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乳頭を残せる条件について

[管理番号:3548]
性別:女性
年齢:30歳
いつもこちらのサイトで勉強させていただいております。
乳頭を残せる条件と全摘手術について質問致します。
術式が全摘の場合は、乳頭を残せる事は少ないのでしょうか?
やはり局所再発のリスクが高いからですか?
残せる条件としまして、乳頭に直接浸潤していなければ大丈夫と考えで良いですか?
私は乳頭の下にも腫瘍があると言われております。
この場合はやはり残さずに全摘してしまう方が安全なのでしょうか。
(二次再建を考えております)
また、全摘手術についてですが、かなりの貧乳で痩せ型の場合、皮膚が足りなくなり傷が大きくなる可能性もありますか?
例えば胸の大きい人の腫瘍系5センチと、
胸の小さい人の腫瘍系5センチとの全摘手術では違いがあるのでしょうか…
私は痩せ型で胸も小さい割にしこりが大きいのでパッチワーク状にならないかなど不安です。
全摘手術の画像を調べると、斜めに一本傷が入っているようですが、その通りですか?
宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「乳頭を残す」ことについては、「温存手術の場合」と「全摘の場合(乳頭乳輪温存)」で分けて考える必要があります。
○もともと「乳房温存術は放射線照射を前提」とした術式なので「乳頭部に直接浸潤していなければ乳頭温存可能」となります。
  また「ギリギリまで切り込んでも」周囲の乳腺を通しての血流で壊死しないという環境もあります。
 それに対し「全摘(乳頭乳輪温存)」の場合には「適応が厳しく」なります。
 具体的なガイドラインでは
 ・腫瘍が十分に小さい
 ・腫瘍乳頭間距離が十分にある
 なぜなら、「放射線をかけない」「乳腺を残さないので(血流の問題から)乳頭壊死のリスクがあるのでギリギリまできりこめない」からと考えてください。
 それで同じ「乳頭を残す」といっても両者で条件が全く異なるのです。
「術式が全摘の場合は、乳頭を残せる事は少ないのでしょうか?」
⇒上記ガイドラインに「きちんと」準拠しようとすれば、そのようになります。
 つまり、そもそも(温存では無く)「全摘を選択する理由」が「腫瘍が大きいから」とか「乳頭に近いから」となるケースが多く、その場合には「上記ガイドラインから外れる」のです。
「局所再発のリスクが高いからですか?」
⇒その通りです。
「残せる条件としまして、乳頭に直接浸潤していなければ大丈夫と考えで良いですか?私は乳頭の下にも腫瘍があると言われております。」
⇒全摘(乳頭乳輪温存)の適応とはなりません。
 ○温存手術であれば「ギリギリまで切り込んで、放射線をかける」という考え方は可能です。(程度次第ですが…)
「この場合はやはり残さずに全摘してしまう方が安全なのでしょうか。」
⇒そう思います。
「全摘手術についてですが、かなりの貧乳で痩せ型の場合、皮膚が足りなくなり傷が大きくなる可能性もありますか?」
⇒皮膚への直接浸潤がなければ「腫瘍径は皮膚とは無関係」です。(たとえ、相対的な腫瘍径が大きいとしても)
「全摘手術の画像を調べると、斜めに一本傷が入っているようですが、その通りですか?」
⇒腋窩郭清をする場合には「腋窩リンパ節を郭清するために」(その視野確保のために)「腋窩の方へ向って斜め」となります。
 たとえば(腋窩郭清ではなく)「センチネルリンパ節生検」の場合には(センチネルの傷は腋窩に小さくとることで)斜めでは無く「水平」にすることもできます。
 ♯ただし、腫瘍が皮膚に近い場合には「腫瘍の真上の皮膚を切除しなくてはならない」ので、「傷の方向」が変わってきます。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

お答えいただきありがとうございました。
これで全摘する覚悟が決まりました。
リンパ節郭清範囲と検査結果について質問です。
1、私は術前の検査でリンパ郭清が決まっているのですが、郭清範囲は、転移している一つ先のレベルまで行うものですか?
レベル1に転移があればレベル2まで郭清という感じなのでしょうか?
2、以下の術前のマンモグラフィーとエコーの検査の意味を教えていただきたいです。
MMGでは、微細線状分枝状石灰化の集簇あり。
超音波では、5センチを超える不正な低エコー域(内部に石灰化あり)と記載されていました。
微細線状分枝状石灰化とはどういった事ですか?この石灰化自体が癌という意味でしょうか。
悪性度の関係などありますか?
また、超音波の不正な低エコーとはどのような状態ですか?エコーでも石灰化は分かるものなのでしょうか。
宜しくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「1、私は術前の検査でリンパ郭清が決まっているのですが、郭清範囲は、転移している一つ先のレベルまで行うものですか?レベル1に転移があればレベル2まで郭清という感じなのでしょうか?」
⇒原則としてはそのようになります。
 但し同じ「レベルⅠ転移」でも「入口に腫大したリンパ節が1個だけ」なのと「レベルⅠ全体に腫大リンパ節が複数ある」場合では「レベル2の郭清の仕方に差がでる(というか、本来差を出すべき)」こともまた事実です。
「MMGでは、微細線状分枝状石灰化の集簇」「微細線状分枝状石灰化とはどういった事ですか?この石灰化自体が癌という意味でしょうか。」
⇒石灰化そのものは(どこからどう眺めても)「ただのカルシウム」です。
 是非、トップページから「石灰化」に入り良く読んでください。(壊死性石灰化の発生、壊死性石灰化の増加 という項目もその中にあります)
「超音波では、5センチを超える不正な低エコー域(内部に石灰化あり)と記載」
「超音波の不正な低エコーとはどのような状態ですか?エコーでも石灰化は分かるものなのでしょうか。」

⇒これは「腫瘤非形成性病変」の所見です。
 
 是非、トップページから「腫瘤非形成性」をごらんください。
 ♯石灰化を起こす様な病変も「腫瘤非形成性病変として認識できる程度」まで拡がれば、「その内部に石灰化らしき点状高エコーを確認」することはできるようになります。
 
 
 

 

質問者様から 【質問3】

お答えいただきありがとうございました。
全摘手術後、放射線予定です。
再建を希望しているのですが、放射線をかけてしまうとシリコンでの再建は難しいとの事。
(エキスパンダーが入れられない)
自家組織での再建は、他に傷が付くので躊躇してしまいます。
そのため、皮膚を伸ばすのを保つため、エキスパンダーを入れながらの放射線治療を勧められました。
エキスパンダーを入れながらの放射線治療はリスクが大きいですか?
治療効果にも変わりがあるのでしょうか?
先生のご意見伺いたく、宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「エキスパンダーを入れながらの放射線治療はリスクが大きいですか? 」
⇒リスクが大きいわけではありませんが…
 一般的には「シリコンインプラントに入れ替えた後」に放射線照射をすることが多いです。
「治療効果にも変わりがあるのでしょうか?」
⇒(術後)5カ月以内に開始できれば問題ありません。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

お答え頂きありがとうございます。
エキスパンダーを入れても入れなくても、
放射線による治療効果に違いは無いと考えてよろしいですか?
エキスパンダーには磁石が付いてあるとの事ですが、放射の妨げにならないのでしょうか?
また、リンパ節転移と血行性転移は別物という事をこちらのサイトで学びました。
術後、取残しによる局所再発が起きたとしたら、発見されるまでの期間に血行性転移が起こることは無いということですか?
単純にその取残されたリンパを取れば良い話なのでしょうか。
例えば、術前の画像でレベル2に転移ありの場合、例え術前化学療法で消失しても、
そこのレベル2リンパは全て郭清しなければいけないでしょうか?そこを残してしまうと、高い確率でリンパ節の局所再発を起こしますか?
宜しくお願いします。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「エキスパンダーを入れても入れなくても、放射線による治療効果に違いは無いと考えてよろしいですか?エキスパンダーには磁石が付いてあるとの事ですが、放射の妨げにならないのでしょうか?」
⇒前回も回答したように…
 エキスパンダーのまま放射線照射することは一般的ではありません。
 当院では「エキスパンダーのまま照射した経験がない」ので、「磁石が照射の妨げにならないのか」解りません。
「術後、取残しによる局所再発が起きたとしたら、発見されるまでの期間に血行性転移が起こることは無いということですか?」
⇒物事は何事もそうですが…
 「程度問題」です。
 局所再発も「3カ月毎にきちんと診察して見つかった」状況と、全く診察せずに「かなり大きくなってから見つかった」状況では異なるとは思います。
 あくまでも(私の常識の範囲内での)「局所再発」は「あくまでも局所」なのです。
「単純にその取残されたリンパを取れば良い話なのでしょうか。」
⇒手術±放射線が局所療法です。
 全身所見がなければ「局所療法で十分」と思います。
「例え術前化学療法で消失しても、そこのレベル2リンパは全て郭清しなければいけないでしょうか?」
⇒その通りです。
 これは「術前化学療法で腫瘍本体が消失」した場合も全く同じ議論です。
 画像所見だけでは「細胞レベルの残存」を検出することは不可能なのです。
「そこを残してしまうと、高い確率でリンパ節の局所再発を起こしますか?」
⇒確率については何とも言えません。
 少なくとも私は全例「化学療法前の範囲は郭清」しているので、私自身の経験では解りません。