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腋下リンパ節郭清の判断と術後化学療法の判断について

[管理番号:9044]
性別:女性
年齢:47歳
病名:浸潤性乳管がん
症状:
投稿日:2020年12月9日

いつもお忙しいなかで、このようなコラムがあることに大変感謝しております。

妻の乳がんに対して、宜しくお願いします。

〇現状
2020/12/(上旬)に、乳房温存手術+腋下リンパ節郭清手術を実施。

現在、病理診断まち(年末予定とのこと)。

 
〇経緯
・11/(上旬) 地元のクリニックで、検査の結果大学病院を紹介
・11月(中旬)日~(中旬)日 各検査(エコー、マンモMR、針生検、穿刺吸引)。

・11/(中旬) 乳がんと診断
・11/(下旬) PET-CT
・12/(上旬)  手術 ※予定通り無事終了
・12/(中旬) 退院予定

〇手術前日の診断結果
・組織型:浸潤性乳管がん
・浸潤径:1.2 ※良性が左右にたくさん
・リンパ転移:陽性 ※穿刺吸引実施
・ステージ:ⅡA (2cm未満&リンパ転移あり)
・遠隔転移:なし(PET-CT)
・グレード:2
・ホルモン受容 エストロゲン:8 、プロゲステロン:8
・HER2: 2+(IHC法) → FISH検査中(結果はまだ)
・KI67(MIB): 40%

【質問内容(2点)】

〇術前検査のMRと穿刺吸引の結果、リンパ転移ありと診断された後は特に説明がなく、
 腋下リンパ節郭清をしました。

 その判断に不安はないのですが、こういう場合、手術時のリンパの状態に関係なく、
 レベル1&2まではとるのが標準治療という認識であっていますでしょうか。

 手術前、手術後に主治医に確認できませんでした。

〇オンコタイプDXの必要性
 現時点で、ルミナルB HER2陽性 または HER2陰性 のどちらかである認識です。

 FISH検査の結果、「HER2/CEP17比<2.0 FISH法 陰性」となった場合、
 KI67の数値とリンパ節の転移個数で、術後治療が決まると認識しています。

 
 リンパ節の転移 3個以下の場合、
 「KI67:40%」なので抗がん剤治療確定でしょうか。

 それとも、オンコタイプDXを実施した方が良いでしょうか。

 先生のご意見をお願いいたします。

結果が出ていないのに悩んでもと考えたのですが、
判断に時間が必要と思い、結果前にご相談させていただきました。

何卒、宜しくお願いいたします。

 

 

田澤先生からの回答

こんにちは田澤です。

「その判断に不安はないのですが、こういう場合、手術時のリンパの状態に関係なく、
 レベル1&2まではとるのが標準治療という認識であっていますでしょうか。」

⇒本来なら…

 レベル1まで転移を疑う⇒レベル2までの郭清
 レベル2   〃   ⇒レベル3までの郭清

 とすべきなのですが、今では(悲しいことに)レベル3までの郭清をする(できる)施設は殆どありません。
 なので、(リンパ節転移の程度にかかわらず)レベル2郭清としていると想像します。(主治医に確認するといいでしょう)

「リンパ節の転移 3個以下の場合、 「KI67:40%」なので抗がん剤治療確定でしょうか。 それとも、オンコタイプDXを実施した方が良いでしょうか。」
⇒OncotypeDXすべきです。

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

腋下リンパ節郭清の判断と術後化学療法の判断について
性別:女性
年齢:47
病名:
症状:
投稿日:2020年12月17日

先日はご回答をありがとうございました。

今回も長文で、大変申し訳ございません。

その後、病理診断結果が下記の通りでました。

●病理診断結果
※日本語は私が調べた結果です。
もし誤りがあれば、修正して頂けると幸いです。

診断
 Breast, right partial
excision
Invasive ductal carcinoma(浸潤性乳管癌),

scirrhous(硬癌 ) type
INFb(infiltration浸潤様式),

g(乳腺組織)(+), f(脂肪組織)(+), s(皮膚)(-) 
ly1(リンパ管侵襲あり), v0(血管(静脈)侵襲なし)

pT1c(病理学的T因子) (size of invasive component(浸潤)) 1.5cm(T1:2cm未満)
EIC(-) :EIC-とは「非浸潤癌としての広範な拡がりがない」ことを示しています。

ICT(+),  : 乳腺嚢胞内腫瘍  あり

NACT(-) : 術前補助化学療法 なし

surgical margin(断端): negative(陰性)

nuclear atypia(核異型): Score2   

number of mitotic figures(核分裂像の数): Score 2
nucliar grade:2(核グレード2:計4)

Lymph nodes, axilla, excision
Metastasis of carcinoma

level 1(3/24) level2(0/3)
病理学的N因子 N1a?

※術後前診断
・ホルモン受容 エストロゲン 8 (1-8)、プロゲステロン 8(1-8)
・KI67(MIB) 40%

そのうえで、9つ質問させてください。

多くて申し訳ありません。

〇「size of invasive component」とは、浸潤経と認識しています。

 「浸潤経+乳管内進展巣」のサイズ結果がないのですが、乳管内進展巣が無かったのでしょうか。

  
〇診断結果の、「ICT(+)」 とは、どういう意味でしょうか

〇リンパ節に関する病理結果より、「病理学的N因子:N1a」と認識してよいでしょうか。

〇ステージは2Aと認識していますが、生存率などは、
 各項目の詳細情報は置いておいて、ステージのみ意識すればよいでしょうか。

〇術後の病理診断では、「KI67」の検査がなく、針生検の方が正確とのことでした。

 一般的には、そのようなものなのでしょうか?

〇RxPONDER試験について
 Her2陰性の場合、「KI67=40%」なので、オンコタイプを検討しておりました。

 先週、RxPONDER試験の結果について、
【「RS25以下、閉経前、リンパ転移陽性」の場合、抗がん剤上乗せが、3%程度ある】
とのニュースがありました。

これを踏まえ、オンコタイプをせずに、抗がん剤治療を実施した方がよいでしょうか。

〇「ルミナルB Her2陰性」が確定しました。

 主治医より、抗がん剤をしない選択もあるが、
 『抵抗力がある世代で、リンパに3個の転移があるので、抗がん剤はすることをお勧めする。

 TCよりも、最も聞く可能性のある(EC+ドセタキセル)を提案する』とのことでした。

 Her2陰性の場合、【TC療法】を提案されると考えておりましたので、迷っております。

 これは、年齢、リンパ転移数以外の病理診断結果を踏まえた判断なのでしょうか。

 田澤先生のお考えをご教授ください。

 ※AC療法より、EC療法の方が副作用が少ない可能性があるともいわれましたが、
  いかがでしょうか

〇「EC+ドセタキセル」と「TC療法」の相違点について
 治療期間(3か月、6か月)以外で、相違点、TCの優位点があれば教えてください。

 予後効果、副作用など。

〇手術は12月上旬。
抗がん剤治療開始が、1月下旬でも影響はないでしょか。

以上、まとまっておらずすみません。

お忙しいところ大変恐縮ですが、
ご回答のほど、何卒宜しくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは田澤です。

「〇「size of invasive component」とは、浸潤経と認識しています。

 「浸潤経+乳管内進展巣」のサイズ結果がないのですが、乳管内進展巣が無かったのでしょうか。

  
〇診断結果の、「ICT(+)」 とは、どういう意味でしょうか

〇リンパ節に関する病理結果より、「病理学的N因子:N1a」と認識してよいでしょうか。

〇ステージは2Aと認識していますが、生存率などは、
 各項目の詳細情報は置いておいて、ステージのみ意識すればよいでしょうか。

〇術後の病理診断では、「KI67」の検査がなく、針生検の方が正確とのことでした。

 一般的には、そのようなものなのでしょうか?

〇RxPONDER試験について
 Her2陰性の場合、「KI67=40%」なので、オンコタイプを検討しておりました。

 先週、RxPONDER試験の結果について、
【「RS25以下、閉経前、リンパ転移陽性」の場合、抗がん剤上乗せが、3%程度ある】
とのニュースがあり
ました。

これを踏まえ、オンコタイプをせずに、抗がん剤治療を実施した方がよいでしょうか。

〇「ルミナルB Her2陰性」が確定しました。

 主治医より、抗がん剤をしない選択もあるが、
 『抵抗力がある世代で、リンパに3個の転移があるので、抗がん剤はすることをお勧めする。

 TCよりも、最も聞く可能性のある(EC+ドセタキセル)を提案する』とのことでした。

 Her2陰性の場合、【TC療法】を提案されると考えておりましたので、迷っております。
 これは、年齢、リンパ転移数以外の病理診断結果を踏まえた判断なのでしょうか。
 田澤先生のお考えをご教授ください。」
⇒私であればTCを推奨します。

「治療期間(3か月、6か月)以外で、相違点、TCの優位点があれば教えてください。」
⇒特にありません。

「〇手術は12月上旬。
抗がん剤治療開始が、1月下旬でも影響はないでしょか。」

⇒全く問題ありません。

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

放射線治療と術後定期検診について
性別:女性
年齢:47
病名:浸潤性乳管がん
症状:
投稿日:2021年6月11日

ご無沙汰しております。

昨年年末に色々とお世話になりました。

経過報告とともに、新たな質問がありご連絡しました。

頂いたご回答を踏まえたうえで、妻の「1%でも可能性があるのであれば実行」の意思を尊重し、
セカンドオピニオン受診の上、オンコタイプDXをせずに、「EC(4サイクル)+ドセタ(4サイクル)※ジーラスタあり」を
本日完了しました。
6月末より、放射線治療とホルモン治療を開始します

※辛かった主な副作用
・EC中:吐き気
・ドセタ中:むくみ、しびれ
・両方;味覚障害

そのうえで、2項目についてご質問があります。

〇放射線治療について
放射線治療のみ、立地を優先して、別病院(候補2つ)を検討しています。

一つは、がん診療連携拠点病院、一つは地域がん診療連携拠点病院です。

両院ともリニアックのみ。

そこで質問です。

手術や検診については、技術力が影響することを勉強しました。

①術後(右温存手術+リンパ転移3個+リンパ節郭清(レベル2)、断端陰性)の放射
線治療の場合、設備や技術量を考慮せず、
 立地のみで選択してよいのでしょか。
デメリットはないのでしょうか。

 主治医の先生は、「近いところでよいよ」と軽い感じでした。

②今回の治療は、強度変調放射線治療(IMRT)になるのでしょうか。

 トモセラピーは、予防にはあまり意味がない認識でよいでしょうか。

③リンパ節郭清済の場合、わきの放射線は不要の認識でよいでしょうか。

④Boost照射は必要でしょうか。

〇術後定期検診について
主治医の先生より下記と言われております。

・3か月に1回 血液検査
 ※マーカー、触診の有無は確認できていません。

・1年毎 マンモ

エコーの有無を確認したところ、不要とのこと。

①ガイドラインにはエコーは必要あればみたいな記載でしたが、
 実際必要ではないのでしょうか。

②必要であれば、主治医の先生にエコーのみお願いするのですが、
ほかの病院でエコーのみすることは、あまり意味がないでしょうか。

今回も長文になってしまい、申し訳ございません。

宜しくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは田澤です。

「①術後(右温存手術+リンパ転移3個+リンパ節郭清(レベル2)、断端陰性)の放射線治療の場合、設備や技術量を考慮せず、
 立地のみで選択してよいのでしょか。
デメリットはないのでしょうか。
 主治医の先生は、「近いところでよいよ」と軽い感じでした。」

⇒主治医に同意します。

「②今回の治療は、強度変調放射線治療(IMRT)になるのでしょうか。」
⇒違うと思います。(放射線科医に確認を)

「③リンパ節郭清済の場合、わきの放射線は不要の認識でよいでしょうか。」
⇒不要です。(腋窩郭清+腋窩照射はリンパ浮腫のリスクとなります)

「④Boost照射は必要でしょうか。」
⇒断端陰性だから不要だと思います。

「①ガイドラインにはエコーは必要あればみたいな記載でしたが、
 実際必要ではないのでしょうか。」

⇒各施設で異なっており、主治医の考えに従うしかないでしょう。

「②必要であれば、主治医の先生にエコーのみお願いするのですが、ほかの病院でエコーのみすることは、あまり意味がないでしょうか。」
⇒意味はあります。(主治医でなくても「異常があれば」わかります)