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浸潤性乳管癌

[管理番号:714]
性別:女性
年齢:43歳
初めて質問させて頂きます。
よろしくお願いします。
去年の秋の健康診断で、乳ガンの疑いがあり、
超音波、エコー、針生検をした時は異常はなしと言われました。
但し線維が固めとの事で、半年後にまた検査と言われ、
6月に再度針生検をしたところ、浸潤性乳管癌と言われました。
リンパ腫大、HAR2陽性、しこりは58㎜とかなり大きくなっていました。
レントゲン、血液検査、尿検査は行い異常なしでしたが、来週CTで再来週は
心臓検査で、問題なければ、8月の中旬からAC療法に入ると言われました。
この状態で、すぐに摘出手術はせずに術前療法でいいのでしょうか?
しこりはかなり固く、痛む時もあるのでかなり悪いと言う事でしょうか?
子供もまだ小さく、仕事もしているので不安ばかりです。
大学病院で検査等を行っています。
その他の詳しい状況がなければ、はっきりと分からないでしょうか?
転移があるとすると、何か症状が既に出ているでしょうか?
待っている間にも転移しないか不安です。
色々と質問ばかりで申し訳ありません。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 お気持ち、お察しします。
 「去年の時点で針生検をしていたのに、癌の診断ができないとは!」
 初診の際に、「診断能力の低い医師」の診察にあたってしまったがために、大変お気の毒です。
 去年の秋の時点で「きちんと乳がんと診断できていれば」今回、『腫瘍径58mm、リンパ節腫大』などという事態にならなかった訳です。
 「大学病院で検査等を行っています」とありますから、(前回の異常無との診断も)大学病院の医師でしょうか?

回答

「この状態で、すぐに摘出手術はせずに術前療法でいいのでしょうか?
⇒私は「術前化学療法」には反対です。
 もしもご本人が「小さくして温存の可能性にかけたい」というのでなければ「手術」するべきです。
 「半年間も癌を放置しておいて、今更抗がん剤をしてみる」というのは無責任です。
 ○おそらく「HER2陽性」だから化学療法が効き易いだろう。
 「ACx4」⇒「ハーセプチン+ドセタキセルx4」⇒手術⇒放射線⇒ハーセプチン1年
 のような提案をされているのだと思います。
 
○大学病院のようなところでは、「ACx4」の間3カ月また、放置される可能性があります。
 その3カ月の間に「もしも(抗がん剤が効かずに)腫瘍が増大したら…」大変なことになります。
 
 3カ月後にCTを撮影し、『ああ、抗がん剤が効いて無かったな。 残念ながら腫瘍が増大して大変なことになっています。もう手術はできませんね』
 などという最悪のシナリオも考えておかなければなりません。(だから、本来細かいチェックが必要なのです)
・抗がん剤の効果が解る
・どうせ、術後に抗がん剤の適応があるのだから、術前にやりましょう
・リンパ節も腫れているので、小さくしてから手術の方がいい
・抗がん剤で全身をたたいてからの方がいい
 
 これら4つの「もっともらしい」理由をつけているとは思いますが、全て根拠薄弱です。
 「AC療法1回毎に超音波で(腫瘍が進行しないのか)チェックをする」という確約無しで安易に「術前化学療法を選択すべきではありません」
 
「しこりはかなり固く、痛む時もあるのでかなり悪いと言う事でしょうか?」
⇒増大していると思います。
 結果として「半年間も放置」されていた訳ですから
 
「問題なければ、8月の中旬からAC療法に入る」
⇒昨年の担当医と今回の担当医は別人なのでしょうか?(大学病院なら十分ありえますね)
 もしも「同一医師」であれば、考えられないことです。
 自分の「診断能力の欠如」のせいで「6ヵ月も診断が遅れた」という自覚があれば、「6月の針生検で癌だと判明」した時点で、青くなり『申し訳ない事をした。一刻も早く治療を開始してあげなければ!』という責任感に燃えるのが医師として(人間として)当然だと思いますが…
 だらだらとした検査をして、(患者さんに進行しないか心配)させるなど言語道断です。
 
「転移があるとすると、何か症状が既に出ているでしょうか?」
⇒乳癌の初期治療の段階で「遠隔転移が既にある可能性」は極めて低い(ほぼゼロ)です。
 その心配はありません。
 勿論症状もありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2 浸潤性乳管癌】

先生、お忙しい中ご返信ありがとうございました。
先生の言う様に、治療方法はその様な説明を受けました。
半年前と今の先生は違う先生です。
半年前の先生は、半年後はいないので他の先生に説明しておきます。との事でした。
転移の可能性は少ないと聞き、まずは安心しました。
術前療法に分からないながら不安を感じていました。
増大しているのであれば、早めに治療を始めたいのと、手術をして、少しでも早く良くなりたいです。
今、まだ病院で検査途中ですが、今から先生の病院や他の病院の転院は可能でしょうか?
検査データを頂くのは依頼すれぱ出来るのでしょうか?
しこりの大きさ、リンパ腫大等の結果から、不安はいっばいなのですが、
今後どの様な治療方法が一番いいと思われるでしょうか?
治療最優先ですが、仕事もこの先続けられるのかも考えてしまいます。
また色々と質問で申し訳ありません。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 私は(術前化学療法を勧めるための)『もっともらしい理由』などは好きではありません。
 「小さくして温存手術を望む」のであれば、「術前化学療法をすべき」ですが、それ以外であれば「手術先行」が安全です。

回答

「早めに治療を始めたいのと、手術をして、少しでも早く良くなりたい」
⇒「腫瘍径58mm リンパ節腫大有」の状態であれば、「化学療法が効かなかった場合の」リスク回避を最優先して「手術先行」が安全だと思います。
 
「今から先生の病院や他の病院の転院は可能でしょうか?」
⇒可能です。
 資料を揃えるのに時間がかかるとか(大学病院ではありそうな事です)言う場合には、「後から郵送」してもらえばOKです。
 江戸川病院では「私が、このメール内容を把握」しているので、紹介状無しでもOKです。
 後から病院へ「情報提供」を依頼すればいいのです。
 
「今後どの様な治療方法が一番いいと思われるでしょうか?」
⇒(小さくして温存という希望が無い限りは)「手術先行」が最も安全です。
 手術して「病巣を取り除いてしまえば」術後の(ハーセプチンを含んだ)化学療法には余裕がでるのです。
 
「治療最優先ですが、仕事もこの先続けられるのか」
⇒仕事は続けられます。
 ①「手術(先行)」⇒②ACx4(3カ月)⇒③「ドセタキセル+ハーセプチン」x4(3カ月)⇒④放射線(1カ月半)⇒⑤ハーセプチン1年
 この中で②と③の部分(トータルで半年間)が「副作用がやや強い」ので「仕事に支障がでる」可能性がありますが、そ例外の治療は「仕事に差し支えがない」ものです。
 
 

 

質問者様から 【質問3 浸潤性乳管癌】

お忙しい中、早速のご回答ありがとうございます。
今日、早速秘書様に連絡してみました。
色々と丁寧にして頂き感謝しています。
今の病院で頂いた病状説明書に、HER2 3+陽性の他に
エストロゲン R3+陽性、プロゲスラロン R3+陽性
(誤字があるかもしれません)の記載もありました。
こちらも陽性となると、あまりいい結果ではないのでしょうか?
説明を受けたと思うのですが、一度に色々聞いたので、
あまり覚えていません。
今のところ、胸のしこりと時々痛むのが気になる事以外に、
手などのしびれが気になる時があります。
こちらは、何か関係がありますでしょうか?
色々気にするとよくないと分かっているのですが、
やはり小さな事が気になります。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 秘書に連絡いただきありがとうございます。
 「初期治療」ほど重要なものはありませんので「後悔の無い」治療を相談しましょう。

回答

「エストロゲン R3+陽性、プロゲスラロン R3+陽性(誤字があるかもしれません)の記載」
こちらも陽性となると、あまりいい結果ではないのでしょうか?
⇒これはJ-scoreでの評価です。
 「エストロゲンR 3+陽性」とは「エストロゲン受容体(Rとはreceptor:受容体の略で
す)がscore3+であり陽性」という意味です。
 下記の★Score3(染色される細胞が10%以上)に該当します。
J-score
 Score 0:染色される細胞が無い
 Score 1:染色される細胞が1%未満
 Score 2:染色される細胞が1~10%
★Score 3:染色される細胞が10%以上
 Score 0を陰性
 Score 1,2を境界域
 Score 3を陽性
 
「こちらも陽性となると、あまりいい結果ではないのでしょうか?」
⇒そんなことは全くありません。
 むしろ逆です。
 ホルモン感受性陽性(エストロゲン受容体陽性、プロゲステロン陽性)であると術
後補助療法として「内分泌療法(ホルモン療法)」が適応となり『予後良好因子』で
す。
 
「手などのしびれが気になる時があります」
⇒これは「乳癌とは無関係」です。
 心配ありません。
 
「やはり小さな事が気になります。」
⇒皆さん、同じです。
 「いろいろな症状」を乳癌による症状(転移など)と関連付けてしまうものです。
 しかし、実際には「心配する状況」ではありません。
 
 

 

質問者様から 【質問4 浸潤性乳管癌】

お忙しい中、いつも丁寧に説明頂きありがとうございます。
色々質問した中、安心しました。
しびれなどの気になる事は関係ないのと分かり
気持ち的に落ち着きました。
来週、そちらに伺いますのでよろしくお願い致します。
先生の言う様に、後悔のない治療が出来る様にご相談させて下さい。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 予約していただき、ありがとうございます。
 初期治療は最も大事ですので、しっかり治療していきましょう。
 よろしくお願いします。
 
 

 

質問者様から 【質問5 浸潤性乳管癌】

月曜日の診察と、早々の検査をして頂きありがとうございました。
リンパ節の転移がかなりあり、とても驚き不安でしたが
手術の日程も早くにして頂き感謝しています。
残りの検査と手術、治療と頑張って行こうと改めて思いました。
先生どうぞよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答5】

 こんにちは。田澤です。
 結果として「癌」であったのに「リンパ節転移を伴う状態」まで「半年間も放置」されていた事。
 お気持ち、お察しします。
 
 この場をお借りして(質問者だけでなく)このブログを見てくれていいる方達に、お伝えしたいと思いました。
 「QandAの縁」で「他院から転院して」手術を「当院で行う」方が随分増えています。
 私の率直な感想は「前医の診断能力の欠如」です。
○もう少し「早く診断してあげて欲しい」切にそう感じます。
 
 「腫瘍が小さいから診断できない」として「癌を経過観察にされる」ケース
 「乳腺症と診断」して「数か月」経過観察して「かなり大きくなってから」癌と診断されるケース
 「細胞診で検体不良」なのに「悪い細胞が出ていないから大丈夫」と言われ、「半年後に温存できない程大きくなってしまった」ケース
 本当に、数え切れません。
 
 この場で私が、お伝えしたいのは、「自分の身は自分で守ってほしい」という事です。
 『稚拙な診療技術』に「疑いをもつ力」を養う場に、この「QandA」がお役に立てれば幸いです。
 
 

 

質問者様から 【質問6 浸潤性乳管癌】

田澤先生、先日は手術して頂きありがとうございました。
入院中もお忙しい中、色々とお世話になりました。
退院し痛みもあまりなく、普通に家事も出来ています。
周りの皆は、こんなに早く退院出来るんだと驚いています。
最初の病院に通っていたら、まだ術前の治療も始まっていませんでした。
今更ですが、もっと早くに自分で疑い、このQandAに出会えてたらと思ってしまいますが、でも転院希望からすぐに対応して頂いた事、とても感謝しています。
これからの治療は、抗がん剤等不安な事もありますが、頑張って行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答6】

 こんにちは。田澤です。
 ご丁寧に、ありがとうございます。
 術後、痛みも無く日常生活も送られているとの事。本当に良かったです。
 これからの術後治療もがんばりましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問7】

8月に先生に手術していただき1ヶ月半程経ちました。
その節は大変お世話になりました。
右全摘、腋窩郭清しましたが、ここ最近の胸、脇の下のひきつりや、
突っ張り感が気になっています。
手術後一週間後程で仕事復帰したのですが、同じ姿勢でのPC操作で
あまり動かさない事など関係ありますでしょうか?
痛みがあり支障がある訳ではないのですが、このままで大丈夫なのか
少し不安になりました。
また病理結果は思った以上に悪かったのですが、
「Invasive tumor size88×78×37㎜
pT3,pN3,StageⅢc
静脈侵襲像中等度
皮膚および胸筋浸潤
リンパ節転移
腫瘍は切除材料の最外側のA列まで拡がっている。」
の記載があると言う事は、かなり再発、転移の可能性が高くなると
言う事になりますか?
転院せず手術不能という事にならなかったので、今は来月からの
「EC →HER+DTX→放射線→HERのみ」の治療を頑張って
行くしかないと思っています。
先行で行っているホルモン療法 (タモキシフェン)は、今のところ
問題なく服用しています。
お忙しい中、長々と書いてしまい申し訳ありません。
 

田澤先生から 【回答7】

こんにちは。田澤です。
術前にお話したように「腫瘍は乳腺全体を占める」状況でリンパ節はレベルⅢまで転
移していました。
ルミナールタイプであり、「前医での術前化学療法の方針」に「手術不能となるリス
ク」があり、ぎりぎりの状況でした。
「皮膚及び(大)胸筋浸潤」していましたが、その部分の「皮膚及び(大)胸筋も合
併切除」してリンパ節も「レベルⅢまで完全に郭清」しています。
今後は「ホルモン療法」+「抗HER2療法」という強力(副作用が強いという意味で
はありません、効果が高いという意味です)な治療が待っています。
心配ありません。
「右全摘、腋窩郭清しましたが、ここ最近の胸、脇の下のひきつりや、突っ張り感が
気になっています」
⇒静脈炎だと思います。
 「脇の下のひきつりや突っ張り感」:これは腕の内側皮下を走る静脈の「血栓性静
脈炎」だと思います。
 腋窩郭清(特にレベルⅠリンパ節が、この静脈の根部に達していたので)の際に、
この静脈の「血栓性静脈炎」が起きやすいのです。
 「胸の突っ張り感」:これは「モンドール」だと思います。
 いずれも、一時的な「静脈の炎症」なので「徐々に改善」していきます。
 心配ありません。
 
「手術後一週間後程で仕事復帰したのですが、同じ姿勢でのPC操作であまり動かさな
い事など関係ありますでしょうか?」
⇒時々、動かすといいと思います。
 
「かなり再発、転移の可能性が高くなると言う事になりますか?」
⇒早期ではありませんが、「ホルモン療法も抗HER2療法」も期待できるので「根治を
狙いましょう」
 
「先行で行っているホルモン療法 (タモキシフェン)は、今のところ問題なく服用しています」
⇒副作用が無く、良かったです。
 タモキシフェンは10年継続目標なので頑張りましょう。
 
○病理結果の時にもお話しましたが、
「腫瘍も大きく、リンパ節転移も多かった」のは事実ですが、手術で「完全切除」し
ています。(郭清程度から、静脈炎の回避は困難でしたが一時的なものです)
 これからの治療(ホルモン療法+抗HER2療法)に十分な期待をもって頑張りましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問8】

お忙しい中、いつもありがとうございます。
胸や脇のひきつりや、今後の治療の件など、
先生に「心配ありません」と言って頂きとても安心出来ました。
先生に手術して頂いて本当に良かったと思います。
来週からの治療を改めて頑張りたいと思いました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答8】

こんにちは。田澤です。
治療に前向きになっていただいて幸いに思います。
「抗HER2療法は(1年以上と)長い」けれど、「本当に大変な時期は半年」です。し
かも「効果は絶大」と言えます。
きっちり、頑張りましょう。