[管理番号:3947]
性別:女性
年齢:42歳
初めまして。
42歳女性です。
先月10月(下旬)日に粘液癌で左乳房部分切除+センチネルリンパ節生検の手術を受けました。
昨日、病理結果が出て、断端陽性であることが判明しました。
主治医からは、見つかったのは非浸潤癌で、1本の乳管のみであることから、放射線照射を通常よりも5回追加して30回照射にするか、もし心配であるなら全摘の選択もあると言われました。
主治医は、放射線治療の追加でも大丈夫と言われましたが、どちらにしたらいいか迷っています。
ご意見をいただけますでしょうか?
検査結果は以下の通りです。
臓器
乳腺 (左)
診断
Left breast cancer
所見
左乳房部分切除+センチネルリンパ節生検
Mucinous carcinoma @#1-6 浸潤は#3,4
腫瘍径 約11mm、pT1c、f、ly0、V0
pN0(SLN:0/1)
StageⅠ
DFM<5mm(断端陽性) #1に非浸潤癌あり。
(乳首に近いところ)
ER(Allred 8=5+3)
PgR(Allred 8=5+3)
HER2(0)
Ki67LI20%
組織型 粘液癌
TNM、病期(UICC)pT1cN0M0、pStageⅠ
質問は放射線照射の追加でも大丈夫か?全摘の方がいいのか?
放射線照射を追加した場合、もし非浸潤癌が浸潤癌になって、リンパ節や他の臓器に
転移する確率はどれくらいあるか?
放射線照射で非浸潤癌が消えるのか?またそれを確かめる方法はMRIなどで
確認することはできるのか?
ぜひ先生のご意見をお聞かせください。
参考にさせてください。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
断端陽性については「その程度により、異なる」ので一般論として論じることは避けた方が無難です。
つまり(他人のケースを当て嵌めるのは不適切であり)「私の場合はどうなのか?」という視点が重要です
「質問は放射線照射の追加でも大丈夫か?全摘の方がいいのか?」
⇒これは実際の状況(切りだし図)などが不明な状態でのコメントは「ある種、無責任」とも言えます。
敢えて「一般論」としてみると「見つかったのは非浸潤癌で、1本の乳管のみ」なのであれば、「照射だけでも大丈夫」なような印象はあります。
「放射線照射を追加した場合、もし非浸潤癌が浸潤癌になって、リンパ節や他の臓器に転移する確率はどれくらいあるか?」
⇒これを数値化することは不可能です。
あまりにも他の多くの因子(手術の精度や全身療法なども含め)が関与しているのです。
「放射線照射で非浸潤癌が消えるのか?」
⇒それを期待していることは事実ですが…
誰にも解りません。
「またそれを確かめる方法はMRIなどで確認することはできるのか?」
⇒不可能です。
画像で見えるレベルではないのです。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、先日はお忙しいところ質問にお答えいただき、ありがとうございました。
温存手術後に病理の検査結果で断端陽性が見つかった件で、来週月曜日に主治医にもう一度お話を聞く機会をいただきましたので、ぜひその前に田澤先生にお聞きしたくて、1週間あいていませんが、再質問させていただきました。
申し訳ございません。
断端陽性で、放射線追加でも対応できる条件がよく分からないのですが、先生のQ&Aを拝見したところ、
①非浸潤ガンであり、個数が少ない。
②ガンの悪性度が低い
③ガンの範囲が狭い。
④断端に露出していない。
または露出していても2mm以内である。
ということでしょうか?
病理検査結果のDMF<5mmということは、断端に露出はしていないということなのでしょうか?端から、5mm以内の所に非浸潤癌があるということでしょうか?
あとは、断端陽性の箇所が、皮膚側、深部側、側方、乳頭側のどこにできているか、主治医に聞いてみようと思うのですが、どの場所だった
ら、全摘の方がいいとか、放射線追加でも対応できるとか、場所によっても変わってくるのでしょうか?
癌の悪性度は1~3だったら、1までですか?
全摘すれば、局所再発の可能性がなくなるので、そちらを選べばいいのですが、もし放射線追加でもリスクが少なければ、できれば乳房は残したいという思いもあり、迷っています。
田澤先生が考えられる断端陽性の場合でも、放射線追加で対応できると思われる条件を教えていただけますでしょうか。
お忙しいところ、何度
ももうしわけございません。
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
前回、回答したように
○敢えて「一般論」としてみると「見つかったのは非浸潤癌で、1本の乳管のみ」なのであれば、「照射だけでも大丈夫」なような印象はあります。
「断端陽性で、放射線追加でも対応できる条件がよく分からないのですが、先生のQ&Aを拝見したところ、①非浸潤ガンであり、個数が少ない。②ガンの悪性度が低い③ガンの範囲が狭い。④断端に露出していない。または露出していても2mm以内である。ということでしょうか?」
⇒ほぼパーフェクトですね。
「病理検査結果のDMF<5mmということは、断端に露出はしていないということなのでしょうか?端から、5mm以内の所に非浸潤癌があるということでしょうか?」
⇒そうだと思います。
St. Gallen2015のコンセンサスだと「断端は露出していなければOK」となっていますが… 日本の基準では「5mm以内は陽性」というのが昔からあります。
「断端陽性の箇所が、皮膚側、深部側、側方、乳頭側のどの場所だったら、全摘の方がいいとか、放射線追加でも対応できるとか、場所によっても変わってくるのでしょうか?」
⇒まず「皮膚側や深部側」は気にしなくても大丈夫です。
これは「剥がす」ところなので厳密に行って「切る」ところとは異なります。
つまり外科医が「きちんと安全に剥がしている」意識があれば大丈夫です。(皮膚そのものや大胸筋そのものに浸潤していないかぎり、問題ないのです)
「側方」は要注意です。 ここは執刀医が「任意で切離」する部位なので「病変を分断してしまう」可能性があります。
「乳頭側」は、(本来、乳管内進展を考えて、乳頭直下まで切除すべき ♯私はくさび状に乳頭裏まで切除するようにしています)まともに「腫瘍から等距離とすると」断端陽性となり易い部位と言えます。
「癌の悪性度は1~3だったら、1までですか?」
⇒1(つまり、低異型度の非浸潤癌)なら、より安心ですが、あくまでも重要なのは「範囲」です。
「田澤先生が考えられる断端陽性の場合でも、放射線追加で対応できると思われる条件を教えていただけますでしょうか。」
⇒まず「皮膚側、深部側」は無視します。
側方断端は「浸潤癌なら追加切除が必須」
非浸潤癌なら「1mm や1腺管」なら大丈夫そうに思います。
♯ただし、やはり「切りだし図で確認すべき」です。
病変の中心部から完全に離れて、本当に「1腺管だけ」なのと、「病変の中心付近でたまたま1腺管だけ」とは『断端の記載表現は同じでも、意味は全く異なる』のです。
質問者様から 【質問3】
田澤先生、先日はお忙しいところ再度質問にお答えいただき、ありがとうございました。
大変分かりやすく、参考になりました。
温存手術後に病理の検査結果で断端陽性が見つかった件で、本日月曜日に主治医にお話を聞いてまいりました。
水曜日に放射線追加にするか、
全摘にするか返事をすることになりましたので、再度その前に田澤先生にお聞きしたくて、1週間あいていませんが、質問させていただきました。
何度も申し訳ございません。
元々の病変(手術したところ)はDに近いC領域でして、断端陽性の箇所は、乳頭側でEに近いところに1か所でした。
癌の広がりは、乳管1本分で狭いそうです。
主治医の話では、乳頭に近いところで、もしかした
ら、まだガンが残っている可能性もあるかもとのことでした。
癌の悪性度は、3でした。
前回、田澤先生がおっしゃられた癌の悪性度よりも、癌の範囲の方が大切で、
<病変の中心部から完全に離れて、本当に「1腺管だけ」なのと、「病変の中心付近でたまたま1腺管だけ」とは『断端の記載表現は同じでも、意味は全く異なる』のです。>
の意味がよく分からなくて、主治医に確認したところ、病変の中心部から完全に離れて、本当に「1腺管だけ」にあてはまるようです。
放射線追加できるか判断するのに、主治医に確認した方がいいことは、
他にありますでしょうか?
このような状況でも、放射線追加でも大丈夫なのでしょうか?
田澤先生でしたら、どちらを選択されますでしょうか?お忙しいところ、何度も申し訳ございません。
ぜひ、参考にさせてください。
よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「病変の中心部から完全に離れて、本当に「1腺管だけ」にあてはまる」
⇒それであれば、大丈夫そうに思います。
質問者様から 【質問4】
以前、管理番号3947でステージ1の左乳房の温存手術後の断端陽性について質問させていただいたものです。
その節は、大変お世話になり、ありがとうございました。
放射線照射も無事に終わりまして、現在ノルバデックスを1日1錠飲んでおります。
4月に術後半年後の検診でマンモグラフィと超音波検診をやっていただきました。
左乳房に異常は見られなかったのですが、右乳房に石灰化しているところが二つ見つかりました。
3.5mmと言われたのですが、大きさなのか二つの距離なのか分かりません。
ちらばっていなくて、1か所の所に見つかったので、悪性の可能性もあると言われました。
生検をした方がいいか、主治医に質問したら、5mm以下なので、生検をしても正確に狙った組織が採れるか不確実だからと、経過観察になりました。
こちらで、石灰化で悪性か良性か判断するには、マンモトーム(ステレオガイド下マンモトーム生検)なら、診断できると書いてありました。
私のように3.5mmのものでも、正確に検査することはできるのでしょうか?
今私がお世話になっている病院は、ステレオガイド下マンモトームがありません。
もしステレオガイド下マンモトームで検査ができるのであれば、来週、診察があるので、他の病院に紹介状を書いていただこうと思っております。
それから、左乳房は断端陽性が見つかったこともあり、全身転移しないか気がかりなのですが、CTとかで経過観察していった方がいいのでしょうか?
主治医の話では、ステージ1の場合、胸や脇に症状が出てからでも遅くないので、無理にCTをとる必要もないけれど、心配だったらやってみてもいいですよと言われました。
先生は、ステージ1で断端陽性の患者さんの場合、術後どのような検査をされていますか?教えてください。
お忙しい所、申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「5mm以下なので、生検をしても正確に狙った組織が採れるか不確実だからと、経過観察」
⇒??
そんな診療レベルでは話になりません。
実際は「エコーで見える所見であれ、マンモでの石灰化であれ」画像に写っているものは(たとえ3mmでも)「確定診断できる」のです。
「私のように3.5mmのものでも、正確に検査することはできるのでしょうか?」
⇒100%当然です。
「左乳房は断端陽性が見つかったこともあり、全身転移しないか気がかり」
⇒全く誤った認識です。
断端陽性ならば、(全身ではなく)「局所(温存乳房)」を担当医にきちんと3カ月に1回エコーしてもらえばいいのです。
「CTとかで経過観察していった方がいいのでしょうか?」
⇒全く無駄な被爆です。
「先生は、ステージ1で断端陽性の患者さんの場合、術後どのような検査をされていますか?教えてください。」
⇒幸い「断端陽性」の患者さんはいませんが…(断端陽性なら再切除となります)
○ホルモン療法で3カ月に1回通院している以上、毎回「診察+超音波」
採血は半年に1回、マンモが1年に1回(CTだの骨シンチはしません)