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リンパ節転移(センチネルと腋下の違い)

[管理番号:777]
性別:女性
年齢:53歳
始めまして。
4か月前に乳がんの手術を受けたものです。
よろしくお願い致します。
通常、リンパ節転移が4個以上あれば、全摘でも放射線治療を受けた方が良い等の話しを聞きますが、この場合のリンパ節転移の個数は、センチネル生検をした場合のセンチネルリンパ節転移の数の事でしょうか?
センチネルリンパの数は2~4個位が多いと聞きますが、このうちの例えば4/4に転移があれば、リンパ節転移4個以上につき、全摘でも放射線治療が必要と考えるのでしょうか?
センチネルリンパではなく、脇下のリンパ節の場合、30個/40個とかという数字を聞いたことが有りますが、この場合、転移が30個位あった場合でも4個以上の転移として同じ扱いになるんでしょうか?
*たまに、リンパ節転移3個までなら深刻にならなくても良いとか4個以上なら心配と言う記事を読んだりするので、良く分からなくなって来ました。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「センチネルリンパ節」と「腋窩リンパ節」については、勘違いされている方が多い事に最近気づいていました。
 この機会に説明します。

回答

「このうちの例えば4/4に転移があれば、リンパ節転移4個以上につき、全摘でも放射線治療が必要と考えるのでしょうか?」
⇒その通りです。
 ただし、この場合には当然「追加郭清の適応」として追加郭清をされている筈です。
 「センチネルリンパ節は腋窩リンパ節の中でもレベル1に属します」
 腋窩リンパ節とセンチネルリンパ節は別物ではなく、『センチネルリンパ節は腋窩リンパのうちのひとつ』です。
 「腋窩リンパ節の中で、リンパ管の流れの中で最も上流」のものを、特に「センチネルリンパ節と呼んでいるだけ」です。
リンパ節転移の個数は、
①センチネルリンパ節生検を施行している場合
=(センチネルリンパ節として摘出した)リンパ節の転移個数+(追加で郭清した)リンパ節の転移個数
②最初から「腋窩郭清」を行っている場合
⇒(腋窩リンパ節として郭清した)リンパ節転移個数
 
「転移が30個位あった場合でも4個以上の転移として同じ扱いになるんでしょうか?」
⇒「リンパ節転移の扱い」では
pN1 0-3個
pN2 4-9個
pN3 10個以上
というように「4個以上」と「10個以上」を区別しています。
 
「リンパ節転移3個までなら深刻にならなくても良いとか4個以上なら心配と言う記事」
⇒これは、pN1とpN2で分けていることが多いことが原因です。
特に
「リンパ節転移4個以上は乳房切除後の放射線照射をすべき」推奨グレードA
「luminal Aでもリンパ節転移4個以上では抗がん剤すべき」St.Gallen 2015 voting 91%
 
○リンパ節転移が「症例、遠隔転移再発する」リスク因子の一つとして重要であることは間違いありません。
 ただし、あくまでも「リスク因子」であって『直接、遠隔転移を起こす訳では無い』事にも注意は必要です。
 
 私は数多くの患者さんをみてきていますが、「リンパ節転移が10個以上」とか「20個以上」でも関係無く予後がいいのが乳癌の特徴なのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2 リンパ節転移(センチネルと腋下の違い)】

性別:女性
年齢:53歳
とても分かりやすい説明ありがとうございました。
今回、このような質問をした理由には以下事情があります。
9か月前に、がん確定検査の為に、触診、エコー、マンモ、MRI、細胞診を受け
クラス5で乳がん確定。
触診、エコー、マンモではみつかりませんでしたが、造影MRIで脇のリンパ1か所に1cmのしこりがみつかり、その部分の細胞診にもがん細胞がみつかりました。
リンパ節転移があるということで、抗がん剤の提案がありました。
腫瘍径が2.7cm有り、温存希望だったため、この大きさでは形が変わる可能性が有り、術前に抗がん剤をして、原発癌及びリンパ節転移を小さくして手術した方が良いと言う提案があり、術前抗がん剤~手術~放射線治療が終わりました。
術前抗がん剤FEC4回で画像上2.7cmのしこりが0.9cm 腋下リンパ1.0cmが0.0cmになりました。
術前組織診で⇒ルミナルB型
エストロゲン受容体 強陽性
プロゲステロン受容体 境界線
ハーツー陰性
グレード2
ki67 45
術後病理でもほぼ変わりは有りませんでしたが、ki67の検査はありませんでした。
**本題です**
実は、術前抗がん剤でリンパ節転移が(画像上)無くなったと言う事で、手術時にセンチネル生検(抗がん剤をした場合意味が無いとの事)及び、腋窩リンパ節郭清もしていません。
術前に主治医から説明が有り、「腋窩リンパ節郭清をしてもしなくても生存率は同じ。 画像上消えているので(がん細胞が若干残っているかも知れないが)その場合でも一生しこりが大きくならず、腋窩リンパ節郭清をしなくて済む人が半数ほどいる、定期的に脇下の検査をするし、手遅れになるような事態にはならない。もし、しこりができてから腋窩リンパ節郭清をしても大丈夫。」との説明で納得して、手術を受けました。
術前説明時には納得していたつもりでしたが、最近では、術前抗がん剤の前にセンチネル検査を受けていたら、結果どうだったんだろう?等の疑問が出てきました。
いまさらですが、しこりができるまで(確認できるまで)腋窩リンパ節郭清を受けなくても本当に大丈夫でしょうか。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 「術前化学療法後の腋窩郭清の取り扱い」ですね。
 術前化学療法後の腋窩の取り扱は「化学療法前の状況を参考にする」ことが原則です。
 つまり、「化学療法前レベル1まで転移があった場合」⇒(化学療法後に画像上消失したとしても)「レベル1まで郭清する」が大原則です。
 その意味で質問者のケースは特殊と言えますが、「患者さんとの合意が成立していれば、ありえる選択」ではあります。

回答

「術前抗がん剤の前にセンチネル検査を受けていたら、結果どうだったんだろう?等の疑問が出てきました」
⇒(細胞診で陽性と出ている以上)センチネルリンパ節生検の適応はありません。
 必ず「陽性」となって、「腋窩郭清が追加」される筈です。
 
「しこりができるまで(確認できるまで)腋窩リンパ節郭清を受けなくても本当に大丈夫でしょうか」
⇒私は標準治療どおり「化学療法前に転移と判断したリンパ節は、化学療法後に画像上消失したとしても」そこまでは郭清すべきだと考えています。
 ただし、担当医のいうように「腋窩リンパ節は しこりが確認されてから郭清」しても(遅くならなければ)影響無いのも事実です。
○3カ月に1回通院している筈ですから(タモキシフェン内服してますよね?)その都度、きちんと「担当医自身にエコーでリンパ節をみてもらう」事で大丈夫です。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

ご回答ありがとうございます。
追加で教えてください。
リンパ節の件は、とりあえず安心しました。
抗がん剤の前にセンチネルをしていたらどうだったのか?の件ですが、
これは、
画像上及び細胞診でリンパ1個が陽性と確認がとれていましたが、
本当に1個だけだったのか?
もしくは4個以上転移は無かったのか?
と詳しい検査をうける機会を失った事で、後からそれに気づき不安になった為です。
①田澤先生はリンパ節転移の正確な数はどれ位あった可能性があると思われますか?
それから、主治医から、術前抗がん剤の成果が「グレード1 大して効果は無かった。」と言う結果だと説明され、術後に抗ホルモン剤と共にUFT経口薬を薦められています。
抗ホルモン剤はまだ始まっていません。
近日中に始まる予定です。(次回診察時)
②エストロゲンは受容体80%ですが、プロゲステロンの受容体が境界線の為、抗ホルモン剤だけでは効果が低いと思われてるのでしょうか?
術前抗がん剤を薦められた時も、ki67が45と高値な事と、リンパ節転移が1個ある事と、プロゲステロンが境界線である事が薦める理由との事でした。
よろしくお願い致します。
他の方が書かれている通り、私も田澤先生を第2の主治医とさせて下さい。
今は落ち着いて来てますが、それでも時折、東京オリンピックまで生きれるのか?!
骨が少し痛いだけで、骨転移では?!と、怯え、抗がん剤治療で髪が抜け、静脈炎で時計を付けるだけでも次の日、手首が1日中痛み、放射線治療後の醜い皮膚が元に戻るのか?!と不安と恐怖心は消えません。
本当にお忙しい中、自分の患者でもない者の為に時間を割いてアドバイスを下さり、頭の下がる思いです。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 術前化学療法施行後に「画像上、リンパ節が消失」したので「郭清省略」となっていましたね。

回答

「①田澤先生はリンパ節転移の正確な数はどれ位あった可能性があると思われますか?」
⇒これは、「CTや超音波で画像評価」しない限り、予想する事も憚れます。
 「CTや超音波で画像評価している筈の」担当医に聞いてみる方が「正解に近い」筈です。
 文面からは「1個と判断」しているようですが…
 
「術後に抗ホルモン剤と共にUFT経口薬を薦められています」
⇒質問者は「質問2でFEC4回で…」という記載がありますが、術前化学療法としてはtaxaneをしていないのでしょうか?
 標準治療での推奨では、術後補助療法として(化学療法をするとしたら)『UFTではなくてtaxane』となります。
 
「②エストロゲンは受容体80%ですが、プロゲステロンの受容体が境界線の為、抗ホルモン剤だけでは効果が低いと思われてるのでしょうか?」
⇒効果は十分だと思います。
 ホルモン療法で効果が不十分だと言う意味ではありません。
○「ルミナールB」と考えて 抗がん剤の上乗せ効果が期待できると考えているのです。
「ルミナールBである理由」として
・PgR<20%(St.Gallen 2013で参考値として記載あり)
・Ki67=45%(基準値は定まっていませんが、30%以上はルミナールBでいいと思います)
 
★「リンパ節転移が1個ある事」は、抗がん剤を勧める理由とはなりません。
 4個以上なら「勧める根拠」となるでしょう。 St.Gallen 2015/08/04
 
 

 

質問者様から 【質問4】

早々のご回答ありがとうございます。
タキサン系については、FECと共に提案されましたが、FECの副作用が強く出た為にタキサン系については私の方から断念~手術へ進みました。
術後改めて、タキサンが無理であればと言う事で、副作用の弱い経口抗がん剤UFTを提案して頂きました。
①私の場合、抗がん剤の上乗せ効果はどれ位になるんでしょうか?
事実、FEC自体の効果も3分の1くらいしか効果が無いグレード1だった事もあり、副作用の弱い経口抗がん剤も出来ればしたくは有りません。
主治医は知識も豊富で、再発率が少しでも下がるように提案をしてくれているのは理解しているのですが、私の身体の事であるので、いろいろな情報(田澤先生の意見なども考慮し)を得て、自分の生死感も加味しそのうえで自分で決めたいと思っています。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 術前化学療法の「効果」が良くなかったからといって、「再発予防効果」として「意味がない」と判断することは危険です。

回答

「①私の場合、抗がん剤の上乗せ効果はどれ位になるんでしょうか?」
⇒FECだけだと+7.4%
 ここにタキサンを加えると更に+5.2%の上乗せ効果が期待できます。
 ※UFTにより「上乗せがあるのか?」は全く不明
 
 

 

質問者様から 【感想5】

早々のご回答ありがとうございました。
FECの副作用で心身がボロボロになってしまった為、7%以上の上乗せ効果があった(無駄ではなかった)事(統計上とは理解していますが)が、せめてもの救いです。
本当にありがとございました。