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粘液癌の全体の治療方針と放射線治療とホルモン治療について

[管理番号:2316]
性別:女性
年齢:55歳
54歳;女性
手術法 乳房温存・円状、腋窩リンパ節郭清;あり、リンパ節転移数;13個中3、
腫瘍の大きさ;0.7センチ、乳がんの組織型;浸潤がん・特殊型(粘液癌)
ホルモン感受性;高度ホルモン反応性、ホルモン療法の適応;適応あり
組織学的異型度;グレード1、脈管浸潤(リンパ浸潤);あり
HER2スコア(がん細胞増殖因子発現の強さ);1+
(陰生)、増殖能(KI-67) 高い(30%)
病型(サブタイプ);ルミナールB(HER2陰生)、推奨される薬物療法 ホルモン療法±化学療法
病型(サブタイプ);粘液癌、推奨される薬物療法;
ホルモン療法、病理検査 肉眼的に7ミリの腫瘍
Mucinous carecinoma、浸潤巣;7ミリ大、乳管進展を含めた大きさ:2,5cm大、f、ly1、V0,
n+(3/13)、
surgical margin;-,breast,Ki-67陽性率30%である。
(BML総研診断)、Mucinous
carecinomaに相当する
乳管内進展を伴う、リンパ管侵襲が疑われる像を認める(LY1)、がん細胞の核異型度は中程度、核分裂像は軽度である(Nuclea grade1)
切除断端陰生、 リンパ節転移を認める(3/13)
静脈侵襲は認められなかったV0とする、
Ki-67染色では、Hot Spotにおける陽性率は30%である
ER判定(10%以上を陽性) 陽性;90%以上
粘液癌 腫瘍細胞核の10%以上に陽性像を認める
PR判定(10%以上を陽性) 陽性;20%~30%
粘液癌は比較的おとなしい癌と言われ、転移は13個中3個ありました。
結果としてルミナールBと判定され抗がん剤治療をするかどうか悩んでいます。
また、放射線治療は転移が心配なので鎖骨まで当てる方が良いと言われています。
私の場合、ホルモン治療が一番効果があるように思われるので抗がん剤治療はなしという選択はありますか?
なお、放射線治療においてホルモン治療を同時にすると放射線治療の効果が薄れるのでしない方が良いと言われました。
放射線治療とホルモン治療を同時したいと思うのですが先生であればこの場合、全体としてどういう治療方法になりますか?
先生のご意見を教えてください。
最後になりますが、私の粘液癌のタイプは純型(PMBC-A、B)か混合型かお教えください。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(7mm), pN1, luminal type, NG1, Ki67=30%
「結果としてルミナールBと判定され抗がん剤治療をするかどうか悩んでいます。」
⇒Ki67=30%はグレーゾーンではあります。
 
「また、放射線治療は転移が心配なので鎖骨まで当てる方が良いと言われています。」
⇒ガイドライン上は、あまり勧められません。
 ○有害事象とのバランスで判断しましょう。
 「リンパ節転移1-3個」では考慮してもよい ガイドライン推奨度C1
 「リンパ節転移4個以上」では勧められる  ガイドライン推奨度B
 
「私の場合、ホルモン治療が一番効果があるように思われるので抗がん剤治療はなしという選択はありますか?」
⇒あります。
 質問者の場合は
  ホルモン療法単剤での再発予防効果は10%に対し、そこに化学療法を上乗せしてもその上乗せ効果は「僅か3%」となります。
 
「なお、放射線治療においてホルモン治療を同時にすると放射線治療の効果が薄れるのでしない方が良いと言われました。」
⇒あまりエビデンスがありません。
 実際は無関係でしょう。
 
「放射線治療とホルモン治療を同時したいと思うのですが先生であればこの場合、全体としてどういう治療方法になりますか?」
⇒ホルモン療法単剤(閉経前や閉経期ならタモキシフェン、閉経後ならアロマターゼインヒビター)とし、放射線照射とは「併用」します。
 
「私の粘液癌のタイプは純型(PMBC-A、B)か混合型かお教えください。」
⇒病理レポートからは「純型」のようです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

こんにちは、前回は回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
また気になることがありますので、もう一度、質問させてください。
私なりに、いろいろ調べては見たのですが、どうしてもわからないのですが、粘液癌とはどういう病理学的特性のガンですか。
転移しにくい予後のいいガンなのでホルモン療法の治療と書いてある本もあるのですがどう解釈したらいいのでしょうか。
詳しく主治医が説明してくれません。
わかりやすく説明していただけませんか。
粘液癌は針生検、細胞診で検査しているのですが乳房の中に広がったり、リンパ節にある腫瘍もさして検査したのですが他に広がったりしませんか。
私の場合、5年、10年再発率、生存率はどの位でしょうか。
根治は可能ですか。
リンパ節転移が3個あるのと(KI-67、30%)なので主治医には、抗がん剤治療を強く勧められますがそれほど大きな要因と考えなくては、いけないのでしょうか?
その他に何か気になる危険因子がありますか。
本当に抗がん剤治療は必要ですか。
がんのタイプによって治療方針は変わりますか。
癌は7mmで腋窩の近くにあり、それでリンパ節転移があったのでしようか。
主治医から次の選択肢をだされました
1.TC療法後放射線治療+ホルモン療法
2.放射線治療+ホルモン療法
3.UFT2年+放射線治療+ホルモン療法
どれを選択すればいいのか迷っています。
先生ならどれを選ばれますか。
また、放射線治療はトモセラピーでなくリニアックですが大丈夫でしょうか。
放射線医師によってあてる範囲はかわりますか。
左乳癌なので心臓、肺に影響が心配です。
放射線は乳房照射25回とブースト照射5回 合計30回とのことですが妥当でしょうか。
ホルモン療法は閉経後で、フェマーラを勧められていますがこの選択はどうでしょうか。
先生の意見を伺いたいので、どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「粘液癌とはどういう病理学的特性のガンですか。」「わかりやすく説明していただけませんか」
⇒考え過ぎは良くありません。
 「一般型と同様に」通常の治療を行うべきです。
 「特殊型」と言われると、変に拘る方も多いですが「組織型では、ある程度の傾向がある」だけで基本的には結果としての「リンパ節転移の有無」「腫瘍径」「核グレード」「サブタイプ」などに応じた治療を選択すべきなのです。
 ○傾向としては「大人しいタイプ」と言えます。
 
「粘液癌は針生検、細胞診で検査しているのですが乳房の中に広がったり」
⇒外科医としては当然「針のルートを切除するように」配慮している筈です。
 担当医を信頼しましょう。
 
「リンパ節にある腫瘍もさして検査したのですが他に広がったりしませんか。」
⇒細胞診では大丈夫だと思いますが、そもそも「術前の腋窩細胞診は無駄」な検査です。(今更、質問者に行っても仕方が無いですが…)
 術中に「センチネルリンパ節生検」をすれば済むだけの話であり、しかも「その方が、より確実性がある(組織診>細胞診)のは解っている筈」なのですが…
 ♯どうして「腋窩細胞診をしたがるのか、理解不能」です。
 
「私の場合、5年、10年再発率、生存率はどの位でしょうか。」
⇒10年再発率は「13%」です。
 
「根治は可能ですか。」
⇒87%の確率で根治します。
 
「リンパ節転移が3個あるのと(KI-67、30%)なので主治医には、抗がん剤治療を強く勧められますがそれほど大きな要因と考えなくては、いけないのでしょうか?」
⇒前回、回答したように「化学療法による上乗せは僅か3%」です。
 私が「化学療法を勧める」ことは決してありません。
 
「その他に何か気になる危険因子がありますか。」
⇒ありません。
 「腫瘍径が7mm」「核グレードも低い」 抗がん剤は不要でしょう。
 
「本当に抗がん剤治療は必要ですか。」
⇒不要です。
 
「がんのタイプによって治療方針は変わりますか。」
⇒無関係です。
 
「癌は7mmで腋窩の近くにあり、それでリンパ節転移があったのでしようか。」
⇒これは結構関係あります。
 
「主治医から次の選択肢をだされました
1.TC療法後放射線治療+ホルモン療法
2.放射線治療+ホルモン療法
3.UFT2年+放射線治療+ホルモン療法どれを選択すればいいのか迷っています。
先生ならどれを選ばれますか。」
⇒私なら全く迷いません。
 2です。
 
「また、放射線治療はトモセラピーでなくリニアックですが大丈夫でしょうか。」
⇒通常の「温存照射」だから殆ど影響はありません。
 
「放射線医師によってあてる範囲はかわりますか。左乳癌なので心臓、肺に影響が心配です。」
⇒余程不慣れで無い限り心配ありまえん。
 
「放射線は乳房照射25回とブースト照射5回 合計30回とのことですが妥当でしょうか。」
⇒放射線科医を信じましょう。
 当院でも「断端にかかわらず」放射線科医の意向で「全例30回」となっています。
 
「ホルモン療法は閉経後で、フェマーラを勧められていますがこの選択はどうでしょうか。」
⇒私なら「アナストロゾール」とします。
 歴史的に最もエビデンスが確立されているので(別にレトロゾールでも大差はないとは思いますが…)