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粘液癌の治療法について

[管理番号:3079]
性別:女性
年齢:39歳
田澤先生
はじめまして
よろしくお願い致します。
針生検の結果、
右胸に7ミリ
浸潤、粘液癌、CTによるリンパ、臓器転移はなし
HER-2:1+、Mib-1 index8%、f+、ly-、v-
ER90%陽性、PR90%陽性
ルミナールA、1期
MRI後、切除手術の後
ホルモン療法との説明を受けました。
再発が心配なので、全摘希望ですが、
いまだ知識に乏しく、
先生でしたら、手術、治療法をどう判断されますか。
ご意見をお伺いしたいです。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
cT1b(7mm), cN0, cStage1, luminalA(Ki67が一桁というのは、大人しい粘液癌らしい値です)
「MRI後、切除手術の後ホルモン療法との説明」「再発が心配なので、全摘希望」
「先生でしたら、手術、治療法をどう判断?」
⇒「7mmという腫瘍径」からすれば、「十分温存可能」とは思いますが…
 ただ「乳房切除」というのは「安全性(局所再発のリスクを極限までゼロに近付けます)」の面では「とてもいい選択」と言えます。
 ○術後治療は「担当医と同じ:ホルモン療法単独」となります。抗ガン剤は全く不要です。
 もしも乳房温存であれば、術後照射が加わります。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
再質問となります。
どうぞよろしくお願い致します。
私の針生検の結果は、以下の通りです。
右胸7ミリ
HER-2:1+、Mib-1 index8%、f+、ly-、v-
ER90%陽性、PR90%陽性
浸潤、粘液癌、
CTによるリンパ、臓器転移なし、
ルミナールA、1期
MRI後、切除手術→ホルモン療法
本日午後、MRIの予約を入れてます。
当初、担当医からは、
マーモとエコー検査の画像を見ると、悪いモノではなさそうで、乳腺線維腫だろうとの説明でした。
まずは様子を見て、また3カ月後検診とのことでした。
触診はありませんでした。
どうしても気になるなら、針生検やりますか?と言われましたので、翌週に針生検の予約を入れてもらいました。
結果、ガンでした。
告知後、すぐCTを受けました。
粘液癌だったので、気づきにくかったのでしょうか?こうした経緯があり、このまま担当医の手術を受けていいものか、不安が拭えません。
こちらのQ&Aで、センチネルリンパ節生検の精度の問題でリンパ浮腫になる可能性が高いなどの記事を拝見すると、このまま担当医にお願いしていいのか、ますます迷ってしまいます。
担当医は、現在かかっている総合病院の乳腺科に15年以上勤務されていて、経験はあるそうです。
田澤先生、質問がたくさんになってしまいました。
お忙しい中、申し訳ございません、よろしくお願い致します。
①針生検では、3本(長さ10ミリ)のうち2本から「粘液癌(5ミリ付着)、微小石灰化あり」と判明したのですが、2/3からであれば、信ぴょう性は高い、確定ということでしょうか。
粘液癌は術後の病理検査で、ki67の値などがよく変わると聞き、実際はもっと悪化してるのかが心配です。
②MRIで、反対側の左胸にもガンが見つかった場合、それは転移ということなのでしょうか。
③針生検の結果からは、おとなしい粘液癌との評価ですが、昨年12月のマーモ、エコーで腫瘍径が4.6ミリ、今年4月に7ミリと、短期間で大きくなっている気がするのですが、これは、計測の誤差の範囲とみてよいのでしょうか。
④センチネルリンパ節生検の際、医師の精度によって、どのくらいリンパ浮腫になるものなのか、それほどこの生検は、医師の精度差で、リンパに支障が生じるものなのでしょうか。
右胸の腫瘍が、いわゆる10時の方向にあるので、リンパ節への転移が心配です。
もし転移があれば、リンパ節への処置後、のちのち浮腫になっ
てしまうのか、不安で仕方ありません。
かかりつけのクリニックの婦人科の先生は、難しい手術ではないから早く受けた方がいいと言ってくれているのですが。
⑤術中、出血を伴う場合のドレーンの使用は、私のケースで必要なのか。
それも手術する医師の技術差によって、決まるものなのでしょうか。
⑥前回、先生から温存も可能だが、局所再発リスクを限りなくゼロに近づける全摘は、いい選択と回答いただきましたが、乳頭を残したい希望がある場合はどうなりますか?
⑦MRIの結果、予定通りの切除手術、ホルモン療法で行きますとなった場合、もし田澤先生への転院をお願いして、手術を待つ間に、リンパ節への転移など癌が進行するおそれがあるのでしょうか。
私からの一方通行な情報だけで判断をお願いするのは心苦しいのですが、とても不安です。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「右胸7ミリ HER-2:1+、Mib-1 index8%、f+、ly-、v- ER90%陽性、PR90%陽性 浸潤、粘液癌」
⇒完璧な早期癌であり、「典型的な大人しいタイプの粘液癌」です。 Ki67も一桁であり、まず間違いなくルミナールAです。
 
「マーモとエコー検査の画像を見ると、悪いモノではなさそうで、乳腺線維腫だろう」「3カ月後検診」「どうしても気になるなら、針生検やりますか?と言われましたので、翌週に針生検の予約」
⇒これはご本人のファインプレーですね。
 もしも3カ月後のフォローを選択した場合、この手の大人しい粘液癌だと3カ月後には、(おそらく)「変化なし、それでは1年後」みたいに、なっていた可能性も高そうです。
 あぶないところでした。
 
「粘液癌だったので、気づきにくかったのでしょうか?」
⇒たしかに粘液癌は「不整形でもなく」線維腺腫と画像上間違われ易いものです。
 
「①針生検では、3本(長さ10ミリ)のうち2本から「粘液癌(5ミリ付着)、微小石灰化あり」と判明したのですが、2/3からであれば、信ぴょう性は高い、確定ということでしょうか」
⇒癌が出ている以上間違いありません。
 組織診での偽陽性は「ほぼ無い」と考えてください。
 
「粘液癌は術後の病理検査で、ki67の値などがよく変わると聞き」
⇒これは誤りです。
 典型的な粘液癌のようです。 術後も「低い」と思います。
 
「実際はもっと悪化してるのかが心配です。」
⇒考え過ぎです。
 
「②MRIで、反対側の左胸にもガンが見つかった場合、それは転移ということなのでしょうか。」
⇒100%違います。
 乳腺は決して「対側に転移」しません。
 ○乳腺の右と左は「天と地ほどに」離れているのです。
 
「計測の誤差の範囲とみてよいのでしょうか。」
⇒これはその通りです。
 
「④センチネルリンパ節生検の際、医師の精度によって、どのくらいリンパ浮腫になるものなのか、それほどこの生検は、医師の精度差で、リンパに支障が生じるものなのでしょうか。」
⇒そもそも「センチネルリンパ節生検」では「リンパ浮腫」は起こりません。
 ただ全くの初心者では「センチネルリンパ節生検」とは名ばかりの「リンパ管の破壊」が起こりえます。(私自身はセンチネルリンパ節生検でリンパ浮腫になった人は見た事がありません)
 
 ○腋窩は「きちんとした精度」がないと危険な場所であることは間違いありません。
 大学病院や大病院では「全くの初心者」にやらせる可能性があるので、そこだけは注意が必要です。
 
「もし転移があれば、リンパ節への処置後、のちのち浮腫になってしまうのか、不安で仕方ありません。」
⇒上記で「センチネルリンパ節生検なら大丈夫」とコメントしましたが…
 腋窩郭清となると話は違います。
 ここは「技術の差がでる」最たる手技です。
 
「⑤術中、出血を伴う場合のドレーンの使用は、私のケースで必要なのか。」
⇒私にとってはドレーンは全く不要ですが(私は、この3年間 何百症例も手術しましたが、1例も入れていません)
 施設によっては「ドレーンを入れる」ことになるでしょう。
 丁度今日、東京○○歯科大学から来て、私の手術の助手に入った医師が「うちの大学病院では全例ドレーンを入れている」と話していました。
 
「それも手術する医師の技術差によって、決まるものなのでしょうか。」
⇒そういうことです。
 「ドレーンを入れるのが当たり前」という認識の医師が大多数ではあります。
 
「⑥前回、先生から温存も可能だが、局所再発リスクを限りなくゼロに近づける全摘は、いい選択と回答いただきましたが、乳頭を残したい希望がある場合はどうなりますか?」
⇒「乳頭温存乳房全摘」ですか?
 これは「腫瘍と乳頭の距離が十分にある」早期癌であることが大前提となります。
 その条件を満たしたうえで、「乳頭部には乳管が集まっており」乳頭を残す事は「リスクを残すこと」である認識が必要です。(通常の乳腺部分切除では、術後放射線照射が前提です)
 
「⑦MRIの結果、予定通りの切除手術、ホルモン療法で行きますとなった場合、もし田澤先生への転院をお願いして、手術を待つ間に、リンパ節への転移など癌が進行するおそれがあるのでしょうか。」
⇒「期間が長すぎない」限り大丈夫だと思います。
 当院の待ち時間は「そこまで」長くはないです。