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浸潤性小葉癌 乳腺内リンパ節転移とは

[管理番号:3591]
性別:女性
年齢:51歳
田澤先生、お忙しい中、このような場を設けていただきとても嬉しく思います。
心のもやもやを解決できたらと思い書いています。
文章がまとまらず、わかりずらいかもしれませんが、どうぞ宜しくお願い致します。
左の乳房 BーD領域に少し離れて2つのしこりがあり、術前の画像では10mmくらいと5mmくらいの大きさなので、温存可能と説明を受け、温存手術をうけました。
(マージンを大きめにとっても、もし断端陽性の場合は、全摘しますとの説明もうけました)
先日、乳房温存手術を終え、術後の病理結果がでたため説明をうけましたが、
わかったようなわからないような、、、でしたので、
とりあえず病理結果のコピーをいただいたので教えていただきたく、宜しくお願い致します。
下記が術後の病理結果です。
(そのままを転記しました)
左乳腺腫瘤2個
1.
5時の部分。
43×35×30mm大。
♯1-5に全割。
肉眼的には8×5×5mmの腫瘍をみる、
組織学的には、乳腺組織のなかに径10mm大の境界明瞭な結節性病変がありリンパ節である。
リンパ節には異型細胞が胞巣を形成して増生する。
一部ではリンパ節周囲の脂肪組織にも浸潤する。
断端は陰性である。
2.
7時の部分。
57×50×43mm大。
♯5-20に
全割。
肉眼的には13×12×12mm大の腫瘍をみる。
組織学的には腫瘍は
♯10、12、13-18に及ぶ浸潤性の腺癌である。
おおよそ20×15×15mm大に拡がる。
腫瘍は、小葉や小乳管を腫瘍細胞が置換する部分と間質の繊維化を伴って浸潤する部分とがみられる。
脂肪組織にも浸潤している。
断端は陰性である。
1、2、は前回の生検に、一致している。
前回の免疫染色の結果を考慮すれば、浸潤性小葉癌に相当する。
1は2のリンパ節転移と考えられる。
エストロゲン 90% 陽性
プロゲステロン 90% 陽性
HER2タンパク 特殊型のため参考値 3+
ki67(MIB-1) 10-20%(Hot spot 25%)
と記載されておりました。
ちなみに、主治医からの説明では、
この2つのしこりは繋がっていたとのこと。
(同じ乳管と解釈していいのか?主治医に確認すべきでしょうか?)
センチネルリンパ生検では
術中にOSNA法にて検査をしたところ
4個中4個とも陰性だったとのことでした。
また、前回の生検とは、術前の生検とのことでその結果は
HE染色では硬癌のようにみられますが、
E-cadherinの免疫染色ではいずれの腫瘍も陰性のため、小葉癌を示唆する所見となっていた
とのことです。
そこで、質問です。
1.脇の下のリンパ節は陰性だったということなのですが、ふたつのうち、もうひとつの腫瘍が乳腺内のリンパ節とのこと。
乳腺内のリンパ節とは、どのような扱いになるのでしょうか。
ネットなどみても情報があまりなくてよくわかりません。
乳腺内のリンパ節に転移していると脇のリンパ節にいっていなくても転移にふくめる?
あくまで腫瘍のひとつ?
T1N0? それともT1N1? になる?
私の場合、ステージ2になるのでしょうか?
また、私の腫瘍は20×15×15mmということ?ですか?
肉眼的には13×12×12mm
組織学的には20×15×15mmに拡がるとありますか、その差の7mmが浸潤という意味?になるのか?
それとも20mmがまるまる浸潤ですか?
2.リンパ行性転移と血行性転移があるということですが、
脇の下のリンパ節に転移していなくとも血行性で遠隔転移はありうるので全身治療が必要ということですよね?
血行性とリンパ行性ではどのくらい時間差があるのでしょうか?
遠隔転移が心配です。
(造影CTは術前にしましたが、PETとか骨シンチなどはしておりません。
骨はCTでもわかるものですか?MRI?)
3.サブタイプは乳管癌をもとに作られているということですが、特殊型に含まれる浸潤性小葉癌はあてはまらないのでしょうか?
また小葉癌にも種類?みたいなものは、あるのでしょうか。
ちなみに、小葉から発生するものが小葉癌という認識なのですが、非浸潤性小葉癌が浸潤性小葉癌に必ずなる?変わっていくのですか?
小葉癌の情報が少ない上、小葉がんでHER2陽性は稀だということもとても不安です。
やはり浸潤性小葉癌でHER2陽性だとおとなしくはないということなのでしょうか?
検査結果にはグレードはかかれていません。
4.浸潤性小葉癌は、ER陽性率が高く、一見おとなしいルミナールAが多いけれど、タモキシフェンには抵抗性があるというのをどこかのサイトでみました。
これは浸潤性小葉癌の術後補助療法としてはタモキシフェンだけでは弱いのでしょうか?
(まだ閉経しておりません。主治医の先生からは閉経が確認されたら、お薬を変えていくとはいわれましたが、、、)
また、浸潤性小葉癌には、術前抗がん剤がききにくく小さくならないということもネットで目にしましたか、抗がん剤も効きずらいのですか?
主治医からは、ki67の値がグレーゾーンなので、抗がん剤をやるかやらないか、考えてくるように言われました。
やはり抗がん剤もやって、ホルモン療法をやったほうがいいのでしょうか。
HER2のところに、特殊型のため参考値とかいてあるのが気になります。
これもどう、とらえたらよいのか?
浸潤性小葉癌の場合、なにか違うのでしょうか?
5.私の場合、再発率と10年生存率はどれくらいなのでしょうか。
下の娘が小学生なので、せめて成人するまではなんとしても元気でいたいです。
無治療の場合の再発率
ホルモン療法のみ
ホルモン療法と抗がん剤
抗がん剤をした場合の上乗せはどのくらいでしょうか?
長々とすみません。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「乳腺内のリンパ節とは、どのような扱いになるのでしょうか。T1N0? それともT1N1? になる?」「私の場合、ステージ2になるのでしょうか?また、私の腫瘍は20×15×15mmということ?ですか?」
⇒pT1c(20mm), pN0, pStage1です。
「その差の7mmが浸潤という意味?になるのか?それとも20mmがまるまる浸潤ですか?」
⇒20mmです。
 「肉眼的」は単なる「参考所見」です。
「2.リンパ行性転移と血行性転移があるということですが、脇の下のリンパ節に転移していなくとも血行性で遠隔転移はありうるので全身治療が必要ということですよね?」
⇒その通りです。
「血行性とリンパ行性ではどのくらい時間差があるのでしょうか?遠隔転移が心配です。」
⇒それは誰にも解りません。
「、PETとか骨シンチなどはしておりません。」
⇒そんなものは不要です。
「骨はCTでもわかるものですか?」
⇒解ります。
「特殊型に含まれる浸潤性小葉癌はあてはまらないのでしょうか?」
⇒あてはまります。
「また小葉癌にも種類?みたいなものは、あるのでしょうか。」
⇒ありません。
「非浸潤性小葉癌が浸潤性小葉癌に必ずなる?変わっていくのですか?」
⇒非浸潤性小葉癌は、あくまでも「リスク因子」扱いとはなっています。
「浸潤性小葉癌でHER2陽性だとおとなしくはないということなのでしょうか?」
⇒HER2陽性だから「大人しくない」とは限りません。
「これは浸潤性小葉癌の術後補助療法としてはタモキシフェンだけでは弱いのでしょうか?」
⇒全くそんなことはありません。
「また、浸潤性小葉癌には、術前抗がん剤がききにくく小さくならないということもネットで目にしました」
⇒ネットの情報に踊らされ過ぎです(このQandAもネットですが…)
 単に、浸潤性小葉癌は「多発が多いので」術前抗がん剤をしても「星座のように」点在して残る可能性が高く、術前抗がん剤の適応になり難いという事です。
「抗がん剤も効きずらいのですか?」
⇒違います。
「主治医からは、ki67の値がグレーゾーンなの
で、抗がん剤をやるかやらないか、考えてくるように言われました。」

⇒(Ki67とは無関係に)HER2陽性なのだから「抗HER2療法すべき」です。
やはり抗がん剤もやって、ホルモン療法をやったほうがいいのでしょうか。」
⇒抗HER2療法+ホルモン療法となります。
「浸潤性小葉癌の場合、なにか違うのでしょうか?」
⇒何も違いません。
「5.私の場合、再発率と10年生存率はどれくらいなのでしょうか。」
⇒抗HER2療法の場合は3年のデータしかありません。

再発率 生存率
抗HER2療法なし 11% 98%
   〃   あり 5% 99%

 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、先日は早々にお返事いただき感謝しております。
とにかくいろんなことが気になりすぎて、不安でたまらず、
またここにきてしまいました。
再度、質問させてください。
T1N0でステージ1とはいえ、
20mmのしこりから乳腺内リンパ節転移があり10mm大だし
浸潤性小葉癌で稀なHER2 も陽性で
普通じゃないんじゃないか?
と不安に思ってしまうのです。
血行性ですでにどこかに遠隔転移してるじゃないかと不安でしょうがありません。
気にしすぎでしょうか?
前回、回答いただいた再発率の見方なのですが、
『 抗HER2あり 再発率 5% 』という数値は、
ホルモン療法も抗HER2 もする場合
ということでよいですか? 
きちんと治療すれば、完治は望めるってこと?
私の場合、特殊型の浸潤性小葉がんですが、
特殊型でも、ルミナールB HER2陽性、いわゆる トリプルポジティブというものになるのでしょうか?
 
晩年再発があったり、小葉癌は意外なところに転移があるということですが、
何年経過したらひと安心できるのでしょうか?
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「浸潤性小葉癌で稀なHER2 も陽性で普通じゃないんじゃないか?と不安に思ってしまうのです。」
⇒全く無意味な心配です。
 何も特別ではありません。
「血行性ですでにどこかに遠隔転移してるじゃないかと不安でしょうがありません。
気にしすぎでしょうか?」

⇒質問者に限らず、誰しも「心から不安が消えさる」までは「時が必要」となります。(再発を不安に思っているのは誰しも同じですが、やがて気にならなくなるのも皆さん同じです。)
「『 抗HER2あり 再発率 5% 』という数値は、ホルモン療法も抗HER2 もする場合ということでよいですか? 」
⇒その通りです。
「きちんと治療すれば、完治は望めるってこと?」
⇒本気で「完治が望めない」状況だと思っているのですか??
 もしも質問者が「完治が望めない」のであれば、「乳癌診療は大変」なこととなってしまいます。(外来も病棟も再発患者さんで立錐の余地も無くなるでしょう)
 冷静になって、数字を確認してみてください。
「私の場合、特殊型の浸潤性小葉がんですが、特殊型でも、ルミナールB HER2陽性、いわゆる トリプルポジティブというものになるのでしょうか?」
⇒その通りです。
 サブタイプに「特殊型かどうか?」は無関係です。
「何年経過したらひと安心できるのでしょうか?」
⇒いくら乳癌が大人しい(故に、晩期再発もありえる)とはいえ、「2年⇒5年⇒10年⇒20年」と、どんどん再発率は減っていきます。
 大人しいが故の「いつまで経っても根治とは断言できない」面があるのは事実ですが、「一安心」という意味では「5年」でしょう。