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葉状腫瘍摘出後に皮膚側が断端陽性だった場合の局所再発リスクについて

[管理番号:12071]
性別:女性
年齢:41
病名:葉状腫瘍
症状:
投稿日:2024年09月21日

田澤先生初めまして。

葉状腫瘍についてQ&Aを幾度も読み漁りましたが、なかなか納得する答えが得られず、精神的に不安定な毎日を過ごしています。お忙しい中恐縮ですが、ご回答いただければと思います。

今年の6月中旬に右乳房乳輪下あたりにしこりを見つけ、乳腺外科を受診し紹介状を書いてもらい、7月中旬にがんセンターを受診しました。境界明瞭、表面平滑、47mmのしこりは針生検の結果、急速に増大傾向はあるものの悪性所見はなく良性の葉状腫瘍だろうと診断されました。
しこりにマージンを1cmつけて部分切除すると胸がかなり変形する為、全摘+再建も勧められましたが部分切除を選びました。
当初、腫瘍は乳頭直下にあり皮膚を押し上げるように成長していて、皮膚に近い部分はマージンが1cmも取れないので皮膚ごと切除する予定だと主治医から説明を受けましたが、MRIの画像からも腫瘍は良性で明らかな浸潤はなさそうとの事で、皮膚から何とか剥がれそうなので剥がす形で皮膚を残して摘出する方向となりました。
8月下旬に傍乳輪切開により腫瘍を摘出、
1ヶ月後の術後病理診断では
●良性葉状腫瘍
●高密度な増殖や壊死などの悪性所見はみられない。
●境界は概ね明瞭だが、辺縁で脂肪組織に分け入るような像が目立ち、複数箇所で剥離面にも接している。
と記載されていました。

主治医の説明によると、皮膚に近い部分は十分なマージンを付けて完全に取り切ることができなかったので腫瘍の取り残しがあるかもしれないとの事でした。
細胞の取り残しがあった場合は局所再発のリスクが高く、今後の治療方針としては、
●全摘+再建も考慮
●半年毎の検査で10年間経過観察
上記2択でしたのでその場で頭が真っ白になってしまい、冷静な判断ができず経過観察を選びましたが、家に帰って再発のリスクが高い事を考えると本当にこれで良かったのか、どういう選択をするのが正解なのか考えても考えても納得する答えが出ません。

質問①
病理診断に断端評価はありませんが、【複数箇所で剥離面に接している】との文面で、これはマージンのとれなかった皮膚に近い部分を指していてその箇所に関しては断端陽性だということだと自分で解釈しています。
田澤先生の過去のQ&Aによると皮膚側断端は気にしなくて良いとの見解だと理解しましたが、私の場合、皮膚側の剥離面に接している腫瘍細胞の残存による局所再発リスクについてはどのように考えられますか?

質問②
術後は乳房下部の脂肪がだいぶ無くなっており変形しているので、皮膚に近い部分以外は可能な限りのマージンをつけて摘出して頂けたと思いますが、その場合は追加切除をせずに、このまま半年毎の経過観察でも問題ないと思われますか?

質問③
病理診断結果に、【境界は概ね明瞭だが、辺縁で脂肪組織に分け入るような像が目立ち】とありますがこれは浸潤していたという意味でしょうか?
主治医からは腫瘍が癒着していて剥がしにくかったような事を言われましたので、本当に良性なのか気になりました。

葉状腫瘍は良性でも再発すると悪性に転じる可能性もある恐ろしい病気だと知り、曖昧な理解のまま再発を待つ状況が不安でたまりません。
手術した病院では葉状腫瘍の症例が少なく年間2、3人程度しかいない為、田澤先生の様に熟知されている医師に相談できない状況です。
お忙しい中大変恐縮ですが、ぜひ分かる範囲でアドバイスを頂けたらと思います。
よろしくお願い致します。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「良性」葉状腫瘍との最終診断ですが、私が気になる点は以下の2つです。
1.腫瘍が47mm(比較的大きい)しかも「皮膚を押し上げるように成長」

⇒線維腺腫や(大人しい)良性葉状腫瘍では(多少大きくなっても)潰されて扁平となります。
なので私は「例え5cm以上でも、扁平であれば」線維腺腫もしくは良性葉状腫瘍を想定しますが、「皮膚を押し上げる」所見は境界悪性葉状腫瘍を警戒します。

2.概ね明瞭だが、辺縁で脂肪組織に分け入るような像が目立ち、複数箇所で剥離面にも接している
⇒実際に重要なのはこの「辺縁増殖が境界明瞭なのか?浸潤増殖なのか?」です。この「辺縁に脂肪組織に分け入る様な像」という表現は境界が(完全には明瞭ではなく)「浸潤性増殖と解釈できる」と言えます。
この点だけで「境界悪性」とされる場合もあるのです。

質問①
病理診断に断端評価はありませんが、【複数箇所で剥離面に接している】との文面で、これはマージンのとれなかった皮膚に近い部分を指していてその箇所に関しては断端陽性だということだと自分で解釈しています。

⇒違うのでは?

上記2でコメントしたように…
皮膚側以外に「殆ど全周性」に浸潤性増殖がために「剥離面に接しているのでは?」
主治医に確認してみましょう。

田澤先生の過去のQ&Aによると皮膚側断端は気にしなくて良いとの見解だと理解しましたが、私の場合、皮膚側の剥離面に接している腫瘍細胞の残存による局所再発リスクについてはどのように考えられますか?
⇒上記コメント通り…

浸潤性増殖であれば、かなりの範囲で断端が不十分と思います。
其の意味で局所再発のリスクはあると思います。

質問②
術後は乳房下部の脂肪がだいぶ無くなっており変形しているので、皮膚に近い部分以外は可能な限りのマージンをつけて摘出して頂けたと思いますが、その場合は追加切除をせずに、このまま半年毎の経過観察でも問題ないと思われますか?

⇒上記通り、(手術するのであれば)広範囲にマージンをつけるべきでしょう。

質問③
病理診断結果に、【境界は概ね明瞭だが、辺縁で脂肪組織に分け入るような像が目立ち】とありますがこれは浸潤していたという意味でしょうか?
主治医からは腫瘍が癒着していて剥がしにくかったような事を言われましたので、本当に良性なのか気になりました。

⇒まさに、その通り、「浸潤性増殖=境界悪性以上の所見」のような表現に思います。

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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2024/10/4
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