[管理番号:3524]
性別:女性
年齢:42歳
このQ&Aで勉強させてもらっています。
田澤先生、いつもわかりやすい解説解説を有難うございます。
「センチネルリンパ転移陽性における腋窩郭清省略」について質問させてください。
去年左胸の温存手術を行い、センチネル生検の結果、2つのうち1つにマクロ転移がありました。
腫瘍も1センチ位で放射線治療予定だったた
め、術前の同意で、センチネル2つのうち1つに転移がある場合、郭清はしないとしました
はしないとしました。
納得したうえでの郭清省略だったのですが、これ
で正しかったのだろうかと、とても不安になっています。
機械を使って
いるため、今となっては正確なミリ数はわかりませんが、希釈検体500コピー
コピー以上が陽性(2ミリ以上)との説明でした。
病理結果
浸潤径 0.6×0.5 (離れたところにもう1つあり、実質は2センチ位とのこと
とのこと)
NG1
ER(+) PgR(+) Ki67 low HER2陰性
センチネル生検 OSNA(1/2)SN1(-) SN2(+希釈検体710コピー)
脈管侵襲なし
断端陽性++
断端陽性が出たので全摘手術をします。
主治医は「センチネルはマクロ転移
転移ではあるが、微小転移に近いと考えてよい。
郭清省略でよい」と言
言ってくださいますが、やはり腋窩リンパも郭清すべきか迷っています。
質問は、下記になります。
①腋窩リンパ節に転移がある場合(この場合は取り残し?)、大きくなるまでほっといて、そのがん細胞は悪さをしないのでしょうか?
例えば1年後に腋窩再発した場合、その間に遠隔転移などを引き起こすきっかけになるのではないかと不安です。
先生が、「リンパ節は関所のようなもの」と説明されていましたが、関所にがん細胞がキャッチされた、というイメージでよいのでしょうか。
そこだけが増大・増悪するものですか?
②腋窩リンパに再発した場合に郭清しても間に合いますか?
それともいま郭清した方がよいのでしょうか? センチネルに転移があったため、ルミナールAですが、AC+Tの化学療法をしています。
③「腋窩リンパ郭清をしても予後は変わらない」という情報を聞きます。
リンパ節転移は、予後における危険因子だと言われているのに、何故でしょうか?センチネルに転移があること自体、すでにリンパや血行性転移の可能性もあるから全身治療を、ということでしょうか?それなら郭清してもしなくても同じということですか。
④郭清条件を満たすマクロ転移1つの場合、標準治療で腋窩郭清を行うのは「郭清しても予後は変わらない」ということを裏付ける多数のデータがまだ揃わないからでしょうか。
⑤最後に、断端陽性で、切り取った端っこギリギリのところ3/4周(ほぼ全周)に非浸潤ガンがあったそうです。
やはり全摘は避けられないのでしょうか。
センチネル転移があったと言うことは、思っていたよりもガンが広がっていると予想されるのですか。
以上、先生のご意見をお聞かせください。
他の方の回答の中で、「リンパ節転移があっても根治は狙える」と言ってくださり、それを信じて治療を頑張っていこうと思います。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「①腋窩リンパ節に転移がある場合(この場合は取り残し?)、大きくなるまでほっといて、そのがん細胞は悪さをしないのでしょうか?」「例えば1年後に腋窩再発した場合、その間に遠隔転移などを引き起こすきっかけになるのではないかと不安です。」
⇒余程、放っておかない限り、大丈夫です。
「関所にがん細胞がキャッチされた、というイメージでよいのでしょうか。そこだけが増大・増悪するものですか?」
⇒最初は「キャッチして堰止める」わけですが、そのうち(堰止めきれなくなって)「その先のリンパ節へ転移が拡がる」のです。
そのようにして「先の先まで行かないうちに」摘出してしまえばいいのです。
「②腋窩リンパに再発した場合に郭清しても間に合いますか?それともいま郭清した方がよいのでしょうか?」
⇒きちんと「3カ月に1回、担当医自身が腋窩も含めた超音波」をすれば大丈夫(間に合う)ですが、「1年も放ったらかしにする」ようであれば「すでに局所制御できないところまで拡がってしまう可能性」もあります。
「 センチネルに転移があったため、ルミナールルミナールAですが、AC+Tの化学療法をしています。」
⇒全く無意味です。
ルミナールAでは(腫瘍径やリンパ節転移にかかわらず)化学療法は無効(上乗せがない)ことが分かっています。
♯リンパ節転移も4個以上あると、(気になるから)抗癌剤の適応とはなりますが、「センチネルリンパ節1個」で化学療法することは(私であれば)1000%ありません。
「③「腋窩リンパ郭清をしても予後は変わらない」という情報を聞きます。」
「リンパ節転移は、予後における危険因子だと言われているのに、何故でしょうか?」
⇒リンパ節転移をおこしたということは「血行性転移も起こしている」確率が上がるからです。(全くパラレルではありませんが、何となくその傾向がありそうだと思いませんか?)
「センチネルに転移があること自体、すでにリンパや血行性転移の可能性もあるから全身治療を、ということでしょうか?」
⇒違います。
化学療法とは(本来)無関係です。
「それなら郭清してもしなくても同じということですか。」
⇒局所再発の「危険因子」となります。
○局所再発が(進行してしまった場合)局所制御できない範囲にまで拡がってしまうリスクがあります。
そうなると、治癒させることが困難となります。
「④郭清条件を満たすマクロ転移1つの場合、標準治療で腋窩郭清を行うのは「郭清しても予後は変わらない」ということを裏付ける多数のデータがまだ揃わないからでしょうか。」
⇒外科医の立場として「転移しているリンパ節を(残しておいても予後が変わらないと言われているからと言って)そこに残す」ことに抵抗が大いにあります。
それと、「腋窩リンパ節再発」は(もしも、本当に生存率に有意差がないとしても)「お互い(患者さんにとっても、医師側にとっても)にとって避けたいこと」だとは思いませんか?
「⑤最後に、断端陽性で、切り取った端っこギリギリのところ3/4周(ほぼ全周)に非浸潤ガンがあったそうです。やはり全摘は避けられないのでしょうか。」
⇒それだけ、広範囲の陽性であれば仕方が無いとは思います。
「センチネル転移があったと言うことは、思っていたよりもガンが広がっていると予想されるのですか。」
⇒あまり関係ありません。
「リンパ節転移があっても根治は狙える」と言ってくださり、それを信じて治療を頑張っていこうと思います。
⇒勘違いではないですか?
リンパ節転移があっても根治する確率が高い事は、再発率を見れば一目瞭然です。
私がいっているのは「局所再発(リンパ節も含む)や縦隔リンパ節再発などがあっても根治は狙える」ということです。
質問者様から 【質問2】
田澤先生
いつも分かりやすい回答をありがとうございます。
前回、「センチネルリンパ転移陽性における腋窩郭清省略」について質問させてもらいました。
追加で質問をさせてください。
去年温存手術を行い、センチネル生検の結果、2つのうち1つにマクロ転移がありました。
腫瘍も1センチ位で放射線治療予定だったため、術前の同意で、センチネル2つのうち1つに転移がある場合、腋窩郭清はしないとし、郭清はしていません。
病理結果
浸潤径 0.6×0.5 (離れたところにもう1つあり、実質は2センチ位とのこと)
NG1
ER(+) PgR(+) Ki67 low HER2陰性
センチネル生検 OSNA(1/2)SN1(-) SN2(+希釈検体710コピー)
脈管侵襲なし
断端陽性++(13か所、主に非浸潤)
①センチネル生検は、機械を使っているため、今となっては正確なミリ数数はわからないそうです。
希釈検体710コピーというのは、どの位の大きさでしょうかきさでしょうか?
10倍に希釈しているので、7100コピーになり、5000コピーコピー以上が陽性(2ミリ以上)との説明でした。
7100コピーの実際の大大きさがわかれば教えてください。
②先生の豊富な症例数の中で、センチネル2つのうち1つに転移があった場合、腋窩リンパにも転移がある確率はどのくらいでしょうか?私の大大きさだとどうでしょうか?微小転移の場合は郭清省略していいということは、転移が小さいほどその可能性は低いということでしょうか?
③腋窩リンパ節では、がん細胞はある程度の大きさにならないと転移をしませんか?それとも微小のうちに先に先にと流れていく可能性もあるのでしょうか?
④断端陽性についての質問です。
温存手術の病理の結果、13か所で断端陽性が出ました。
全摘手術を勧められ、前回田澤先生に質問し「全摘はは避けられない」との回答をいただいています。
これだけ多いと、やはり残した乳房内に癌が残っている可能性は大きいのでしょうか?「温存手術をしても、その後全摘手術をしても予後は変わらない」と言いますが、そうであれば、再発してから手術をしても間に合いますか?
それとも局所再発は怖いのでしょうか?局所再発の場合、遠隔転移の危険因子になるとになると聞いたことがあります。
⑤温存でとったところは、主な浸潤径が0.6×0.5でした。
その他、非浸潤ガンがたくさん点在していました。
非浸潤ガンが予想より広がっている可能性が大きいのでしょうか。
⑥全摘手術をする場合、乳輪乳頭は術中診断で残せるかもしれないが、
今後のことを考えると残さない方がよいと言われています。
乳輪乳頭の再発再発は少なくないのでしょうか?
小さなしこりで温存手術だったのが、再手術で全摘となり、やはり心へのダメージは大きく、避けられないこととわかっていても、悩み迷っています。
以上、先生のご意見をよろしくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「7100コピーの実際の大大きさがわかれば教えてください。」
⇒解りません。
OSNA:One-step Nucleic Acid Amplificationはそれが欠点なのです。(再現する事ができないため)
「②先生の豊富な症例数の中で、センチネル2つのうち1つに転移があった場合、腋窩リンパにも転移がある確率はどのくらいでしょうか?」
⇒私は、そもそも「センチネルリンパ節」は1つしかとらないので、「質問者と同様なケース」はありません。
1個陽性という時点で(そのまま)追加郭清してしまいます。
だから、質問者のケースは実際には(私には)存在しないのですが…
あえて、質問者のケースに近付けようとすれば…
画像上「リンパ節転移なし」で「センチネルリンパ節生検で陽性」だったケースでは「追加郭清しても、0個か1個」となることが殆どです。
その意味では「2個取って1個は陰性」であれば、「転移が残っている確率は殆どなし」と思います。
「微小転移の場合は郭清省略していいということは、転移が小さいほどその可能性は低いということでしょうか?」
⇒その通りです。
実際には「微小転移では追加郭清は無効」であることが臨床試験で確認されているのです。
「③腋窩リンパ節では、がん細胞はある程度の大きさにならないと転移をしませんか?それとも微小のうちに先に先にと流れていく可能性もあるのでしょうか?」
⇒可能性だけで言えば「あらゆる可能性がある」わけですが…
上記コメントのように「実際に臨床試験で、微小転移であれば省略しても予後が同等」なのです。
「これだけ多いと、やはり残した乳房内に癌が残っている可能性は大きいのでしょうか?」
⇒そういうことです。
「そうであれば、再発してから手術をしても間に合いますか?」
⇒きちんと経過観察をして、(遅くなり過ぎないうちに)対処(全摘)すれば大丈夫です。(それが温存手術の前提となっています)
「局所再発の場合、遠隔転移の危険因子になるとになると聞いたことがあります。」
⇒それは、「きちんとした経過観察(術後の超音波)もせずに」漫然と進行してしまった場合に限られます。
「非浸潤ガンが予想より広がっている可能性が大きいのでしょうか。」
⇒そう思います。
「⑥全摘手術をする場合、乳輪乳頭は術中診断で残せるかもしれないが、今後のことを考えると残さない方がよいと言われています。乳輪乳頭の再発再発は少なくないのでしょうか?」
⇒乳頭乳輪温存の乳房全摘の今までの限られたケースでの報告では「乳頭乳理の再発はそれ程多くない」ことが解っています。
ただ、それはあくまでも「腫瘍径が小さい」「乳頭乳輪から十分な距離が離れている」ことを順守された場合だと言う事に注意してください。
どんな症例でも「乳頭乳輪温存のリスクが低い」と言う事では決してないのです。
(具体的には、その点について担当医に「自分の場合では具体的にどうなのか?」確認すべきです)