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説明がなく不安。のう胞腫瘍

[管理番号:294]
性別:女性
年齢:50歳
田澤先生、よろしくお願い致します。
2014年末頃に、左胸が硬いことに気づきましたが、年末、年度末の多忙時期であったため放置していました。
昨日、ふと見ると硬い部分が青くなっている事に気づき急いで、近くの乳腺クリニックに行きました。
診察の内容は、両胸のマンモグラフィ、超音波検査の後、右は針生検、左は細胞診でした。
超音波検査中に、先生が「左はできものがでいているね」と言われました。そして血を抜きました。先生が「のう胞腫瘍だね」と言われました。
その後、詳しい説明を面談の形で映像などを見ながら先生からお聞きできると思っていたのですが、A4サイズの紙「乳腺疾患検査結果」を看護師さんから渡され、10日後に検査の結果を聞きに来て下さいと言われました。
「乳腺疾患検査結果」には、以下のように書かれていました。

右乳房:石灰化 カテゴリ2 左右非対称陰影 カテゴリ3
左乳房:腫瘤像、石灰化 カテゴリ4

 
のう胞腫瘍についてネットで調べたところ
こちらのHPにたどり着きました。
診断結果の説明を受けていないので、自分では良くないことはわかるけれど、何がどうなっているのか、どうしていいのかわからず、憶測だけが頭の中をうずまいています。
検査結果がでるまで、1週間以上もこのような気分で耐えられません!
田澤先生、一体どのような状態なのか、教えていただけないでしょうか?
昨日はこわくて、不安で眠れませんでした。
お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願い致します。
(2015年4月の質問)
 

田澤先生からの回答

 こんばんは。田澤です。
 確かに「説明不足」は否めませんが、その日の内に左右(左は細胞診、右は針生検)検査している点は評価に値します。
 左の「嚢胞内腫瘍」ですね。文面からは「右は針生検」されているようですが、こちらの情報は少ないようなので今回は左の「嚢胞内腫瘍」について回答します。

回答

「ふと見ると硬い部分が青くなっている」
⇒これは、「嚢胞内腫瘍の血性の液体部分(血液そのものとは違う筈です:血液そのものであれば、凝固してしまいます)」が皮膚の上から透見されたものでしょう。
 
『先生が「左はできものがでいているね」と言われました。そして血を抜きました。先生が「のう胞腫瘍だね」と言われました。』
⇒「嚢胞内腫瘍」は「壁から内部にある液体に向かって腫瘍が突出している像」として「超音波で認識できていた」筈です。
 
 あえて細胞診をしたのは、(針生検では)「嚢胞内容(腫瘍とか、腫瘍からこぼれた細胞が浮かんでいるかもしれない液体)」が散らばってしまう事に配慮したのでしょう。
※なかなか「嚢胞内腫瘍」に対する細胞診では、「確定診断は困難」だとは思いますが、何らかの参考になる「液体が血性なのかどうか?(血性であれば悪性の可能性が比較的高い)」や「細胞診でclass4以上がでるかどうか?(あくまでも参考です)」
 
「左乳房:腫瘤像、石灰化 カテゴリ4」
⇒今回の経緯からすると、この「腫瘤とカテゴリ4の石灰化は同一病変の所見」と考えて良さそうです。つまり「カテゴリ4の石灰化を伴う腫瘤」と思います。
 そうなると、(可能性として最も考えやすいのは)「非浸潤性乳管癌」もしくは「乳頭腺管癌」に伴う石灰化です。
※「血性の嚢胞内腫瘍」であれば、「乳管内乳頭腫のような良性病変」も考えられますが、「カテゴリー4の石灰化」からは否定的です。
 
私の見解
◎「血性の嚢胞内腫瘍」と「カテゴリ4の石灰化」を考え合わせると
(良性である)乳管内乳頭腫 < 乳癌(非浸潤性乳管癌、もしくは微小浸潤の乳頭腺管癌)
となるでしょう。
 この場合診断方法としては、「嚢胞内腫瘍の摘出生検」(外科的生検)を選択するか、「カテゴリ4の石灰化のステレオガイド下マンモトーム生検(以下ST-MMTと略す)」を選択することになります。
 「主病巣をどちらと考えるか」で考え方は異なりますが、(血性でもあるので)「嚢胞内腫瘍をまずは摘出」する事がいいと思います。
 
 
最初に「嚢胞内腫瘍を摘出した場合」その結果、

  1. 良性だった場合⇒石灰化のST-MMTを追加しなくてはならない。(嚢胞内腫瘍は良性だが、石灰化は癌ということもあり得るため)
  2. 悪性でった場合⇒手術として「石灰化の範囲を含むように」切除する(手術する際には、カテゴリ4の石灰化を含むようにしなくてはならないため)

 
★「嚢胞内腫瘍」は「摘出しないと」診断を確定させるのが難しいのです。
 今回の場合には、そこに「カテゴリ4の石灰化」が絡んでくる(同一病変だと過程していますが)ので、「きちんとした病変全体の評価」が必要となります。
 決して(癌だとしても)「進行した状態ではない」ので、「きちんとした診断」⇒「きちんとした治療」が必要です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生。早急な回答をありがとうございました。
先生の回答を読む時は、膝ががたがた震えましたが、本当に丁寧に順を追って説明をして下さり、頭の中でばらばらだった医学用語がつながったような気がしています。
気分が落ち着きました。
本当にありがとうございます。
今回先生が回答して下さった内容を頭にしっかり入れて、落ち着いて来週細胞検査の結果や治療方針を聞いてこようと思います。
こちらのQ&Aで
NO.187「のう胞が一年後に癌化しますか?
NO.269「のう胞内乳頭腫で手術
NO.201「背中の痛み
なども、読ませて頂きました。私の場合とは異なるけれど、大変わかりやすかったです。
本当にありがとうございました。
また、治療方針等でご相談させて頂くかもしれません。
その折は何卒よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

 丁寧に、感想を寄せていただき、こちらこそありがとうございます。
 嚢胞内腫瘍に関しては、(過去のQandAを読んでいただき)「摘出による診断の重要性」を確認していただいたことと思います。
 あと、気になるのは「カテゴリー4石灰化」です。
 「来週控えている(担当医との)面談の際」には、是非「嚢胞内腫瘍と石灰化」の位置関係について確認してください。
 可能性としてはおおよそ下記「1~3」となると思います。(「1」から順に可能性が高いと思っているのですが…)

  1. 集簇した(もしくは線状に並んだ)石灰化が(嚢胞内)腫瘍と連続している。(石灰化は主として腫瘍の外にある)
  2. 石灰化は主として(嚢胞内)腫瘍の中にある。
  3. 石灰化と(嚢胞内)腫瘍は、全く離れていて「同一病変ではない」

※嚢胞内腫瘍と石灰化の関係についても是非「質問」するといいと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生。先日は、ありがとうございました。
初診告知から約4週間たちました。
結果は自分が考えていたよりずっと悪く、落ち込みました。
今は、当初より冷静に受け止められるようになったかなと思うものの、次々に不安材料が出てくるので気が休まりません。
しかし、こちらのブログを拝見すると、色々な方が治療に取組んでおられる様子がわかり、また田澤先生の力強いお言葉を拝見すると、前向きになれます。
本当にありがとうございます。
前回、色々と教えて頂いたのですが、今後の治療(転院等)について悩んでいます。
田澤先生 のお考えを教えて頂きたく、度々で申し訳ありませんが何卒よろしくお願い致します。
これまでの経過
4/13 クリニック受診(右:針生検 左:細胞診)
4/17 診断
・左乳房一次報告:頭腺癌(のう胞内) 「周囲に同時多発癌がある」と言われました
・先生に頂いた病理診断結果報告書を見ると 右:CT1N1 左:CT3N1と手書き図がありました
・同日 血液検査と右乳房の細胞診
4/23 診断(左乳房最終報告:ER陽性(99.0%)PGR陽性(99.0%) Her2陰性 Ki67:35.7%)
4/24 タモキシフェンクエン酸塩錠(後発 タスオミン)をのみ始める
5/1 CT検査(胸部から骨盤部の単純CT)
5/2 診断
・両側乳癌
・右側乳房の検査結果(追加報告 右側乳房:ER陽性(98.9%)PGR陽性(14.2%) Her2陰性(1+) Ki67:30.5%)
・ 術前に抗癌剤治療をする
・手術は両側全摘 先生「多発癌があるため全摘を薦めます。再建すればきれいになりますよ」
渡された検査結果報告書に下記のように書かれていました。(一部抜粋)
両側乳癌、左腋窟リンパ節転移を否定できない病変あり。積極的に遠隔転移を疑う所見なし。
左乳房 C領域に28mm、右乳房BD境界領域に17mm大の腫瘤があるように見える。
左腋窟に腫大しているとは言えないがリンパ節が目立つ。リンパ節転移が存在する可能性を否定できない。
右腋窟や両側鎖骨上、胸骨傍、縦隔、腹部大動脈傍、両側腸骨動脈傍に明らかな腫大リンパ節の所見は指摘できない。
5/7 MR検査の予定
5/11 骨シンチの予定(腰が痛いような気がすると私が言ったため追加になりました )
上記のような形で診療が進んでいるのですが…、
今後、抗癌剤と手術を受ける病院について悩んでいます。
私は、関西在住です。
初診からこれまで、乳腺専門のクリニックでH先生に診療して頂いています。
知らなかったことですが、乳がんに経験豊富な先生で市民病院で長く勤められた後、現在のクリニックを開院されたとの事です。
小さなクリニックです。看護師さんが2名くらい? 手術は、先生が癌拠点病院の施設でされるそうです。H先生がマンモ、レントゲン、エコー全てご自身でされます。
安心しておまかせできる…という雰囲気が漂っています。
ただ、とてもとてもお忙しそうで、診断についてたくさん質問したりすることができない雰囲気です。
看護師さんも、いつ もばたばたとお忙しそうです…。
H先生は、近隣の癌拠点病院の非常勤医師でもあられるため、私はできればそちらの病院に転院して、引き続きH先生に主治医として診て頂けないかとお願いしました。
理由は、拠点病院は、①自宅に近い(徒歩圏内)②緩和ケア科があり、精神的なフォローもしてもらえる(独身で闘病しなければならないため不安。誰かに相談したい。)
H先生は、快諾して下さったのですが、非常勤勤務のため今後スケジュールを組むのが難しくなるということで、拠点病院の別の先生をご紹介下さいました。
つまり、主治医が変わるということです。
そして、5/14に転院の方向で話がさっと進んでいます。(それまでには、CT、MRI、骨シンチ全ての検査結果が出ています)
そこで、2点について田澤先生のご意見をぜひお聞かせ頂きたいのです。
(1)拠点病院は、チーム医療を強調していますが、チーム医療とは具体的にはどのようなことでメリットがあるのでしょうか?
拠点病院の「がん相談支援室」の専門家にたずねたところ、「それぞれの専門分野の医師が連携して患者の医療にあたる。」ということでした。でも、その専門分野の先生が直接顔を合わせて患者の症状について検討するというようなことではないそうです。
ちょっと、イメージしにくいのです。ただ情報を共有するということだけなのかな~?
(2)H先生のクリニックと癌拠点病院の抗癌剤治療の進め方も異なるようです。
抗癌剤の順番とサイクル(1回/3週間×4サイクルか1回/1週間×12サイ クル)
同じ病気でも抗癌剤の使い方は病院により異なるのでしょうか?
自分の症状が、深刻なので、真実を知りたくない気持ちもあります。
病気について勉強もしていません(怖いため)。判断もできそうにないです、、、、。
自営で独身のため仕事もしなければなりません。
こんな消極的な態度でだめなのは承知しているのですが、安心して信頼しておまかせできる先生にただついていきたい気持ちです。
どう考えても、自分では判断できずに悩んでいます。
お忙しいところ、長々とした文章をお読み下さいましてありがとうございます。
何卒よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 「管理番号294」で伺った際の所見から「やや乖離」があり私にも違和感があります

 左乳房 C領域に28mm、右乳房BD境界領域に17mm大の腫瘤があるように見える。
 左腋窟に腫大しているとは言えないがリンパ節が目立つ。リンパ節転移が存在する可能性を否定できない。
 右腋窟や両側鎖骨上、胸骨傍、縦隔、腹部大動脈傍、両側腸骨動脈傍に明らかな腫大リンパ節の所見は指摘できない。

⇒右cT1c, cN0, luminal type (針生検でのKi67 30.5からは暫定luminal B)
 左cT2, cN1, luminal type (針生検でのKi67 35.7からは暫定luminal B)
となります。

私の印象


・術前に抗癌剤治療をする
・手術は両側全摘 先生「多発癌があるため全摘を薦めます。再建すればきれいになりますよ」

⇒まず、この内容に「かなりの違和感」があります。
 「術前化学療法ありき」で話がすすんでいますが、「ご本人のご希望でしょうか?」
 それならば構いません。
 ただ、「術前化学療法の絶対的適応」は「乳房温存目的」です。
『化学療法は術前でも術後でも予後に対する効果は同等』これが大前提にあります。
⇒「乳房切除」を行うのであれば、「術前に化学療法をする意味がありません」
 つまり順番はどちらでも効果は同じなのです。
 最初から当然のように「術前化学療法を行います」というのは誤りです。
 「両側乳房切除」⇒術後化学療法も 「術前化学療法」⇒「両側乳房切除」も(治療効果としては)同等なのです。
 この内容が十分に説明された上で、『質問者ご本人が、「どうせ化学療法をするなら術前にしたい」と考える』のであれば、いいのですが、「その説明が抜けている」としたら問題があります。
 
 ★私の印象では(左もcN1とはなっていますが)「左の腋窩リンパ節もCTで目立つ程度であり センチネルリンパ節生検を行えば実は転移無しとなる可能性」もあります。
 これが、「術前化学療法」をしてしまうと(その後の手術でリンパ節に転移が認められない場合でも)「化学療法により転移が消えたのかもしれない」として「放射線照射の適応について誤りが起こる」可能性があります。
 
(乳房切除後の放射線照射の適応について)
 腋窩リンパ節転移を認める際には「胸壁及び鎖骨上リンパ節への術後照射の適応がでてくる」のですが、『術前化学療法をした場合には、(術後の病理診断ではなく)術前の画像診断で適応をきめる』のです。
 やや難解な表現となってしまったので、質問者の場合にあてはめると、
「もしも、左腋窩リンパ節転移陰性だった場合(画像診断では限界があるのです)」
⇒手術先行ならば、(術後の病理診断で転移陰性となり)「術後放射線療法は不要」となるのに対し、
 術前化学療法をしてしますと(術後の病理診断で転移陰性であったとしても)「(術前画像評価から)術後放射線療法の適応有」となります。
 ※術前化学療法は「腋窩リンパ節の評価をあいまい」としてしまう事に注意が必要です。
 

回答

「(1)拠点病院は、チーム医療を強調していますが、チーム医療とは具体的にはどのようなことでメリットがあるのでしょうか?
拠点病院の「がん相談支援室」の専門家にたずねたところ、「それぞれの専門分野の医師が連携して患者の医療にあたる。」ということでした。でも、その専門分野の先生が直接顔を合わせて患者の症状について検討するというようなことではないそうです。

⇒乳がん治療の中心となる乳腺外科医(治療方針の決定や手術を行う)が中心となり、①「腫瘍内科医」(抗がん剤の専門家として抗がん剤治療を行う)と②「放射線科医」(術後の放射線治療を行う)他にパラメディカル(薬剤師、看護師、ソーシャルワーカー)と協力して行う医療です。
 
★患者さん側として「抗がん剤治療」「手術」「術後放射線」「経済的な不安や再発の不安」などをそれぞれの専門家と向き合える。という面があります。
 ただ、「一人の患者さんを総合的に理解する」というよりも「その悩みは、○○科の○○先生に聞いて」「それは○○科の○○先生にね」というように、『全てに対し乳腺外科の主治医が全責任を持つ』という利点も失われてしまいます。
 「アメリカ的な専門家分担主義」であり、「日本的な主治医が何でも行う」という精度とは異なることに気を付ける必要があります。
 
「(2)H先生のクリニックと癌拠点病院の抗癌剤治療の進め方も異なるようです。」
 抗癌剤の順番とサイクル(1回/3週間×4サイクルか1回/1週間×12サイクル)
 同じ病気でも抗癌剤の使い方は病院により異なるのでしょうか?

⇒これはドセタキセル(DTX)とパクリタキセル(PTX)の事です。
 DTXは3週に1回4サイクルでPTXは毎週で12回で通常行います。
◎治療効果として、PTX(12回)>DTX(4回)ではありますが、「毎週通院も大変」なのでDTX(4回)の方が一般的です。
 

私の感想

 「両側乳癌であること、術前化学療法を勧められていること」で、質問者は「自分の病状を過剰評価(重症)している」ように思えます。
 私からみれば、「両側手術」して(術後は)「ホルモン療法か化学療法か」(+放射線療法の可能性)
 乳癌の病状としては、「それ程申告な状況ではありません」
 絶対に化学療法が必要だとも思いません。
 「術前化学療法が必要なのか?」きちんと主治医と向き合うことが必要です。