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stage4手術可能でしょうか

[管理番号:11431]
性別:女性
年齢:44
病名:みぎ乳がん/腋窩リンパ節転移あり/頚部転移あり
症状:しこり以外の症状なし
投稿日:2023年11月20日

お世話になります。
過去のQA拝見して勉強させていただいております。
有益な情報を、大変ありがとうございます。
また、先生のYOUTUBEで「一生抗がん剤なの?」という回を拝見し、
家族のためにも諦めたくない!という強い想いから、質問させていただきました。

去年まで指摘なしだったのですが、
今年の9月末ののドックで石灰化と腫瘍が疑われ、精密検査で針生検しました。
結果、乳がんと診断されました。
このQAで、絶対手術先行!、との先生のコメントを何度も拝見していたので、
手術を強く希望しましたが、全身PETの結果を受けて、手術そのものを足踏みされています。
そこで、質問です。

Q1:肺にあるのが転移と判断された場合、手術はできませんと言われました。
しかし、ネットでは抗がん剤で小さくなったら手術していらっしゃる方を見かけます。
stage4と診断されたら、大小関係なく、いかなる場合でも手術先行はしないのがセオリーなのでしょうか。
私の場合は可能でしょうか。

Q2:○○県(僻地)在住ですが、どこへでも行く気合いでおります。
○○病院HPは医療機関からの予約以外受け付けないと書かれていました。
待ち時間が発生しそうです。
私の場合、先行としての手術まで、どのくらいまでの待ち時間が許されると思われますか。
去年のドックで所見なしだったので、進行が速いのではと思っています。

Q3:首のリンパ節は取れません、と言われました。本当に取れないのでしょうか。
放射線治療となるのでしょうか。

以下、診断の所見を転記します。

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・乳がん部(針生検)所見
免疫染色で腫瘍は、GATA3・Eカドヘリン陽性、p63 陰性 です。
浸潤性乳がんとして矛盾しない所見です。
また ER 陽性 PS5+IS2=TS7、PgR 陽性 PS5+IS3=TS8、
HER2 陰性 Score0、Ki-67 LI 約45% です。

・腋窩部(細胞診)所見
赤血球や成熟リンパ球を背景に、上皮様結合を有する細胞集塊が多数みられます。
細胞集塊は不規則重積や結合性の低下、核間距離の不正が認められます。
細胞は核肥大、N/C比の増大、核の大小不同、明瞭な核小体がみられ、核は偏在性です。
悪性で、転移性腺がん が考えられます。

・全身PET所見
①みぎ乳腺AC領域に44mmほどのFDG高集積部(SUVmax9.5)を認め、ご指摘の乳がんと考えます。
2個の腫瘤が癒合している様に見られます。胸壁や皮膚への浸潤を疑う所見はありません。
②みぎ腋窩に15mmほどの軟部腫瘤を認め、FDG高集積部(SUVmax14.0)を伴っています。
リンパ節転移と考えます。
みぎ頚部にFDG集積(SUVmax2.3)を伴うリンパ節の軽度腫大を認めます。
リンパ節転移を疑います。
③みぎ肺上葉に3mmほどの境界明瞭な円形の結節を認めます。
肺転移が疑われますが、小さいためかFDG集積は見られません。
肝、骨に転移を示唆する所見はありません。

頭頚部・・・上記以外には、異常所見を認めません。
胸部・・・上記以外には、異常所見を認めません。
肝臓・胆嚢・膵・脾・腎・副腎・・・有意所見を認めません。
腸管にFDGの生理的集積を認めます。
子宮・卵巣・膀胱・・有意所見を認めません。

impression
みぎ乳がん(cT2N1M1 Stage4)と考えます。
みぎ肺上葉の肺結節は、肺転移より疑います。

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どうか、宜しくお願い致します。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

回答する前に…

根本的に、その医師は間違っていると思います。
「間違っている」というのは誤解を与えるかもしれません。
その医師は(間違っているのではなく)「いいように解釈を拡大(過大解釈ともいいますね?)」と、言い換えた方がいいかもしれません。

おそらく、その医師は(その他多くの医師同様に)
乳癌診療ガイドライン(治療編)①『StageⅣ乳癌に対して予後の改善を目的とした原発巣切除は行わないことを強く推奨する』を基に
「遠隔転移があるのだから手術はしないよ」と簡単に(患者さんの気も知らないで)判断しているのでしょう。

★実際に、そのガイドラインの続きを見てみると…
②『StageⅣ乳癌に対して局所制御を目的とした原発巣切除は行うことを弱く推奨する』とあり、
また別途進行中のオリゴ転移に対する局所療法(手術、放射線)の有用性を評価する臨床試験では③『オリゴ転移を有するStageⅣ乳癌に対しては原発巣切除を行うこととされている』との記載があります。

つまり上記①を全てのStageⅣ乳癌に対して当て嵌めて『あなたはStageⅣだから手術はしません』は誤りなのだということなのです。

◎質問者のケース
1.肺転移疑いに対して
「そもそも」肺の3mmの結節を「肺癌疑い」と画像診断するのは仕方がないとはいえ、(組織検査で確定診断することなく)どうせ「経過観察とする」わけだから、
『3mmの肺結節を肺転移があるから手術はしません』では、そもそも誤りだと思います。

2.右頸部リンパ節転移疑いに対して
PET所見を読むに(腋窩リンパ節転移はあるものの)鎖骨上下にないのに(いきなり)「右頸部リンパ節に取り込み」であれば、まずは「本当に転移か?(つまり反応性腫大の可能性)」という発想があるべきだし、超音波で確認すべきです。
もしも超音波で本当に転移を疑うのであれば細胞診でも組織診でも(頸部は浅いので)簡単にできます。

1.2より…
「3mmの肺結節」や「右頸部リンパ節」 前者は(当然)画像フォローとなるし、
後者は(エコーで本当に転移を疑うなら生検すべきでしょう)もしも転移だとしても手術して(術後に)放射線をかければいいだけの話 注) です。
注) これこそガイドラインにある「オリゴ転移」と言えます。

つまり質問者は、どう解釈しても「手術はしません」という拒絶は不適切だと強く思うのです。

それでは以下に回答

Q1:肺にあるのが転移と判断された場合、手術はできませんと言われました。
しかし、ネットでは抗がん剤で小さくなったら手術していらっしゃる方を見かけます。
stage4と診断されたら、大小関係なく、いかなる場合でも
手術先行はしないのがセオリーなのでしょうか。
私の場合は可能でしょうか。

⇒(そもそも)3mmの結節では確定診断せずに(無理やり確定診断しようとすれば、
肺の部分切除となりますが、3mmではまず行いません)経過観察となります。
つまり、この肺結節は「手術すべきかどうか?」には「そもそも無関係」なのです。

Q2:○○県(僻地)在住ですが、どこへでも行く気合いでおります。
○○病院HPは医療機関からの予約以外受け付けないと書かれていました。
待ち時間が発生しそうです。
私の場合、先行としての手術まで、どのくらいまでの待ち時間が許されると思われますか。
去年のドックで所見なしだったので、進行が速いのではと思っています。

⇒私から見れば…
(腋窩リンパ節転移も大したことない)普通の乳癌ですが、2か月以内が望ましいとは思います。(3か月でも大丈夫でしょうけど)

Q3:首のリンパ節は取れません、と言われました。本当に取れないのでしょうか。
放射線治療となるのでしょうか。

⇒ご希望であれば摘出は(おそらく)できます。(実際には診察しなくては血管との
位置関係など不明ですが、頸部は表面なので鎖骨上より寧ろ簡単なケースが多い)
複数ある場合には一般的に(手術ではなく)放射線を勧めますが、「単発」かつ「患者さん本人が希望」であれば私なら手術しますよ。

「江戸川病院での手術」はこちら。

「手術相談」メールはこちら。

田澤先生のYouTubeチャンネル「乳がんプラザ」はこちら

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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2023/11/27
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質問者様から 【結果・経過2】

手術先行できました
性別:女性
年齢:44
病名:みぎ乳がん
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]
投稿日:2024年1月11日

11月に、stage4を疑われ手術可能かどうかの質問をさせていただいた者です。
その後呼吸器科を受診し、肺の結節は95%良性だろうと判断していただき、改めて揺るぎない気持ちで主治医と話をしたところ、手術先行してもらうことができました。(12月末に手術しました)私の主治医も、想いを聞き入れてくださりました。先生の回答が、素人である私が主治医を説得する上で、大いに背中を押してくれました。大変ありがとうございました。

病理の結果は大変悪かったのですが、お礼のつもりで書いておきます。この結果を見て、術前抗がん剤を選択していたら、最悪の事態になっていたかも知れないと思い冷や汗が出ました。今後は、先生が常日頃書かれている「目の前の治療」に「粛々と」取り組みます。手術さえしてしまえば、後は何とでもなる、という記述も見つけて、手術してもらえて本当に良かったと改めて思いました。アドバイスをいただき、本当にありがとうございます。今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。

部位:Right C
手術療法:Bt+Ax(Ⅱ)
組織型:Invasive ductal carcinoma, Scirrhous type
大きさ(浸潤径):50×40×20mm
大きさ(浸潤径+乳管内進展層):50×40×20mm
病理学的T因子:pT2
病理学的N因子:pN2a
病理学的M因子:pM0
断端の評価:側方、深部、皮膚側全て陰性
リンパ管侵襲:Ly1
静脈侵襲:V0
組織学的波及度:f
核グレード(核異型:3点 核分裂像:2):Grade3
組織学的グレード(腺管形成:3点 核異型:3点 核分裂像:1点):GradeⅡ
ER:PS5 + IS3 = TS8 , J-score3b
PgR:PS3 + IS3 = TS6 , J-score3a
HER2:陰性(Score0) Ki-67:30%
UICC TMN 8th:
pT2, pN2a, pM0, StageⅢA
n (+) Total:(8/14)
LevelⅠ(6/12), LevelⅡ(2/2)

以上です。

<Q&A結果>

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【結果】の送信は、【質問】として扱わないので
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2023/11/27
(本日から可能です。)
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