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センチネルリンパに転移ありでの抗がん剤の必要性について

[管理番号:2938]
性別:女性
年齢:46歳
昨年末に胸のしこりに気づいてから、いつもこのサイトを拝見しております。
先生の丁寧な回答にはいつも驚きと感謝の思いでいっぱいです。
お忙しいところ恐縮ですが、この度、右乳房温存手術およびセンチネルリンパ生検を
受け(2016/4/(中旬)手術)、病理の結果がでました。
腫瘍径が思ったより大きかったこと、およびリンパ節への転移があった
ことにショックを受けています。
(リンパ廓清は実施しておりません。
術前の説明でセンチネルリンパ生検で
リンパ転移が1~3までの場合は、廓清は行わないと説明を受けています)
術前は、放射線治療およびホルモン治療の予定だったのですが、病理の結果を
受けて、抗がん剤を追加した方がいいのではないかと主治医から提案がありました。
私としては、次男が来年小学校入学を控えており、生活の質を落としたくないため
オンコタイプdxをお願いし、その結果をみて決断しようと思っています。
(オンコタイプdxの提案は主治医よりありました)
<質問①>
オンコタイプの結果が低リスク(0~18)では抗がん剤は受けない、
高リスク(31~50)であれば抗がん剤は受ける、と決断できるのですが、
迷うのが中間リストと結果がでた場合です。
以前、他の方からの質問で、先生は「高リスクとでた場合のみ抗がん剤を受ける
という選択でよいのではないか」とお答えになっているのを拝見しました。
私の病理結果でも、上記の判断と同様とお考えになりますでしょうか。
(オンコタイプの結果は5/(下旬)に出る予定です)
<質問②>
オンコタイプでのホルモン治療のみと化学療法追加での差が
何%ぐらいあると化学療法上乗せが効果的と思われますか。
(個人的には5%ぐらい差がでると化学療法追加を考えたくなります。
まったく根拠はないのですが)
判断のひとつとさせて頂きたく、よろしくお願い致します。
<質問③>
また私は年齢:46才で閉経前なのですが、検査をお願いした後に調べたところ、オンコタイプdxはリンパ転移があった場合、閉経後でないと対象にならな
いとあり、検査が無駄にならないかと心配になりました。
主治医からはこの点については特に何も言われませんでした。
近日中に主治医にも確認しようと思っておりますが、私のような場合(閉経前、リンパ転移あり)検査の結果はどの程度信頼できるものなのでしょうか。
お考えをお聞かせ頂けますと幸甚です。
よろしくお願い致します。
<病理結果>
腫瘍径(浸潤部):3.5cm×1.5cm×1.0cm
腫瘍の広がり(ductal spreadを含める):3.5×1.8×1.0cm
組織型 :invasive ductal carcinoma, scirrhous carcinoma
浸潤度 :g+、f+
娘結節 :cut surface – , 約5mm以内 -
リンパ管浸潤 : -
静脈浸潤 : -
intraductal spreading :+, EIC :-
壊死comedo :+ , punctuate :- , 石灰化 :+
組織額的異型度
 Tubular formation : 2(10%-75%), Mitosis score:1(0-7/10HPF),
Nuclear atypia :2, Total score:5, Tumor grade:1
リンパ節転移 :sentinel:0/1, non-sentinel:2/2(うち一つはmicrometastasis)
 合計:2/3
ホルモン受容体 ER :約80%
        PgR:約70%
ki-67 :1-9%
HercepTest :1+
主治医からは「ステージⅡb」と言われています。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT2(35mm), pN1, pStage2B, luminalA, NG1
Ki67が一桁は「かなり大人しいタイプ」であり、抗ガン剤は効きにくいと考えられます。
 SABCS2015での報告では(腫瘍径が5cm以上やリンパ節転移陽性であっても)「閉経前のluminalAにおいては化学療法を行うベネフィットはない」と結論づけています。
 St. Gallen2015 votingでも「luminalAで化学療法の適応はリンパ節転移4個以上」が最多となっています。
○質問者は「明らかなluminalA」であり、リンパ節転移も実質1個(micrometastasisは予後に影響しないとの見方が優勢です)だから、私であればそもそも「化学療法は勧めない」ところです。
 (Ki67も低値であり、OncotypeDXもlow scoreとなりそうですが)万が一「high score」となれば(せっかくOncotypeDXをしたのだから)抗癌剤すべきとは思いますが、「中間リスク」ならば「化学療法は不要」でいいと思います。
 
「病理の結果を受けて、抗がん剤を追加した方がいいのではないかと主治医から提案がありました。」
⇒根拠が脆弱です。
 「腫瘍が大きい」とか「リンパ節転移」などを根拠とすることは「新しい知見」とは逆行します。
 
「オンコタイプdxをお願いし、その結果をみて決断しようと思っています。」
⇒治療法を選択する根拠になります。
 
「迷うのが中間リストと結果がでた場合です。以前、他の方からの質問で、先生は「高リスクとでた場合のみ抗がん剤を受けるという選択でよいのではないか」とお答えになっているのを拝見しました。」
⇒これは、「全員にあてはめるべきもの」ではなく、あくまでも(OncotypeDX以外のデータからの「個別の判断」となります。
 ただ、質問者は冒頭でコメントしたように「そもそも抗ガン剤の適応が怪しい」と思われるので「OncotypeDXで中間リスクならば化学療法はしない」」でいいと思います。
 
「私の病理結果でも、上記の判断と同様とお考えになりますでしょうか。」
⇒その通りです。
 luminalAに「それ以上、化学療法を勧める」理由はありまえん。
 
「<質問②>オンコタイプでのホルモン治療のみと化学療法追加での差が何%ぐらいあると化学療法上乗せが効果的と思われますか。」
⇒これは全く個人的なものですが…
 二桁(10%)が一つのラインかと思います。
 
「私のような場合(閉経前、リンパ転移あり)検査の結果はどの程度信頼できるものなのでしょうか。」
⇒OncotypeDXも当初は「リンパ節転移の場合は、閉経後のみ」でしたが、現在では「閉経前も可能」とアナウンスされています。
 これは症例蓄積された結果だと思います。
 全く問題ありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

ホルモン療法中の海外移住(1~2年)について
性別:女性
年齢:47歳
昨年、術後の治療について先生のアドバイスをいただきました。
その節はありがとうございました。
お陰様で術後1年検査も無事に終わり、現在、タモキシフェン&リューププリン6ヶ月製剤にてホルモン療法中です。
ホルモン療法は2016年8月より開始しています。
実はこの度、主人の仕事の関係で英国(ロンドン)へ1、2年行く可能性がでてきました。
主人は勤務を休職して学生として渡英するため、生活面(病院など)での勤務先のサポートはありません。
主治医に渡英について相談したところ、
・タモキシフェンは日本にいる家族が病院に来てくれれば処方できる
・LH-RHアルゴニストは渡英のタイミングでやめていい(そもそも私の場合、上乗
場合、期待できるものではないから、とのことでした)
・術後の検査は日本に一時帰国したタイミング(受けれるタイミング)でで受ければ
 よい(半年毎の検査にこだわらなくてもよい)
 術後検査としては、①血液検査(腫瘍マーカー)、②尿検査、③胸部レントゲン,④胸部エコー検査 を半年ごとに受けています。
とのことで、渡英自体に問題はない、とのことでした。
英国の病院を紹介などはできないので、もしも英国で治療(LH-RHアルゴニスト投与、タモキシフェン処方、術後検査)を継続する場合は、病院は自分で探してください、とのことでした。
私としては保険制度の関係もありますし(英国での乳がん治療は保険がきかず実費となることが想定されます)、英国で治療を受けるのは現実的ではなく、基本は日本に一時帰国しての治療継続を考えています。
渡英に関し、私が不安に感じていることは下記の通りです。
・LH-RHアルゴニストを渡英のタイミングで本当にやめてしまっていいのか。
 (以前、ホルモン療法の勉強会に参加した際、OFS(卵巣機能抑制)も5年が標準になりつつある、と聞きましたので、できれば5年は継続、やめることに不安を感じています)
・子供の学校もあるのでどのくらいの頻度で日本に帰国できるかわからず、1年ぐらい帰国できない可能性があると考えています。
長期にわたって術後の検査をしないリスクをどのように考えたらいいのか。
この点に関し、先生のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。
また、私は再発・高リスクに該当するのでしょうか?
(高、中、低ではどれに該当するのでしょうか?)
主治医は高リスクには当たらないとの判断のようですが、腫瘍径も大きく、センチネルリンパにも転移があったので、再発リスクをどのように考考えたらいいのか、よくわからなくなっています。
渡英する場合、遅くても来年の8月ごろの渡英となりそうです。
(渡英直前までリュープリンをすれば、リュープリン投与期間は2年は超えそうです)
術後の病理結果、およびオンコタイプdx等の結果は下記の通りです。
以前の管理番号:2938
<病理結果>
腫瘍径(浸潤部):3.5cm×1.5cm×1.0cm
腫瘍の広がり(ductal spreadを含める):3.5×1.8×1.0cm
組織型 :invasive ductal carcinoma, scirrhous ca carcinoma
浸潤度 :g+、f+
娘結節 :+
切断断端:cut surface – , 約5mm以内 -
リンパ管浸潤 : -
静脈浸潤 : -
intraductal spreading :+, EIC :-
壊死comedo :+ , punctuate :- , 石灰化 :+
組織額的異型度
 Tubular formation : 2(10%-75%), Mitosis score:1 (0-7/10HPF), Nuclear atypia :2, Total score:5, Tumor grade:1
リンパ節転移 :sentinel:0/1, non-sentinel:2/2(うち一つはmicrometastasis
micrometastasis)
 合計:2/3
ホルモン受容体 ER :約80%
        PgR:約70%
ki-67 :1-9%
HercepTest :1+
オンコタイプdx結果
 
スコア:13
ホルモン療法単独での再発率:10%
ホルモン療法+化学療法での再発率:12%
ERスコア:8.4(Positive)
PRスコア:7.0(Positive)
HERSスコア:9・6(Negative)
CYP2D6遺伝子検査 *1/*10(注意)
(主治医はタモキシフェン継続で問題ないとのことでした)
現在の腫瘍マーカー
術後半年検査
 CA15-3 8.9
 CEA  0.9
 NCC-ST-439 3.8
術後1年検査
 CA15-3 9.9
 CEA  1.2
 NCC-ST-439 2.2
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「・LH-RHアルゴニストを渡英のタイミングで本当にやめてしまっていいのか。」
⇒(主治医のいうように)そもそも年齢的には恩恵が高いことはないと考えられるので、構わないと思います。
「長期にわたって術後の検査をしないリスクをどのように考えたらいいのか。」
⇒1年に1回は許容範囲だとは思います。
「私は再発・高リスクに該当するのでしょうか?」
⇒オンコタイプを信じていないのですか?
 RS=13 低リスクです。
 物事はシンプルに考えましょう。