[管理番号:7426]
性別:女性
年齢:33歳
病名:
症状:胸の硬結、赤み、乳房痛
田澤先生こんにちは。
肉芽腫性乳腺炎の情報が少ない中、先生のQAを有り難く拝見しております。
現在1歳半の子供がおり、あまり出なかった為生後4ヶ月で断乳しております。
前回の生理が始まる前くらいから急に右胸の外側の乳腺が硬くなり、1週間も経たないうちに外側約半分がカチコチになり、生理前になるような圧痛や自発痛も同時に出ていました。
こんなに急激に症状が出るのはがんではないだろうと初めは気にしていなかったのですが、生理が終わってからも一向に良くならず、約1ヶ月後にいつも診てもらっている乳腺クリニックを受診し触診、マンモ、エコーをしたところ、乳腺自体が硬くなっている感じだと言われ、強く炎症しており、ガタガタした部分がある、またリンパも腫れているということで、すぐバネ式の針生検2箇所をとりました。
1週間後結果を聞きに行くと、生検結果の紙に炎症があり肉芽腫ができているといったような事が書かれてあり、肉芽腫性乳腺炎とのことでした。
今後経過観察が必要であり、膿が出るかもしれない。
3ヶ月後にエコーをして、場合によってはまた生検するかもと言われました。
針生検もあくまで部分的にしか取れないので、癌の可能性も0ではないと言われ、とても不安です。
硬い部分の大きさは変化しているのかよく分からないのですが、その部分を中心に赤みが増しており、範囲も広がっている気がします。
特にお風呂に入ったあとや暑いときに赤みが強く出ています。
痛みに関しては圧痛があり、ピリピリした痛み、時折寝ていても起きてしまう程の鋭い痛みが刺すことがあります。
また部分的に特に赤みが強い箇所があり、服が擦れると痒い感じがします。
元々胸が大きくなく、断乳後は柔らかくなっていたため、毎日の様に何も異常がないことを触って確認していたつもりでした。
急にこのような事になってしまい、そろそろ2人目も考えていましたので落ち込んでいます。
乳腺クリニックの先生も、とても信頼している方なのですが、前回受診時にあまり質問できずそれから毎日胸を見ては不安になっています。
1.生検でとり損ねたがんの可能性はどれくらいあるのでしょうか。
2.肉芽腫性乳腺炎で赤みの範囲が広がることはありますか?硬い部分の境界がよく分からないので、硬くないところまで赤くなっているのではと不安になります。
炎症がある場合炎症性乳がんではないと、先生のQAを見て安心しておりましたが、赤みが増している為心配になっています。
3.この不安な状態で3ヶ月間過ごすのが苦痛です。
何かあればすぐに来てくださいと言われているのですが、赤みが強くなったり痛みが強くなっている場合は受診すべきでしょうか。
3ヶ月という期間にはどのような意味があるのでしょうか。
もう少し短いスパンで受診したいと伝えても構わないものでしょうか。
次回生検となった場合は、違う方法となるのでしょうか。
また早く確実な病名を確定することは出来ないのでしょうか。
4.肉芽腫性乳腺炎の場合、やはり完治前に妊娠するのは私自身も不安があります。
今のところ無治療なのですが、ステロイド治療をした方が良いとお考えでしょうか。
お忙しいところたくさん質問してしまい、申し訳ありません。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
肉芽腫性乳腺炎の治療の本質はvolume reductionです。
そのアプローチとして
1.手術(肉芽を摘出する)
2.MMTEで削る(肉芽を可能な限り削る)
3.ステロイド内服(薬剤により肉芽の炎症を抑え、それにより肉芽の縮小を図る)
1は最後の手段(2,3でどうしても上手くいかない場合)であり、2を行ったうえで3を行うといいでしょう。
「針生検もあくまで部分的にしか取れないので、癌の可能性も0ではない」
→こんなことを言うようでは…
そもそも肉芽腫性乳腺炎の治療(volume reduction)を兼ねてMMTEで可能な限り削るようにすれば、
①ほぼ全域から組織を採取するので、「一部だから…」みたいな言い訳をしなくて済みます。
②肉芽を可能な限り削ることで、(当然ながら)治療を兼ねます。
「一粒で二度美味しい」のに、何故MMTEしないのか?(永遠の謎です)
「赤みが増しており、範囲も広がっている気がします。」
→無治療なのだから…
それは当然です。
「1.生検でとり損ねたがんの可能性はどれくらいあるのでしょうか。」
→そんな(必要のない)不安を感じるくらいなら…
きちんと(治療を兼ねて)MMTEで後半に削ってもらいましょう。(そうすれば、そんな可能性はゼロとなります)
「2.肉芽腫性乳腺炎で赤みの範囲が広がることはありますか?」
→?
この質問自体の意味が不明ですが…(冷静に良く考えてみましょう)
肉芽腫性乳腺炎は治療しなければ、悪化するのは当然ではないですか?
「赤みが増している為心配」
→?
肉芽腫性乳腺炎が(無治療により)悪化していると考える方が自然です。
★ただ、乳癌でないことを確認したいならMMTEすればいいだけの話ですが…
「何かあればすぐに来てくださいと言われている」
→そもそも…
「何かあれば」ではなく、肉芽腫性乳腺炎の治療をする気はないのだろうか??
「赤みが強くなったり痛みが強くなっている場合は受診すべきでしょうか。」
→治療を希望する場合には受診すべきです。
「もう少し短いスパンで受診したいと伝えても構わないものでしょうか。」
→何のための受診?
治療をするのか?しないのか?(経過観察に意味などありません)
「早く確実な病名を確定することは出来ないのでしょうか。」
→MMTEで広範囲に削れば済むことです。(上記とおり)
「今のところ無治療なのですが、ステロイド治療をした方が良いとお考えでしょうか。」
→治療するのなら、そうなります。
★最後に…
肉芽腫性乳腺炎は、あくまでも「良性疾患」なので(主治医のように)無治療でも「いつかは」治るでしょう。
ただし、無治療の場合「何度も再燃」したり、「症状が改善するまでかなりの長期間」となったり、相当不自由で不愉快な状況が続くことを覚悟しなくてはなりません。
癌と違って進行性ではないので、(患者さん側の希望であれば)無治療の選択もありですが、決してお勧めしません。
質問者様から 【質問2 】
肉芽腫性乳腺炎について
性別:女性
年齢:33歳
病名:
症状:
田澤先生、ご返信頂きありがとうございます。
あれから主治医に積極的に治療をしたいと申し出たのですが、基本的に無治療経過観察、ステロイドは副作用がある上、効くか分からないし辞めるのも大変。
ただ心配な気持ちは分かるから、希望があれば大きな病院を紹介するので診てもらうといいと言われ、紹介してもらう事にしました。
その日はエコーだけしてもらい、痛みが増しているのは膿が溜まってきているからだと言われました。
それからも右胸は悪化し続けており、硬結部分は胸の3/4くらいに拡がり、胸の下や脇の下まで腫れています。
硬結部分の上は尋常ではない位に赤や赤紫になり(同じく胸の3/4くらい)、膿はまだ出てきてはいませんが1箇所膿がでそうな膨らみがあり、さらには赤み部分の多くの皮膚が破れて編み目のようになっている状態です。
痛みも生活できない位になっており、市販の痛み止めを飲んでどうにか生活しています。
無治療だと悪化するのは当然とおっしゃられていますが、先生の患者さんの中にもこのように広範囲に拡がり、悪化している方はいらっしゃるのでしょうか?
赤みも痛みも強く、悲惨な状態の胸を見る度に本当に肉芽腫性乳腺炎なのかと、不安に駆られています。
また痛み止めは飲み続けると耐性ができると言われていますが、使わざるを得ない状況です。
先生は痛みが強い患者さんに処方されることはありますでしょうか?
ステロイド治療をすると長くてどれくらいで痛みや拡がりが治まるでしょうか?
今とても不安が強く、沢山の患者さんを診られている田澤先生にご回答頂き、来週受診時にそれをもとに主治医と話しができればと思っております。
お忙しいところ申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
肉芽腫性乳腺炎は…
決して珍しい疾患ではありません。
当院では常に(治療をした患者さんが)卒業しては、(新たな)患者さんが入学するという状況です。
前回お話ししたように・
きちんとした治療(MMTEで削り、ステロイドを継続する)を行う限り、「手に負えなかった」例は皆無です。
★最初の状況が「かなり酷く」これは大変だ!と思うような症例でもだいたい3か月あると、かなり落ち着いたフェーズに入ります。(治療自体は漸減しながら1年半程度となります)
「先生の患者さんの中にもこのように広範囲に拡がり、悪化している方はいらっしゃるのでしょうか?」
→治療しているので…
皆無です。(3か月あれば、最初は酷くても、落ち着いたフェーズに入ります)
「赤みも痛みも強く、悲惨な状態の胸を見る度に本当に肉芽腫性乳腺炎なのかと、不安」
→MMTEで広範に採取することです。(確定診断+治療目的)
「先生は痛みが強い患者さんに処方されることはありますでしょうか?」
→落ち着くまでは内服する人も多いです。
「ステロイド治療をすると長くてどれくらいで痛みや拡がりが治まるでしょうか?」
→3か月あれば、まず落ち着きます。