Site Overlay

部分切除か全摘かで悩んでいます。

[管理番号:9866]
性別:女性
年齢:35
病名:右胸乳がん
症状:
投稿日:2021年11月8日

こんにちは。
いつもQ & Aで勉強させていただいております。

部分切除か全摘かで悩んでいます。

今までの治療経緯です。

妊娠中に乳がん発覚。

StageⅡa、T2NOMO、HER2陽性、ER30%、PgR70%、Ki67 30%、核グレード3

術前化学療法で妊娠中にAC3クール、出産後に1クール完了。

現在、ドセタキセル、ハーセプチン、パージェタの2クール目を終えたところで手術の説明を受けました。

効果判定の結果、最初2cmあった腫瘍が現在9mm×7mmとなっているので、主治医からは部分切除で全く問題ないと言われました。
部分切除なら有難いと思う一方で、全摘の方が後々、後悔や不安が残らないのではないかという点で悩んでおります。

以下、質問させていただきます。

(1) 主治医からは、再発リスクに関しては、部分切除+放射線治療をすれば、全摘した場合と確率は変わらないと言われました。
しかし、ガイドラインでは術前化学療法のデメリットとして「術後化学療法と比較して、温存乳房内再発率が若干高くなるとの報告もあります」と書かれているのを読みました。

これは、断端陽性だった場合の処置や、腫瘍縮小のパターンに見合った適切な処置が行われなかったことが原因によるものなのでしょうか。
もしそうであるとすると、局所再発のリスクの若干の差異は主治医の腕にかかっているということになりますか。

実際のところ、部分切除と比較すると、全摘の方が多少は再発リスクが少ないという事実はあるのでしょうか。

部分切除をした場合、実は乳房内に目に見えない癌が残っていて、放射線でも術後の化学治療でもその癌が消えなかったが故の局所再発は起こり得るのではないかと考えております。
全摘の方がそのリスクは回避できるのでしょうか。

局所再発を見つけた時点で全摘すれば良いのかもしれませんが、再発に気付かなかった時に次は転移リスクなども出てくるのではないかという不安もありますし、また抗がん剤などすることになるのは辛いです。
HER2陽性でグレード3という点も、部分切除で問題ないのか気がかりになる要素です。

(2)術前検査としてCTとMRIを行うようですが、エコーは予約されていません。
CTとMRIだけで腫瘍サイズ、位置等分かるのでしょうか。
一般的に、術前のエコーは不要なのでしょうか(主治医の予約ミスの可
能性もあるかもしれませんが)

(3)術前化学療法前の画像診断では、リンパ節転移はないと判断されましたが、妊娠中であったため、
行った画像検査は、エコー、造影剤を使わない単純CT、子宮部分を隠してのレントゲンのみです。
術前にリンパ節転移があって術前化学療法で転移が消えた場合は、センチネルリンパ節生検の信憑性は不十分と
のことですが、私の場合は妊娠中で行える検査が限られており、精細な画像が撮れなかったという可能性はないでしょうか。
このような場合、センチネルリンパ節生検ではなく、腋窩リンパ節郭清した方が安全なのでしょうか。

(4)若年の患者には、部分切除後、断端陰性でも放射線ブースト照射の追加で再発率が大幅に低下する
とのことですが、私のようなケースで「全摘」した場合、放射線の照射やブースト照射の追加は過剰治療になりますか。

病理診断の結果にもよるかと思いますが、田澤先生なら、どのような方法をお勧めされますでしょうか。

(5)知人の方でステージ2a、ルミナールB、核グレード3, Ki67が30だった方が、
乳がん発覚後から1年
ほどして骨転移が発覚したそうです。
この方は部分切除で、抗がん剤、ホルモン、放射線治療を受けられていたそうですが、このステージですぐに骨転移されたという事実に驚いています。
ステージ2aであれば
早期発見で骨転移など心配する必要はあまりないという認識でしたが、こういったケースはよくあるのでしょうか。
部分切除せずに、全摘していたらまた結果が違っていたのかなと考えてしまいます。

ご教示のほどよろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは田澤です。

「(1)主治医からは、再発リスクに関しては、部分切除+放射線治療をすれば、全摘した場合と確率は変わらないと言われました。」
⇒いつも言う事ですが…

 皆さん「再発を局所再発と遠隔転移再発とに分けていない」!

正しく理解するには、再発は必ず「局所再発」と「遠隔転移再発」に明確に分ける必要があります。

★つまり
温存と全摘では「局所再発のリスクは異なる」 温存では(術後照射しても)5%程度あるが、全摘ではゼロ%となります。

しかし温存と全摘では「遠隔転移再発」のリスクは全く同じです。

「一般的に、術前のエコーは不要なのでしょうか(主治医の予約ミスの可能性もあるかもしれませんが)」
⇒当然、執刀医が術前エコーすべきです。

「このような場合、センチネルリンパ節生検ではなく、腋窩リンパ節郭清した方が安全なのでしょうか。」
⇒エコーした筈ですよね?(抗がん剤前に)

 エコー所見で判断しましょう(抗がん剤前のエコーで転移無と診断しているのであれば、「センチネルリンパ節生検でOK]です)

「私のようなケースで「全摘」した場合、放射線の照射やブースト照射の追加は過剰治療になりますか。」
⇒物事は正しく整理しましょう。

 術前抗がん剤した場合の術後照射の適応は、あくまでも「抗がん剤前の画像診断を基に」行います。
 つまり抗がん剤前のエコーでリンパ節転移なしであれば、全摘後に照射をする必要はありません。

「早期発見で骨転移など心配する必要はあまりないという認識でしたが、こういったケースはよくあるのでしょうか。」
⇒皆さん、冷静に考えましょう。

 例え1期の早期乳癌でも再発率は5%程度はあるのです。
 お知り合いの方が再発する筈がないと考えるのは誤りであることをよく考えましょう。(1期でも100人のうち5人は再発するわけだから2A期では100人の内9人程度は再発するのです)

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

追加質問 部分切除か全摘かで悩んでいます。
性別:女性
年齢:35
病名:右胸乳がん
症状:
投稿日:2021年11月15日

田澤先生、先日は勉強不足な私の質問にご回答くださり、ありがとうございました。

抗がん剤前のエコーではリンパ転移なしと診断されています。

長くて申し訳ないのですが、追加で質問をさせてください。

(1)主治医からは全摘と部分+放射線で局所再発率が違うという説明はなかったのですが、温存の場合では5%あるというのは、どのような原因によるものなのでしょうか。

(2)告知された時は妊娠中であった為、MRIで広がり診断をしていません。
画像診断が満足にできなかったがために、他に広がりがあっても見逃されているのでは?と不安です。
化学療法前に実は存在したけれど、単純CTとエコーだけでは画像に現れなかった癌の広がりが術前化学療法により画像上は消えてしまい、微小な残存があっても気付かれず、部分切除した場合に取り残しとなってしまう可能性はありますか。

(3)病院と主治医の方針で、術後検診のエコーは1年に一回となるようですが、間隔が空きすぎではないでしょうか。
温存にした場合は局所再発率が5%あるとのことで、1年に一回のエコーでは局所再発に早く気づけないのではないかと不安です。
主治医は、術後検診として半年に一回のエコーは過剰と考えているようですが、一年に一回のエコーで再発に気づかず、局所再発→遠隔転移してしまう可能性はないのでしょうか。
主治医は乳がんは1cmになるのに10年くらいかかるから、半年でも一年でも結果は変わらないとの考えですが、私は2cmの腫瘍が発見された際に前回のエコー検査から8ヶ月しか経っていなかったため、主治医の言葉を容易に信じて良いのか分かりません。

(4)私は術前化学療法でしたが、同じ主治医で、手術先行でやってもらっている人もいることを知りました。
私が提案されたのは、妊娠中に術前化学療法を開始するか、出産後に術前化学療法をするかの2択で、手術先行という提案はありませんでした。
今更後悔しても仕方ないのかもしれませんが、妊娠29週(ほぼ30週)であったことを考えると、私が行っているレジメンが最良だったと言えるのでしょうか。
乳がんプラザで勉強するほど、手術先行の方が色々な意味で安心だと気付かされ、結果的に私の状況ではこれしか
選択肢がなかったのだと思いたい自分がいるのかもしれません。

田澤先生が他のQ&Aで回答されていたように、「術前化学療法をしたことでセンチネル生検の信頼度が低下
→センチネル陰性→リンパ郭清省略→腋窩再発」など、術前化学療法を選択したことで起こり得るネガティブな要素を心配しています。
今後の治療や手術で気をつけた方が良い点などあればご教示ください。

エコーはAC中とドセタキセル+ハーパー1回目の後までは毎回評価してもらっていましたが、腫瘍が小さくなっていることは確認できたため、これ以降は必要ないと言われてしまいました。
通常は毎クールごとの評価を行っていない主治医に私が無理を言って見てもらっていたため、それ以上は頼むことができませんでした。
残すところあと2クールですが、小さくなってきていた腫瘍が、今から大きくなってしまう可能性はあるのでしょうか。

(5)術後検診が1年に一回のエコーでは不安な場合、田澤先生にエコーしていただくことは可能でしょうか。
また、その場合は紹介状なしでも大丈夫でしょうか。
頻度についても、どれくらいが目安なのかご教示ください。

(6)手術までに完全奏功して腫瘍が消えた場合、主治医からは今までのエコー画像から腫瘍があった場所は分かると言われていますが、位置を正確に定められず、切除すべき範囲をミスされるという事態は起こり得るでしょうか。
その点を心配するなら、全摘の方が安全でしょうか。

(7)子どもが小さいため、抱っこする状況は避けられませんが、全摘したことで筋力が弱まり、抱っこに影響が出ることはないでしょうか。
また、胸が元々大きめなのですが、片胸になったことで体のバランスが崩れることはありませんか。

(8)全摘と部分切除+放射線、私の状況でしたら、どちらが安全ですか。
田澤先生はどちらをお勧めされますか。

(9)これまで腫瘍マーカーを測定されたことがありません。
稀なケースかもしれませんが、ステージ2b、HER2陽性でハーセプチンが効かず、分子標的薬治療中に腫瘍マーカーの値が上がった
ことから遠隔転移が判明した例を知りました。
ハーセプチンが効かない人の確率はどれくらいあるのでしょうか。

また、化学療法中でも薬が効かず転移などが起こる可能性を考えると、早期発見のためには腫瘍マーカーは大事なのでしょうか。
それとも、症状が出た時点で気付いても予後は変わらないのでしょうか。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは田澤です。

「(1)主治医からは全摘と部分+放射線で局所再発率が違うという説明はなかったのですが、温存の場合では5%あるというのは、どのような原因によるものなのでしょうか。」
⇒温存手術とは「乳腺を残す」わけだから…

 当然、その「残った乳腺に乳癌が発生する可能性」はあるわけです。(放射線で、その確率は1/3となりますが、ゼロになるわけではありません)

「(2)告知された時は妊娠中であった為、MRIで広がり診断をしていません。
画像診断が満足にできなかったがために、他に広がりがあっても見逃されているのでは?と不安です。
化学療法前に実は存在したけれど、単純CTとエコーだけでは画像に現れなかった癌の広がりが術前化学療法により画像上は消えてしまい、微小な残存があっても気付かれず、部分切除した場合に取り残しとなってしまう可能性はありますか。」

⇒勿論そのリスクはあります。(本来はMRIで拡がり診断をするわけだから)

「(3)病院と主治医の方針で、術後検診のエコーは1年に一回となるようですが、
間隔が空きすぎではないでしょうか。
温存にした場合は局所再発率が5%あるとのことで、1年に一回のエコーでは局所再発に早く気づけないのではないかと不安です。
主治医は、術後検診として半年に一回のエコーは過剰と考えている
ようですが、一年に一回のエコーで再発に気づかず、局所再発→遠隔転移してしまう
可能性はないのでしょうか。
主治医は乳がんは1cmになるのに10年くらいかかるから、半年でも一年でも結果は変
わらないとの考えですが、私は2cmの腫瘍が発見された際に前回のエコー検査から8ヶ月しか経って
いなかったため、主治医の言葉を容易に信じて良いのか分かりません。」

⇒術後経過観察(局所のエコーを含めて)にスタンダードはありません。
 不安があるのであれば、担当医に相談するしかありません。

「(4)私は術前化学療法でしたが、同じ主治医で、手術先行でやってもらっている
人もいることを知りました。
私が提案されたのは、妊娠中に術前化学療法を開始するか、出産後に術前化学療法をするかの2択で、
手術先行という提案はありませんでした。
今更後悔しても仕方ないのかもしれませんが、妊娠29週(ほぼ30週)であったことを考えると、私が行っているレジメンが最良だったと言えるのでしょうか。
乳がんプラザで勉強するほど、手術先行の方が色々な意味で安心だと気付かされ、結果的に私の状況ではこれしか選択肢がなかったのだと思いたい自分がいるのかもしれません。

田澤先生が他のQ&Aで回答されていたように、「術前化学療法をしたことでセンチネル生検の信頼度が低下→センチネル陰性→リンパ郭清省略→腋窩再発」など、術前化学療法を選択したことで起こり得るネガティブな要素を心配しています。
今後の治療や手術で気をつけた方が良い点などあればご教示ください。

エコーはAC中とドセタキセル+ハーパー1回目の後までは毎回評価してもらっていましたが、腫瘍が小さくなっていることは確認できたため、これ以降は必要ないと言われてしまいました。
通常は毎クールごとの評価を行っていない主治医に私が無理を言って見てもらっていたため、それ以上は頼むことができませんでした。
残すところあと2クールですが、小さくなってきていた腫瘍が、今から大きくなってしまう可能性はあるのでしょうか。」

⇒毎回エコーしてもらいましょう。

「(5)術後検診が1年に一回のエコーでは不安な場合、田澤先生にエコーしていただ
くことは可能でしょうか。」

⇒そのような人で(特に市川は)溢れていますよ。

「受診案内」はこちら

「また、その場合は紹介状なしでも大丈夫でしょうか。
頻度についても、どれくらいが目安なのかご教示ください。」

⇒半年に1回が多いですね。(どうしても3か月にしてくれ!という強心臓の方もごく稀にいらっしゃいますが…)

(6)手術までに完全奏功して腫瘍が消えた場合、主治医からは今までのエコー画像
から腫瘍があった場所
は分かると言われていますが、位置を正確に定められず、切除すべき範囲をミスされるという事態は起こり得るでしょうか。
その点を心配するなら、全摘の方が安全でしょうか。」

⇒それは主治医を信頼しましょう。

「(7)子どもが小さいため、抱っこする状況は避けられませんが、全摘したことで
筋力が弱まり、抱っこに影響が出ることはないでしょうか。
また、胸が元々大きめなのですが、片胸になったことで体のバランス
が崩れることはありませんか。」

⇒ありません。(乳腺と筋力は無関係)
 ご安心を。

「(8)全摘と部分切除+放射線、私の状況でしたら、どちらが安全ですか。
田澤先生はどちらをお勧めされますか。」

⇒メール内容からは「温存も可」の様です。
 あとはご本人次第ですよ。

「(9)これまで腫瘍マーカーを測定されたことがありません。」
⇒私も術前には測りませんよ。(正常だと思います。