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アポクリン癌の抗がん剤治療について

[管理番号:9912]
性別:女性
年齢:46歳
病名:右乳がん アポクリン癌
症状:
投稿日:2021年11月29日

本日は、手術後の抗がん剤治療についてご相談させていただきたいと思います。

右乳がん温存手術後、病理検査の結果がでました。

■アポクリン癌(リンパ転移無し)
■浸潤径 1.8cm 浸潤径+乳管内進展巣 1.8cm
■切断断端 陰性
■脈管侵襲 なし
■Nuclear grade 1/histological grade 1
■ER陰性 PR陰性 HER2陰性 ki67陽性率10%程度

治療として必須なのは、
放射線治療25回+5回
そこに抗がん剤治療をするなら、TC療法を追加すると説明されました。

トリプルネガティブなら抗がん剤は必須なんだけど、アポクリン癌なので、必要か悩ましいと言われました。

主治医の方針としては、トリプルネガティブであることと、浸潤癌であったこと(事前の検査では非浸潤がほとんどと言われてました)、年齢が若いことなどから、抗がん剤で治療をおすすめしたいとのこと。
 
主治医はトリプルネガティブと1.8cmだったことで、抗がん剤は受けてほしいと言ってました。

ただし、アポクリン癌は症例も蓄積されておらず、抗がん剤の必要性も医者によって考えが違うので、絶対に抗がん剤を受けてほしいとは言えないとのこと。

(主治医は悩ましいからこそ、できることはしたいようですが)

最後の判断は、患者さんになりますと言われました。

(私の受診している病院はアポクリン癌でも抗がん剤を受けている方の割合が多いとのことですが、経過観察の人もいるとのこと)

こちらの以前のQ&Aを拝見すると、私に抗がん剤が必要なのか?に疑問があり、田澤先生ならどのような治療を考えるか教えていただけないでしょうか?

よろしくおねがいします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは田澤です。

ガイドラインでお答えすれば…
基本的に「特定の組織型に限ったランダム化比較試験は殆どない」が基本です。

その中で
「腺様嚢胞癌」は予後良好でありpN0であれば抗がん剤は不要(トリプルネガティブでも)

それ以外の予後良好と言われている「髄様癌」や「アポクリン癌」は(上記とは異なり)「通常の浸潤癌に準じて」行うように推奨しています。
と、いうことを前提として私自身はどうしているか?となると

〇70歳以上であれば抗がん剤はしない
〇Ki67が極めて低値(質問者も該当)の場合には『抗がん剤は無意味な可能性があるが、(もしも省略するのであれば)抗がん剤が効かないというエビデンスは存在していないことは了解してもらう必要があります。』とお話ししています。
 ★つまり患者様から「抗がん剤しないことが不安」と言われた場合には速やかに抗がん剤をします。

ご参考に。

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

アポクリン癌の抗がん剤治療について
性別:女性
年齢:46歳
病名:
症状:
投稿日:2021年12月6日

田澤先生、先日はお忙しい中、すぐに返答頂き、ありがとうございました。

抗がん剤をするのかどうかだけをグルグルと考えてしまっていましたが、先生の返答をみさせていただき、本質を考えようと思いました。

追加での質問ですが、
①特殊型ということを考えないで、湿潤癌として判断するとしたら、私の病理結果は、前回の田澤先生の治療の方向性となりますか?

②トリプルネガティブでもki69が低値なのは、アポクリン癌だからなのか?
トリプルネガティブはki値にかかわらず、抗がん剤が必須なのですか?  

③抗がん剤の有無での再発率はどのくらいですか?

④抗がん剤をしないという選択をした時、注意すべきことはありますか?(生活する中、定期的な受診)

私自身が抗がん剤に対して、どうしても前向きになれず、だからといって、再発が怖くないわけでもなく、気持ちを落ち着かせて判断したく、田澤先生に再度ご相談させていただきました。

よろしくおねがいします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは田澤です。

今回の質問は(失礼ながら)本質からずれています。

一番重要な考え方だけ示すと
トリプルネガティブとは「①ルミナールタイプ」とか「②HER2陽性」のような、『ある特定の性質を持った共通の集団』ではない。ということを理解してください。

★つまり上記①にはホルモン療法、②には抗HER2療法が効果があることが証明されているのに対して

 トリプルネガティブは単に「ホルモン療法も抗HER2療法も効かない」ことだけが共通しているだけの「雑多な寄せ集め」なのです。
 ご理解いただけましたか?

★つまりトリプルネガティブは「ホルモン療法も抗HER2療法も効かない」ことは確かですが、『A.抗がん剤が凄く効くものや、B.抗がん剤が少しだけ効くもの、C.抗がん剤が全く効かないものが集まった集団』なのです。
 
〇現状、トリプルネガティブを上記A,B,Cに分類する根拠が無い以上、『あなたはトリプルネガティブだけどCだから抗がん剤はやりません』と根拠を持って言えないのです。

ただ、前回回答したように(我々乳腺外科医は)経験上「大人しいアポクリン癌には抗がん剤は不要なのでは?」という印象を持っている(Ki67が低値だと「尚更」そのようにイメージする)のは確かですが、確たるエビデンスがない(だからガイドラインもそうなっている)のです。
(今度こそ)ご参考に。

 
 


 

質問者様から 【結果3 】

アポクリン癌の抗がん剤治療について
性別:女性
年齢:46歳
病名:アポクリン癌
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]

田澤先生、お忙しい中、まとまりのない質問、失礼しました。

今後の治療については、主治医と決めようと思いますが、やるだけのことはやりたいと思います。

副作用を心配していますが、対処療法をとりながら乗り切りたいと思います。
ご対応いただき、ありがとうございました。

<Q&A結果>