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乳管内乳頭腫の外的生検について

[管理番号:3995]
性別:女性
年齢:37歳
お忙しいところQ&Aの回答ありがとうございます。
軽い症状ですが、気になり質問させていただいきます。
右乳しこり及び時々ピリピリ痛む症状が気になり、乳腺外科を受診しました。
(乳からの分泌などは一切ありません。)
超音波…2センチぐらいのいびつなしこり有
マンモグラフィー…少し石灰化はありましたが、明確なしこりは確認でない。
針生検…良性(結果は下記に記載)
結果担当医から乳館内乳頭腫(良性)だろうと言われました。
但し、超音波画像も怪しいので、
外的生検(腫瘍病変全体を採取)をすすめられています。
経過観察でもいいが、万が一悪性の可能性もあるので、
保証できないと言われました。
外的生検をして非浸潤ガンだったとしても、早期発見だから、
少し放射線治療するだけでいいしと説明され、
良性なのにガンの説明までされて驚きました。
※外的生検(全身麻酔施設がない)はできない個人病院です。
外的生検するには病院に紹介状を書いて下さるそうです。
この状態で外的生検をすべきか悩んでおります。
(外的生検の結果は五分五分とわかっています。)
①担当医は手術は行っていないようなのですが、診断は間違いないのでしょうか。
②他の病院や他の検査をすれば診断結果はかわるものでしょうか。
(他の病院に行っても、良性だから大丈夫と言われるか、
外的生検をすすめられるかのどちらかと思っているのですが、他に違う見解があるのか知りたいです。)
③超低用量ピル(ヤーズ)を服用しているのですが、乳管内乳頭腫の原因の一つと考えられますでしょうか。
※ピルは関係ないと言われていますが、ピルの副作用として、乳が張るという症状があります。
もし外的生検する場合、影響がないか心配です。
④先生でも外的生検をすすめられますか。
⑤外的生検を行う場合、全身麻酔とのことで家族の立会は必須なのでしょうか。
できれば本人一人で行きたいと思っているのですが、してもらえないのでしょうか。
一般的にどのくらいの入院なのでしょうか。
ご意見をお聞かせ下さい。
お忙しいところ申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
(針生検の結果)
臨床的診断:右乳腺腫瘍
病理組織診断:Right breast lesion:(CNB)
Intraductal papilloma;compatible with=A~C
病理組織所見
採取乳腺組織では、右乳腺腫瘤を認め、その部からの生検(CNB:A~C)で。
A~Cではやや拡張した乳管内で、有芯状の血管、繊維性間質を伴ったtumor cell
が乳腺状パターンを呈して増生しています。
明らかな間質浸潤を呈するtumor cell
は認められません。
一部では、不整なシ状パターンを呈する増生所見を認めますが、構造異性、免疫染色結果を含め、直ちに悪性とするだけの所見は認められません。
※免疫染色ではSMAやp63,CD10などの態度から筋上皮性格は基底側に保たれており、
intraductal papillomaの所見として矛盾はありません。
※一部、シ状パターンが目立つ乳管増生部を認めますが、DCISと言い難い所見と判断致します。
※画像診断上問題があれば、腫瘍病変全体を採取し、組織学検索をお願いします。
以上
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
乳管内乳頭腫ですね。
乳管内乳頭腫は(線維腺腫や嚢胞など)明らかな良性所見とは異なり、(良性とはいえ)増殖性の強い疾患です。
以上の点からは
2cmの乳管内乳頭腫とすれば「外科的生検の適応」があります。
更に「3つの側面」があります。
①(嚢胞内腫瘍同様に)乳頭状病変というのは(針を用いた)「組織診」では診断が確実ではない。
  実際に摘出してみると(実は)癌というケースもありえる。
②その腫瘍自体は良性でも(将来的に)同一乳管から癌が発生するリスクがある
③画像上、非常に「気になる(心配する)」像である。
以上より、「危なっかしい思い」をして経過観察するよりも「外科的生検でスッキリさせた方が良い」と我々のような(外科医出身の)乳腺外科医は考えます。
 ♯この点は、(我々の世代のような外科医出身ではなく)最初から「乳腺外科」だけをしてきたような世代の若い(特に)女性医師とは感覚が異なるかもしれません(若い女性医師だと、外科的生検よりは「経過観察」を勧めがちです)
「結果担当医から乳館内乳頭腫(良性)だろう」
「但し、超音波画像も怪しいので、外的生検(腫瘍病変全体を採取)をすすめられ」「経過観察でもいいが、万が一悪性の可能性もあるので、保証できない」

⇒まさに、この担当医のコメントは上記①~③を表現しています。
「外的生検をして非浸潤ガンだったとしても、早期発見だから、少し放射線治療するだけでいいしと説明」
⇒まさに「この様なケース」が実際にあるのです。
「(外的生検の結果は五分五分とわかっています。」
⇒針生検での「乳管内乳頭腫」との診断なのだから、五分五分まではいかないと思います。 多く見積もっても(通常)2~3割でしょう。
「①担当医は手術は行っていないようなのですが、診断は間違いないのでしょうか。」
⇒その通りです。
「②他の病院や他の検査をすれば診断結果はかわるものでしょうか。」
⇒診断は変わりません。
 ただし、冒頭でコメントしたように
 「若い女性医師」など(経過観察に傾きがちな)医師であれば、「針生検で良性なのだから、経過観察すべき」などと言いそうです。
「③超低用量ピル(ヤーズ)を服用しているのですが、乳管内乳頭腫の原因の一つと考えられますでしょうか。」
⇒無関係です。
「もし外的生検する場合、影響がないか心配です。」
⇒ありません。(考え過ぎです)
「④先生でも外的生検をすすめられますか。」
⇒勧めます。(冒頭のコメント通り)
 ただし、患者さんの意思を尊重します。
 更に「another choice」として『マンモトームで広範囲を削る』という方法もあります。
 ♯この場合は「嚢胞内腫瘍」のように液体が混じっていない事が前提です。
「⑤外的生検を行う場合、全身麻酔とのことで家族の立会は必須なのでしょうか。できれば本人一人で行きたいと思っているのですが、してもらえないのでしょうか。」
⇒(腫瘍を摘出するだけなら)そもそも「局麻」で十分でしょう。
 全麻で行う場合には(癌であってもいいように)「十分なマージンをつけた切除」ができます。
 その場合でも「付添は不要」です。(他院の事情は不明ですが)
 
「一般的にどのくらいの入院なのでしょうか。」
⇒十分なマージンをつけた手術を全麻で行う場合ですね?
 その場合は2泊3日(前日入院、翌日退院)で十分お釣りが来ます。