[管理番号:6688]
性別:女性
年齢:50歳
田澤先生、はじめまして
先月乳がんの診断を受けこちらで勉強させていただいております。
多くのQ&Aを拝読しましたが気になる点があり先生のご意見をいただきたくお願い申し上げます。
~経緯~
左わき近くに1cm程のしこりに気づき直ぐに乳腺外来を受診、マンモ・エコー・触診の結果、「マンモに写らない(脇過ぎて撮影範囲に入らなかった可能性あり)エコーでの形、触診で柔らかく可動する。両性の嚢胞なので経過観察」と言われたが気になるので細胞診を依頼、結果classⅤで乳管癌と判明
直ぐに針生研・CT
~結果~
ER 陰性 1%未満
PR 陰性 1~3%
HER2 陰性 1+
Ki-67 35%
明らかな転移は確認できない、浸潤性乳管癌
そこで気になる以下の①~③についてご意見をいただきたくお願い申し上げます。
①約1cmの大きさは数年前からあったようだとのことですが毎年人間ドックと乳がん検診エコーを受けており‘15年以降は異常なし(それまでは左右嚢胞や卵管拡張などで再検査などあった)なので1年で1cmになった可能性は否定できないか。
(紹介状を書いていただく病院は手術は3カ月待ちなので他をあたるべきか)
②初診の検査で6×3㎜ほどの嚢胞が右にもあったと今になって言われたがその細胞診は本当に不要でいいのか。
(左も不要と言われたが結果Ⅴだったので。
これはもし悪いものだったとしても、トリプルネガティブで抗がん剤も受ける(はず?)ので6㎜ほどなら消滅するから未確認でよいのか、とのこと?)
と、いうのは姉が卵巣がん再発治療中で、担当医から直接私も親戚の既往からも遺伝の可能性もあり注意を、と言われ今回私の乳癌を報告したら遺伝子検査を勧められました。
それは先送りしたものの、トリプルネガティブがわかったので多少遺伝性の可能性は上がり、知人が遺伝性トリプルネガティブで乳癌治療の一年後、反対側の原発で発症し同じ治療をもう一度受けたので私もその可能性は避けたいと思いました。
③手術は本来温存+放射線も全摘も予後は変わらないと理解しておりますが、私の場合、再発しやすい可能性を考え全摘の方が安全か?
(またアレルギーがありなんでもよく痒くなり炎症を起こすので放射線の皮膚の痒みというのもひどく出る可能性もあり温存に拘りはないのです。)
以上の三点について田澤先生のご意見をいただきたくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「 ①約1cmの大きさは数年前からあったようだとのことですが毎年人間ドックと乳がん検診エコーを受けており‘15年以降は異常なし(それまでは左右嚢胞や卵管拡張などで再検査などあった)なので1年で1cmになった可能性は否定できないか。」
→よく考えてみてください。
今回も担当医は「良性の嚢胞だから…」みたいに言ってましたよね?
そういうことです。
(以前からあったけど)「嚢胞」と認識されていただけの話です。
「初診の検査で6×3㎜ほどの嚢胞が右にもあったと今になって言われたがその細胞診は本当に不要でいいのか。」
→本来、嚢胞は「正常乳管が内用液で拡張しただけ」のものです。
その医師の「嚢胞」という診断に不安(実は嚢胞ではなくて腫瘍なのでは?と)ならば、細胞診してもらいましょう。
「6㎜ほどなら消滅するから未確認でよいのか、とのこと?」
→抗がん剤で消滅みたいな考え方は止めましょう。
本当に疑わしいなら細胞診すべきです。(嚢胞という超音波での診断が信頼できるなら不要ですが)
「③手術は本来温存+放射線も全摘も予後は変わらないと理解しておりますが、私の場合、再発しやすい可能性を考え全摘の方が安全か?」
→BRCA遺伝子変異が心配なら、その選択はあります。(変異が確認されていない以上、必須ではありません)
質問者様から 【質問2 術式について】
性別:女性
年齢:50歳
手術を控えまた田澤先生のご意見をいただきたくお願い申し上げます。
手術まで時間がかからないとのことで今お世話になっている担当医の大学病院で手術をお願いすることにしました。
そこで不安があり質問です、よろしくお願いいたします。
1、 1cm程の初期ではありますが遺伝性の不安から全摘を希望なのですが、医師は温存を薦めてきます。
腫瘍の位置が外側で確かに多くの方がふつう温存を希望されるからなのかもしれませんが、全摘の方が難しいとか手間がかかるとか苦手とかあるのかしら?(又は温存の方が見た目以外に良い理由が有る?)と余計?な心配まで出てきます。
医師の配慮かもしれませんが全摘希望を主張してよいものでしょうか。
2、 腫瘍が脇の下に近く針生研の時の針を刺した位置が更に3cm近くほぼ脇の下にあります。
以前、田澤先生が腫瘍の位置が近いとリンパ転移しやすい可能性はある、とどこかでおっしゃってた気がします。
今現在ではリンパ転移は無さそうとの見解ですがもし細胞レベルリンパ近くに微小にあったらせっかく全摘しても局所再発の不安が残ります。
そこで細胞診の針の後もしっかり全摘の範囲に入れてください。
念のため申し上げるのは、失礼な、または間違った申し出になりますか?
前にタレントさんで針生研の場所に再発し検査の時についた細胞からのものだったとの話があったので心配です。
(軽く以前話したらそういうことはまず無いとおっしゃってたので範囲にいれてくれないのでは?と危惧します)
以上の2点について、先生のご意見はいかかでしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「医師の配慮かもしれませんが全摘希望を主張してよいものでしょうか。」
→勿論です。
「患者さんが望まない温存」など、ありえない話です。(治療の観点からは「全摘が安全」なのです。温存はあくまでも「患者さん側が希望した場合」に、リスクを共有したうえで成立する話です)
★医師側の都合で「無理やり温存」なぞ、言語道断です。
「そこで細胞診の針の後もしっかり全摘の範囲に入れてください。念のため申し上げるのは、失礼な、または間違った申し出になりますか?」
→正しい要求です。
質問者様から 【質問3 化学療法を希望するべきか】
性別:女性
年齢:50歳
病名:浸潤性乳管癌
症状:
田澤先生
前回の先生のお言葉のおかげで希望の通りの手術を受けることができました、ありがとうございます。
(最初の質問の健側の嚢胞については「必要ない!」とキッパリ言われそのままですが…。)入院中もこちらのQ&Aで勉強させていただいておりました。
退院し、今後の治療のことで悩み、またよろしくお願いいたします。
本来なら病理結果とともに伺いたいのですが、その結果を聞きに行くときに申し出なければならなくなることなので、先におうかがいしたいのです。
腫瘍は手術前のエコーでは10×9×5ミリ
MRIか何かほかの検査では12ミリほどとあったので術後は化学療法だな、と髪を切って準備しておりましたが、担当医から術前にリンパに転移がなければ化学療法はしない方針と言われました。
そしてセンチネルリンパ生検の術中迅速診断結果はマイナスでした。
まだ病理結果は聞いておりませんが浸潤径が5ミリ以下ということはないだろうと私は思っております。
でもそれは関係なく腫瘍そのものが2センチ以下ならやらないそうです。
強く希望すれば受けられると思いますが専門医がそうおっしゃるならそれで良いのか?と悩み始めました。
というのも田澤先生のお言葉で局部再発(遠隔転移?)はステージ1でほとんどの人が起こらない
一部の人は化学療法なのすることで免れる
一部の人はどちらにしても再発するとのことでこの免れる一部の可能性のために化学療法を受ける、とありました。
一方でトリプルネガティブの方へのご説明でやはり初期であることの重要性に加え、BRCAの方、予後の良い方、化学療法の良く効く方、との分け方があり、では上記の区別に当てはめるとBRCAは抗がん剤が効きにくいのかな?と思い、私は親族に卵巣癌、乳癌、すい臓癌が多いので、まだ検査は行けておりませんが全く効かない可能性が高く、なら初期で手術できて良かった、治療終了で良いのか…とも考え始めました。
そこで多くの症例をご存じで治療経験の豊富な田澤先生のご意見をお願いいたします。
① センチネルリンパ生検はQ&Aでは0/2や0/3などのように2~3個とって調べるケースが多いですが私は1つですが染色されなかったとかで1つで大丈夫なのでしょうか。
② 年齢・重篤な持病ではなく(BRCAとかリンパ管・脈管侵襲がないからとか?)何かの理由で浸潤径1cm強でも抗がん剤を薦めなかったご経験は田澤先生にもありますか?
③ リンパ管・脈管侵襲がなければ遠隔転移の可能性は無い、または低い、のでしょうか。
(化学療法を不要にする材料になりうるのか。)
④ 術前の結果ですがki67の35%はトリプルネガティブとしては低めに思うのですがこれは化学療法が効きにくいのでしょうか、単純に低めで良かった…と思うべきですか。
(この数値も化学療法不要のになりうるのか)。
⑤ 今の情報だけで化学療法を受けた場合と受けない場合の予後はAdjuvant~でわかりますか?(腫瘍1cm、T1N0M0、ki67:35% トリプルネガティブ)
お忙しいところ恐縮ですが、また担当医の方針に疑問があり自分の考えの決断のため、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「担当医から術前にリンパに転移がなければ化学療法はしない方針」
「腫瘍そのものが2センチ以下ならやらないそうです。」
→?
治療方針はサブタイプで決まるのです。
「リンパ節転移の有無は全く無関係」
「私は1つですが染色されなかったとかで1つで大丈夫なのでしょうか。」
→勿論!本来は1個です。
「何かの理由で浸潤径1cm強でも抗がん剤を薦めなかったご経験は田澤先生にもありますか?」
→ありません。
治療は「サブタイプで決まる」のです。
トリプルネガティブで抗がん剤を使わないのは「浸潤径5mm以下だけ」です。
(ただし腺様嚢胞癌や管状癌、極めて大人しいアポクリン癌などを除く)
「③ リンパ管・脈管侵襲がなければ遠隔転移の可能性は無い、または低い、のでしょうか。」
→全く無関係
逆(リンパ管や脈管侵襲があると転移しやすい)も誤りです。
「(化学療法を不要にする材料になりうるのか。」
→なりません。
「ki67の35%はトリプルネガティブとしては低めに思うのですがこれは化学療法が効きにくいのでしょうか、単純に低めで良かった…と思うべきですか。(この数値も化学療法不要のになりうるのか)。」
→なりません。
「⑤ 今の情報だけで化学療法を受けた場合と受けない場合の予後はAdjuvant~でわかりますか?(腫瘍1cm、T1N0M0、ki67:35% トリプルネガティブ)」
→メンテナンス中なので不明です。
質問者様から 【質問4 受けるべき化学療法とオラパリブについて】
性別:女性
年齢:50歳
病名:乳頭腺管癌
症状:
田澤先生、お世話になっております。
前回腫瘍2cm以下、リンパ転移なければ治療終了と言われご相談いたしました。
お手数ですがまたお願いいたします。
術後、病理診断
腫瘍径 9×7×13㎜
ER(-)、PgR(-)、HER2(-)、Ki67(60%)
核異型スコア3、核分裂スコア3、核グレード3、ly0、v0
担当医はステージ1、転移・脈管侵襲無なのでトリプルネガティブであるが副作用の割に効果が期待できないので化学療法はせず治療終了と言われ、転院して受ける予定です。
そこで以下お教えいただきたくお願いいたします。
① 抗がん剤はアンスラサイクリン+タキサンでしょうか?(よくAC療法やTC療法というのも聞きますが)
② コラムで先生がいずれはBRCA→オラパリブが初期再発予防治療になるのでは?とおっしゃってましたが、これは現在保険適用せず実費なら乳癌初期治療で使えるものでしょうか?
というのも、姉が卵巣癌の再発治療中で使用条件に合いリムパーザを使っており効果が出ております。
また、従妹が乳癌、叔父が二人膵癌で私もリムパーザの効果の方が期待できそうと思ってしまいます。
しかも姉は今までのどの抗がん剤より副作用が弱く、また経口で手軽なので高価ではありますが試せるものなら…と思います。
また、2002年に義母が進行乳癌で手術後ハーセプチンを使い、取り切れなかったリンパのがんも消え以後16年間再発しておりません。
今思えばその頃初期治療では使えなかったはずなので病院によっては認定前に使えるものかと考えます。
③ ②がダメならやはり他をすすめられてもアンスラ+タキサンを希望すべきか。
(もしも再発、遠隔転移あった場合リムパーザを使えるように。)遺伝子検査はその時やるか、もしかしたらいずれ卵巣がん
のように使用条件ではなくなるかも、と。
④ オラバリブの使用は卵巣癌では再発の延命のように書かれて
いることが多いのですがこれはまだエビデンスがないだけで卵巣癌・乳癌ともに寛解または根治の可能性もありそうでしょうか?
⑤ 私の病理結果での化学療法を受けた場合、受けなかった場合の予後はいかがでしょうか?
以上、お忙しいところ恐縮ですが田澤先生にご教授いただきたくお願い申し上げます。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
まず、「治療には適応症があり、それを無視した治療などあってはいけない」のです。
リムパーザ自体、「転移再発乳癌にしか適応がない」のです。
それでBRCA遺伝子検査(BRACAnalysis)は「転移または再発乳癌」にしか適応がありません。
★術後補助療法として使用するチャンスは「OlympiA」という治験に参加するしかないのです。(治験の場合にはプラセボ側になる可能性もあるのですが)
「担当医はステージ1、転移・脈管侵襲無なのでトリプルネガティブであるが副作用の割に効果が期待できないので化学療法はせず治療終了」
→あまりにも、「ユニークな発想」ですが、考えてみれば「サブタイプの前の時代」には「リンパ節転移無し→抗がん剤しない。 リンパ節転移有→抗がん剤」というような時代がありました。(遠い昔です)
「① 抗がん剤はアンスラサイクリン+タキサンでしょうか?(よくAC療法やTC療法というのも聞きますが)」
→その通り(ACはアンスラサイクリンです)
「② コラムで先生がいずれはBRCA→オラパリブが初期再発予防治療になるのでは?とおっしゃってましたが、これは現在保険適用せず実費なら乳癌初期治療で使えるものでしょうか?」
→ありえません。
適応外診療など言語道断です。
「オラバリブの使用は卵巣癌では再発の延命のように書かれていることが多いのですがこれはまだエビデンスがないだけで卵巣癌・乳癌ともに寛解または根治の可能性もありそうでしょうか?」
→無意味です。
条件は全ての薬剤で同じであり、単純に「術後補助療法で使用できるのかどうか?」という「使用する位置」だけの違いです。
★OlympiAで有意差がでれば、「術後補助療法で使用できる」ように(おそらく)なります。
そうなれば、ご本人のいう「根治のため」という位置づけとなります。
「⑤ 私の病理結果での化学療法を受けた場合、受けなかった場合の予後はいかがでしょうか?」
→前回、回答しましたが…
(以下、コピペ)
「⑤ 今の情報だけで化学療法を受けた場合と受けない場合の予後はAdjuvant~でわかりますか?(腫瘍1cm、T1N0M0、ki67:35% トリプルネガティブ)」
→メンテナンス中なので不明です。
質問者様から 【質問5 トリプルネガティブでの化学療法がTCでよいのか】
性別:女性
年齢:50歳
病名:乳頭腺管癌
症状:
田澤先生
お世話になっております。
前回腫瘍2cm以下、リンパ転移なければ治療終了と言われ、転院して化学療法を受ける予定とご相談いたしました、お手数ですがまたお願いいたします。
術後、病理診断
腫瘍径 9×7×13㎜ 乳頭腺管がん
ER(-)、PgR(-)、HER2(-)、Ki67(60%)
核異型スコア3、核分裂スコア3、核グレード3、ly0、v0
今度の医師は化学療法は必要です。
と言ってくださり安心しました。
ただ、私のデータをみてTC療法で良いでしょう、とのことです。
私は田澤先生に事前に質問しアンスラ+タキサンと思っていたのですが、TCがよくわからずそのまま帰宅し家で調べたら非アンスラで4クール三か月の通常はルミナールAの方が通常受けることが多く、トリプルネガティブでは浸潤径が1センチ以下やグレードが2のかたが受けているようなのですが、私のデータではやはりアンスラ+タキサンでお願いした方がよいでしょうか?
明らかな差がない、現段階では分からないということでしたら今後お世話になるこの医師の決定に従おうと思いますが、効果があまり見込まれないなら変更を申し出ようと思っております。
①1.3㌢の浸潤径のトリネガでもTC療法は有効か。
(単体ならEC>TCは理解済です。
AC+タキサンまたはEC+タキサンにすべきか、です)
②トリネガで乳頭腺管癌の診断はご経験上ありますか。
(通常、充実腺癌が多いようですが、大人しいと言われている乳頭腺管癌のトリネガをみたことがないので)
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
「①1.3センチの浸潤径のトリネガでもTC療法は有効か。」
→それは不明です。(直接比較がありません)
(ルミナールBとは異なり)「抗がん剤が唯一の治療」であるトリプルネガティブでは「アンスラタキサンがゴールドスタンダード」と理解してください。
「②トリネガで乳頭腺管癌の診断はご経験上ありますか。」
→当然。
皆さんが考えるように、「組織型をサブタイプや悪性度と結びつける」こと自体、ナンセンスなのです。