB(0/3)
UICC 7版:pT2 pN0 M0 StageⅡA、 規約17版:pT2 pN0 M0 StageⅡA
小型で類円形の核を有する極性に乏しい腫瘍細胞が個細胞性、一列縦隊
に浸潤するinvasive lobular carcinomaの所見です。
solid-pagetoidなlobular carcinoma in situを伴います
断端陽性ということで再手術をしました。
二回目10月(上旬)日の病理結果は
検体:左乳腺 乳癌病巣数:1病巣
切除術:additional excision 5.5×2.9×1.5cm 占拠部位:左
upper-inner(A)領域
腫瘍径:3.90×0.80×0.40cm, 腫瘍径 in situ ca含む
3.90×1.10×0.40
組織分類:residual invasive lobular carcinomo
核異型スコア:2, 核分裂スコア:1(1/10HPF), 核グレード:1
ER:Allred PS4 IS2 TS6, P&R:Allred PS1 IS2 TS3
HER2:score0, 強陽性:0%, 中等度陽性:0%, 強陽性:0%
波及度:g f, リンパ管侵襲:ly0  静脈侵襲:v0
断端:皮膚側:+,inv#2-4,6,7, 深部側:-,1.5mm 側方:-,
乳頭側:+inv1
in situ ca+, EIC-, 娘結節-, comedo-, 石灰化-, リンパ球浸潤+
前治療:なし, 区分:初発
UICC 7版:pT2 pNX M0 StageX、 規約17版:pT2 pNX M0 StageX
Bp後の追加切除組織です。
前回手術痕、脂肪壊死に接して小型類円核を
有するinvasive lobular carcinoma(ILC)、lobular
carcinoma in situの残存がみられます。
ILCが皮膚型断端(#
2-4,6,7)乳頭型断端(#1)で陽性となります。
でした。
二回目も断端陽性ということですが、先生はすべて取り切れたとおっしゃっており全摘や再々手術を考えていないようです。
このまま残しておいて大丈夫なのでしょうか?大変心配です。
抗がん剤はどうしますかと聞かれていますが抗がん剤治療はした方がいいのでしょうか?断端陽性のままで再発率はどのくらいあがるのでしょうか?
抗がん剤治療で再発率はどのくらい下がるのでしょうか?
おいそがしいところ恐れ入ります。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「二回目も断端陽性ということですが、先生はすべて取り切れたとおっしゃっており全摘や再々手術を考えていないようです。このまま残しておいて大丈夫なのでしょうか?大変心配です。」
⇒これは文面だけでは判断困難ですが…
 印象としては、「再温存でも陽性」となると、全摘が安全のようにも思えます。
「抗がん剤はどうしますかと聞かれていますが抗がん剤治療はした方がいいのでしょうか?」
⇒Ki67の測定はしていないのですか?
 質問者は「ルミナールタイプ」ですから「ホルモン療法は必須」となります。
 ここで、「抗ガン剤も加えるべきか?」と判断するために、『ルミナールタイプをA(ホルモン療法単独)とB(ホルモン療法+化学療法)に分ける』のが普通です。
 ○ルミナールA Ki67低値
 ○ルミナールB Ki67高値
   ♯Ki67が中間(グレーゾーン)である場合には「Oncotype DX」によって判断したりします。
 ★質問者はKi67を測定していない様ですが…
   核グレード1(しかも核分裂スコア1 10視野で細胞分裂が僅か1個)を見る限り、「かなりの確率でルミナールA」となりそうです。
   ♯Ki67は「細胞分裂期にある細胞の割合」を表しているので、ほぼ「核分裂スコア」で予測できるのです。
  このあたりは、以下をご参照ください。
   今週のコラム 15回目 どうやって、免疫染色だけで、AとBに分けるか?
   今週のコラム 16回目 核分裂は「Ki67と、キャラが被っている」と思いませんか?
   今週のコラム 30回目 実際はかなり多くのルミナールAがBと判定され無駄な化学療法をされている
「断端陽性のままで再発率はどのくらいあがるのでしょうか?」
⇒「局所再発」と「全身(遠隔転移)再発」に分け無くてはなりません。
 「断端陽性」は、あくまでも「局所再発」のリスク因子です。
 どの程度「局所再発のリスクを上げるのか?」これは(程度によって全く異なるので)「数字にはできません」
「抗がん剤治療で再発率はどのくらい下がるのでしょうか?」
⇒New.Adjuvant.comを用いると「4%」です。
 ただ、「Ki67」もしくは「Oncotype DX」をしてから考えましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

さっそくの回答ありがとうございました。
Ki67は術後の病理検査では検査していないようです。
ただ、術前の針生検等の結果(手術した病院とは別の病院)では
    Ki67 20%   ER6  P&R3 HER2- でした。
Oncotype DX検査は一ヶ月位かかり、やはり中間リスクでは迷うかなと思って申込みをしていませんでした。
PET-CTでは
「左乳房局所に取り込みが数ヶ所見受けられるが術後炎症による集積と考えられ転移リンパ節を示す結節は認めません」
「左乳がん術後 転移所見を認めません」という結果でした。」
PET検査の結果転移がなかったので抗がん剤という流れになっています。
薬剤はTCを3weeksサイクル×4回で12週ということでした。
(私の場合、
アンスラサイクリン系+タキサン系とでは効果は1%位しか変わらないとのことでした)
私は心臓に軽い疾患があるのでTCとなったということもあるのでしょう。
主治医の話では私の場合、再発リスク39% ホルモン療法で26%
化学療法加えて21%ということでした。
(Adjyuvant!)
先生のお話のように4~5%の効果ということなんでしょう。
 再発率がけっこうあるなと思いました。
先生のコラムで「ODで低リスクが50%」、「高リスクのみが化学療法の対象とするとルミナールタイプの中で化学療法が必要な割合は僅か3割」ということでしたね。
それを拝見して迷っています。
 断端陽性(主治医はとれたと言っていますが)がすごく気になっており、ERは陽性ですが、P&Gが低い、また再発率を考えても抗がん剤をしたほうがいいのかなとも思います。
断端陽性で局部再発し全摘した場合、放射線後では再建が難しいということで局部再発を抑えたいという意味でも抗がん剤は必要なのかなと思います。
抗がん剤をするとしたらTCで適用でしょうか?
できるだけ抗がん剤はしたくないと思いますが転移を考えるとしておかないとあとで後悔するかなとも思い大迷いです。
先生のお考えをお聞かせいただければと思います。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「局部再発を抑えたいという意味でも抗がん剤は必要なのかなと思います。」
⇒私はそうは思いません。
 局所再発と全身再発ははっきりと区別すべきです。
 「全身療法」で「局所治療を代用する」という考え方は「複雑化するだけでお勧めできません」
 ○物事はシンプルに考えましょう。
「抗がん剤をするとしたらTCで適用でしょうか?」
⇒ルミナールタイプで抗ガン剤を「するとすれば」TCです。
「できるだけ抗がん剤はしたくないと思いますが転移を考えるとしておかないとあとで後悔するかなとも思い大迷いです。」「先生のお考えをお聞かせいただければと思います。」
⇒前回と殆ど同じ回答ですが…
 あくまでも、Ki67は病変全体で評価すべきであり、現時点でのデータでは「化学療法を推奨する根拠は皆無」です。
 今週に更新したばかりの『今週のコラム53回目 Ki67が「30未満」ならホルモン療法単独』を参照してみてください。