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追加切除とセンチネルリンパ生検は必要なものですか

[管理番号:2588]
性別:女性
年齢:55歳
田澤先生こんにちは。
田澤先生のQ&Aで乳癌のことを勉強しています。
大変、お世話になっています。
ありがとうございます。
早速ですが、ご教示ください。
年齢55歳、女性、胸のしこりで受診。
私の妻の事ですが、1月(下旬)日に胸のしこりを見つけて、個人病院の乳腺外科に行きました。
   
同日、針生検(細いもの)で細胞診を実施し、2月(上旬)日にクラスⅣと判明、
2月(中旬)日に組織診のため、外科的生検(太い針を使わず部分麻酔で組織とそのまわり2~3センチを切除した。
太い針を使う方法も提示されましたが、同じ部分麻酔で済むなら、取りきれたほうがいいと希望した)を実施し、
2月(下旬)日に、9ミリの浸潤性乳管がん硬がん、異型度グレードⅡ、脈管浸潤リンパ管なし(L1-0(表記が意味不明の場合は無視してください))、血管少しあり(V1-1(表記が意味不明の場合は無視してください))と確定診断がつきました。
ホルモンレセプター及びHER2は、すでに取った細胞から追加申請中です。
検査結果のコピーをお願いしましたが、患者の個人情報なのでコピーはできないといわれ、聞いたことを書き取った次第です。
次のステップは、主治医が非常勤医員をしている総合病院で主治医が全身麻酔で、
患部をさらに外科切除し(さらに1センチくらい)、センチネルリンパ生検を二つの色素を用いて調べ、
手術中に転移の結果を出し、必要なら腋窩リンパ節郭清を実施すると説明してくれました。
その後は、放射線治療を実施し、ホルモン療法は不要なのではないかとおっしゃいました。
ガイドラインに則った処置ということなので、セカンドオピニオンの提案がありましたが、誰に何を聞いていいかわからず、3月(上旬)日に手術予定の総合病院にて心電図、心エコー、造影CT(乳房のみ)を実施し3月(中旬)日に結果を聞きに行き、手術の予定を決めます。
主治医を信頼していますが、杞憂かもしれませんが、総合病院の評判は芳しくなく(乳腺外科の評価はなし)、放射線技師、臨床技師の技量もわからず、採取した組織のがん細胞を正しく判断してくれるのかも不安です。
そこで、田澤先生に、お聞きしたいのですが、
(1)患部は切除済みですが、追加切除とセンチネルリンパ生検は必要なものですか。
転移の可能性があるのでしょうか。
(2) センチネルリンパ生検後の腋窩リンパ節郭清の判断の意見の分かれるところはどこですか。
(3)術前検査が不十分な気がしますがいかがですか。
([管理番号:2551:妻の病状]を参照しました)
(4)妻の症例ですとあまり医師や技師の技量に影響されない程度の症例でしょうか。
(5)術中のセンチネルリンパ生検の組織の判断は主治医がするのですか。
技師ですか。
乳がんのことなど考えたこともなかったものですから、稚拙な質問ですみません。
      
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
外科的生検後の「手術」についてですね。
○外科的生検の病理結果で「重要なもの」が抜けています。
 それは「断端の評価」についてです。
 「外科的生検」は、あくまでも「生検」だから、必ずしも「断端を考慮しなくてはならない」わけではありませんが、(わざわざ針生検をせずに)「取り切れた方がいい」として「外科的生検を選択」したわけですから「断端の情報を教えてもらうべき」です。
 
「(1)患部は切除済みですが、追加切除とセンチネルリンパ生検は必要なものですか。」
⇒「追加切除」について
 外科的生検はあくまでも「生検」だから「原則としては追加切除が必要」です、
 ○ただし、冒頭でもコメントしたように(針生検でなく、あえて)「外科的生検を選択」したわけですから、(その9mmの癌に対し)「十分なマージンが確保されている」のであれば、省略も可能です。
 「センチネルリンパ節生検」について
 これは、「浸潤癌である以上」やった方がいいです。(ガイドラインでも同様)
 
「転移の可能性があるのでしょうか。」
⇒確率的には低いですが、「ゼロで無い以上」万が一転移が存在していた場合のリス
クを考えればセンチネルリンパ節生検すべきなのです。
 
「(2) センチネルリンパ生検後の腋窩リンパ節郭清の判断の意見の分かれるところはどこですか。」
⇒これは「微小転移や肉眼的転移があった際の取り扱い」です。
 (参考までに)
 まずは現時点での「センチネルリンパ節生検」と「腋窩郭清」の考え方について整理していきましょう。
①SLN(センチネルリンパ節)に転移を認めない場合には「腋窩郭清は省略」する
  これについては「疑問の余地」はありません。
  世界のスタンダードと考えていただいて結構です。
  もしもいまだに「日本の地方のどこかで(ひっそりと)明らかなN0症例に対して、センチネルリンパ節生検をせずに腋窩郭清をしている(一般)外科医が居るとしたら、非難されるべき時代」と言えます。
②SLNに微小転移(2mm以下)を認めた場合
  これについても「腋窩郭清は省略する」でほぼ意思統一されている。と考えて結構です。
  IBCSG 23-01(臨床試験)で934症例での「微小転移症例の非郭清と郭清群との比較」で「生存率も再発率も差がない」ことが証明されています。
  これを受けて「乳癌診療ガイドライン」でも「腋窩郭清の省略が勧められる」乳癌ガイドライン推奨グレードBとなっています。
♯Bとはなっていますが、内容的にはAと思います。
③SLNに肉眼的転移(>2mm)を認めた場合
  ここが、正に「議論の多い」ところです。
  ・SLN転移陽性患者の約半数は非SLN転移を有していない
  ・ACOSOG Z0011(臨床試験)では、以下の条件
     「腫瘍径5cm以下で画像上リンパ節転移を疑わない」「SLN転移2個以下」
「温存手術(術後照射を行う)」「術後薬物療法あり」を満たす場合には「郭清の有無で生存率も再発率も差がない」との結果
  ・2014のASCOガイドラインでは「照射を行う温存手術」であれば「2個までの転移」であれば、腋窩郭清を省略すべき
 これらの中で「適切な基準に基づいて腋窩郭清省略を考慮しても良い」乳癌ガイドライン推奨グレードC1となっています。
 この「適切な基準」というのが各施設で様々なのが現状です。
 
「(3)術前検査が不十分な気がしますがいかがですか。」
⇒「MRIで乳房内の拡がり診断」するべきでしょう。
 
「(4)妻の症例ですとあまり医師や技師の技量に影響されない程度の症例でしょうか。」
⇒極めて一般的だとは思います。
 その病院に「常勤の病理医」がいて「術中迅速病理診断が可能かどうか」が重要です。
 
 
「(5)術中のセンチネルリンパ生検の組織の判断は主治医がするのですか。技師ですか。」
⇒病理医です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生ありがとうございます。
田澤先生の見識あるご教示と不安をもっての治療は
よくないとのことによりいっそ先生に手術をお願いしたいと思い始めました。
転院理由は先生のご経験と信頼できるお人柄です [管理番号:2588]です。
早速ですが、[管理番号:858「病院選び」]を拝見しました。
(概略再掲です)3月(上旬)日に手術予定の総合病院にて心電図、心エコー、造影CT(乳房のみ)を実施し3月14日に結果を聞きに行き、手術の予定を決めるところまで進んでいます。
できればクリニックに行く再診予定があるので、できれば(中旬)日に転院を申し出たいと思っています。
ご多用のところ申し訳ありませんがよろしくお願いします。
そこで、田澤先生に、お聞きしたいのですが、
(1)(概略再掲です)すでに、1月(下旬)日に胸のしこりを見つけて、細胞診で2月(上旬)日にクラスⅣと判明、2月15日に組織診のため、外科的生検(太い針を使わず部分麻酔で組織とそのまわり2~3センチを切除し、2月(下旬)日に、9ミリの浸潤性乳管がん硬がん、異型度グレードⅡ、脈管浸潤リンパ管なし(L1-0(表記が意味不明の場合は無視してください))、血管少しあり(V1-1(表記が意味不明の場合は無視してください))と確定診断がつきました。
手術は、先生のところで行ってもらうことでがんの進行に影響がありますか。
いつ頃、手術になりますか。
(2)今のクリニックに受診し、その後、総合病院にて心電図、心エコー、造影CT(乳房のみ)を実施していますがなにか問題がありますか。
総合病院の結果も必要ですか。
(3)患部は切除済みですが、追加切除は、医師が変わっても問題ないですか。
(4)転院予定ですが、セカンドオピニオンになりますか。
転院でよいのですか。
今の主治医に何をお願いすればいいですか。
行き場がなくなるのが、怖いので申し出の順序を教えてください。
(5)○○県の地元でその後のフォローをしていきたいですが、こちらの希望の病院を自由に選べますか。
(6)先生のところではどのような進め方ですか。
こちらは遠方にてよろしくお願いします。
(7)ご教示いただいた「MRI乳房内の拡がり診断」や「常勤の病理医」の「術中迅速病理診断」は可能ですか。
余談ですが、クリニックから外科的生検の請求変更の連絡がありました。
乳腺腫瘍摘出術(長径5センチメートル以上)から乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)に変更になるとのことです。
外科的生検ではがんと確定診断がないのに
乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)になるのかなと思いました。
今度、総合病院で手術をしたらまた乳腺悪性腫瘍手術になると変な気がしました。
大変お忙しいところ度々恐縮ですが、お世話になります。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
御評価いただきありがとうございます。
転院希望ですね。了解しました。
こういうケースは「時々」あります。特に問題ありません。
ただ、質問者の場合に問題となるのは(前回の回答でもコメントしましたが)その「生検標本での断端の情報」です。
(十分ではないにしても)「切除断端は陰性となっているのか?」 これが最も重要です。
 
 もしも「生検標本で、腫瘍が露出」していれば、「どの方向か?」という情報が必要です。(もしも、その情報が無いのであれば「全方向に」マージンを十分に持たせるしかありません)
          
「手術は、先生のところで行ってもらうことでがんの進行に影響がありますか。」
⇒病状(腫瘍の大きさ)からすれば、「特に影響はない」と思います。
 
「いつ頃、手術になりますか。」
⇒これは秘書へご連絡ください。 
 
 
「(2)今のクリニックに受診し、その後、総合病院にて心電図、心エコー、造影CT(乳房のみ)を実施していますがなにか問題がありますか。」
⇒特に問題ありません。
 「造影CT(乳房のみ)」は「MRIの替り」に行っているようです。
 
「(3)患部は切除済みですが、追加切除は、医師が変わっても問題ないですか。」
⇒生検での「病理結果に腫瘍の拡がり情報」があれば、問題ありません。
 
「(4)転院予定ですが、セカンドオピニオンになりますか。転院でよいのですか。」
⇒転院(通常の診察)でいいのです。
 セカンドオピニオンは「診察無で資料を見てコメントする」だけなので、この場合には当て嵌まりません。
 
「今の主治医に何をお願いすればいいですか。」
⇒紹介状及び(生検の)病理結果のコピーです。
「(5)○○の地元でその後のフォローをしていきたいですが、こちらの希望の病院を自由に選べますか。」
⇒それは大丈夫です。
 紹介先は、どちらでも構いません。
 ただ「数か月に1度の診療」の場合には「当院を受診」される方も多いです。
  
「(6)先生のところではどのような進め方ですか。こちらは遠方にてよろしくお願いします。」
⇒(乳房の造影CTを撮影されてはいますが)可能なら「乳房MRI」を撮影しましょう。
 そうすると、「MRI及び、採血など」を行い、同日に「診察、入院案内」まで行います。
 
「(7)ご教示いただいた「MRI乳房内の拡がり診断」や「常勤の病理医」の「術中迅速病理診断」は可能ですか。」
⇒勿論です。
 当院では,それら全てを行っています。
 
「余談ですが、クリニックから外科的生検の請求変更の連絡がありました。乳腺腫瘍摘出術(長径5センチメートル以上)から乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの)に変更になるとのことです。」
⇒「追加手術をしない」のであれば、それでもいいですが、「追加手術が前提」なのだから「乳腺腫瘍摘出術」のままでも良さそうな気がします。

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