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現在受けている初期治療について

[管理番号:2728]
性別:女性
年齢:49歳
初めて質問させていただきます。
どうぞよろしくお願いします。
2015年4月に右乳房温存・リンパ節郭清手術を受けました。
事前に受けたMRIの画像を見る限り、リンパ節転移はなさそうと言われていましたが、実際にはリンパ節転移が6個あったようです。
特殊型の粘液性がんで、ステージはⅡB、ホルモン受容体陰性、HER2陽性との説明を受けました。
5月下旬から五週間、放射線治療を受け、7月から化学療法が始まりました。
EC療法でファルモルビシンとエンドキサンを三週間ごとに4サイクル点滴した後に、タキソールを毎週12サイクル点滴するというスケジュールが組まれました。
予定通り順調に進んでいれば年内に終えられたと思うのですが、白血球の減少により点滴が中止になることが多く、3月末にようやく終わりました。
これで初期治療は終わり、今月末にCT検査をすると言われているのですが、このことに不安を抱いています。
私の場合、HER2陽性でリンパ節転移があり、Ki67も90なので、
再発するリスクは極めて高いと思われるのですが、抗HER2療法を行わないという選択肢はあるのでしょうか。
またハーセプチンはタキサン系の薬剤と併用して用いられるようで、
今回の私のように、タキソールだけを単独で投与してしまった場合、
初期治療として抗HER2療法を行うことがそもそも可能なのでしょうか。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
HER2タイプは「ハーセプチンによる補助療法が解禁(2008のことです)されてから、劇的に予後が改善しています。
抗HER2療法(ハーセプチン+化学療法)は「再発率を半分」にします。
○現在、「抗HER2療法を行う事で」HER2タイプは(あらゆるサブタイプの中で)最も予後良好となっていると思います。
 
「EC療法でファルモルビシンとエンドキサンを三週間ごとに4サイクル点滴した後に、タキソールを毎週12サイクル点滴するというスケジュール」
⇒間違いですよね???
 タキソールにはハーセプチンを併用することが「常識」です。
 
 本来は「ECx4」⇒「HER+タキソール」x12⇒「放射線」⇒「HER単独」x14とすべきです。(絶対に!!!)
 
「私の場合、HER2陽性でリンパ節転移があり、Ki67も90なので、再発するリスクは極めて高いと思われる」
⇒間違いです。
 抗HER2療法を行えば、「予後は極めて良好」となります。
 
「抗HER2療法を行わないという選択肢はあるのでしょうか。」
⇒絶対に「抗HER2療法を行うべき」です。(絶対に!!!)
 
「またハーセプチンはタキサン系の薬剤と併用して用いられるようで、今回の私のように、タキソールだけを単独で投与してしまった場合」
⇒絶対に「誤った治療」です。
 
「初期治療として抗HER2療法を行うことがそもそも可能なのでしょうか。」
⇒2008年より「術後補助療法としてハーセプチン投与」が開始されています。
 ○今からでも遅くはありません。
 ハーセプチンを併用してください。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
先日は迅速かつご丁寧な回答をありがとうございます。
術後に受けていた化学療法が「間違った治療」であったことがわかり不安になりましたが、「今からでも遅くはない」とのお言葉に励まされ、主治医にハーセプチンを用いての抗HER2療法をしたいと申し出ました。
そうしましたら、手術でがんはすべて取りきっている、体内には微小な細胞がまだ残っているかもしれないが、それはわからない、わからないものに対してこれ以上治療を続けることはないという、否定的な見解が返ってきました。
そして何より強調されたのは、ハーセプチンを今使ってしまった場合、再発した時に用いる薬がなくなってしまうということでした。
ハーセプチンは再発した時に備えてとっておきたいと言われました。
それでも私が、標準とされている治療が行われないことへの心配と不安を訴え続けたので、最後には、抗HER2療法を行うことに同意していただけました。
事前にエコーで心機能の検査をし、今月末より三週間に一回、合計18回、ハーセプチンを単独投与するというスケジュールが組まれました。
これで少しでも、これまでの治療の「間違い」が修正されることを願っています。
最後に一つだけ伺ってもよろしいでしょうか。
HER2陽性タイプは、抗HER2療法を行えば予後がかなりよくなるとはいえ、絶対に再発しないという保証はないと思います。
そこで、再発してしまった場合、どのような治療になるのでしょうか。
術後の補助療法でハーセプチンを使ってしまった場合、使える薬はないのでしょうか。
どうぞよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
今からでも「ハーセプチンは遅くない」
その通りです。
「ハーセプチンは再発した時のためにとっておく」
⇒完全な誤りです。
 再発しない様に(予め)行うのが「術後療法」です。
 ○「再発してから」ではなく「再発しないように」が重要な事は(乳腺専門医ならば)『誰でも知っている筈』です。
 
正直な話、今回は大変驚きました。
HER2陽性で(ハーセプチンはやるけど)「抗がん剤は省略」という医師は結構多い
(これも、誤まった診療ですが)けど、その逆(化学療法はやるけど、ハーセプチンはやらない)というケースは(生まれて)初めて見ました。
 
「手術でがんはすべて取りきっている」
⇒これは当然です。
 その上で「可能な限り再発率を減らす」ために術後補助療法はあるのです。
 
「体内には微小な細胞がまだ残っているかもしれないが、それはわからない、わからないものに対してこれ以上治療を続けることはない」
⇒術後補助療法は全て、そういうものです。
 エビデンスを無視してはいけません。
 常識外です。
 
「そして何より強調されたのは、ハーセプチンを今使ってしまった場合、再発した時に用いる薬がなくなってしまうということでした。」「ハーセプチンは再発した時に備えてとっておきたいと言われました。」
⇒この医師は「再発治療をした経験」が本当にあるのですか??
 ハーセプチンは「併用する抗がん剤(例えば今回パクリタキセルを用いたのであれば、今度はビノレルビンでもドセタキセルでもエリブリンでもカペシタビンでも)を変えれば」まだまだ良く効きます。
 ☆そもそも再発の第1選択はpertuzumabとなります。
 
「HER2陽性タイプは、抗HER2療法を行えば予後がかなりよくなるとはいえ、絶対に再発しないという保証はないと思います。」
⇒がん治療では「あらゆる薬剤」がそのようになります。
 ただ、(予防目的で)「術後補助療法として用いる場合」と(再発してから)「再発治療として用いる場合」では、治療効果が「全く」違います。(相手のvolumeが段違いなのです)
 
「そこで、再発してしまった場合、どのような治療になるのでしょうか。」
⇒第1選択はpertuzumabとなります。 Pertuzumab+trastuzumab(ハーセプチン)+ドセタキセルとなります。
 それ以外にも「カドサイラ」もあるし、「ハーセプチン自体も、併用薬剤を変えることで十分に効く」のです。
 
「術後の補助療法でハーセプチンを使ってしまった場合、使える薬はないのでしょうか。」
⇒とんでもありません。
 上記のように「HER2陽性乳癌は、効果の有る治療がふんだんにある」のです。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

以前に、現在受けている術後の初期治療について質問させていただきま
した。
昨年4月に右乳房温存、リンパ節郭清手術を受けました。
腫瘍の大きさは24mm、リンパ節のレベル1に6個転移がありました。
レベル1 6/22、レベル2 0/3、レベル3 0/1
ホルモン受容体陰性、HER2陽性、Ki67は90%以上、核グレードは1で
す。
今回は、自分のケースが多くの皆さんのケースと異なる気がしまして、
再度質問させていただきました。
どうぞよろしくお願いします。
このQ&Aを拝見していますと、リンパ節転移がないか、あったとしても
1~2個という方が多いような印象を受けます。
腫瘍の大きさがT2で転移の個数が6個というのはめずらしいケースで
しょうか。
なぜ1~2個転移という方が多い中で、私だけ6個も転移しているのかと
主治医に尋ねましたところ、特殊型の粘液癌だからではないかと言われ
ました。
ただ、このQ&Aの粘液癌に関する質問への回答には、「粘液癌はおとな
しいタイプがほとんど」とありますので、ますますわからなくなってお
ります。
粘液癌の中でもきわめてめずらしい進行の早いタイプと理解すればよろ
しいのでしょうか。
ステージについては、T2でリンパ節転移がありましたので、ステージ
2bと言われています。
ただ、先生がなされている分類に従いますと、リンパ節に4個以上転移
していますので、腫瘍の大きさに関係なくステージは3ということにな
るかと思います。
リンパ節への転移個数が3個以下か4個以上かではかなり大きな違いがあ
るように思います。
4個以上転移となりますと、進行癌とも言われているステージ3と同レベ
ルに分類されてしまうほど、予後は格段に悪くなるのでしょうか。
最後に、Ki67が90%以上なのに核グレードが1ということはあるので
しょうか。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「腫瘍径」と「リンパ節転移の有無(個数)」は「ある程度はリンクする」とはいえ、
実際には、「こんなに腫瘍が大きいのにリンパ節転移が無い」とか、「その逆」も多く経験します。
特別「珍しい」という程ではなく、「少し意外」という程度です。
○それを「腫瘍が小さいのにリンパ節転移が多いのは、(特殊な)進行が早いタイプだ」とするのは「明らかな誤り」です。
 生物の世界なのだから「偶然が起こる」ということです。
 物事が全て「確率通りに動く」わけではないのです。
「腫瘍の大きさがT2で転移の個数が6個というのはめずらしいケースでしょうか。」
⇒上記コメント通りです。
 「少し意外」とは感じますが「珍しい」と言うほどではありません。
 
「粘液癌の中でもきわめてめずらしい進行の早いタイプと理解すればよろしいのでしょうか。」
⇒たしかに「典型的な粘液癌は大人しい」ものです。
 ただ、ここで質問者の粘液癌を「進行の早いタイプ」と決めつけるのは如何なものでしょうか?
 「リンパ節転移の個数だけ」をもってし「進行の早いタイプ」とは言えません。
 「進行の早いタイプ」というよりも「リンパ行性の強いタイプ」ということかもしれませんし、「ゆっくりだけど(時間をかけて)拡がった」のかもしれません。
 
「ステージについては、T2でリンパ節転移がありましたので、ステージ2bと言われています。ただ、先生がなされている分類に従いますと、リンパ節に4個以上転移していますので、腫瘍の大きさに関係なくステージは3ということになるかと思います。」
⇒これは「その通り」です。
 質問者が正しいです。
 
「4個以上転移となりますと、進行癌とも言われているステージ3と同レベルに分類されてしまうほど、予後は格段に悪くなるのでしょうか。」
⇒私の印象では「腫瘍径も小さい」し、「リンパ行性が強い」タイプというだけで
「遠隔転移=血行性転移」のリスクは特に高くはないと思います。
 
「最後に、Ki67が90%以上なのに核グレードが1ということはあるのでしょうか」
⇒核グレードの中身はどうなんでしょうか?
 「核グレード」は「核異型」と「核分裂」の数字の和で決まります。(核グレード1でも「核分裂は高め」ということかもしれません)