[管理番号:1036]
性別:女性
年齢:41歳
3年前、38歳の時に温存手術を受けました。
術前の病理では乳管癌と言われていましたが術後の病理で小葉癌と告げられました。
当初2センチと言われてた腫瘍の大きさはしこりではないが離れた所にポツンと癌が飛んでる…と言って、病理学的腫瘍径が4,8センチとなりました。
しかも皮膚側2ミリの所に癌があり断端陽性…
主治医はしこりとして4,8センチ有るわけでは無いから取りきれてると仰いました。
あまりにも不安要素が沢山すぎて全摘した方がいいのではないか…と主治医に話したところ放射線を多くかけるので大丈夫だと仰いました。
私は元々全摘の方がいいと考えておりました、まだ子供が小さく初期治療を誤る訳にはいかないと考えていたからです。抗がん剤も全摘もとにかく命が助かるなら…と思っていましたが、「そんなに乱暴にしなくても貴方の場合は温存と放射線で大丈夫ですよ」と言われそのようにしました。
結局放射線治療が始まってしまい、その後の診察で「今日リュープリンの注射打てるけど打っていく?」と、とにかく術後の治療を急かされホルモン療法が始まってしまいました。
現在はリュープリンとノルバデックスで治療を続けています。
主治医は病院の院長で威圧感があり話しやすいとは言えず話せない事は看護師さんに聞いてもらっていました。小葉癌の事も調べる時間が無いままホルモン療法が始まってしまい現在は1ヶ月半に1度の診察、3ヶ月に1度リュープリンと採血・尿検査、半年に1度エコー・MRI、1年おきにプラスCT・マンモの検査を受けています。
長くなってしまいましたが質問です
①1ヶ月半に1度の診察は多すぎではないか
②検査が多すぎではないか
③新しい情報でリュープリンの必要はないとおもうが…
どれも主治医に聞きましたがうちではこれでやってる…としか言ってくれません。
怒っているように見えるので診察の時、しばらく質問やお話しなどはしていません。
元々胸がとても小さく残った乳腺へのマンモはなかなか挟めず涙が出る程痛く、こんな事になるなら全摘の方がよかったと…悔し泣きをしてしまいます。
主治医に聞けないのでこのような場所があってとても救われます。
宜しくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
術式選択の際には「患者さんの希望(考え方)」を優先するべきだと思います。
「全摘を希望する理由がある」のに、「温存で大丈夫」と強引に決めるのは如何なものでしょうか
♯皆さんが「可能なら温存」したいという訳では無く、中には「リスクのある乳腺は全部取ってもらいたい」という考え方もあるのです。
やはり個人の価値観を尊重すべきでしょう。
回答
「1ヶ月半に1度の診察は多すぎではないか」
⇒術後3年ですよね?
幾らなんでも(常識的にいって)多すぎます。
「ノルバデックスの処方(3カ月処方)及びリュープリン注射(3カ月製剤)にあわせて」3カ月に1回の診察で十分でしょう。
「検査が多すぎではないか」
⇒多すぎます。
MRIもCTも不要です。
必須なのは「1年に1回のマンモ」だけです。
ただし私は3カ月に1回の採血マーカーと診察超音波は合理的だと思っています。
「新しい情報でリュープリンの必要はないとおもうが」
⇒これはSOFT試験の結果からですね。
質問者の「リンパ節転移の状況の記載がない」ですが、おそらく(記載が無いということは転移無しなのでしょう)
「35歳以下でもない」し、「リンパ節転移が無い」のであればルミナールタイプだし、「必要は無い」と思います。
質問者様から 【質問2】
お忙しい中回答、ありがとうございます。
病理結果
術前の生検にて
組織学波及度:f 腫瘍間質:scirrhous 浸潤様式:INF-γ 脈管侵襲:1y0、v0
乳管内進展:(+) 組織学的悪性度:管腔形成 2、核異型 3、核分裂数 1、
grade 2
HER2:1+ PR:80%~90% ER:80%~90%
左浸潤癌の告知、温存手術
術後の病理結果
センチネルリンパ生検0/1 腋窩リンパ郭清なし
追加の免染で浸潤性小葉癌と言われる
大きさ:肉眼的(20x15x9mm) 顕微鏡的:(22x48mm) 切除標本の割面所見:F
(g)
割面肉眼分類:浸潤型 WHO分類Carcinoma 脈管侵襲:1y(0)、v(0)
核異型度:NSAS-BCで、Nuclear atypia:Score2、 Mitosis:Score1ですので
Nuclcar Gredeは1
断端:皮膚側 真の断端は陰性ですが、断端の2㎜以内に癌巣の進展を見ます
Ki67:5%
1ヶ月半に1度の診察を3ヶ月に出来ないか…と聞いた所再発リスクがあるから…と言
われましたが…
①この病理結果の私の再発率はそんなに高いのでしょうか
②小葉癌は乳管癌より予後が悪いと言われたりもしますが田澤先生はどの様にお考え
ですか?
③先生の患者だったら術後全摘を勧めていましたか?
3年も経って今更なのですが今の治療に前向きになれず、考えると3年前に気持ちが
戻ってしまいます。
④SOFT試験から、リュープリンを止めると生理は復活するのでしょうか、(していい
のか)
⑤このまま閉経にもっていくのがいいのでしょうか
宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
pT2, pN0, luminal A,
脈管侵襲もなく、核グレードも1 「浸潤性小葉癌」らしい大人しいタイプです。
回答
「1ヶ月半に1度の診察を3ヶ月に出来ないか…と聞いた所再発リスクがあるから…と言われましたが…」
⇒私にはそうは思えませんが…
全く不必要です。
「この病理結果の私の再発率はそんなに高いのでしょうか」
⇒高くはありません。
20%程度です。
もしも「20%を再発ハイリスクとして1カ月半のフォローとするべき」だとしたら、
「術後患者さんの8割以上があてはまってしまう」ことになります。
「術後患者さんの8割以上」を1カ月半のフォローなど、常識的に考えられません。
「小葉癌は乳管癌より予後が悪いと言われたりもしますが田澤先生はどの様にお考えですか?」
⇒全く反対です。
大人しいタイプが多く(質問者もまさに、あてはまります)予後良好だと思います。
「乳腺内多発」し易いという意味で、「乳腺超音波を定期的に行う」方がいいとは思いますが、それでも「せいぜい3カ月毎」が限度でしょう。
また(乳癌には珍しく)「腹腔内転移の可能性がある」ことが知られていますが、これは「相当な低頻度」であり、気にする必要はありません。(そういう稀な例もあるという程度です)
「先生の患者だったら術後全摘を勧めていましたか?」
⇒勧めません。
「術前に小葉癌と解っていた」としたら、「乳房全摘」を勧めたかもしれませんが、術後に「小葉癌と判明したから」全摘を勧めることはありません。
♯断端2mm以内とはいえ、「真の断端が陰性」なので、「その理由で全摘を勧める」こともありません
○ただ、ご本人の希望があれば、「乳房切除」を行いますが…
「SOFT試験から、リュープリンを止めると生理は復活するのでしょうか、(していいのか)」
⇒年齢からすると「生理は戻る」と思います。
「SOFT試験」で「生理が戻った場合に予後が良く無い」のは『化学療法後の患者さ
んの場合』です。
質問者には、そもそも当てはまりません。
「このまま閉経にもっていくのがいいのでしょうか」
⇒それは長すぎます。
年齢からすると、あと10年以上「LH-RHagonist」を併用することになってしまいます。
有害事象も含め「安全性からしても」10年以上のLH-RHagonistは「必要無い」ばかりか「健康に良く無い」可能性があります。
質問者様から 【質問3】
いつも回答いただきありがとうございます。
先生のお言葉で今までモヤモヤしてた事が解決していき自分の初期治療は間違ってはいないのだな…と思えるようになりました。
再度質問なのですが宜しくお願いします。
①主治医は「LH-RHagonist」は5年、ノルバデックスは10年と仰ってます。
「LH-RHagonist」を止めてノルバデックスだけになった時生理は復活するのでしょうか
②そもそも抗がん剤は癌を直接叩いて無くす…と言うイメージでホルモン療法は癌に餌を与えないだけで癌を攻撃して無くす訳ではない…と考えています、生理が復活するのが怖いのですがこの考え方は間違っていますか?
③術後の病理結果で2cmだった腫瘍径が4.8cmという大きさだった事で、抗がん剤をしなくていいのかと主治医に聞いた所、しこりとして4,8cmあるわけではないので問題ない、と言われましたが先生も同じ考えでしょうか。
繰り返し質問で申し訳ありません。
宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
回答
『「LH-RHagonist」を止めてノルバデックスだけになった時生理は復活するのでしょうか』
⇒年齢的には、復活すると思います。
「ホルモン療法は癌に餌を与えないだけで癌を攻撃して無くす訳ではない」
⇒誤っています。
もしも、その考え方が正しいのであれば「ホルモン療法をして再発率が改善した分」はただ「遅れて再発するだけ」となってしまいます。
しかし実態として、数値が「その考えは誤り」であることを示しています。
「先生も同じ考えでしょうか。」
⇒(担当医とは)考えは異なりますが、「化学療法を選択しない」点では共通です。
そもそも「腫瘍径」を理由に「化学療法を選択すること」はありせん。