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バネ式針生検結果

[管理番号:3240]
性別:女性
年齢:47歳
いつも拝読しています。
先日、左乳房に15mmのしこりが認め、針生検を受けました。
結果は浸潤性乳管癌の所見でした。
グレードは2です。
ER:PS(5)+IS(3)=TS(8)
PgR:PS(5)+IS(3)=TS(8)
HER2:1+
Ki67:20-25%
の検査結果でしたが、各数字に関しては何の説明もなく
どこの病院に紹介状を書けばよいかと、聞かれるばかりでした。
医師がいうには大人しいタイプでホルモン治療が効果的。
部分切除の見立て、としか説明して頂けませんでした。
自分なりに調べてもいまいちよく分かりませんでした。
この検査数値の見解をお聞かせいただければありがたいです。
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「この検査数値の見解をお聞かせいただければありがたいです。」
⇒了解しました。
 数値について「ひとつひとつ」解説していきます。
 
「15mmのしこり」
⇒腫瘍径15mmはcT1cとなります。(リンパ節については聞いていませんか?) おそらくcT1c,cN0, cStage1となると思います。
 
「グレードは2」
⇒「グレード」とありますが、「核グレード」でしょうか?「組織学的グレード」でしょうか?
 基本的には「核グレードで判断」していいと思います。
 核グレードは「核異型(顔つき)」と「核分裂(増殖を示す)」の総合店での評価(3段階)です。
 グレード2は「中間」といえますが、その中身(「核異型の点数」と「核分裂の点数」)を細かく見ておきましょう。
  一口に「グレード2」と言っても、「1+3」なのか「2+2」なのか「3+1」なのか3通りあるのです。
 (参考に)
 『核グレード』は①核異型の点数+②核分裂の点数の「2項目の和」です。
 ①核異型 弱い:1点
    中間:2点
    強い:3点
 ②核分裂 5個未満(10視野で):1点
    5~10個  〃   :2点
    11個以上  〃  :3点
○『核グレード(NG) 核異型の点数+核分裂の点数』
    2点、3点 :核グレード(NG)1 
    4点    :  〃    2
    5点、6点 :  〃    3 
ここに「構造異型度(腺管形成スコア)」を加えて
①核異型の点数+②核分裂の点数+③腺管形成の点数の「3項目の和」としたものが
「組織学的グレード」です。
①核異型 弱い:1点
    中間:2点
    強い:3点
 ②核分裂 5個未満(10視野で):1点
    5~10個  〃   :2点
    11個以上  〃  :3点
 ③腺管形成 腫瘍の75%超で明らかな腺管形成:1点
       〃 10~75% 〃     :2点
       〃 10%未満   〃     :3点
 ○『組織学的グレード(HG)核異型の点数+核分裂の点数+腺管形成の点数』
    3点~5点:組織学的グレード(HG)1
    6点、7点:   〃       2
    8点、9点:   〃       3
「ER:PS(5)+IS(3)=TS(8) PgR:PS(5)+IS(3)=TS(8)」
⇒ER(エストロゲン受容体)の感受性、PgR(プロゲステロン受容体)の感受性のことで、平たく言えば「ホルモン療法の効き易さ」を示しています。
 これらの数値はAllred scoreといい「染色強度」と「染色される細胞の割合」の和で評価する方法です。
 因みにPS(proportion score:染色割合)は5点満点でIS(intensity score:染色強度)は3点満点なので、質問者の場合には「8点満点」となります。(強陽性)
 (参考に)
  Allred score
  染色細胞割合(PS) 1:染色される細胞が0~1/100
2:    〃   1/100~1/10
3: 〃   1/10~1/3
4: 〃   1/3~2/3
5: 〃   2/3~1
染色強度(IS) 0:全く染まっていない
          1:弱く染まっている
          2:中間程度に染まっている
           3:強く染まっている。
  ♯判定基準 染色細胞割合(PS)+染色強度(IS)=TSとして3以上を陽性
 更にこの「細胞割合」だけで評価する方法がJ-scoreです。
 (参考に)
 J-score
  Score 0:染色される細胞が無い
  Score 1 〃     1%未満
  Score 2 〃     1~10%
Score 3 〃     10%以上(50%未満を3a, 50%以上は3b)
    Score 0を陰性
    Score 1,2を境界域
    Score 3を陽性
「HER2:1+」
⇒これはHER2蛋白という「増殖蛋白」の感受性があるかどうかの「免疫染色」です。
 誤解され易いのですが
 「0、1+」陰性
 「2+」⇒FISH法で要確認
 「3+」  陽性
 つまり質問者は「HER2陰性」と言う事です。(つまりハーセプチンは必要ない)
  
「Ki67:20-25%」
⇒Ki67(細胞分裂期にある細胞の割合%)が20-25%ということは、「癌細胞の20-25%が細胞分裂期にある(それ以外は休止期にある)」ことを示しています。
 Ki67は(質問者のような)ルミナールタイプをAとBに分ける際に用いられます。
 ♯ ER陽性かつPgR陽性をルミナールタイプと言います。
  ルミナールA (術後)ホルモン療法単独
  ルミナールB (術後)ホルモン療法+化学療法
 ♯ただし、「針生検でのKi67はあくまでもサンプリングなので、手術標本(病変全体)でのKi67で評価するべき」です。
★総合的にいうと、質問者は「早期乳癌」の「ルミナールタイプ(AかBかは術後に手術標本で評価すべき)」であり、腫瘍径も小さいので 「乳房温存+センチネルリンパ節生検」⇒術後「放射線(温存では必須)」+「ホルモン療法」となりそうです。
 最終的に術後標本で「ルミナールAかBか判断」して「抗ガン剤の追加」について(術後)相談することになります。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
先日は検査結果に対する詳細な解説、ありがとうございました。
先日の補足の質問です。
お手数ですが見解をお聞かせ頂ければ
ありがたく存じます。
先生から尋ねられた、グレードが核グレードか、組織学的グレードか
ですが、私にはよく分からないのですが
Histological grade2
Tubular and glandular formation 3
Nuclear plemorphism 2
Mitotic counts 1
と書いてありました。
これで分かりますでしょうか?
15mmのしこりですが、田澤先生からリンパ節について聞いていません
か?との件は、何も説明がありませんでした。
転移が不安です。
検査報告書の病理診断には
Invasive ductal carcinoma. NOS, scirrhous carcinoma.7 left breast biopsy.
所見:乳癌 生検4個
核小体の目立つ極性の乱れた異型細胞がばらばらに、あるいは小塊状な
いし索状となって増殖している。
異型細胞は間質に浸潤している。
浸潤性乳管癌の所見である。
と、ありました。
英語が苦手でして、辞書を開いて調べたのですがよく分かりませんでし
た。
所見から先日、お答えいただいた先生の所見に補足されることはありま
すでしょうか?
ありましたらお聞かせください。
お忙しいなか申し訳ございません。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「Histological grade2 Tubular and glandular formation 3 Nuclear plemorphism 2 Mitotic counts 1と書いてありました。これで分かりますでしょうか?」
⇒これは組織学的グレードです。
 ちなみにHitological gradeが「組織学的グレード」です。
 Tubular and glandular formationが「腺管形成」
 Nuclear plemorphismが「核異型」
 Mitotic countsが「核分裂」
 
 ちなみに核グレードは「Nuclear plemorphism 2 Mitotic counts 1」の部分の評価で グレード1となります。(ここに「Tubular and glandular formation 3」の評価を足したのが組織学的グレードなのです。
 参考に
 『核グレード』は①核異型の点数+②核分裂の点数の「2項目の和」です。
 ①核異型 弱い:1点
    中間:2点
    強い:3点
 ②核分裂 5個未満(10視野で):1点
    5~10個  〃   :2点
    11個以上  〃  :3点
○『核グレード(NG) 核異型の点数+核分裂の点数』
    2点、3点 :核グレード(NG)1 
    4点    :  〃    2
    5点、6点 :  〃    3 
ここに「構造異型度(腺管形成スコア)」を加えて
①核異型の点数+②核分裂の点数+③腺管形成の点数の「3項目の和」としたものが
「組織学的グレード」です。
①核異型 弱い:1点
    中間:2点
    強い:3点
 ②核分裂 5個未満(10視野で):1点
    5~10個  〃   :2点
    11個以上  〃  :3点
 ③腺管形成 腫瘍の75%超で明らかな腺管形成:1点
       〃 10~75% 〃     :2点
       〃 10%未満   〃     :3点
 ○『組織学的グレード(HG)核異型の点数+核分裂の点数+腺管形成の点数』
    3点~5点:組織学的グレード(HG)1
    6点、7点:   〃       2
    8点、9点:   〃       3
 
「Invasive ductal carcinoma. NOS, scirrhous carcinoma.7 left breast
biopsy.」
⇒浸潤性乳管癌の中の「硬癌」という組織型だということです。
 全く普通です。
 心配ありません。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

先生、おはようございます。
先日は検査結果に対しての詳細なご説明をありがとうございました。
バネ式針生検をして頂いたクリニックより紹介状を書いて頂き
手術をする病院に先日の針生検のプレートを持って行って来ました。
当日は、エコー検査、心電図、血液検査をしました。
持参したプレートはその病院で再度検査をするそうです。
来週にMRIとPET-CT検査をして、来月(中旬)日に手術をすることになりました。
度々の質問で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
①バネ式針生検をしたクリニックではリンパ節について、答えて頂けませんでしたが、今回の病院ではエコー検査では転移はない、
 と言われました。
 最終的にはセンチネルリンパ節生検で転移の有無を確定されるのでしょうが、エコー検査での転移の有無の信頼度は高いものなのでしょうか?
②クリニックではしこりの大きさが15mmと言われましたが、こちらでは18mmと3mm大きく診断されました。
 これは誤差の範囲内と考えてよろしいのでしょうか?
③全摘出か温存かは、しこりが広範囲の他に出来ていたら全摘出すると言われましたが、針生検、エコーなど今までの検査結果である程度の推測は出来るのでしょうか?
 クリニックの先生は、温存で大丈夫でしょう、と言われていたので不安になりました。
 お忙しいなか申し訳ございません。
 愚にもつかぬような質問をして恐縮しております。
 何卒、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「①バネ式針生検をしたクリニックではリンパ節について、答えて頂けませんでしたが、今回の病院ではエコー検査では転移はない」「最終的にはセンチネルリンパ節生検で転移の有無を確定されるのでしょうが、エコー検査での転移の有無の信頼度は高いものなのでしょうか?」
⇒かなり参考になりますが…
 一概に「エコーでリンパ節転移は無い(疑われない)」といっても、「所見には幅がある」ことにご注意ください。
  つまり、①「リンパ節が全く腫れていない」~②「腫れてはいるが、反応性腫大だと思う」~③「転移性リンパ節とはいいきれない」まで幅があるのです。
  ①であれば(実際に転移が見つかるのは)「5%以下」とはなります。
 
「②クリニックではしこりの大きさが15mmと言われましたが、こちら では18mmと3mm大きく診断されました。 これは誤差の範囲内と考えてよろしいのでしょうか?」
⇒その通りです。
 
「③全摘出か温存かは、しこりが広範囲の他に出来ていたら全摘出する と言われましたが、針生検、エコーなど今までの検査結果である程度 の推測は出来るのでしょうか?」
⇒その通りです。
 念の為にMRIで確認することになります。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生
いつもお世話になっております。
先日、MRIとPET-CT検査を受け、本日検査結果と手術の説明を受けました。
また先日、最初のクリニックで受けた針生検のプレートで再度、検査をして頂いた結果をお知らせします。
診断:Invasive ductal carcinoma,G1,ER+(>90%),PgR+
(>90%),Her2(+2),MIB-1≒20% Scirrhous carcinoma,Grade1(NA1,mitosis1)、f+
PET-CT
①両側乳腺外側縁に沿って生理的RIが認められます。
左乳腺C領域
には最大SUV 1.93のRI集積が見られますが、結節状異常集積ではありません。
反対側にはSUV 1.65のRI集積が見られ、有意差は認められません。
②左腋窩や胸骨傍には有意なリンパ節腫大も異常集積も認められません。
遠隔転移を思わせる異常集積なし。
◆生理的RIとかSUVとかの言葉の意味が分かりません。
 平易に教えて頂けませんか?
MRI
①左乳腺C領域に不整形腫瘤15×11×11mmがあり、造影後はfast-
washoutの増強パターン、遅延相ではrim enhancement1を伴っている。
浸潤相当、T1c。
周囲に拡がりを示唆する所見は認めない。
左C域腫瘤 浸潤癌相当、T1c。
BI-RADS 6
◆こちらも英語の意味が分かりません。
平易に解説頂けませんでしょう か?
◆前回の針生検ではHer2は+1で陰性でしたが、今回は+2となりました。
 同じプレートで検査しているのですが、このような数値の変化は、
 よくあることなのでしょうか?
 またどちらの結果のほうが信頼性が高いのでしょうか?
 ◆今回の結果を踏まえ、執刀頂く医師は温存手術でとの方針となりました。
 おそらくリンパ節の転移はないだろう、との見立てですが、先生の見解をお示し頂ければ有難く存じます。
 前回までの質問に重複するような個所がありましたらお詫び申しあげます。
 何卒よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
ここでも無駄な(医療被曝である)PETが行われている事が悲しく感じます。
「◆生理的RIとかSUVとかの言葉の意味が分かりません。 平易に教えて頂けませんか?」
⇒RIとはRadioisotope(ラジオアイソトープ)の略です。
 PET検査ではRIとして18Fを用いています。(ブドウ糖に18Fを合成したものがFDGです)
 このFDG(フルオロデオキシグルコース)が、癌に盛んに取りこまれる性質を利用し、そこで発生するγ線を撮影したものです。
 また、ブドウ糖は(癌に盛んに取りこまれる=癌は栄養をどんどん取り込み盛んに増殖するため)わけですが、正常細胞も生きているわけですから(癌細胞ほどではないが)「正常範囲の取り込みがある=生理的取り込み」のです。
 
 つまり「生理的RI集積」とは、このRIの取り込み具合が「生理的=正常な細胞の活動による取り込み」のことです。
 SUV(standardized uptake value)は「RI集積の濃度」であり、「正常部分を1として、その何倍の取り込みがあるのか?」ということです。
「◆こちらも英語の意味が分かりません。平易に解説頂けませんでしょう か?」
「MRI 造影後はfast-washoutの増強パターン、遅延相ではrim enhancement1を伴っている。]
⇒fast-washoutとはrapid-washoutとも呼ばれ、癌細胞に「急速に(造営剤が)取りこまれて、比較的速やかに排泄する」様子であり、典型的な「癌のパターン」です。
 Rim enhancementとはリング状(造影剤)増強効果のことであり、腫瘍の辺縁部で活発な増殖を示す「癌のパターン」です
「浸潤相当、T1c。」
⇒浸潤部分の大きさがT1c(1cmm<浸潤部分≦2cm)ということです。 「BI-RADS 6」
⇒米国放射線専門医会(ACR)が作成したBreast Imaging Reporting and Data
System(BI-RADS)という評価法があります。
 MRIは6段階であり、
カテゴリー1:正常
カテゴリー2:良性
カテゴリー3:おそらく良性→短期の経過観察が必要(悪性の頻度は2%以下)
カテゴリー4:悪性の疑い→要生検
カテゴリー5:悪性を強く疑う(悪性の頻度は95%以上)
カテゴリー6:生検で悪性と診断されている。[/deco_bg] ★ ここに相当します。
「◆前回の針生検ではHer2は+1で陰性でしたが、今回は+2となりました。 
同じプレートで検査しているのですが、このような数値の変化は、よくあることなのでしょうか?」
⇒良くあります。
「 またどちらの結果のほうが信頼性が高いのでしょうか?」
⇒どちらとも言えません。
 ただ、「HER2 2+は陽性ではなく、FISHで確認せよ」ということになります。
 ○FISHでの判定となるので、「それが正解」となります。
「 ◆今回の結果を踏まえ、執刀頂く医師は温存手術でとの方針となりました。 おそらくリンパ節の転移はないだろう、との見立てですが、先生の 見解をお示し頂ければ有難く存じます。」
⇒実際の画像をみている訳ではありませんが…
 レポート内容からは、そう思います。