[管理番号:343]
性別:女性
年齢:36歳
昨年12月に右乳がんの温存手術をしました。(乳輪に近いやや上あたりです)
腫瘍:18x28x18mm 湿潤 grade3(3+3) ly1. v0. HER2 2+
1月末よりハーセプチン1回、カドサイラ4回を受けています。(予定ではカドサイラ全8回+ハーセプチン10回)
GW明けから大学病院で放射線30回が始まります。
私が転移の心配があったので3月中旬にPETを受けたところ、胸にのみ反応が出ましたが医師より術後の反応だから心配いらないとのことでした。
今心配なのは、右の背中だけ痛むこと(PCをよく使うので肩こりかもしれませんが)胸から突き抜けるように痛むこともあります。
生理前~終わりまで胸の痛み、乳輪の周りに白いものが付着すること手術した付近が最近になってかたいというか盛り上がってきた広範囲のしこりのような気がします(ボコボコしてる部分もあります)
3月末頃からで主治医に超音波で見てもらったところ「のう胞に」と言われました。
しこりは昨年6月頃から見つかったのですが、その時ものう胞だから心配しなくていいと言われ、半年後にがんだったと判明したので、医師の言葉に不安があります。
また、「術後のかたさであるかもしれないし、抗がん剤を入れているから腫瘍が大きくなることはない」と言われましたが大丈夫でしょうか?
主治医よりカドサイラを終えてから放射線を受けたほうがいいと言われてましたが、それでは遅いのではないかと私が心配になり放射線の時期を早めてもらいましたが、放射線と抗がん剤の併用はできないから(私が副作用のようなものが少し出ていると言ったからかも知れませんが)今後はハーセプチンに切り替えると言われました。
同時に受けるのは良くないのでしょうか?ちなみに今の時点でカドサイラで口内炎と右親指人差し指の感覚が少ししびれるような時があります。回数を続けるともっとひどくなるのでしょうか?
(2015年4月の質問)
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
昨年12月に手術をして、現在術後化学療法中ですね。
治療に少し問題があるようです。
状況の確認
リンパ節についての記載がありませんが、「リンパ節転移なし」でよろしいでしょうか?
そうするとpT2, pN0, cM0(術後にPETで確認していますが、術前もCTか何かで遠隔臓器についての確認はあったと思われます)
HER2 2+とありますが、(通常2+ではHER2-FISHで確認することになっていますが)FISHでHER2遺伝子の増幅を確認しているのでしょうか?(HER2 2+では、実は陰性であり無駄な治療をしている可能性があります)
※免疫染色でのHER2の取り扱は3+ならば陽性、2+ではFISH法で確認することが強く推奨されています。
◎本来「カドサイラ」の適応は「転移再発乳癌」のみとなっております。
質問者の場合、明らかに「術後補助療法」目的であり、「適応外使用」となります。
これは、「質問者の希望」で行われているのでしょうか?
回答
「3月中旬にPETを受けたところ、胸にのみ反応が出ましたが医師より術後の反応だから心配いらないとのことでした。」
⇒私も、「術後の反応」でいいと思います。全く心配はありません。
「主治医に超音波で見てもらったところ「のう胞に」と言われました。その時ものう胞だから心配しなくていいと言われ、半年後にがんだったと判明」
⇒通常は、術後「手術操作部」付近に「嚢胞(中身が脂肪だったりします)」ができることは良くあり、心配はありません。
ただし、質問者の場合は「癌が見つかった経緯『最初は嚢胞と言われ、6ヵ月後に癌と判明』を考えると」心配な気持ちは凄く伝わってきます。
私だったら「放射線照射の前に」針生検をしてしまいますが、「大学病院では、フットワークが悪く無理そうですね…」
※放射線照射が始まってしまうと「どうしても、皮膚の問題」から「照射中は針生検しずらくなります(放射線科医の立場からは「辞めてくれ」となるでしょう)」
『「術後のかたさであるかもしれないし、抗がん剤を入れているから腫瘍が大きくなることはない」と言われましたが大丈夫でしょうか?』
⇒(前述したように)通常は大丈夫だと思いますが、心配であれば「放射線照射の前に」針生検してもらいましょう。
「同時に受けるのは良くないのでしょうか?」
⇒同時に行うことはありません。(全国どこへ行っても、同じ筈です)
一番問題となるのは「放射線肺臓炎」であり、間違いなく頻度が挙がります。
乳癌学会では「推奨されない」C2 となっています。
「カドサイラで口内炎と右親指人差し指の感覚が少ししびれるような時があります。回数を続けるともっとひどくなるのでしょうか?」
⇒酷くなると思います。
(前述したように)カドサイラは適応外使用であり、(もし、患者さん本人の強い希望にて行ったとしても)「有害事象をおしてまで行うべきではありません」
質問者様から
【質問2 治療方法について】
情報が不足していてすみません。
リンパ転移はないと思います。
pT4b INFa PR判定結果 陰性0%、陽性90%以上 大型異型上皮からなり、充実性あるいは索状となっている 索状部は scirrhousとなる傾向がある |
手持ちの病理結果の情報ではここまでしかわかりません。
かかりつけで、手術~治療をしているのは個人病院で、放射線のみ大学病院で受けることになります。
カドサイラは副作用がほとんどない抗がん剤だからと主治医が勧めてくれて、適用外であることも知ってますが、私もお願いして受けています。
医師はむやみに針をささない方が良いとの考えでしたので、様子を見ようと思いますが。
そうすると、抗がん剤4回だけで残りハーセプチンは再発の恐れはどのくらいでしょうか?
8回まで受けてから、7月中旬から放射線治療に入った方が予後少しは安心でしょうか?(それでは遅いので、再発してしまうのではと心配しています)
あと、右のみの背中の痛み、乳輪から白い分泌物が出るというのも術後の名残でしょうか?
すみません、主治医から特に説明を受けていなくて、前回のこちらの回答がよくわかりません。
⇒HER2 2+とありますが、(通常2+ではHER2-FISHで確認することになっていますが)FISHでHER2遺伝子の増幅を確認しているのでしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
カドサイラの適応外使用については「ご本人が了承」されているのですね。
それでは回答します。
回答
「医師はむやみに針をささない方が良いとの考えでしたので、様子を見ようと思いますが」
⇒「質問者が心配している所見」に対して、針生検をしないことが「むやみに針をさす」事だとは思いませんが、考え方の違いでしょう。
「抗がん剤4回だけで残りハーセプチンは再発の恐れはどのくらいでしょうか?」
⇒カドサイラの「補助療法での使用」については、「適応外」ですし、当然データはありません。
「8回まで受けてから、7月中旬から放射線治療に入った方が予後少しは安心でしょうか?」
⇒私は「カドサイラの適応外使用」については反対の立場なので、「有害事象が強くなる前に」止めた方がいいと思います。
「右のみの背中の痛み、乳輪から白い分泌物が出るというのも術後の名残でしょうか?」
⇒術後の変化だと思います。
「主治医から特に説明を受けていなくて、前回のこちらの回答がよくわかりません」
⇒失礼しました。主治医から説明がないとすれば、解り難い内容だったと思います。(下記に説明します)
抗HER2療法
HER2遺伝子の過剰発現がある場合、これを抑える為に行う治療であり分子標的薬といいます。以下のように沢山の薬剤があります。
①ハーセプチン
②ゼローダ
③パージェタ
④カドサイラ
※発売順 現在術後補助療法で適応承認されているのは①ハーセプチンのみ
これらの薬剤は「HER2遺伝子の過剰発現」が無ければ効果はありません。
この過剰発現を調べるための検査が『2段階』あるのです。
『第1段階』免疫染色(簡便で安価)
採取した組織を染色して調べる。
その評価(結果)は以下の4段階となります。
- HER2 0 ⇒陰性
- HER2 1+ ⇒陰性
- HER2 2+ ⇒陽性(但し偽陽性が多いのでFISH法を用いて確認することを推奨)
- HER2 3+ ⇒陽性
『第2段階』FISH法(手技が煩雑で高価)
HER2遺伝子の増幅を調べる。
これは大変な検査のため、あくまでも『第1段階』でHER2 2+でしか行いません。(HER2 0 や1+ではFISHをやっても殆ど陰性だし、HER2 3+では逆に94%で陽性となるからです)
※HER2 2+の場合は「陽性」とはせずに必ず『FISH法で確認』することが推奨されています。
HER2 2+でFISHを行うと52%で陰性(本当はHER2遺伝子増幅なし)となります。(英国の信頼できるデータ)
◎つまり、「もしも、免疫染色でHER2 2+で(FISHで確認していないのに)」HER2陽性と判断しているとしたら、『実は陰性(HER2遺伝子増幅無)』である可能性があるのです。
当然、その場合には「意味の無い治療」をしていることになります。