[管理番号:7604]
性別:女性
年齢:56歳
病名:左乳房浸潤がん
症状:左胸のしこり(乳首の少し上)
大きさ:1.8~2.5cm(円形の癌から角のように伸びている部分があり、
直径は約1.8~1.9cmで、伸びている部分を入れると全長が2.5cm)
グレード3、トリプルネガティブ、KI67:35.3%、ステージⅡ?(現段階)、画像上はリンパの腫れはなく、骨などへの転移なし
検査項目:マンモグラフィー、エコー、細胞診、MRI、CT、骨シンチ
母についてですが6/(中旬)に受けた健診で要精密検査になり、細胞診の結果乳がんと診断を受け、来月手術の予定になっています。
主治医の治療方針としては、がん細胞の周りから広めに切り取る温存手術+術後半年抗がん剤+放射線治療を進められました。
全摘を希望すれば否定しないと言われ、その場合は手術と抗がん剤のみで放射線治療はしないと説明されました。
母としては、悪性度も高いので、見た目の変化より再発リスクの不安があり、命を最優先させたく、全摘を覚悟していました。
それなのに主治医から温存術を進められ、戸惑っています。
手術方法(温存か全摘)より、合った抗がん剤で治療していくことが重要と言われましたが、どういうことでしょうか?
全摘の場合には放射線治療はしないということは、よくあることでしょうか?
また温存と全摘の場合の生存率、再発率の差はどれくらいでしょうか?
母には一番良い方法で治療を受けてほしいと思っています。
田澤先生なら、温存術・全摘、どちらの治療方法を勧められますか?
次の診察までに手術方法を決断しなければいけないので、できれば今月中に先生のご意見をいただけると幸いです。
お忙しいところ申し訳ございませんが、よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
物事はシンプルに考えましょう。
治療は「局所(治療)」と「全身(治療)」に明確に分けましょう。
温存したら放射線かけるし、全摘なら(かけるべき乳腺が無いのだから)当然放射線は不要です。
そのことと、全身療法として何が必要なのか?は全く別の話です。
「田澤先生なら、どちらを勧められますか?」
⇒患者さんの希望に沿います。
「命を最優先させたく、全摘を覚悟」しているのであれば、全摘でしょう。
「全摘の場合は抗がん剤のみで放射線治療はしないということはよくあることでしょうか?」
⇒勿論!
〇放射線を「何のために」行うのか考えてみましょう。
「残した」乳腺にかけるのです。(全摘すれば不要なのです)
「また温存と全摘の場合の生存率、再発率の差はどれくらいでしょうか?」
⇒生存率は変わりません。(乳房内再発しても、その際に全摘をすれば、最初から全摘した場合と予後は一緒)
再発率とは?(ここでは解りやすく、「局所再発率」と「全身遠隔転移再発率」に分けます。)
「局所再発率」 全摘:ほぼゼロ 温存:(放射線をかけても)10年で5%程度
「遠隔転移再発率」 両者に差はない(生存率と一緒)