[管理番号:1169]
性別:女性
年齢:31歳
はじめまして、田澤先生にすがる思いでメールしました。
5年前位に左胸にしこりがあり、近くの総合病院で診察したところ2㎝程の線維腺腫と
判断されました。その時は、細胞の検査とレントゲンでした。年に一回経過観察に来
てくださいと言われてたのですが、私も悪いのですが忘れたまま一度も行かず現在に
至ります。
現在妊娠32週であり、母乳育児を希望しており昔あったしこりを思い出し、近くの乳
腺専門の病院へ急遽行ったところ2.3㎝で形がいびつがあり、しこりの中に血管(?血
液)があるため葉状腫瘍の疑いがあります、と言われました。妊娠中なので形が変形
しているかもしれないし、以前と比較ができないため出産後早くて半年~1年後にも
う一度来てくださいと言われました。
妊婦中のため、超音波検査(エコー)のみでしたがもし悪性の葉状腫瘍の場合、すぐ手
術で摘出が必要と言われたにも関わらず、健診を1年後でも大丈夫か不安になりまし
た。妊娠中や授乳中は乳腺が多く分かりにくいため、すぐに検査しても判断できない
と言われました。
また、健診を受ける間母乳に影響についてもよく分からずメールをさせていただきま
した。もし、良性と判断されても必ず摘出が必要なのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
妊娠32週ですね。
あと2カ月で出産ということを考えれば、ここで「慌てて、針生検をする」必要は感
じません。
「形がいびつ」「シコリの中に血流」となると「葉状腫瘍の可能性」はあります。
⇒ただし、「現時点で2.3センチであれば」(5年前に2cm程度だったという事も考え
合わせれば)「悪性葉状腫瘍を考える」のは飛躍しすぎです。
回答
「悪性の葉状腫瘍の場合、すぐ手術で摘出が必要」
⇒葉状腫瘍の場合「2.3cmで悪性を疑う」必要はありません。
5cm以上(10cmとか20cmで)皮膚所見を伴うものであれば「いきなり悪性の可能性
も考慮」しますが、「2.3cmで悪性葉状腫瘍を疑う」ことはないです。
だから「敢えて妊娠後期」に摘出を考慮する必要はありません。
「妊娠中や授乳中は乳腺が多く分かりにくいため、すぐに検査しても判断できないと
言われました」
⇒これは誤りです。
「授乳中でも、本当にしこりがあれば」解ります。
「形がいびつで、血流のある」しこりであれば、(出産後、1~2週で落ち着いた
ら)針生検で「組織診断すべき」です。
『授乳中は検査ができないなど、とんでもない誤り』です。
そんなことを言っていたら「1年以上の空白」ができてしまいます。
★妊娠期から「気づいていたしこり」を「授乳中は検査ができない」と言われて「結
果として1年以上放置することで進行してしまった」方が居る事を知って、乳腺外科
医として本当に憤りました。
「授乳中は(比較的)診察しにくい」ことを理由に、「授乳が終わってから来て」
などという乳腺外科医は最低です。
「健診を受ける間母乳に影響」
⇒母乳は全く気にする必要はありません。
通常通り「授乳」してください。
「良性と判断されても必ず摘出が必要なのでしょうか」
⇒葉状腫瘍の場合は(私は)摘出を勧めます。
何故なら「葉状腫瘍は大きくなるうちに」良性⇒境界悪性⇒悪性 へのアップグ
レードすることが知られているからです。
葉状腫瘍と解ったら「小さいうちに、よりグレードの低いうちに摘出すべき」と考
えています。
♯但しそれは、「一刻を争う」ことではありません。
妊娠出産してからで「十分OK」です。