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嚢胞内腫瘍の検査について

[管理番号:5384]
性別:女性
年齢:47歳
47歳女性です。
出産経験はありませんが、10年ほど前、2度初期流産しています。
(ちなみに閉経が近いのかここ2か月ほど生理が来てません。
(不正出血のようなわずかな出血はあります。妊娠はしてません)
下記の経緯で乳癌検査をしてきました。
2013年以前
 30歳より、時々胸に痛みを感じるようになり、その都度乳腺科で診断してもらっていた
 初めて受診したときに石灰化を指摘されたが、その半年後問題なしと言われる
2013年7月 市の検診 精密検査不要とのコメント
2015年7月 胸の痛みで受診し、石灰化と嚢胞が見つかる。
どちらも問題なしと言われる。
2017年8月大きなしこりがあることに気づき、慌てて2年前と同じ病院で受診
しこりは右胸、乳首より脇側に3センチくらい離れた場所にあります。
2年前見つかった嚢胞が大きくなっている(2.6センチ)と言われ、細胞診を行いました。
嚢胞の中は血性で、液体を抽出してもしこりは無くならず、触った感じではまだ1~2センチくらいありそうです。
また、石灰化が2年間にしてはかなり増えていると言われています。
エコーでの見た目は、2年前はわりと綺麗な楕円形で真っ黒、ただ下のほうに少しモヤモヤした白い部分はありました。
今回は黒い部分とモヤモヤの部分が一回り大きくなっていて、大きな楕円の下に、もう一つ平べったい楕円の半分が下から横に顔を出してる感じで、
その部分が白くもやもやしています。
(モヤモヤの部分は全体の1/4くらいだと思いますが記憶があやふやです)
医師は「それほど悪い形には見えないんだけど。。血性がでてしまったから。。」とつぶやいてました。
「嚢胞内腫瘍」と診断されています。
※マンモグラフィーにはしこりは写っていないそうです(今回嚢胞があったので、乳房をいつもより潰さず撮影してます)
※乳首から分泌物はありません
細胞診の結果は下記になります。
「ClassⅡ」
検体適正 判定区分:正常或いは良性。
血性背景に泡沫細胞が散在します。
小型入管上
皮細胞によるシート状集塊を一か所にみとめられます。
異型は見られませんが、細胞が少ないので信頼性は低いです。
導管上皮細胞:少数/赤血球:2+/好中球:少数/組織球:1+
3か月経過観察をすすめられましたが、早くはっきりさせたいため摘出生検を希望しています。
石灰化が広範囲なため、摘出生検して癌だった場合は乳房全摘になるそうです。
摘出生検するときは、石灰化の部分も検査できるように石灰化も含めて取るとのことです。
そこで質問なのですが、
1. 摘出する範囲はほんの数ミリ広くとるそうです。
もっとマージンをつけなくても大丈夫でしょうか。
  医師からは1センチ以上マージンをつけると全身麻酔になってしまうので出来ないと言われています。
  
2. 摘出生検した場合、癌細胞が飛び散る可能性があると言われましたが、大丈夫でしょうか。
  このリスクを考えると、摘出生検なしで経過観察し、再度細胞診して悪性になってから全摘したほうが安全でしょうか。
(進行が怖いです。。)
  もしくは、全身麻酔でマージンをとって摘出生検するというのも検討すべきでしょうか。
  もしかして、そもそも全体に石灰化があるため飛び散りを防ぐのは無理でしょうか。
  (摘出生検した場合は飛び散りの影響を考えて2週間以内?(記憶が曖昧です)に追加手術をしなくてはいけないと言ってました)
3. 田澤先生ならこの場合、経過観察と摘出生検どちらをすすめますか。
4. 10日前の診察時、リンパに転移はないと言われてますが、昨日脇のリンパの腫れに気づき1~1.5センチくらいのしこりを感じます。
  こんな短期間でリンパ移転してしまうことはあるでしょうか。
(ちなみに遠隔転移はしてるかどうかわからないとのことです)
5. 摘出生検すると、その後センチネルリンパ生検がやりにくくなるという記事をどこかで見たのですが、本当でしょうか。
6. 細胞診後のしこり部分の痛みは3日くらいで落ち着いたのですが、今日は朝から時々ズキン、ズキンとした痛みが続いています。
  ちなみに細胞診するまで、痛みはまったく感じていませんでした。
これはまだ細胞診の後遺症でしょうか。
7. もし癌の場合、石灰化のため全摘するということは、浸潤しているということでしょうか
沢山質問してしまい申し訳ございません。
お手数ですが、何卒よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
内容は理解しました。
この場合、おそらく「石灰化」と「嚢胞内腫瘍」は同一病変として認識すべきだと思います。
同一病変だとすると…
○石灰化
 壊死型石灰化 乳管内癌が乳管内に充満して拡がっていく過程で、(癌細胞が壊死した部位に)石灰化が起こる。
 そして、その拡がっていく過程で石灰化が増えていく。(つまり石灰化の範囲は全て癌の範囲となる)
○嚢胞内腫瘍
 嚢胞とは乳管が拡張したものをいいます。
 これは乳管の中にできた腫瘍が増大し、乳管自体を塞いでしまい、液体が貯留したためこのようになります。今週のコラム『今週のコラム 51回目 嚢胞内腫瘍 これは嚢胞ではありません』をご参照ください。
つまり、これらを考え合わせると、乳管内にできた癌が一部で(乳管を閉塞することで)嚢胞内腫瘍の形態をとり、また乳管内を充満して壊死を起こして石灰化を起こしながら、乳管内を拡がっていった。と全体を捉えることができます。
「1. 摘出する範囲はほんの数ミリ広くとるそうです。もっとマージンをつけなくても大丈夫でしょうか。」
⇒嚢胞を破らない(液体を癌細胞ごと流出させない)程度でいいと思います。(診断目的なのだから)
「2. 摘出生検した場合、癌細胞が飛び散る可能性があると言われましたが、大丈夫でしょうか。」
⇒ありません。
 そのために、「破らないように」大きめに切除しなくてはならないのです。
「このリスクを考えると、摘出生検なしで経過観察し、再度細胞診して悪性になってから全摘したほうが安全でしょうか。」
⇒馬鹿げています。(言葉使いが不適切ですみません)
 この場合、経過観察などありえないことです。
 ここで確定診断しなければ、後悔します。
「そもそも全体に石灰化があるため飛び散りを防ぐのは無理でしょうか。」
⇒嚢胞を破らなければ、「飛び散り」など気にする必要はありません。
「3. 田澤先生ならこの場合、経過観察と摘出生検どちらをすすめますか。」
⇒摘出生検します。
 ★血性の嚢胞内腫瘍で「経過観察を提案」する事自体、全く馬鹿げたこと(不適切な表現となり、重ねがさね済みません)
「こんな短期間でリンパ移転してしまうことはあるでしょうか。」
⇒ありません。
「ちなみに遠隔転移はしてるかどうかわからないとのこと」
⇒遠隔転移などありえません。
 そもそも、そんなことをいうようでは、その担当医に自己矛盾があることを指摘しておきます。
 言い換えれば、「経過観察を提案しておきながら、遠隔転移があるかもしれません」では、「何、それ???」ってなりませんか??
  癌かどうかも微妙な所見だから「経過観察を提案」しているのでしょう。(もしも、癌だとしても)その程度のものが「遠隔転移しているかもしれない」では、その医師の見識に問題があると言わざるをえません。
「5. 摘出生検すると、その後センチネルリンパ生検がやりにくくなるという記事をどこかで見たのですが、本当でしょうか。」
⇒乳頭から腋窩へのルートを横断してしまえば、その可能性はでてきます。
「これはまだ細胞診の後遺症でしょうか。」
⇒そのようです。
「7. もし癌の場合、石灰化のため全摘するということは、浸潤しているということでしょうか」
⇒「乳管内を広く拡がる」ことと「浸潤」とは全く無関係です。
 狭い範囲でも浸潤しているものもあれば、広い範囲でも浸潤していない(乳管内にとどまったまま、乳管内を広く拡がる)ものもあるのです。
 (浸潤の有無とは無関係に)「拡がりが広ければ全摘が必要」となるのです。