[管理番号:522]
性別:女性
年齢:42歳
田澤先生はじめまして。
乳がんについて検索していて、先生が様々な方の質問に丁寧に回答していらっしゃるの拝見し、私も今の不安な気持ちが少しでも改善されればと思い、質問いたします。
1週間ほどまえに自分で触っていて左乳房乳輪のすぐ下に(外側より)しこりのようなものを見つけ、昨日乳腺外科に行ってきました。
マンモグラフィ、超音波で石灰化が集まっている箇所(しこりと感じた箇所)に細胞針?(バチンと音がする針)を数回刺しました。
診てくださった医師に「非浸潤の転移しないタイプの乳がんの可能性が6:4の割合である。」と言われ、私は「6割乳がんの可能性があるってことですか?」と尋ねると、「そうです。」と言われました。
「細胞針の結果をふまえて説明があるので、1週間後の予約を入れてください。その際は家族にも付き添ってもらってください。」と言われました。
42歳にもなって家族付き添いということであれば、乳がんの可能性が高いのかな?と思っていますが、なぜ6割という言い方をなさったのでしょうか?
しかも5年前に同じ病院で、少ない石灰が見つかり、その時は初診から数日おいて、MRIとマンモトーム生検をされ、乳腺症と診断されました。
今回は生検をする前に乳がんの可能性を指摘されました。画像を見ただけで乳がんがわかるほどになっているということでしょうか?(今回は5年前生検をされた医師とは違う医師です。)
6割がんなら、4割はがんじゃないのかな?とかいろいろすっきりしなくて、質問させていただきました。長文でまとまりがありませんがどうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「5年前に石灰化をマンモトーム(ステレオガイド下マンモトームでしょう)をして乳腺症」といわれ、今回「しこりとなった」と言う事ですね。
私の中では「左乳腺の同じような部位」という理解ですが、よろしいですか?
回答
「マンモグラフィ、超音波で石灰化が集まっている箇所(しこりと感じた箇所)に細胞針?(バチンと音がする針)を数回刺しました。」
⇒マンモグラフィーで石灰化所見があり(5年前と同部位?)
その部位に相当して超音波で「石灰化を伴うしこり」があり、そこを狙って「(通常のバネ式)針生検(細胞診ではありません、組織診です)」を行った。と言う事です。
マンモグラフィーでの石灰化所見が(超音波でみて)「腫瘤を形成」している時点で、(残念ながら)ほぼ癌確定と思います。
★幸いなことに、担当医があえて「非浸潤の転移しないタイプの乳がんの可能性」とコメントしていることからすると、
マンモグラフィーでは「石灰化所見のみで」腫瘤像なし、超音波では「石灰化を伴うしこり」とは言え、浸潤癌らしい所見ではないのでしょう。
「なぜ6割という言い方をなさったのでしょうか?」
⇒(想像ですが)マンモグラフィーの石灰化所見が「カテゴリー4(乳癌疑い)」どまりであり、「カテゴリー5(乳癌確定)」ではないのでしょう。
カテゴリー4の場合には「乳癌が極めて怪しくても」良性である場合が、その位あるのです。
◎石灰化のカテゴリー4は確かに、その程度なのですが、今回は「超音波で腫瘤を形成」しています。
私の経験ではマンモで石灰化「カテゴリー4」でも超音波で「腫瘤形成」している場合には『カテゴリー5(癌確定)にほぼ同じ』となります。
「しかも5年前に同じ病院で、少ない石灰が見つかり、その時は初診から数日おいて、MRIとマンモトーム生検をされ、乳腺症と診断されました。」
⇒これはかなり問題があります。
もしも「同部位の石灰化」であった場合には、「5年前に、うまく検査がされていなかった」可能性があります。
◎いずれにしろ「5年前と比べて、石灰化が明らかに増加している」のであれば、乳癌の可能性が高くなります。
「画像を見ただけで乳がんがわかるほどになっているということでしょうか?」
⇒その通りだと思います。
まずマンモグラフィーでの「石灰化所見」自体が(5年前より明らかに増加して)カテゴリー4(癌疑い)となっている。
超音波所見で「石灰化を伴う」腫瘤として認識できる。
◎これらの所見は「画像診断として、乳癌を強く疑う」所見なのです。
質問者様から 【質問2 転移は大丈夫でしょうか?】
田澤先生、こんにちは。
先日は丁寧回答いただきありがとうございました。
先生からほぼ癌確定のお返事でしたので、ある程度覚悟して、本日結果を聞きに行ってきました。
以下、診断・所見をそのまま記します。
検査項目:組織診断1臓器
Adequate:Malignant:Invasive ductal carcinoma
Areas of Papillotubular carcinoma and scirrhous carcinoma
乳腺検体:検体適正
組織型:悪性:浸潤性乳管癌
Papillotubular carcinomaおよびScirrhous carcinomaの像
検体中の波及:脂肪織まで
核グレード:分類不可(核異型スコア:2点 核分裂像スコア:算定に視野不足)
乳管内進展:(+)複数カ所
所見:明瞭な浸潤性増殖です。やや大型から小型までの胞巣状構造に管腔構造
が混在する像や、細胞数個集団での増殖、一部では壊死・変性により細胞個々が離解する状態での増殖などを示しています。
なおリンパ管侵襲の疑いに留まる像が含まれています。
切片:標本上4本
腫瘍範囲 7㎜/切片長12㎜
同上 7㎜+1㎜/切片長12㎜
同上 3㎜/切片長11㎜
同上 5㎜/切片長10㎜
以上のことが記されていました。
前回は「転移しないタイプの非浸潤」と聞かされていたので、「えっ、浸潤!?」と驚いてしまって、転移しないっていうのも本当なのかな?と不安になってきました。
それにがんのタイプも今日わかると思っていたため、不安がまたまた強くなってきました。
17日腹部エコー、CT、18日乳房MRI、骨シンチを行いで、来週の24日に広がりや転移などを確認してから、治療方針を決めるとのことです。
手術は学会をはさむとかで、早くて7月中旬以降となるそうです。
この日程は比較的順調といえますか?この間に転移してないがんが転移したりしませんか?
田澤先生は5年前の石灰化の検査に問題があったかもとおっしゃっていましたね。確かに同じ部位ではあります。しかし、その時の医師からは来年も検査にくるよう言われていたんですが、その頃下顎骨にエナメル上皮腫という病気をかかえており、腫瘍切除、腸骨移植、歯茎移植、インプラントという治療を3年ほどかけて行っており、胸の検査を怠っていたのも事実です。その医師よりも自分に対する悔しさと後悔の方が強いです。(愚痴です。すみません)
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
乳癌との診断確定。ある程度の覚悟はあったとしても、がっかりされたと思います。お気持ちお察しします。
回答
「Papillotubular carcinomaおよびScirrhous carcinomaの像」「乳管内進展:(+)複数カ所」
⇒もともとの「石灰化」から考えると「非浸潤癌」⇒(浸潤して)「乳頭腺管癌:papillotubular carcinoma」という流れが推測されます(硬癌の部分は所謂「乳頭腺管癌崩れの硬癌」でしょう)
「17日腹部エコー、CT、18日乳房MRI、骨シンチを行いで、来週の24日に広がりや転移などを確認してから、治療方針を決める」
⇒「腹部エコーとか骨シンチなど」不要な検査も散見されますが、診断から10日前後で「治療方針を決める」というのは妥当なところでしょう。
♯腹部エコーは(CTを撮影していれば)不要、骨転移は「最初に非浸潤癌を疑う程度なら」全く不要です。
『腋窩リンパ節の超音波所見』は言われていないのでしょうか?
「この日程は比較的順調といえますか?この間に転移してないがんが転移したりしませんか?」
⇒診断から2カ月であれば、許容範囲だと思います。
その位の期間であれば大丈夫です。
◎5年前の石灰化所見からすると、進行もゆっくりと考えられます。
前向きに頑張りましょう。
質問者様から 【質問3 陥没乳頭との関係】
田澤先生こんにちは。
前回の質問に対してのわかりやすい丁寧な説明ありがとうございました。
担当医師に尋ねればよいことなのですが、その場ではどうしても質問が思い浮かばす、ただただ聞いているだけで、いっぱいいっぱいになってしまって、あとから不安がおそってきて田澤先生に頼ってしまうという感じです。
「腋窩リンパ節の超音波所見」ですが、もしかしたら私が聞き逃していたのかもしれないので、来週24日の診断の際に確認してこようと思います。
「進行もゆっくり」とおっしゃっていただいた先生の言葉にかなりホッとしています。
さらに質問させていただきたいのですが、私はもともと陥没乳頭で1~2年前くらいに左胸は自然に治っていたので喜んでいたのですが、これは乳がんの進行と関係あったのでしょうか?
それに半年前くらいから左乳頭だけかゆみもありました。
そして現在右胸も陥没乳頭が治っています。かゆみも手に触れるしこりもありませんが。
マンモ・エコーともに右胸に関しては担当医師からは何も言われてないのですが、もし右胸もがんの可能性があれば、明日の乳房MRIなどでわかるでしょうか?
次々と不安がわいてきて、質問せずにはおれない心理状況になっています。
このままではいけないと思いながらも、ついつい田澤先生を頼ってしまいますことお許しください。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「陥没乳頭」に関しては気にしなくてOKです。
回答
「もともと陥没乳頭で1~2年前くらいに左胸は自然に治っていたので喜んでいたのですが、これは乳がんの進行と関係あったのでしょうか?」
⇒「乳頭付近の癌」が乳頭を引っ張りこみ「陥没乳頭を引き起こす」ことはありますが、「もともとの陥没乳頭が癌により治る」と言う事はありません。
「半年前くらいから左乳頭だけかゆみもありました」
⇒これも偶然です。
乳頭から発生する「パジェット」とは今回は関係ありません。
「右胸もがんの可能性があれば、明日の乳房MRIなどでわかるでしょうか?」
⇒通常は両側写ります。
一度主治医に「右も超音波など、診察」してもらいましょう。
質問者様から 【質問4】
田澤先生こんにちは。
陥没乳頭の件について回答ありがとうございました。
がんとは関係ないと言っていただいて安心しました。
本日、腹部エコー、CT、骨シンチ、乳房MRIの検査結果を聞いて手術が決定しました。
多臓器および骨には転移なし。
田澤先生が確認するようにおっしゃた「腋窩リンパ節の超音波所見」は、「画像では腫れている箇所は見られない。術中センチネルリンパ節生検をして、転移があった場合は廓清する。」とのこと。手術後の治療は、放射線なし、リンパ節転移があれば放射線あり。術後1か月後にでる診断を待って、その後の治療法を決定となりました。
「がんの範囲が結構大きく(画像上では白い影が細長く映っていました)娘結節もあるので、全摘をしたほうがよい。来月15日入院して17日に手術、廓清した場合も踏まえて最長3週間の休暇をとっておいてほしい。」とのことでした。他の方の質問に対する田澤先生の回答を拝見すると3週間は長いのでは?とも思ったのですが、念のためということで納得しました。
前置きが長くなりましたが、質問です。
①新たに「娘結節」という言葉が出てきましたが、これはまさしく「がんの子供」で同じ性質のがんが別の場所にもあったという意味ですか?腫瘤とは違う場所にできていたような気がします。
②娘結節の位置が胸筋近くにあった場合でもがんの取り残しなどおこらないのでしょうか?
主治医は「全摘するからそれはない」とおっしゃってました。
③手術までに20日程あるので、それまでにやっておいたほうがよいことはありますでしょうか?例えば術後の復帰が早くなるよう体力増進の為にウォーキング等をやっておくなど(車通勤、事務職なので全く運動してません)
ある程度他の方のQ&Aは読んでいるつもりですが、上記の質問がどなたかと重複しているようであればご容赦ください。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
(遠隔転移が無いのは当然とはいえ)腋窩リンパ節も腫れていない(cN0)だったとの事。大変良かったです。
回答
「手術後の治療は、放射線なし、リンパ節転移があれば放射線あり」
⇒これは正しい内容です。
4個以上なら必須です。
「乳房切除後放射線治療:postmastectomy radiotherapy:PMRTの適応」は
リンパ節転移4個以上:推奨グレードA
リンパ節転移1~3個:推奨グレードB
「廓清した場合も踏まえて最長3週間の休暇をとっておいてほしい」
⇒随分長いですね。
郭清したとしても、1週間あれば仕事復帰できると思いますが…
「①新たに「娘結節」という言葉が出てきましたが、これはまさしく「がんの子供」で同じ性質のがんが別の場所にもあったという意味ですか?腫瘤とは違う場所にできていたような気がします。」
⇒娘結節とは、「元の腫瘍とは全く無関係に別部位にできるもの」ではなく、あくまでも『同じ乳管系に(乳管内病変としては連続して)できる腫瘍』です。
つまり、「主腫瘍」から「乳管内進展」して「乳管内病巣としては連続」して「同じ乳管系の離れた部位」にできた「腫瘍」です。つまり離れてはいますが、「本質的には連続した(起源を同じくした)腫瘍」です。
○娘結節は「主腫瘍と同一乳管系に存在」しているので、所謂「多発」とは異なり、それ自体が「温存してはいけない」理由とはなりません。
「がんの範囲が結構大きく」という点が「温存が困難な理由」と思います。
「②娘結節の位置が胸筋近くにあった場合でもがんの取り残しなどおこらないのでしょうか?」
⇒乳癌は「乳管から浸潤」しても周囲の脂肪組織どまりで、その裏側にある大胸筋まで浸潤することは殆どありません。
腫瘍が「かなり進行すると」大胸筋まで浸潤する事はありますが、質問者には当てはまりません。
♯ちなみに「大胸筋浸潤を伴う局所進行乳癌の場合には、手術時に、浸潤している大胸筋部分も一緒に切除」します。
「③手術までに20日程あるので、それまでにやっておいたほうがよいことはありますでしょうか?」
⇒特別な準備は必要ありません。
私も時々聞かれますが、その際には「風邪を引いたりすると延期となるので、体調管理だけ気を付けてください」とお答えしています。
質問者様から 【質問5 針生検後のサブタイプ】
田澤先生こんにちは。
「娘結節」について、丁寧な説明ありがとうございました。
先生の説明は本当にわかりやすく、いまある不安をかなり払拭してくれます。
それに甘えて次々と質問してしまうことをお許しください。
管理番号599「手術まで不安です」の質問者様への回答に、針生検を行ってサブタイプがわからないのは
技術が稚拙とありましたが、私も同じように主治医から「今の段階では、サブタイプはわからないので全摘手術後の診断ではっきりする。」と言われています。
これはやはり針生検査の技術に問題がありわからないのでしょうか?
結構ベテランな感じの医師で手術件数もかなり経験されているとのことでしたが。
もちろんこの医師が私の手術を担当されます。
主治医に全幅の信頼を寄せて手術日まで過ごすのと、疑問をかかえながら過ごすのとでは
精神的に全く違います。
サブタイプが現時点でわかれば、術後治療の仕事への影響もなんとなく想像できるのではないかと思い質問いたしました。とにかく仕事で同僚に迷惑をかけたくないのです。
抗がん剤治療中でも仕事をされている方もいらっしゃるとは思いますが・・・。
それと術前検査のCT、骨シンチで転移なしの結果でしたが、乳がん由来ではない他のがん(例えば子宮がん等)も発生していないと思ってよいのでしょうか?
よく乳がんと子宮がんの検査はセットにされる方が多いようですが、これはホルモン療法によるリスクのためにセットで受診されるからでしょうか。子宮頸がんの検診は30代前半に受けたきりです。
手術日も決まったので、どんと構えていればよいのですが、
ひとつ決まるとその先のことに想像が膨らんでしまって、またまた田澤先生を頼ってしまいます。
田澤先生のような方が、私の通う病院にもいらっしゃればよいのに・・・。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
状況は解りました。
回答
「針生検査の技術に問題がありわからないのでしょうか」
⇒以下に前回教えてもらった針生検のレポートの1部を抜粋しますが、
気になるのは「核グレード:分類不可(核異型スコア:2点 核分裂像スコア:算定に視野不足)」という記載です。
この「視野不足」なので「核グレードの分類ができない」というのは「組織量が不足」している可能性を考えます。
その担当医の技術は不明ですが、今回の「標本」に関しては問題がありそうです。(たまたまかもしれませんが…)
○私の経験上、針生検で核グレード不明という事は無いのです。
『核グレード:分類不可(核異型スコア:2点 核分裂像スコア:算定に視野不足)』
「乳がん由来ではない他のがん(例えば子宮がん等)も発生していないと思ってよいのでしょうか?」
⇒全てではありません。(勿論進行癌は解りますが、早期発見までは無理です)
特に「消化管の癌(例えば胃癌、大腸がん」はある程度大きくならなければCTでdetectできません。(やはり内視鏡が必要)
子宮癌も同様です。
「乳がんと子宮がんの検査はセットにされる方が多いようですが、これはホルモン療法によるリスクのためにセットで受診されるからでしょうか」
⇒閉経前乳癌でホルモン療法をしている場合には、子宮癌検診をしてもらっています。
ただ、そうでない方の場合は、単に「婦人科検診」的な発想でしょう。(実際には診療科は違いますが…)