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術後の胸の塊

[管理番号:641]
性別:女性
年齢:73才
73才母のことで相談させて頂きます。
5月半ばに胸の違和感を訴え、急遽検査、6月5日右胸温存手術しました。CT では2cm 程の腫瘍で転移は見られなかったのですが、手術でリンパ節転移が1個あり15個リンパ節郭清しました。
術前では転移が認められなかったので、手術後は放射線、ホルモン療法という話でしたが、術後の病理結果、まず抗がん剤治療となり、母のショックが大きいです。
ステージ2a、ルミナルタイプA 、Ki 67 5パーセント、ということですが、リンパ節転移が小さくても15個のうち1個ありましたので、抗がん剤治療が必要なことも納得していますが、術後、胸の奥に塊があり下を向くと重い感覚があります。
夕方は浮腫むそうです
リンパ液が少なかったので4日で退院しましたが、2日後、パンパンに倍以上に腫れたらしく翌日にリンパ液を抜いてもらいました。腫れたわりにはリンパ液の量は少なかったようです。郭清した腕はヒリヒリ感位での浮腫みはないようです。
主治医は、硬いところがあるが、だんだん柔らかくなると言っています。血液検査も糖尿病なので糖が高いだけで他は問題無いとのことです。
7月7日に抗がん剤治療を始めることにしたのですが、母が、夜になって胸の硬いところが治ってから抗がん剤治療したい、といい始めました。
私は、主治医の話に納得していますが、癌と診断され、無いと言われていたのにリンパ節転移があったこと、抗がん剤治療をしなければならないこと、気丈な母もすっかり自信をなくしています。
せめて他の病院で大丈夫と言ってもらえたら少しは前向きになれるかもしれませんが、時間もなく、どこに行けばどうすれば良いのか分からずご相談させて頂きました。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 このメールを読んで、まず私が感じたのは「化学療法の適応は無いのでは?」ということです。
 理由は2つあります。
①ルミナールA(しかもKi67=5%)では化学療法による上乗せ効果はかなり低いでしょう。おそらく核グレードも1ではないかと思います。
②73歳という年齢 70歳以上では術後補助療法としての化学療法の有効性は証明されていません(勿論、やってはいけない訳ではありませんが…)
 リンパ節転移1個という理由で以上の2つの理由を超えるような「化学療法を勧める根拠」にはならないと思います。
 もう一度本当に必要なのか、担当医と話し合うべきだと思います。

回答

「癌と診断され、無いと言われていたのにリンパ節転移があったこと、抗がん剤治療をしなければならないこと、気丈な母もすっかり自信をなくしています」
⇒心配はありません。
 リンパ節転移1個は大した意味はありません。
 リンパ節郭清しているので、それで問題ありません
 術後はホルモン療法単独で、全く心配ありません。
 
○患者さんにショックをあたえてまで「化学療法を勧める根拠」が極めて薄弱です。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、早速ご回答下さりありがとうございます。
昨日、母が抗がん剤治療始めてみないと分からないよね。それで負けたら駄目だよね。と言ってきて、今日から始めることにしたようです。
担当医の話では、ステージ2A ルミナルタイプA、Ki 67=5% だけれど、リンパ節転移があったので、全身に見えない癌細胞が流れているかもしれないから小さいうちに抗がん剤で叩いてしまおう、ということでした。
核グレードいうのは、聞いたのか覚えがなく、右胸手術した腫瘍の大きさは2cm 、脚を入れると2.5cm だけれど、脚の長さはいれないからT 1と言われました。リンパ節転移が3個のうち1個ありさらに12個郭清したが1個だけなのでN1でステージ2A というかことでした。
もう一度、担当医に抗がん剤効果がどれ程期待できるか聞いて見たいと思います。予定では、AC療法のあとタキサン療法、放射線、ホルモン剤 ということです。
他の術後治療の方法を聞かなかったので分からないのですが、ホルモン剤だけにした場合、万が一再発した時に抗がん剤を使う、という考え方で良いでしょうか?術後治療でAC 療法等をして万が一再発した時には使える抗がん剤はあるのでしょうか。
糖尿病で通院している病院で、安心だからと母が即決したので他院には相談していません。今思えば、母は頭の中が真っ白になり考えることができなかったのでしょう。私には大事な母です。私が支えてあげたいのに、母にどう向き合ってあげれば良いのか分からず、セカンドオピニオンも探してあげられず手術をしてしまいました。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 「ルミナールA」73歳、「リンパ節転移1個」で化学療法(しかもアンスラ⇒タキサン)ですか?
 私の常識からは、かけ離れています。
 70歳以上という事を考え合わせなくても、
 「ルミナールAに化学療法をすべき条件」としてSt.Gallen 2015(最近しばしば引用していますが)では「リンパ節転移4個以上」が選択されています。
 「リンパ節転移1個~3個では2/3以上の専門家が化学療法は不要と判断」しています。
○「70歳以上」と「リンパ節転移1個」で強く勧める根拠が薄弱です。
 しかも最も強力で副作用も強い「アンスラ⇒タキサン」とは!

回答

「ホルモン剤だけにした場合、万が一再発した時に抗がん剤を使う、という考え方で良いでしょうか?」
⇒その通りです。
 再発した場合には「あらゆる手段を講じる」のです。
 
「術後治療でAC 療法等をして万が一再発した時には使える抗がん剤はあるのでしょうか。」
⇒沢山あります。
 Another taxane(パクリタキセルか、ドセタキセルかどちらか?)や、ビノレルビン、カペシタビン、エスワン、ベバシズマブ、エリブリン、いくらでもあります。