[管理番号:13316]
性別:女性
年齢:54
病名:
症状:
投稿日:2025年12月19日
お世話になります。コラムやQ&Aではいつも貴重な経験や情報をご提供いただき、本当にありがとうございます。
妻54歳の乳がん多発肝転移・骨転移の化学療法ついてご意見をいただきたく質問させていただきます。
(妻の代理で、夫から質問させていただきます。)
経過:
2023年10月、原発となる右乳がん(浸潤性乳管癌 腺管形成型)診断
2023年11月、右胸全摘手術、リンパ浸潤なし、術後診断ステージ1a、HER2陽性3+、手術前後の化学療法は無し
2024年5月(術後半年)及び、2024年11月(術後1年)の経過観察(造影CT結果)では問題なし ※腫瘍マーカーに出ないタイプなのでCT画像診断で経過観察
2025年6月の術後1年半検診にて多発肝転移及び骨転移の診断(のちの主治医説明で、小さい肺転移と左鎖骨下リンパ転移もあり)
遠隔転移診断後、2025年7月~2025年12月まで、3週ごとの分子標的薬フェスゴ+抗がん剤ドセタキセルの化学療法を休みなく(減薬ありで)8回継続し、2025年12月の化学療法8回目後(=化学療法6ヶ月)の造影CTで「肺転移消失、リンパ転移ほぼ消失、
肝転移縮小」となっています。(2025年9月の化学療3ヶ月のCTでは、肺転移ほぼ消失、リンパ転移縮小、肝転移縮小でした。)
一方、化学療法6回目あたりから足全体に浮腫が表れており(しゃがんだり坂や階段の上りが大変な状態)、また化学療法8回目後の造影CTで「胸水が溜まっていること(播種結節は無し)」が分かったため、化学療法9回目はスキップして、2~3ヶ月(2026年2月頃まで)化学療法をお休みして、現状は3週に一度のフェスゴのみ継続となっています。また2025年9月のMRIで脳転移はありませんでした。
そこで田澤先生に質問なのですが、浮腫と胸水がおさまった後の抗がん剤「再開」時に、以下の考えうる選択肢を含め、どのような治療を選択するのが良いか、アドバイスいただけますと幸いです。
1.抗がん剤(ドセタキセル)の効果は出ているため、これまで同様、フェスゴ+ドセタキセルで再開し、やれるところまでやってみて、副作用が強ければその時点でレジメンチェンジを検討(但し、減薬ありの8回連続で実施できましたが、浮腫や浮き爪など副作用も多いです。Weekly-PTXへの変更も有効でしょうか?)
2.効果と副作用のバランスでエリブリンを選択して再開(もしくはT-DM1を選択)
3.ドセ8回で早期cCRを得られなかったことからT-DXdにチェンジして再開(ペルツズマブとの併用療法が承認されてからT-DXdを使用したほうが効果が高いでしょうか?)
4.当面はフェスゴのみ継続し、3ヶ月ごとの画像診断で変化があった時点で、上記1~3 or 他選択肢で再開
尚、肝転移腫瘍の正しい大きさがお伝え出来なくて申し訳ないのですが、CT画像上当初4~5cmくらい(複数)のものが、それぞれ1cmくらいまで縮小している感じです。肺とリンパは当初1cm位のものが消失・縮小といわれています。
またこれ以外にも、田澤先生のお考えの治療や注意すべき点、主治医と確認すべき点
などありましたら、ご教示いただけますとありがたいです。
主治医と最低限のコミュニケーションはできており、ここまで抗がん剤も効いているのでまずは副作用(浮腫・胸水)の回復状況を見ていきましょうと言われていますが、妻は現在休職中ですが臨床検査技師に従事しており、cCR後には(維持療法を継続しながら)できるだけ早い職場復帰も目指しています。
ステージ1から1年半での遠隔転移はショックでしたが、すでに原発は全摘しており、
治療効果が高くお薬の選択肢も多いHER2タイプということで、ステージ4であっても前向きに治療に取り組めているため、今後の治療の選択肢について前広に、田澤先生のご意見をいただけますととても嬉しく思います。
お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
内容は了解しました。
化学療法6回目あたりから足全体に浮腫が表れており(しゃがんだり坂や階段の上りが大変な状態)、また化学療法8回目後の造影CTで「胸水が溜まっていること(播種結節は無し)」が分かったため、化学療法9回目はスキップして、2~3ヶ月(2026年2月頃まで)化学療法をお休みして、現状は3週に一度のフェスゴのみ継続
→要は(docetaxelにありがちな)浮腫による抗がん剤の中止(+分子標的薬のみの投与)ということですね。
ここは非常に重要な岐路だと思います。
まず、(docetaxelの中止+必要に応じての利尿剤投与により)胸水の完全消失を確
認しましょう。
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上記を達成すればKey drugはtrastuzumab deruxtecanとなります。
ただしanthracycline(EC もしくはAC)も有効なので私であれば以下の2通りを考えます。
1.胸水はあくまでも浮腫によるものであり「肺炎など肺自体の問題ではない」と考えて(いきなりKey drugである)trastuzumab deruxtecanでcCRを狙う
何故ならtrastuzumab deruxtecanの重大な副作用(但し実際に使ってみて、注意深く使用すれば決して頻度は高くないが)として間質性肺炎があるからです。
2.(浮腫によるものとはいえ)胸水を肺疾患ととらえ(実際は肺そのものではないものの)trastuzumab deruxtecanではなくanthracyclineを挟む。
→つまり EC(or AC)x4?→trastuzumab deruxtecan
大事なことは、(anthracyclinを挟むにしろ挟まないにしろ)trastuzuamb
deruxtecanでcCRを狙うことです。
↑
これは患者さん側から強く訴えかけないと(遠隔転移は治らないなどと考えているような)医師からの提案はないかもしれないので要注意!です。
HER2 positiveの場合 cCR→かなりの長期予後(最初はphesgo→のちに無治療)が期待できるのです。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2026/1/7
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