[管理番号:1689]
性別:女性
年齢:38歳
今年3月上旬まで授乳しており(第1子/1年3か月間)、10月上旬左乳輪より上内側にしこり発見(痛みなし、動く)、11/○近所の乳腺外科(クリニック)受診しました。
触診・マンモ・エコー実施、境界のはっきりしないしこりで、このような所見だと残念ながら乳がんの可能性が高い。
(1.5cm程度?他にも何か言っていたかもしれませんがよく覚えてません。エコーで血流確認してだとか何とか色々言ってました)
当日針生検できず11/○○に予約、確定診断までは更に2週間程度かかるとのこと。
乳がんである前提で話をしていきますとのことで、まずは血液検査のため採血。
また、ここで手術はできないので病院は決めてほしい、とのことで比較的近所の病院を候補としてあげました。
1.○○記念病院 ○○先生(ここであれば自分も手術時中に入って立ち会うとのこと)
2.○共済病院 ○○先生
3.県立がんセンター(大きいところがよければ。但し若い先生にあたってしまう可能性もある)
4.○○中央病院(先生の前の勤務先。あまりオススメする感じはなく、「まぁ、ここでも…」という感じ)
5.○○逓信病院 ○○先生(先生の師匠とのこと)
もちろん自身で病院を選んでくればどこでも紹介状は書くし、血液検査によりホルモン療法が有効だとわかれば、ホルモン治療はクリニックでできるため遠い病院に通うこともないから、手術はどこで受けてもいいですとのことでした。
また、早ければ12月半ば頃~手術を受けられると思うけれど、年明けの方がよければ先にホルモン療法をして来年手術でも可能(通常の順序ではないけれど)という話も聞きました。
入院期間を聞いたら1週間程度、多分その(病気の)部分とリンパ節ひとつ取る位でいけると思うのでこういう言い方はアレだけど早い段階でよかったですという事でした。
私も乳がんに関する知識が全くないので「今の段階で質問は」と言われても何を聞いてよいのやら…でした。
まだ確定診も出ていないし数字的な情報がない中ですが、今後確認すべきこと、検討すべきことは何があるのでしょうか。
また、30歳頃から高血圧があり、服薬中です。(エナラプリルマレイン酸塩錠2.5mg)
妊娠中にハイリスク妊婦として大学病院で妊娠(母子センター)&血圧管理(高血圧外来)しており、
高血圧の方は今年の7月頃まで継続して大学病院で診てもらっていましたが
服薬により症状が安定しているため、紹介状を書いてもらい近隣の内科に引き継ぐことになりました。
薬が残っているので、紹介状を手元にもったまま内科は受診をしておらず、主治医がいない状態です。
今回乳がんだった場合、がんと血圧の管理をできる病院(上記のような総合病院)で一緒にお世話になった方がよいのでしょうか?
先に出てきた近所のクリニックは乳腺外科のみ(産婦人科の付属)で血圧管理まではできません。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「今後確認すべきこと、検討すべきことは何があるのでしょうか。」
⇒①「リンパ節転移の(超音波上の)有無」
②「サブタイプ」です。
①は「11月○○日の針生検の日」に「ついでに診てもらえば」解るので、その際に「是非、腋窩のリンパ節も超音波で診てください」と頼んでみてください。
②は針生検の結果「2週間以上かかって判明する「腫瘍の性質」のことで「術後の全身療法(薬物療法)」を決定する上で大事な情報です。
◎サブタイプとは?
組織検査(針生検や手術標本)などで以下の3点を調べます。
・エストロゲンレセプターの発現(ER)
・プロゲステロンレセプターの発現(PgR)
・HER2蛋白の過剰発現の有無(HER2)
⇒これらの組み合わせで
●luminal type:(ER陽性、PgR陽性、HER2陰性) ホルモン療法が有効(更に増殖指数Ki67の値が低いAと高いBに分けます)
♯luminalA(Ki67低値)ではホルモン療法単独を、luminalB(Ki67高値)には(ホルモン療法に加え)化学療法も行う事が多い
●HER2 type:(HER2陽性のもの) ハーセプチンという分子標的薬と通常の抗癌剤の組み合わせを行う
●トリプルネガティブ:(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)通常の抗癌剤を行う
●トリプルポジティブ:(ER陽性、PgR陽性、HER2陽性)ホルモン療法と分子標的薬と抗癌剤の全てを行う
※正式名称はluminal B(HER2タイプ)と言います。
「今回乳がんだった場合、がんと血圧の管理をできる病院(上記のような総合病院)で一緒にお世話になった方がよいのでしょうか?」
⇒全く不要です。
余程不安定ならともかく、「高血圧など全く問題」ありません。
乳癌の手術は「低侵襲(体に負担がかからない)」であり、術前も術後も休薬不要」なのです。
何も心配する必要はありません。
♯「妊娠中毒症の恐れのある」出産と比べると「はるかに、平和」です。
質問者様から 【質問2】
こんにちは。
先日はご回答いただきありがとうございました。
以前質問させていただいた時からだいぶ時間が経ってしまいましたが、
お礼のために質問枠を利用したくなかったので、お礼を言う機会がなく失礼いたし
ました。
お陰様で、無事手術を終えることができました。
そこで今後の治療について、新たに質問させていただきたく、よろしくお願いいた
します。
【針生検の結果】
浸潤がん
ER 陽性 90%
PgR陽性 90%
HER2陰性 1+
Ki67 6%
サイズ 1.1cm
ルミナールA
これを受けて術前検査を行い、1月下旬に温存手術+センチネルリンパ節生検をして病理結果が出ました。
【術後病理結果】
大きさ 12×11mm
組織型 硬癌
広がり 乳腺-脂肪
リンパ管浸潤 ly+
脈管浸潤 V0
リンパ節転移 N1a(術中病理で見つからなかった微小転移が見つかりました)
断端 とりのこし-
ER +++
PgR +++
ハーセプテスト -
核異型度 1
今後は腋窩も含め放射線を行うとの方針です。
また、放射線治療を行う予定の病院では、
殆どの患者に対し腋窩の切らなかったリンパ節へも充分放射線が当たるよう治療していて2種類あるとのこと。
【センチネルリンパ節生検陰性】
乳房への接線(2方向)照射をわきの方向へ長めに設定し、乳房と一緒に腋窩へ当てる方法(乳房腋窩接線照射)
【転移個数が多い、しこりが大きい、センチネルリンパ節生検陽性】
接線照射(2方向=2門)の範囲だけでなく、もう1方向(合計3方向=3門)から、
鎖骨の周囲のリンパ節にも広めに照射する方法(3門(鎖骨上リンパ節の範囲を含めた)照射)
Q1.陽性ではあるけれど微小転移なので、照射するのであれば乳房腋窩接線照射で十分かと個人的に考えたのですが、先生のご意見はいかがですか?
その後の治療としては、ホルモン療法でタモキシフェンとのことでした。
以前から小さな子宮筋腫があり無治療でしたが、出産後に戻った生理から1年経つのに今でも出血が相当多く(妊娠前の3~5倍)、気になっていたのだと伝えると、LH-RHagonist併用にするかどうか判断するので一度婦人科で診てもらうよう言われました。
婦人科で診てもらったら筋腫は3cm程度になっていましたが、通常婦人科では気にしない(治療しない)サイズなので、
乳腺外科の先生と相談してLH-RHagonistを併用するか決めてくださいと言われました。
今、出血量や生理痛のことで困っていると話すと「乳がん治療優先でこちらで治療はできないので、とりあえず市販の鎮痛剤を使っていてよい」
「LH-RHagonist始めれば排卵も生理も止まるから(今の困りごとはなくなる)」と言われました。
Q2.子宮筋腫の悪化を防ぐ理由からタモキシフェンとLH-RHagonistを併用する場合、どのくらいの期間併用することになるのでしょうか?
Q3.一度排卵・生理が止まった後、LH-RHagonistを止めると排卵・生理は戻るのでしょうか?(出産希望はないので特に生理は必要ないのですが)
Q4.もし生理が戻る場合、子宮筋腫に影響が出ると判断されたら再度LH-RHagonistを使用することになるのでしょうか?
Q5.もし生理が戻らない場合、ホルモン療法は閉経後の治療に移行することになるのでしょうか?
もうひとつ、話は戻りますがセンチネルリンパ節生検の影響によるものです。
Q6.特にリハビリはしていませんが、気付いた時にストレッチなどをしていますが、術後3週間で急に二の腕の突っ張りが酷くなりました。
もともと二の腕に痺れがあったのがかなり引いてきたので突っ張り感が増しただけなのでしょうか?
肩から腕を回して背中で手を結んだりは問題ないのですが、真っ直ぐ真上に腕を上げられなくなりました。
(それまで突っ張り感を感じず真っ直ぐ上がっていた気がするのですが、気のせい??)
リハビリやストレッチを行っていけば、突っ張り感がなくなり真上に上げられるようになるのでしょうか?
以上、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
術前診断 cT1c(11mm), luminal A
手術標本 pT1c(12mm), pN1mic, luminalA,NG1
【センチネルリンパ節生検陰性】
乳房への接線(2方向)照射をわきの方向へ長めに設定し、乳房と一緒に腋窩へ当てる方法(乳房腋窩接線照射)
【転移個数が多い、しこりが大きい、センチネルリンパ節生検陽性】
接線照射(2方向=2門)の範囲だけでなく、もう1方向(合計3方向=3門)から、
鎖骨の周囲のリンパ節にも広めに照射する方法(3門(鎖骨上リンパ節の範囲を含めた)照射)
「Q1.陽性ではあるけれど微小転移なので、照射するのであれば乳房腋窩接線照射で十分かと個人的に考えたのですが、先生のご意見はいかがですか?」
⇒そう思います。
「Q2.子宮筋腫の悪化を防ぐ理由からタモキシフェンとLH-RHagonistを併用する場合、どのくらいの期間併用することになるのでしょうか?」
⇒39歳という年齢からは、5年は併用となりそうです。(2,3年で併用を外すと、同症状がぶり返しそうです)
「Q3.一度排卵・生理が止まった後、LH-RHagonistを止めると排卵・生理は戻るのでしょうか?(出産希望はないので特に生理は必要ないのですが)」
⇒殆どが回復します。
年齢から考えるとほぼ戻りそうです。
「Q4.もし生理が戻る場合、子宮筋腫に影響が出ると判断されたら再度LH-RHagonistを使用することになるのでしょうか?」
⇒それは婦人科の判断となります。
「Q5.もし生理が戻らない場合、ホルモン療法は閉経後の治療に移行することになるのでしょうか?」
⇒最低1年以上は様子をみることとなります。(タモキシフェンを投与しながら)
「Q6.特にリハビリはしていませんが、気付いた時にストレッチなどをしていますが、術後3週間で急に二の腕の突っ張りが酷くなりました。もともと二の腕に痺れがあったのがかなり引いてきたので突っ張り感が増しただけなのでしょうか?」
⇒これは、「血管炎」だと思います。
腋窩操作により、「腕にいく血管に炎症」がおきて「血管そのものが筋状に突っ張っている」と思います。
「リハビリやストレッチを行っていけば、突っ張り感がなくなり真上に上げられるようになるのでしょうか?」
⇒血管炎は自然と改善します。
心配ありません。