[管理番号:1869]
性別:女性
年齢:42歳
1センチほどのしこりを見つけて乳腺科を受診し針生検の結果、乳がんと判明しました。手術の出来る病院へ紹介状を書いて貰い、12月○日に受診します。
紹介状を書いていただいた先生は恐らくステージ1ではないかとおっしゃっていました。検査の結果は浸潤性ガンと硬ガンが見つかったと書いてありました。
判明後はネットでいろいろ調べてしまって、悪い方へ悪い方へと考えてしまい、毎日重い気持ちで過ごしています。
これからどんな検査をして、どのくらいに手術ができるのか不安です。
去年、従姉妹が乳がんの再発を繰り返して亡くなってしまいました。どんなガンだったのかは不明です。
私はまだ7歳と3歳の子供がいるので、なるべく再発率をさげたいので全摘手術を考えてます。
この後の検査や手術はどんなものになっていくのか、どんな場合でも温存手術より全摘の方が再発や生存率があがるのか知りたいです。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「1cmの乳癌」であれば「早期」と思います。
ネットでの「不安を煽るだけの」情報に振り回されずに、「前を向いて」治療に進みましょう。
回答
「検査の結果は浸潤性ガンと硬ガン」
⇒乳癌は(大部分を占める)「浸潤性乳管癌」と(少数派の)「特殊型」に分けられます。
この「浸潤性乳管癌」は「乳頭腺管癌」「硬癌」「充実腺管癌」の3つに分けられます。
「この後の検査や手術はどんなものになっていくのか」
⇒検査
通常MRIで「拡がり診断」を行いますが、「ご本人が、最初から全摘を考えているのであれば無用」となります。
手術(ご本人が最初から全摘を希望とのことですが、一応「温存」と「全摘」の2つを示します)
「乳房温存+センチネルリンパ節生検」
腫瘍から十分な距離を話して「乳腺を部分切除」します。
「センチネルリンパ節生検を行い、術中迅速病理診断で2mm以上の転移が無ければ郭清省略」します。
♯ 術後に「温存乳房照射(月~金を5週間 計25回)が必須となります。
「乳房切除(全摘)+センチネルリンパ節生検」
乳腺は全切除
センチネルリンパ節生検は「温存術の際と全く同様」となります。
♯ 原則として術後照射は不要です。
術後療法
術式とは無関係に「サブタイプに応じて」適応が決まります。
◎サブタイプとは?
組織検査(針生検や手術標本)などで以下の3点を調べます。
・エストロゲンレセプターの発現(ER)
・プロゲステロンレセプターの発現(PgR)
・HER2蛋白の過剰発現の有無(HER2)
⇒これらの組み合わせで
●luminal type:(ER陽性、PgR陽性、HER2陰性) ホルモン療法が有効(更に増殖指数Ki67の値が低いAと高いBに分けます)
♯luminalA(Ki67低値)ではホルモン療法単独を、luminalB(Ki67高値)には(ホルモン療法に加え)化学療法も行う事が多い
●HER2 type:(HER2陽性のもの) ハーセプチンという分子標的薬と通常の抗癌剤の組み合わせを行う
●トリプルネガティブ:(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)通常の抗癌剤を行う
●トリプルポジティブ:(ER陽性、PgR陽性、HER2陽性)ホルモン療法と分子標的薬と抗癌剤の全てを行う
※正式名称はluminal B(HER2タイプ)と言います。
「どんな場合でも温存手術より全摘の方が再発や生存率があがるのか知りたいです。」
⇒生存率は一緒です。(つまり遠隔転移再発は術式とは無関係ということです)
ただ「局所再発」については「全摘の場合は殆どゼロ」に対し、「温存の場合には10年で5%前後」の差があります。
質問者様から 【質問2】
以前質問させて頂いてから、毎日欠かさず拝見しております。
1月中に骨シンチ、頭部・乳房CT、乳房MRIなどなど術前検査が終わり2月○○日の手術が決まりました。
転移などの所見はなく、温存手術とセンチネルリンパ生検の予定です。
サブタイプは、
ER80% PgR50% HER2 - ki67 40~60% とPCの画面でちらっと見せて貰いました。
MRIの画像で腫瘍経1.1cmでした。
田澤先生はいろいろな方への回答でサブタイプは手術前と手術後で変わることはないとおっしゃっていたので、私はルミナールタイプと思っていいのでしょうか?
正確なKi67は手術後の病理の結果待ちと言う事で、やはり30%以上なら抗がん剤治療をする事になるのでしょうか?
今までの先生のQ&Aを拝見していて、浸潤経が5mm以下なら抗がん剤治療は適応なしと書いてあったと思うのですが、ki67が高い値でもそうなるのでしょうか?
よろしければ、私の今判っているデータの範囲で抗がん剤治療が必要な場合はどんな時か教えて頂きたいです。
通っている病院は抗がん剤治療となると、初めての薬剤の回は入院となるらしく、最初は1週間の入院、次に薬剤が変わった時に4日くらいの入院が必要になるそうです。
まだ小さい子供が2人居るので先々の事が心配ですし、やはり脱毛の事も考えて心の準備やウイッグの用意ができたらと思っています。
あと、もし私が抗がん剤治療になった場合、先生でしたらどんな抗がん剤治療を選択されますか?
私の主治医の話で想像すると、強めの抗がん剤治療なのかな?と。
まだ手術もしていなくて、最終的な病理の結果も出ていないのにいろいろ質問してすいません。
どうぞ宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「田澤先生はいろいろな方への回答でサブタイプは手術前と手術後で変わることはないとおっしゃっていたので、私はルミナールタイプと思っていいのでしょうか?」
⇒間違いありません。
「正確なKi67は手術後の病理の結果待ちと言う事で、やはり30%以上なら抗がん剤治療をする事になるのでしょうか?」
⇒手術標本での「Ki67」を見てからにしましょう。
「今までの先生のQ&Aを拝見していて、浸潤経が5mm以下なら抗がん剤治療は適応なしと書いてあったと思うのですが、ki67が高い値でもそうなるのでしょうか?」
⇒その通りです。
「浸潤径≦5mm」ならば「抗がん剤は不要」です。
「よろしければ、私の今判っているデータの範囲で抗がん剤治療が必要な場合はどんな時か教えて頂きたいです。」
⇒これからは全て「手術標本での評価」となりますが…
「最大浸潤径≧5mm」が大前提です。
その上で
①ルミナールBである場合(Ki67≧30%)
②リンパ節転移4個以上
「通っている病院は抗がん剤治療となると、初めての薬剤の回は入院となるらしく、最初は1週間の入院、次に薬剤が変わった時に4日くらいの入院が必要になるそうです。」
⇒さすがに「目を疑い」ました。
本来「外来で行うべき」ものですが、「初回だけは入院」みたいな病院もあることは知っていました。
ただ、初回で「1週間」、2回目以降も「4日間」は、かなり驚いています。(何か病院の事情があるのでしょう)
「あと、もし私が抗がん剤治療になった場合、先生でしたらどんな抗がん剤治療を選択されますか?」
⇒TC療法です。
ルミナールタイプでの抗がん剤は基本「TC」としています。
「アンスラタキサン(担当医のいう、強めの抗がん剤)」は「リンパ節転移の個数」によっては選択しますが、「MRIで腫瘍径11mm, 画像上リンパ節転移なし」の状況では「考えなくてもいい」と思います。
質問者様から 【質問3】
昨日、インフルエンザと診断されて17日からの入院、手術が延期になりました。
11月に乳がんと診断されて、2月の手術でも大きくならないかと心配でしたが、私の体調管理が出来てい
ないせいなのですが、また3月や4月以降になるとやはり大きくなってしまうのではないかとか、リンパ転移してしまうのではないかとか、とっても心配です。
注意していたのに、私ったら何してるんだろうと。
いろいろ予定をくんで頂いただいたり、用意していた事が無駄になってしまい、本当に自分はダメな人間
なんだとつくづく思い落ち込んでおります。
やはり、あと2ヵ月くらい先になると大きくなりますか?
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「昨日、インフルエンザと診断されて17日からの入院、手術が延期になりました。」
⇒お気持ち、お察しします。
当院でも昨年、入院当日(手術前日)に発熱して「手術延期」となり(手術日程の都合上)かなりの期間の待機となった患者さんがいらっしゃいました。
お互いに本当に残念な気持ちとなりますが、こればっかりは仕方がないことです。
「あと2ヵ月くらい先になると大きくなりますか?」
⇒心配される気持ちは解りますが…
それ程目に見えて大きくなることはありません。
それよりも「心身ともにストレスフリー」を目指しましょう。