[管理番号:3067]
性別:女性
年齢:54歳
田澤先生
初めまして、現在54歳(閉経は48歳頃)
今年3月に人間ドック・マンモグラフィーで石灰化・構築の乱れの指摘を受け、
エコーを撮った所、8ミリの腫瘍が見つかり、針生検を行いました。
結果は
浸潤性小葉癌 ER + PgR + HER2 – Ki-67 7% でした。
その後、うつ伏せによるMRIを撮った所20ミリと言われ、この病院では手術出来ないので、紹介状を頂き転院しました。
手術の出来る乳腺外科は大変混んでいて予約が取れたのが、
4月中旬になってしまいましたが、初期だと思っていましたのでのんびり構えていたのですが、
転院先で、2回目のMRI(仰向け)で50ミリ・3回目のMRI(うつ伏せ)では63ミリとMRIを撮るたびに大きくなっています。
一応、画像に写るリンパ節、多臓器に転移はありませんでした。
乳癌と診断されてから、田澤先生の乳がんプラザQ&Aを読むようになり、
解りやすく親身になった回答にいつも心落ち着かせていました。
今日は思い切って相談させてください。
小葉癌なので、大きな塊というより、パラパラと散らばっている感じです。
主治医からは全摘と言われてしまいました。
私は細い割に胸が大きく70Eカップあり形も色も綺麗でどうしても失いたくありません。
以前から、乳がんだけは注意をし、毎年マンモグラフィー・エコーを受診していたのに残念でなりません。
癌と言う病気より、胸を失う喪失感に生きて行く気力もなく毎日泣いています。
手術前に抗がん剤で癌が小さくなり、温存術が出来るようになる事はないのでしょうか?
悪あがきかも知れませんが、何か良い知恵があれば教えてください。
最近のMRIの所見
右外上に結節状や索状染まりがみられ全体63㎜ほどの範囲です。
DWI高信号、癌と考えます。
右nipple 下に入管に沿うような線状の染まりがある。
対側でははっきりしない所見。
同様の病変なのか乳管内乳頭腫等があるのかはっきりしない。
右腋窩内側のリンパ節がDWIで目立つが形状は正常範囲にたもたれている。
以上
よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「浸潤性小葉癌 ER + PgR + HER2 – Ki-67 7%」
⇒典型的な「非常に大人しい浸潤性小葉癌」です。
Ki67が一桁なのは「圧倒的に小葉癌に多い」です。
「転院先で、2回目のMRI(仰向け)で50ミリ・3回目のMRI(うつ伏せ)では63ミリとMRIを撮るたびに大きくなっています」
⇒このあたりも「小葉癌の特徴」といえるかもしれません。
ただし、MRIが本当に正しく所見を拾っているのか(実際に私はその画像所見をみていないので)不明ですが…
「小葉癌なので、大きな塊というより、パラパラと散らばっている感じ」
「主治医からは全摘と言われてしまいました。」
⇒この所見であれば仕方がないです。
「手術前に抗がん剤で癌が小さくなり、温存術が出来るようになる事はないのでしょうか?」
⇒残念ながら…
「小さくして温存」の適応がありません。
想像してみてください。
「一つの大きな塊」であれば「一点に向かって収縮」するので「十分温存可能」ですが…
「多数の腫瘍」が「それぞれが縮小」しても「星座のように広範囲に点状に存在」することになります。これでは結局「その星座のある範囲を全て切除=摘出する範囲が(術前抗がん剤前と)全く変わらない」のです。
「悪あがきかも知れませんが、何か良い知恵があれば教えてください。」
⇒これは難しいです。
全摘再建を考えるべきでしょう。
幸い、早期(でしかも大人しい)のですから「命を優先」に「気持ちを切り替えるべき」時なのだと思います。
質問者様から 【質問2】
先日、小葉癌が見つかり、『どうしても乳房を失いたくない』と相談させて頂きました。
中々、手術に踏み切れませんでしたが、何の関わりも無い私に、先生の愛情溢れる解りやすい回答に、背中を押され全摘手術を受けました。
先生のアドバイスにもありましたが、1年後広背筋皮弁による
自家組織再建を目指して前を見る事が出来ました。
本当にアドバイス有難うございました。
追加でアドバイス頂きたくメール差し上げます。
手術が終わり、病理結果が出てまいりました。
主治医からは、前期(3回)だけ抗がん剤を受け、その後ホルモン療法でと診断されました。
理由は病巣が6.0×5.5×3.0cmと大きな塊(1病巣)になっていたからだそうです。
【組織診断】
Brest, right, total resection
Invasive lobular carcinoma,
Bt+SNB, area=C, 6.0×5.5×3.0cm, pNO(0/3), margin: negative
NG(1), g f, ly0, v0,
ER(90%), PgR(90%), HER2 score 1+, Ki67(20%)
【組織所見】
検体:右乳線 乳癌数:1病巣
切除術: Bt+SNB 23.0×20.0×5.5cm 占拠部位: 右C領域
腫瘍径: 6.0×5.5×3.0cm
組織分類: invasive lobular carcinoma
核異型スコア: 2, 核分裂スコア: 1(2/10HPF), 核グレード: 1
波及度: g f, リンパ管侵襲: ly0, 静脈侵襲: v0
リンパ節転移: 合計(0/3) SNB(0/2), 近傍(0/1)
切除された乳線のC領域、長径6cmの範囲に、クロマチン増量した
核を有する
N/C比の高い細胞が、細い索状から小塊状に増殖する像がみられ、
E-cadherinは大部分陰性です。
浸潤性小葉癌と考えられます。
断端は陰性で、リンパ節転移はみられません。
このプラザで勉強させて頂いておりますが、ホルモン療法だけでも、充分な気もしていました。
私は3回と言う中途半端な抗がん剤に意義を感じられません。
どうせ抗がん剤を受けるならしっかりと受けたいです。
ホルモン療法のみの再発率は20%くらい抗がん剤をプラスした再発率は15%くらい
上乗せ率は5%くらいと認識しているのですが、合っていますでしょうか?
針生検では、HER2 score0 Ki67 7%でしたが今回の病理ではHER2
score 1+ Ki67が20%
になっているのも気にかかります。
luminalAではなくluminalBなのでしょうか?
先生なら術後どのような治療をされるか、見解をお聞かせください。
お忙しいとは思いますが、よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
小葉癌ですね。
大人しいけど「拡がりが広い」という特徴、ほとんど術前画像所見通りですね。
全摘を選択して正解でした。
それにしても、これだけエビデンスが明らかとなってる時代に「病巣が6.0×5.5×3.0cmと大きな塊(1病巣)になっていたから」という理由で抗ガン剤を勧めるとは困ったものです。
全く根拠薄弱です。
大人しい癌(luminalA)では(腫瘍径が大きかろうが、リンパ節がどうであろうが)抗癌剤の上乗せは無いのです。
○もしも可能ならOncotypeDXしてみましょう。
RSは低リスクとなると推測します。
「核分裂スコア: 1(2/10HPF)」からも「殆ど分裂していない」ような大人しいタイプです。
抗ガン剤のターゲットが「DNA合成や細胞分裂」であることを「主治医には、もう一度考えてもらいたい」ものです。
「このプラザで勉強させて頂いておりますが、ホルモン療法だけでも、充分な気もしていました。」
⇒その通りです。
明らかなルミナールAです。
「ホルモン療法のみの再発率は20%くらい抗がん剤をプラスした再発率は15%くらい上乗せ率は5%くらいと認識しているのですが、合っていますでしょうか?」
⇒おそらく、それよりも良いとは思います。
抗がん剤の上乗せも5%は無さそうです。
「針生検では、HER2 score0 Ki67 7%でしたが今回の病理ではHER2 score 1+
Ki67が20%になっているのも気にかかります。luminalAではなくluminalBなのでしょうか?」
⇒luminalAです。
「先生なら術後どのような治療」
⇒ホルモン療法単独です。