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母の乳癌について

[管理番号:3225]
性別:女性
年齢:61歳
田澤先生こんにちは。
母のことでよろしくお願いします。
13年前の48歳で左乳房全摘しています。
46歳頃から自覚していましたが
線維腺腫と言われており、結果乳癌で手術の時にはかなり大きくなっていました。
12年間再発転移なく過ごしておりましたが、先日右胸の1センチほどのしこりの形が気になるとのことでMRIをしました。
結果やはり悪性が疑わしいとのことで(上旬)日に針生検をして、(下旬)日に結果がでます。
この右胸しこりは13年前からあったもので形は楕円、大きさもずっと変わらずで画像のみの診断で毎年問題ないとのことでした。
それが今年母曰く、星型のような柏の葉のような形になっているとのこと。
これはいったいどういうことが考えられますか?
私は線維腺腫が葉状腫瘍になったのかなぁと思っていますが。
それから、左胸は去年10月に自家組織再建、今年6月に微調整、9月に再微調整と乳頭再建予定です。
そこで左胸にも母は骨にこびりついた感じのしこりを一つ発見したのですが、みてもらったところいくつかシコリはあり、これは脂肪の塊が水になったものだと言われたそうです。
こういうことはあるのでしょうか?
つたない文章で申し訳ありません。
どうかよろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「右胸の1センチほどのしこりの形が気になる」「この右胸しこりは13年前からあったもので形は楕円、大きさもずっと変わらずで画像のみの診断で毎年問題ない」
⇒13年も変わらずに存在して「今更、癌」ということは流石に無いでしょう。
 
「それが今年母曰く、星型のような柏の葉のような形になっているとのこと。」
「これはいったいどういうことが考えられますか?私は線維腺腫が葉状腫瘍になったのかなぁと思っていますが。」
⇒質問者に同意見としたいところですが…
 
 ○「形状の変化だけなら」単に「線維腺腫が脂肪変性しただけ」かもしれません
(MRIの「悪性疑う?」という所見と合いませんが…)
 ただ、(13年も経って、今更ですが…)
 MRIで「悪性(おそらく造影剤のtime intensity curveが悪性パターンということなのでしょう)」というのが気になります。
 「1cmの葉状腫瘍(葉状腫瘍で、この大きさであれば悪性ということは無い筈です)」よりは「癌」の方が「MRI所見では」合いそうに思います。
 その場合は「謎の13年間」の解釈は難しいですが…
  
「そこで左胸にも母は骨にこびりついた感じのしこりを一つ発見したのですが、みてもらったところいくつかシコリはあり、これは脂肪の塊が水になったものだと言われたそうです。」
⇒これは再建乳房に良くある「脂肪壊死」です。
 脂肪壊死により、「液状になる」のです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生こんにちは。
先日は早々に分かりやすくご回答いただきありがとうございました。
MRI、針生検、骨シンチ、CTの結果、手術・治療方法が出ましたのでぜひ田澤先生のご意見をお聞かせください。
右乳癌(浸潤性乳管癌、小葉癌混在?)
明らかな転移を疑う所見なし
ホルモン感受性:陽性
HER2タンパク:過剰発現なし
TⅠ.No.Mo stage1
手術治療
全身麻酔
①センチネルリンパ節生検
転移(-)~2ミリまで:残りのリンパそのまま
転移>2ミリ:残りのリンパも切除
②乳房温存療法
2センチの安全域を確保
切除標本を詳しく調べ取り切れている様ならOK
断端まで癌が拡がっている場合は再手術が必要なこともあります
治療法
①手術
入院日数一週間
手術時間3時間程度
②放射線
存在乳房に計50Gyの放射線治療(計5週間)
リンパ節転移が4個以上の場合領域リンパにも照射
③薬
抗がん剤治療(3~6ヶ月)術後の病理の結果に応じて提案 ホルモン療法(5~10年)
以上が診断結果に書かれていた内容です。
腫瘍の大きさはエコーでは1センチ程度でしたがMRIではもう少し拡がっている様で明確な記載はされていません。
手術内容、治療法は妥当でしょうか?術後の治療法は田澤先生ならどうされますか?
手術時間や入院日数に関しては田澤先生と比べると長いですし、針生検の際、帰宅後に大出血し病院に戻り一日ですが入院しています。
針生検はこんなにも出血するものでしょうか?母は「きっと元気な癌だから血流も多くてこんなに出血した」と言っています。
関係ありますか?
検査の順もMRIで悪性が疑われたから針生検に進みました。
もしMRIで分かりにくい癌だったらそのままになっていたかと思うと…。
田澤先生の精度を他の医師にも求めてはいけないのでしょうが
今ひとつこれで大丈夫なのか心配です。
抗癌剤を使うかどうか、使うならどういう抗癌剤かはまた術後に決まるそうですが、現時点での田澤先生のご意見をお聞かせください。
お忙しいところ大変恐縮ですがどうぞよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
癌でしたか…
お気持ち、お察しします。
幸い(13年放置?していたのに)cT1, cN0, luminal 早期です。
余程大人しいと思われ、予後良好と解釈できます。(早々と抗ガン剤の可能性を提示するのは如何なものか?)
ただ、それにしても「謎の13年間」を担当医はどう「解釈(釈明)」しているのですか??
「手術内容、治療法は妥当でしょうか?」
⇒乳房温存+センチネルリンパ節生検は妥当です。
 それにしても、この手術で3hもかかるとしたら余程「余計な操作(出血して止血など)」をしているとしか思えません。
 私なら、とてもそんなところで手術などさせません(親戚、友人などであれば)
 
「術後の治療法は田澤先生ならどうされますか?」
⇒全身療法としてはluminal typeですから、luminalAかBかの判断が必要です。
 手術標本で「Ki67を測定」してluminal Aならホルモン療法単独、Bなら「化学療法の上乗せ」が標準治療です。
「針生検はこんなにも出血するものでしょうか?」
⇒出血しません。
 私は針生検は細胞診程度に考えています。
 マンモトームの場合には「きちんとした圧迫」をしています。(針の太さが違います)
「元気な癌だから出血した」「関係ありますか?」
⇒関係ありません。
 「元気な癌」は13年も「じっとしていない」と思いますが…
「検査の順もMRIで悪性が疑われたから針生検に進みました。もしMRIで分かりにくい癌だったらそのままになっていたかと思うと…。」
⇒質問者のセンスは大変正しいです。
 私が常々「MRIを診断目的に使うべきではない」という、まさにその理由です。
 MRIは単なる画像診断(超音波やマンモと大差なし)です。(拡がり診断としては優秀ですが…)決して「組織診の前に行うべきではない」のです。
「抗癌剤を使うかどうか、使うならどういう抗癌剤かはまた術後に決まるそうですが、現時点での田澤先生のご意見をお聞かせください。」
⇒前述した通りです。
 経緯からは、大人しい癌(luminalA)を想像しますから、今から「抗ガン剤のこころづもりまでは不要」です。
 術後のKi67を待ちましょう。