[管理番号:615]
性別:女性
年齢:65歳
先日摘出手術を受け、来月より放射線治療を受ける予定です。
乳がん告知のショックからようやく立ち直り、現実を受け入れるようになって、改めて乳がんの原因を知りたく思っています。
人一倍、食事に気を使い、規則正しい生活を送ってきたつもりです。Web等にある「乳がんのハイリスク」項目をよく目にしますが、ほとんど私の周辺では該当しません。私自身も全く該当しません。先生のサイトに書かれている、「食生活や生活習慣の変化(欧米化)」とは、やはり肉中心の食事、ストレス社会ということでしょうか。私の主治医は「原因不明」と言われ ます。原因不明では予防はできませんね。
また乳がんになった人だけが欧米化していたわけではありませんよね。他のがんと違い、若い女性が多いということは、長年の生活習慣から来ているとは思えません。また女性ホルモンが関係しているのであれば、閉経後に罹患率は大きく下がると思いますが。
再発を防ぐ為にも、どんな生活改善をすればいいのか思案に暮れています。乳がんになったのは「運」、「事故」と解釈すべきでしょうか。
先生のご見識、アドバイスをいただけると幸いです。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
まずは、乳癌に限定せずに「癌」として理解することが重要です。
癌は「遺伝子の変異」です。
人が「長寿を獲得した時点」で「細胞分裂を繰り返す中での遺伝子複製のエラーが高頻度となる」⇒「遺伝子変異の蓄積」⇒「癌化」を避けては通れなくなりました。
と、これまでは「全ての癌」の話です。
動物で「癌が殆ど無いのはなぜか?」それは動物は短命だからです。
次に「乳癌に絞った話」をします。
回答
「乳癌が何故増加しているのか?」
⇒これは「閉経前」と「閉経後」に分けて考えなくては理解できません。
≪閉経前≫
女性ホルモン(エストロゲン)の長期間の暴露
①ホルモン環境の変化
一番の問題は「晩婚化と少子化」です。
出産することで、「エストロゲンレベルが一気に低下」します。これが「乳癌リスクの低下に最も重要」と考えられています。更に「授乳中はエストロゲンレベルが低値を維持」します。
つまり従来「25歳で初産の時代」に比べて「35歳で初産」の時代では「10年間」もエストロゲンが高い状態が続くのです。
②体格向上による「初潮から閉経までの期間の長期化」
食事の欧米化に伴い「子供の体格が大きくなった」事は間違いありません。
これが何に影響するかというと「初潮年齢の低年齢化」なのです。
更に「閉経年齢が高齢化」していることをご存じでしょうか?
少し前では「50歳は閉経年齢」でしたが、今では「50歳で閉経されている方」は殆どいらっしゃいません。
結局「初潮年齢の低年齢化と閉経年齢の高齢化」が何を意味するか?
⇒「エストロゲンの長期暴露」なのです。
≪閉経後≫
閉経後は女性ホルモン(エストロゲン)産生は(卵巣では無く)脂肪組織です。
食生活の欧米化が「脂肪の蓄積」⇒エストロゲンの上昇⇒乳癌リスクの上昇なのです。
○もともと、日本での乳がん発生は欧米に比較して、(閉経前乳癌の割合が低く)「閉経後乳癌が多い」状態でした。
これが、「ホルモン環境=出産の高齢化及び少子化」により閉経前乳癌の比率が増加しています。(全年齢層で増加していますが、閉経前でより顕著です)
○そして「閉経後乳癌」はもともとの「高齢に伴う遺伝子のエラー」に「食生活の欧米化=脂肪摂取=エストロゲン上昇」が重なって増加しています。
◎トータルとして日本での乳癌は急速に増加していますが、特に「閉経前乳癌の増加が著しい」のです。
結果として「欧米型=閉経前に多い」に近づいています。
★それでは「乳癌の予防」はどうか?
難しい問題です。
「閉経前」では、かつての日本のように「結婚を早くして、若いうちに出産すること」これが重要なことは間違いありません。ただ、社会環境がそれを許していないようです。
「閉経後」では、「食生活を和食」とすることでしょう。 「大豆とイソフラボン」がエストロゲンレベルを下げることが解っています。
◎かつての「日本の生活」への回帰。難しいですが、これが一番の解決策なのです。