[管理番号:1598]
性別:女性
年齢:43歳
田澤先生初めまして。
質問させてください。
エコーで7mmほどのしこりが見つかりました。
縦長のしこりだったので怪しいと細胞診をしました。
結果はクラス3(3aと3bの区別はなかった)だったのですが報告書に『血性背景に大小の細胞集塊、裸核状の短紡錘形を有する細胞が比較的多数見られる。筋上皮細胞を伴わず細胞結合の低下した細胞集塊も見られる。乳管癌を否定できない。』
とありました。
コメントを見る限りでは癌の可能性が高いのにクラス3というのは、どのような事が考えられますか?
それから、この細胞像から癌の種類(乳頭腺管癌、硬癌など)もある程度わかるものですか?
わかるようでしたら教えていただけますか。
この後、針生検をする予定ですが乳腺科が混雑しており3週間も待たなくてはならず毎日不安で仕方ないです。
ちなみにしこりは触ってもわかりません。
たまに腋の下や胸の奥の方でチクチクと軽く刺すような感じもあり心配です。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「7mmの縦長のしこり」「細胞診クラス3」
確かに乳癌の可能性が高いです。
回答
「コメントを見る限りでは癌の可能性が高いのにクラス3というのは、どのような事が考えられますか?」
⇒確かに,私もそう思います。
「筋上皮細胞を伴わず細胞結合の低下した細胞集塊」というものは「癌の所見」です。
おそらく、「そのような細胞集塊の数が少なすぎる」のではないかと思います。
「この細胞像から癌の種類(乳頭腺管癌、硬癌など)もある程度わかるものですか?」
⇒解りません
「乳管癌を否定できない」とあるように浸潤性乳管癌(乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌)や非浸潤性乳管癌などが考えられますが、それ以上は無理です。
「この後、針生検をする予定ですが乳腺科が混雑しており3週間も待たなくてはならず毎日不安で仕方ないです」
⇒針生検くらい「細胞診の結果の日」にそのまましてしまえばいいのに… と思ってしまいます。
質問者様から 【質問2】
お忙しいところ回答してくださりありがとうございます。
先生の回答で『そのような細胞集塊の数が少なすぎる』とありますが、少なすぎるのは何故でしょうか?
しこりが小さいからなのか、そこまで悪い病変ではないからなのか、細胞診のやり方の問題なのか。
教えてください。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
細胞診には(針生検以上に)『技術による精度の差』が存在します。
回答
「しこりが小さいからなのか、そこまで悪い病変ではないからなのか、細胞診のやり方の問題なのか」
⇒勿論、私個人の見解ですが…
「細胞診のやり方=技術」の問題だと思います。
○「7mmという大きさ」は、「診断するには十分な大きさ」と言えます。
小さすぎて診断しずらい事はありません。
○「筋上皮細胞を伴わず細胞結合の低下した細胞集塊」という所見は、決して「微妙な病変の所見」ではありません。
本当に「微妙な病変の細胞診」の所見は『papillary lesion(乳頭状病変)』となります。これは細胞量が豊富でも「良悪の鑑別が困難」なのです。(嚢胞内腫瘍などで多い所見)
質問者様から 【質問3】
先生 こんにちは。
先日、細胞診の結果について相談した者です。
先生の仰った通り乳癌と診断されました。
でも先生のご回答のおかげで覚悟ができていたので、冷静に受け止める
事ができました。
ありがとうございました。
7mmの硬癌
ER→80%
PgR→80%
HER2→マイナス
Ki67→16.7%
グレード1
Ki67のカット値が14%と言われてるそうですが、私の場合でもルミナー
ルAと同じ治療法(ホルモン療法と放射線)でいいでしょうか?
癌の場所が乳輪のすぐ上で、乳輪の端から1cm程の場所です。
乳頭の端からは3cmくらい離れてます。
温存した場合、乳輪の上半分がなくなってしまいますか?
また、乳房はどの程度変形してしまうんですか?
主治医の先生には、人それぞれ大きさも形も違うので何とも言えないけ
ど、今と同じようにってわけにはいかないです。と言われました。
私としては、あまりにも形が変わるのなら、温存するより全摘の方がいいような気がしています。
えぐれて穴が開いたようになったり、ひきつれたりするのが普通ですか?
場所も真ん中だし、目立つのではないかと悩んでます。
それと、反対側の胸を気にしてチェックしてたら、グリグリしたしこりのようなものがありました。
癌なのか乳腺なのか骨なのかわかりません。
腕を下げてる時に触るとありますが、腕を頭の上に上げて触るとわからなくなってしまいます。
エコーで見てもらったのですが、何もないみたいです。
乳腺はグリグリ触れるものですか?
よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
cT1b(7mm), luminalAですね。
回答
「Ki67のカット値が14%と言われてるそうですが、私の場合でもルミナールAと同じ治療法(ホルモン療法と放射線)でいいでしょうか?」
⇒質問者は「間違いなく」ルミナールAです。
いまだに14%をカットオフ値とするのは古すぎます。
St. Gallen 2015ではカットオフ値は『20-29%の間』とする意見が最も多く、最終的に論文としては(意見のばらつきを考慮して)「10-30%を中間ゾーン」と設定しています。
このことから「カットオフ値が14%」は低すぎると思います。
「温存した場合、乳輪の上半分がなくなってしまいますか?」
⇒無くなりません。
(乳輪乳頭を含む)皮膚は取りません。皮膚は切開し、「乳腺を切除」するのです。
「また、乳房はどの程度変形してしまうんですか?」
⇒マージンをどれくらいつけるかにもよりますが、「腫瘍径7mm」であれば「変形は少ない」と思います。
「えぐれて穴が開いたようになったり、ひきつれたりするのが普通ですか?」
⇒そのようにはなりません。
そのようになるようであれば「温存の適応外」となります。
「反対側の胸を気にしてチェックしてたら、グリグリしたしこりのようなもの」「エコーで見てもらったのですが、何もない」
⇒心配ありません。
乳腺も「グリグリ」と感じることもあるし、「肋骨」を触れているかもしれませんが、「超音波していればOK」です。
質問者様から 【質問4】
田澤先生、こんばんは。
いつもわかりやすく丁寧に教えてくださり、ありがとうございます。
先日MRIをやりました。
その所見に
両側乳房に増強される小結節多発。
左AC、C、右CD領域に早期濃染され後期に低下するパターンの小結節あり。
乳Ca.を否定できず。
と書いてありました。
エコーで時間をかけて見てもらったのですが左胸の癌以外で悪性らしいものは何も見当たらないと言われました。
乳腺症でこのような所見はありますか?
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
MRIの所見は「実際に見ていない」ことを考慮に入れてもらう必要がありますが、一般的に「両側乳房に増強される小結節多発」が全て癌というのは考えにくいです。
「超音波で何もない」のであれば「乳腺症」と考えるべきです。
質問者様から 【質問5】
田澤先生。
何度も質問してしまってすみません。
宜しくお願いします。
MRIの所見は画像診断の先生によってだいぶ違いがあるものでしょうか?
1番気になるのは
『左AC領域、C領域。
右CD領域に早期濃染され後期に低下するパター
ンの小結節あり。』
というコメントです。
早期濃染され後期に低下するのはほぼ悪性なんですか?
左ACはきっと確定してる乳癌の事だとして、あと2ヶ所同じようなもの
があるという事ですよね?
MRIの画像と照らし合わせながらエコーで長時間探しても見当たりませんでした。
小さいから見当たらないんですか?
これは何ヶ月か何年かたつと乳癌としてエコーでも見えるようになるんですか?
1月に左胸の温存手術をする予定なのですが、今後また乳癌になるとし
たら全摘した方がいいのか悩んでいます。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
「MRIの所見は画像診断の先生によってだいぶ違いがあるものでしょうか?」
⇒「time-intensity curve」の読みだと思いますが、MRIでは「血流豊富な部分」が多数造影されるので「読影所見」には「幅が出ます」(気にする医師と、気にしない医師で)
「1番気になるのは『左AC領域、C領域。右CD領域に早期濃染され後期に低下するパターンの小結節あり。というコメント」
⇒パターンだけみると「要注意」ですが、「超音波での再現性」が無い限り「確定診断は不可能」です。
基本的に経過観察とせざるを得ません。
「早期濃染され後期に低下するのはほぼ悪性なんですか?」「左ACはきっと確定してる乳癌の事だとして、あと2ヶ所同じようなものがあるという事ですよね?」
⇒そうとは限りません。
MRIで明らかな所見であれば、通常「超音波で確認できる筈」です。
「超音波で確認できない」とすれば、「血流が豊富なだけの」正常組織の可能性も
十分にあります。(確定診断とはならないので、最低限経過観察は必要となります)
「小さいから見当たらないんですか?」
⇒「小さくても、本当に癌」なのであれば、超音波で見える筈です。
♯MRIで見えるものが(本物の腫瘍であれば)「超音波で見えない」という事は
殆どありません。
「1月に左胸の温存手術をする予定なのですが、今後また乳癌になるとしたら全摘した方がいいのか悩んでいます。」
⇒「超音波の精度」にもかかわってくるので、「担当医と相談」すべきです。
もしも「癌の可能性を否定できない」という判断であれば、当然「全摘」も視野に入れなくてはなりません。
質問者様から 【質問6】
田澤先生。
こんにちは。
前回MRIの事について質問させていただきました。
あれからもう1度先生にエコーでよく見てもらって、1ヶ所たぶん良性だ
と思うけど念の為に針生検しましょう。
という事で針生検しました。
結果は悪性所見なし。
乳腺症変化だろうと書いてありました。
そして安心して手術をする事が出来ました。
左胸温存手術、センチネルリンパ節転移なしで予定通り終わりました。
ドレーンも尿の管もなかったので、術後4時間で歩いてトイレに行き、6時間で食べれるようになり、痛みもほとんどありませんでした。
経過も良く術後2日目で退院しました。
退院後は、洗濯や洗い物などの軽い家事と腕を上げたりするリハビリくらいしかしてないのですが、昨日くらいからセンチネル生検の傷がヒリヒリ痛みだしました。
術後1週間です。
今までほとんど痛くなかったのに1週間ほど経ってから痛みが出るのはどうしてでしょうか?
腫れなどはありません。
乳癌の傷の方はほとんど痛みがなく、傷の上部あたりを触るとまるで麻酔を注射した時のように感覚がありません。
これもよくあることなのでしょうか?
よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答6】
こんにちは。田澤です。
「退院後は、洗濯や洗い物などの軽い家事と腕を上げたりするリハビリくらいしかしてないのですが、昨日くらいからセンチネル生検の傷がヒリヒリ痛みだしました。術後1週間です。今までほとんど痛くなかったのに1週間ほど経ってから痛みが出るのはどうしてでしょうか?」
⇒(一次的に麻痺していた)感覚が戻ってきているのかもしれません。
また、「最近、急に寒くなった(東京は)ので、その影響」もありそうです。
「乳癌の傷の方はほとんど痛みがなく、傷の上部あたりを触るとまるで麻酔を注射した時のように感覚がありません。これもよくあることなのでしょうか?」
⇒皮弁を形成する際に「皮膚を剥がす」ために「ある程度の感覚障害」はあります。
心配ありません。
質問者様から 【質問7】
田澤先生。
よろしくお願いします。
病理検査の結果が出ました。
1×0.7×0.5
pT1bN0
グレード1
g、ly-、v-
ER、PgRどちらも3b
HER2 スコア0
ki67 7.7%
ki67が針生検の時から10近く下がってるのですが何故ですか?
針生検で取った組織が1番悪い病変だったという事ですか?
それからホルモン療法なんですがタモキシフェンだけかゾラデックス併用するか決めなければいけないのですが私のケースではゾラデックスの上乗せ効果は全くないのでしょうか?
それともやらないよりはやった方がいいのでしょうか?
手術した方の胸全体が少し硬くてパンパンに張ってる感じですが、だんだん治ってくるものですか?
先週、通院で水を抜いてもらいましたが少なめだと言われ、傷の具合も良いと言われました。
自分で軽くマッサージなどをした方がいいですか?
それとも触らない方がいいですか?
田澤先生から 【回答7】
こんにちは。田澤です。
pT1b(10mm), pN0, luminal type
完璧な早期癌です。
とても良かったです。
「ki67が針生検の時から10近く下がってるのですが何故ですか?針生検で取った組織が1番悪い病変だったという事ですか?」
⇒「針生検はあくまでもサンプリング検査」だから「全体標本でも結果とは異なる」ことは当然とも言えます。
「それからホルモン療法なんですがタモキシフェンだけかゾラデックス併用するか決めなければいけないのですが私のケースではゾラデックスの上乗せ効果は全くないのでしょうか?」
⇒SOFT試験では「抗がん剤終了後に月経が再開したケース」と「35歳未満」でしか「効果が無かった=差がなかった」ことが明らかにされました。
つまり「43歳の質問者には、あまり意味がない」と思います。
「それともやらないよりはやった方がいいのでしょうか?」
⇒やらない方がいいと思います。
「手術した方の胸全体が少し硬くてパンパンに張ってる感じですが、だんだん治ってくるものですか?」
⇒少しずつ良くなります。
「自分軽くマッサージなどをした方がいいですか?それとも触らない方がいいですか?」
⇒術後十分時間が経っているのなら、マッサージしても大丈夫です。(程度によると思います)
質問者様から 【質問8】
田澤先生。
こんにちは。
よろしくお願いします。
手術後3週間たった頃から、術側の腕を伸ばして上げると引きつるような痛みが出始めました。
腕を曲げてる時や日常の動作をする時は何もないのですが伸ばした時だけ痛いです。
伸ばして上げた時に腋から1本スジのようなものが出るようになりました。
そのスジが肘より下の方まで繋がっていて肘より少し下に柔らかいしこりのようなものが2つ触れます。
これは何ですか?
自分なりに調べてみると、血栓性静脈炎とかモンドールとか書いてありました。
センチネルリンパ節生検で1つしか取ってないのにこのようになる事もあるのですか?
受診した方がいいですか?
自分で毎日腕を上げたり回したり軽いリハビリをしてますが今はやらない方がいいですか?
それとも、固まらないように痛みを我慢してやった方がいいですか?
3月から放射線の予定ですがこれが治らなかったら放射線は延期した方がいいですか?
田澤先生から 【回答8】
こんにちは。田澤です。
「手術後3週間たった頃から、術側の腕を伸ばして上げると引きつるような」
「伸ばした時だけ痛い」
「伸ばして上げた時に腋から1本スジのようなものが出る」
「そのスジが肘より下の方まで繋がっていて肘より少し下に柔らかいしこりのようなものが2つ触れます。」
「これは何ですか?自分なりに調べてみると、血栓性静脈炎とかモンドール」
⇒その通りです。
リンパ節郭清(センチネルリンパ節生検でも時に起こります)に伴って起こる「血栓性静脈炎」です。
「センチネルリンパ節生検で1つしか取ってないのにこのようになる事もあるのですか?」
⇒時にはあります。
「受診した方がいいですか?」
⇒不要です。
「自分で毎日腕を上げたり回したり軽いリハビリをしてますが今はやらない方がいいですか?」「それとも、固まらないように痛みを我慢してやった方がいいですか?」
⇒「酷く痛くない」程度にはやった方がいいです。
「3月から放射線の予定ですがこれが治らなかったら放射線は延期した方がいいですか?」
⇒心配しなくても、時間経過で治ります。