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心不全で、ハーセプチン、放射線中止になりました。

[管理番号:10037]
性別:女性
年齢:67
病名:乳癌
症状:ハーセプチンによる心不全
投稿日:2022年1月26日

田澤先生、先日は線維腺腫についての質問(管理番号9974)にお答えいただき、本当にありがとうございました。

先生にお言葉をいただいてから、余計な心配はしなくていい、もし異変があったらすぐ気づけるんだ、と前向きに考えることができるようになりました。

今回ご相談したいのは、乳がん治療中の母のことです。

以下、分かる範囲の病理検査結果と経過です。

○術前病理検査結果(術後は詳細不明)
左乳癌
Invasive ductal carcinoma of
the left breast scirrhous type
Ly0 V0
核グレード:2(3+1)
組織学的グレード:2(3+3+1)
ki-67陽性率:14%

(口頭で知らされた)
ホルモン値が高い
HER2陽性(判定保留→FISH法?で2+)

○術後に判明したこと
1.7cm(腫瘍のサイズと思われる)
リンパ節転移なし

○治療経過
R3.8/(中旬) 乳房温存術施行
9/(中旬)~ Weeklyパクリタキセル×12+3週間に1回ハーセプチン×4
12/(上旬) , 12/(下旬)ハーセプチンのみ

R4.1/(中旬)受診時(ハーセプチン投与予定日)に心不全が認められ、投与せず。

循環器内科で内服薬による心不全の治療を開始。

1/(下旬)から放射線治療の予定でしたが、それも中止。

母は、心臓の状態が回復したらハーセプチンと放射線治療を再開したいと主治医に伝えましたが、
〈乳腺外科の先生〉
心臓に関しては、循環器内科の先生の意向を尊重。
放射線治療は患部が左側であることと、術後時間が開くと効果が無いのでやらない。

〈循環器内科の先生〉
心不全が改善傾向にあるとはいえ、回復してからもう1回原因になった薬を再開するというのは考えにくい。

★田澤先生のご意見をお聞きしたいのは以下の4点です。

①心不全の治療をしながらの放射線治療、ハーセプチン継続はできないのでしょうか。

②また、心臓の回復を待ってからの放射線治療は、間が空きすぎて効果が無いと思われますか。

(ガイドライン記載の「術後7ヶ月」で考えれば、R4.3月ぐらいまでは検討の余地があるのではと思ってしまいます。)

③心臓の回復を待ち、ハーセプチンを再開するという選択肢は、先生から見ても無しでしょうか。

(過去の回答を拝見し、ハーセプチンを途中で辞めたり再開したりしたときの効果を示すデータが無いことは理解しています。)

④放射線ができない場合、今から全摘をするという選択肢も考えられますか。
(母は乗り気ではないです。)

ハーセプチンが6回しかできず、放射線治療も中止となってしまい、とても不安です。
どちらも大変有効な治療と分かっているだけに、母も私も諦めきれない気持ちです。

気持ちが早まっているかもしれませんが、
治療継続を検討してくださる病院があれば転院も視野に入れています。

長文に目を通していただきありがとうございます。

お忙しいところ恐縮ですが、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは田澤です。

最初に「最も重要な大原則」をお示しします。

★術後補助療法は(再発治療とは異なり)「決して生命の危機を招いてはいけない」のです。
★★再発治療の場合には、「再発それ自体が生命の危機を招くリスクがある」ので、時には少々のリスクは覚悟で行いえます。

「①心不全の治療をしながらの放射線治療、ハーセプチン継続はできないのでしょうか。」
⇒しません。(上記★を、よくご理解ください)

「②また、心臓の回復を待ってからの放射線治療は、間が空きすぎて効果が無いと思われますか。」
⇒効果云々ではなく…
 やはり上記★を考えると、選択肢から外すべきです。(ハーセプチンほどではないとしても)

「③心臓の回復を待ち、ハーセプチンを再開するという選択肢は、先生から見ても無しでしょうか。」
⇒絶対にしません。
 ★★に記載したように、これが「再発治療」であれば「逆に」選択肢にはなりえます。

「④放射線ができない場合、今から全摘をするという選択肢も考えられますか。
(母は乗り気ではないです。)」

⇒乗り気でないのであれば…

 きちんと定期的に超音波でチェックしてもらいましょう。