[管理番号:7933]
性別:女性
年齢:48歳
病名:非浸潤性乳管癌
症状:
いつも読ませていただいています。
手術前のマンモトーム生検の病理組織結果
乳管内に局所して充実性に増生する異型乳管上皮細胞を認める。
核分裂像は極少数散見する程度であるが核の大小不同・不整を中程度に認め、中異型度非浸潤性乳管癌を考えます。
ER(+) (proportion score5,Mitori counts 3)
PgR(+) (5,3)
Malignancy(+)
MRIでは淡い造影効果があるが背景乳腺増強とのコントラスト差はわずかです。
非浸潤性乳管癌のため、
乳房部分手術、センチネルリンパ節生検なし、術後放射線治療という説明で手術しました。
術後の病理結果で断端陽性になりました。
病理結果は非浸潤性乳管癌、
ER(+),PgR(+)と聞きました。
断端陽性は隣どうし2箇所。
口頭での説明だったので詳しくは分かりません。
断端陽性のため再手術で全摘する事にしました。
その場合、術後の病理結果が浸潤性乳管癌があるかもしれないし、断端陽性の場所以外に何も出てこないかもしれないとの事でした。
そこで質問ですが、
①再手術でセンチネルリンパ節生検は可能でしょうか?腫瘍を摘出した後では難しいのでしょうか?正確にできないですか?技量の問題、注射する位置の問題でしょうか?できるならやっておいた方が良いですか?
(浸潤癌が見つかるかもしれないので)
②もしセンチネルリンパ節生検ができないとすれば、全摘した時に浸潤癌があるかもしれないので一緒にリンパ節郭清した方が良いですか?
その場所は、リンパ節IのみとかIの一部を取って検査とか何か良い方法はありますか?
③もしセンチネルリンパ節生検ができないとすれば、非浸潤性乳管癌の
可能性を信じて郭清なしとした場合、術後の病理結果で浸潤癌だったら
リンパ節の転移が調べられないので3度目の手術で郭清するのでしょうか?
リンパ節郭清のみの手術は何日ぐらいの入院期間になりますか?
それとも他に治療法がありますか?
④もし最初から全摘してセンチネルリンパ節生検をした場合、非浸潤性乳管癌でもセンチネルリンパ節に微少転移があった場合はどんな治療法になるのでしょうか?ホルモン剤ですか?
せっかく非浸潤性乳管癌で見つかったのに色々悩んでとても残念で仕方ありません。
非浸潤性乳管癌のため部分切除でセンチネルリンパ節生検はしないというのが病院の方針だったので同意しましたが、断端陽性になった場合のことをよく考えてセンチネルリンパ節生検を頼めば良かったと後悔しています。
お忙しいところたくさん質問して申し訳ないですが、先生のご意見を聞くとスッキリすると思うのでよろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「①再手術でセンチネルリンパ節生検は可能でしょうか?」
⇒可能でしょうが、「不要」です。
病変の中心部が「非浸潤癌だった」のだから、(ごく少数と想像される)「残りの乳腺に浸潤癌が潜んでいる」と想像する理由はありません。
★ガイドラインでは「全摘の場合には2期的センチネルが不可能になるから」という理由で「全摘の際にはセンチネルリンパ節生検を勧めている」ようですが…
今回のように「温存術(外科的生検と同様な位置づけとなります)で非浸潤癌」なのだから、浸潤癌の存在を想定する必要は無いと思います。(私ならセンチネルリンパ節生検は勧めません)
「全摘した時に浸潤癌があるかもしれないので一緒にリンパ節郭清した方が良いですか?」
⇒全くナンセンス!
「benefit(もしも浸潤癌があったら、リンパ節を調べておいた方が安心)」<<
<「risk(この場合それによる後遺症)」となります。
「郭清なしとした場合、術後の病理結果で浸潤癌だったらリンパ節の転移が調べられないので3度目の手術で郭清するのでしょうか?」
⇒全くナンセンス!
術後に「超音波で定期的に確認」となります。
「リンパ節郭清のみの手術は何日ぐらいの入院期間になりますか?」
⇒2泊3日で十分
「非浸潤性乳管癌でもセンチネルリンパ節に微少転移があった場合はどんな治療法になるのでしょうか?」
⇒リンパ節転移と全身療法は全く別物です。
非浸潤癌なら無治療となります。